top of page

≪統一論題報告≫公益法人制度改革における財務規律と情報開示

※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。

 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。


大阪経済大学教授 兵頭和花子

キーワード:

公益法人制度改革 財務規律 情報開示 アカウンタビリティ 
正味財産 増減計算書 活動計算書

要 旨:

 2022年 9 月に現行の公益法人制度について民間にとって利便性向上の観点からその在り方を見直すことになり、新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議が開催された。その中で公益法人は自らの経営判断と説明責任(アカウンタビリティ)において資金を活用できるようにすることと述べられている。具体的な内容の一つとして財務規律の柔軟化・明確化が挙げられている。そこで、本稿では今回の公益法人制度改革を受け、財務規律を遵守していることを示すと同時にアカウンタビリティの履行につながる情報開示について提案を行っている。  
 具体的には正味財産増減計算書(活動計算書)の本表で公益⽬的事業会計、収益事業等会計、法⼈会計に区分し、さらにそれぞれ一般正味財産と指定正味財産に区分している。このような区分を行うことによって本表上で当年度の収支相償や公益目的事業比率を示すと同時にアカウンタビリティの履行や活動の効率性も示すことが可能となると考える。

構 成:

Ⅰ はじめに
Ⅱ 公益法人制度改革
Ⅲ 公益法人の情報開示―アカウンタビリティの履行―
Ⅳ 公益法人の会計に関する研究会に対する検討
Ⅴ 正味財産増減計算書(活動計算書)案
Ⅵ おわりに

Abstract

 The Public Interest Corporations(PICs)system underwent review in September 2022, with the goal of making financial rules clearer and more flexible. The rationale for this was to enable the use of funds based on independent management judgment and accountability. This article examines the disclosure of information under this reform designed to demonstrate compliance with financial discipline and lead to the fulfillment of accountability.  Specifically, the Statement of Changes in Net Assets(Statement of Financial Activities)of PICs is divided into three categories, namely, accounts for activities by PICs for the public interest, accounts for profit-making businesses, and accounts for corporations; and these are further divided into general and designated net assets, respectively. By making these classifications, it is possible to show the current year’s income and expenditure balance and the ratio of public utilities in the statement as well as the performance of accountability and the efficiency of activities.


Ⅰ はじめに

 現行の公益法人制度について、2022年 9 月に民間にとって利便性向上の観点からその在り方を見直すことになり、制度の改革や運用改善の方向性について検討を行うこととなった。そのために新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議(以下、有識者会議とする)の開催が決定した1)。この有識者会議は2022年に「中間報告」を公表し、2023年には「最終報告」を公表した。「最終報告」では公益法人を民間非営利部門が公的活動を通して社会的価値の果たす役割と位置づけ、国民からの指示や理解を得る枠組みの整備の必要性を述べている(有識者会議[2023a] 1 - 3 頁)。その具体的な内容の一つとして公益法人の財務規律2)の見直しを挙げている。  
 この財務規律は、公益目的事業を行うことを目的とした一般社団法人や一般財団法人が公益法人として認定されるための基準の一つである。具体的には「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、公益認定法とする)第 5 条「公益認定の基準」の中で規定されているが、このような財務規律が制度上確保されていることが公益目的事業の非課税等といった税制優遇措置の前提ともなっている(有識者会議[2023a] 3 頁、注 1 )。この度の公益法 人制度の改革でこの財務規律が柔軟化・明確化された。有識者会議[2023a]によれば、その理由は自らの経営判断と説明責任(アカウンタビリティ)において資金を活用できるようにすることであるとしている(有識者会議[2023a] 3 頁)。そこで、本稿では今回の制度改革を受け、財務規律を遵守していることを示すと同時にそのことがアカウンタビリティの履行につながる情報開示について検討したい。  
 本稿の構成は次のとおりである。第Ⅱ章では公益法人制度改革の取り組みについて取り上げその背景を整理したうえで、公益認定法の財務規律について、先行研究を取り上げ本稿での検討課題を明らかにする。第Ⅲ章では公益法人のアカウンタビリティについて定義しておきたい。そして、第Ⅳ章では公益法人の会計に対する取り組みについて、内閣府の公益法人の会計に関する研究会(以下、公益法人会計研究会とする)の取り組みを取り上げる。第Ⅴ章では公益法人に求められる公益認定とアカウンタビリティのための情報開示について正味財産増減計算書(活動計算書)の私案を示している。第Ⅵ章おわりにでは本稿のまとめと限界について述べている。

Ⅱ 公益法人制度改革

1 2006年公益法人制度改革と財務規律

 2006年(平成18年)の制度改革によって、公益法人制度では主務官庁制が廃止され、登記のみで一般法人の設立が可能になるなど、法人としての設立が容易になった。また公益目的の定義・認定基準が法定化され、情報公開の義務付けとなった(雨宮[2019]72頁)。その一方で、雨宮[2019]によれば「収支相償や遊休財産規制などが厳しく、その立てつけの悪さが民間公益活動を委縮させている」(雨宮[2019]74頁)としている。また、助成財団センター[2019] のアンケート調査では「とりわけアンケート調査の結果においてもっとも指摘が多く、或いは合理性を欠くとみられた項目がいわゆる『財務3基準』のうちの公益目的事業収入制限(いわ ゆる収支相償)である」(助成財団センター[2019] 12頁)とし、さらに「『財務 3 基準』のうちの遊休財産額保有制限についても、公益事業の拡大や長期的な景気変動への備えとしては現状では不十分」(助成財団センター[2019]12頁)である、「財務 3 基準のうち、いわゆる収支相償や遊休財産額保有制限については、事前の規制に よる抑止効果によって財団の事業活動や財務戦略にマイナスであるとの指摘が圧倒的に多かった」(助成財団センター[2019]34頁)としている。  
 この財務規律については、久保・出口[2021] や馬場[2017]でも取り上げられている。久保・ 出口[2021]では「財務三基準というシステム を包含する上位システム(全体集合)は公益法人の認定制度になると把握できる」(久保・出口 [2021]25頁)として、財務規律と公益認定の制度との関連について述べている。公益認定法によれば「公益目的事業に係る収入が適正な費用 を超えないと見込まれること」(公益認定法第 5 条 6 号)、「公益法人は、その公益目的事業を行うにあたり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない」(公益認定法第14条)としており、公益認 定と財務規律が関連していることが理解できる。  
 馬場[2017]によれば、公益法人の組織運営を対象として検討し、その中で「公益認定基準が満たされているかどうかを数値的に測定するために財務 3 基準が導入されたが、その結果として公益法人は管理費の財源や、将来のリスク及び投資に備えるための内部留保を確保することが困難になっている」(馬場[2017] 1 頁)としている。一方で、久保・出口[2021]では、「財務三基準は単に財務という観点からまとめられただけの相互に何の関係もない断片化された要素の集合などではなく、同型化されているうえに相互に結びついて一体化しており、一定の秩序を有すシステムとして成り立っていると認識できる」(久保・出口[2021]29頁)としている。さらに、同[2021]では、「財務の中でとりわけ公益目的事業に支出する費用に着目して、公益法人という組織が組織目標である公益増進への貢献に必要なリソースを問題なく配分しているかどうか、つまり公益法人としてふさわしいかどうかを判別する働きを備えている」 (久保・出口[2021]29頁)と述べている。ただし、 同[2021]では「そのような働きを看過して収支相償単独で緩和策を取ろうとすることで混迷を生じさせている」(久保・出口[2021]23頁) とし、財務規律について一定の評価を与えながらもその問題点も指摘している。  
 このように財務規律について公益法人の柔軟な活動を阻害する点が指摘されている一方で、公益認定法の中で規定されていることからその遵守が求められていることが理解できる。今回の制度改正では、この財務規律について緩和されることが決定した。

2 2024年公益法人制度改革と財務規律の柔軟化・明確化  

 今回の公益法人制度改革では公益認定の基準を始め現行の公益法人制度の在り方を見直すこととなった。制度改革については有識者会議を中心にみていくこととする3)。有識者会議 [2023b]によれば、財務規律の公益目的事業比率、収支相償、遊休財産規制のうち収支相償と遊休財産規制について見直しが行われている。収支相償については、これを満たすためには単年度の収支で赤字を出さなければならないという誤解があったとして、今回の改革で単年度の収支差額ではなく、中長期的な収支均衡を図ることが法令上明確にされ、また過去の赤字も通算して判定されることになった(有識者会 議[2023b]資料 3 )。また遊休財産(使途不特定 財産)については、現行の公益目的事業費 1 年相当分という上限額を超過した保有については柔軟化することになり、「上限額」の算定方法については、予見可能性の向上や短期変動の影響の緩和という観点から見直しを行うこととなった(有識者会議[2023a] 4 - 5 頁)。  
 有識者会議[2023a]によれば、財務規律の柔軟化によって「法人の経営判断で必要な財産を確保し、不測の事態に対応できる安定した法人運営を可能にする」(有識者会議[2023a] 4 頁) が、その一方で「法人自身が財務状況等を透明化し国民への説明責任を果たす」(有識者会議 [2023a] 4 頁)ことが必要となったとしている。  
 すなわち、公益法人が公益活動を行っていくうえで、その活動に柔軟性をもたせ国民からの信頼に足る法人となるために財務規律等の見直しとともに公益法人のアカウンタビリティが果たせるような情報開示を行いその活動の透明性を図る必要があるとして制度の改革が行われると理解できる。  
 そこで本稿では今回の改革を踏まえ財務規律を遵守しながらもアカウンタビリティの履行となる情報開示について、とくに正味財産増減計算書(活動計算書)を取り上げ検討したい。本稿を執筆時点では当該計算書の名称は正味財産 増減計算書であったが、2025年 4 月から活動計算書へと変更予定である。このため2025年 4 月 以前の当該計算書は正味財産増減計算書とし、 同年 4 月以降の当該計算書を示す場合は正味財 産増減計算書(活動計算書)とする。

Ⅲ 公益法人の情報開示―アカウンタビリティの履行―

 アカウンタビリティは資源(権限)の委託者に対して資源(権限)の受託者が活動を行った結果について報告を行う責任である。公益法人の主たる資源の委託者は寄付者等であり、受託者は公益法人である。このとき寄付者等は公益法人の公益のための活動を行うという活動目的(ミッション)に共感して資源の委託を行う。そして、公益法人ではその受託した資源をサービス受益者のために費消する。すなわち、公益法人では、寄付者(他者)から資源が提供され、サービス受益者(他者)のために公益活動を行うことからそのアカウンタビリティの履行は重要であるといえる。そして寄付者等は寄付を行う場合に使途の指定を行う場合がある。このため寄付者等の意思に従って資源を使用したことを示すために、使途指定が行われている資源と使途指定が行われていない資源とを区別することはアカウンタビリティの履行の一つであるといえる。  
 日本公認会計士協会[2008]によれば、公益法人の純資産について「法人に帰属する部分については、寄附者等の経済的資源提供者の意思を反映した区分を行うことが必要であり、管理者の受託責任を解明することとなる」(日本公認計士協会[2008]6 頁)としている4)。また、「非営利法人会計としての基本的な考え方として、寄附者等(経済的資源提供者)の意思を反映した区分を行うことが必要であるといえる」(日本 公認会計士協会[2008] 7 頁)として純資産に対して使途指定の区分を行う必要性に触れている。日本公認会計士協会[2008]では、寄付等は寄付者等の持分を離れ、法人に帰属するものではあるが、無条件に帰属するのではなく寄付者の意思が反映されることが必要でありそれを開示することが重要である(日本公認会計士協会 [2008] 8 頁)としている。  
 また、イギリスの非営利組織(チャリティ)の会計では使途指定のある資源を受領した場合はそれを区別して表示することを求めている5)。 チャリティの会計ではチャリティの指導・監督機関であるチャリティ委員会(Charity Commission)が存在し、その実務指針である「会計実務勧告書(Statement of Recommended Practice: 以下、 SORPとする)」がある。  
 このSORPは、イギリスの財務報告評議会(Financial Reporting Council):以下、FRCとする) が取り組んでいない特定の産業、セクターあるいは領域における特定の要件や従事する取引について、会計基準および法規制の要件を補完する役割を担っている。2019年に、チャリティ委員会がFRS102SORP6)を公表している。このFRS102SORPは国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)の影響を受けたものであり、資源の使途指定についても述べられている。資源の使途指定の有無に基づいて区分を行うことは寄付者や資源提供者、財務的支援者、その他の利害関係者に高度なレベルのアカウンタビリティと透明性を提供することを目的としている(FRS102SORP, para. 6 )と述べており、資源の使途指定に基づいて区分し情報開示を行うことは、アカウンタビリティの履行や透 明性のためのものであると認識しているといえる。換言すれば、アカウンタビリティの履行のためには資源の使途指定についての情報開示が必要といえる。

Ⅳ 公益法人の会計に関する研究会に対する検討

 公益法人の会計について、これまでは内閣府の公益認定等委員会[2015]によって、「認定基準の中に財務に係る基準が置かれ、当該基準の判断の元となる数値を算定するため、会計基準が必要」(公益認定等委員会[2015] 7 頁)として、内閣官房行政改革推進本部事務局に「新たな公益法人等の会計処理に関する研究会」が設けられ、内閣府公益認定等委員会で2018年(平成20年)に会計基準が設定された経緯がある。  
 そして、今回の制度改革に整合するための会計について検討することが、内閣府の公益認定等委員会の公益法人会計研究会で行われた。その報告書として「令和 5 年度公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」が2024年(令和 6 年) 5 月に公表されている。当該報告書で、 財務規律(収支相償原則及び遊休財産規制)が柔軟化・明確化されるのに伴う情報開示について、従来以上にステークホルダーに対するアカウンタビリティを果たすことが重要となるとし、そのために財務諸表における情報開示を充実していく必要がある(公益法人会計研究会[2024]3 頁) としている。  
 具体的には①「指定正味財産」と「一般正味財産」の区分、②貸借対照表における資産の区分(基本財産、特定資産)、③「正味財産増減計算書」の名称・記載事項を活動計算書へ変更、④貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表の位置づけ、表示方法、⑤財産目録に記載すべき情報、⑥公益認定法に基づく財務規律への適合性を判断するための情報の開示、⑦公益法人の取引等における透明性の確保に関する情報の開示の 7 点を挙げている。また、情報開示の拡充が求められる中で、多様なステークホルダーに理解し易い財務情報の提供ということで「本表は簡素でわかりやすく、詳細情報は注記等で」(公益法人会計研究会[2024] 2 頁)としている。  
 この変更点の中で、正味財産増減計算書(活動計算書)における主な変更点は上記の①、③、 ④、⑥である。その中で①と⑥を取り上げる。ここでは一般正味財産増減と指定正味財産増減の区分表示は本表では行わず、財源区分別の内訳表を注記するとしている(公益法人会計研究会[2024]12頁)。公益法人全体の「純資産の増減内容(損益状況)」のみ表示されており、非常に簡素化されたといえる。しかしその一方で、公益目的事業における経常収益と経常費用からの収支相償が本表では計算できないため、収支相償を満たすかが不明である。収支相償は上述したように公益認定と関連していることから本表で示すべき内容と考える。また指定正味財産と一般正味財産の区分が本表にないため、受託責任財産の明示やアカウンタビリティが履行できるかといった問題点も存在している。この指定正味財産と一般正味財産の区分については注記情報となっているが、注記情報が過大となりすぎる懸念も存在しているといえる。そこで次に正味財産増減計算書(活動計算書)の私案を示してみたい。

Ⅴ 正味財産増減計算書(活動計算書) 案

 今回、有識者会議[2023b]では「わかりやすい財務情報開示」の中で、区分経理(公益⽬的事業会計、収益事業等会計、法⼈会計)を行うこと、別表についてはできる限り廃止(内訳表等で代替)すること、公益目的取得財産残額についても概念・定義も含めて再整理することを提案している(有識者会議[2023b]資料 3 )。そのため、本稿ではこれらの点を考慮しつつ寄付者の使途指定の区分を採用し、公益法人における公益性の担保に係る財務規律を満たすとともにアカウンタビリティの履行を踏まえた正味財産増減計算書(活動計算書)を提案したい(表 1 )。 表 1 では、公益⽬的事業会計、収益事業等会計、法⼈会計に区分している。さらに公益目的事業会計と収益事業等会計をそれぞれ一般正味財産と指定正味財産に区分している。必要であれば法人会計にも同様の区分が可能である。また、経常収益と経常費用を対比させることによって当年度の収支相償を満たしているかどうかを示すことができる(表 1 の①と②)。公益目的事業比率については経常費用の合計を分母とし、公益目的事業の経常費用を分子として捉えることができるので計算が可能となる(表 1 の ②と③)。他会計振替額の欄では例えば収益事業等会計からの利益額の繰り入れも把握できる。このように、表 1 の正味財産増減計算書(活動計算書)では本表上で当年度の収支相償や公益目的事業比率を示すことができる。ただし、詳細について、あるいは複数年度を示す場合は注記情報等が必要である。  
 また、一般正味財産と指定正味財産に区分したことによって、本表上で公益法人が活動に自由に使用できる資源(一般正味財産)と寄付者等が指定した活動の資源(指定正味財産)が把握できる。とくに指定正味財産の資源については公益法人が負っている寄付者等からの受託責任に対して、その説明責任(アカウンタビリティ)の履行を示しているといえる。  さらに、公益目的事業会計、収益事業等会計、法人会計でそれぞれ収益と費用を対応させることが可能であるため、公益目的事業における効率性、収益事業等での効率性などそれぞれの活動が効率的であったかどうかについても把握できる。  
 また、これまでの正味財産増減計算書の様式を基にしていること、事業費・管理費の形態別区分を採用したことによって、情報提供者(会計担当者)にとって作成が容易であり、情報利用者(ステークホルダー)にとって理解が容易である。さらに注記情報を減らすことも可能となる。

表 1  正味財産増減計算書(活動計算書)案
出典:筆者作成


Ⅵ おわりに

 本稿では今回の公益法人の制度改革を受け、財務規律の柔軟化・明確化された場合の情報開示に焦点を当てて検討を行った。とくにアカウンタビリティに着目し、日本公認会計士協会やイギリスのチャリティ会計を踏まえ、使途指定の有無の必要性を述べ、それを採用した正味財産増減計算書(活動計算書)を提案した。  
 当該計算書では、アカウンタビリティの履行とともに、効率性の把握や情報提供者の作成が容易あるいは情報利用者の理解が容易になる点も長所となる。ただし、注記等については過度にならない点に配慮しながら、本表である正味財産増減計算書(活動計算書)を補足するためには必要であると考える。  
 本稿の限界としては貸借対照表との連携についての検討を行っていない。また公益法人制度改革については本稿執筆時点では実施されておらず、現段階での私案となる。

(付記)本稿は、非営利法人研究学会第28回全国大会統一論題報告に加筆修正したものである。

[注]
1)有識者会議の開催について、内閣府の特命担当大臣の決定通知によれば、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(令和 4 年 6 月 7 日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2022」(令和 4 年 6 月 7 日閣議決定)に基づいて行う旨が記されている。
2)有識者会議[2023a]では財務規律について「収支相償原則(フロー面)や遊休財産規制(ストック面)などである」(有識者会議[2023a] 3 頁、 注1)としている。この財務規律は「財務 3 原則」(雨宮[2019])や「財務 3 基準」(助成財団センター[2019])と呼ばれる場合もある。助成財団センター[2019]によれば、財務 3 基準とは、「財務上の主要な公益認定要件で、公益目的事業収入制限(いわゆる収支相償)、公益目的事業比率、遊休財産額保有制限のことをいう」(助成財団センター[2019] 5 頁、付表3)としている。また、久保・出口[2021] では「財務三基準」とし、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)に定められた 3 つの公益認定の基準のことを指す」(久保・出口[2021] 25頁)としている。本稿では 有識者会議[2023a]に合わせて財務規律としているが、引用はこの限りではない。
3)制度改革の詳細については有識者会議 [2023a];[2023b]を参照されたい。
4)日本公認会計士協会[2008]では非営利法人を対象として検討を行っている。ここでいう 非営利法人には公益法人も含まれていることから本稿では公益法人として取り上げてい る。ただし、引用はこの限りではない。
5)イギリスのチャリティ会計についての詳細は兵頭[2019]を参照されたい。
6)FRS102SORPとは、FRCが公表した「財務報告基準(Financial Reporting Standards」の 1 つである第102号「英国およびアイルランド共和国に適用可能な財務報告」(以下、FRS102とする) を取り入れたSORPである。

[参考文献]
 新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議[2022]「中間報告」、https://www.koeki-info.go.jp/content/20221226_houkoku.pdf (2024年 6 月26日アクセス)。
 新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議[2023a]「最終報告」https://www.koeki-info.go.jp/regulation/pdf/20230602_houkoku.pdf (2024年 6 月26日アクセス)。
 新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議[2023b]第 9 回 「資料 3  主要論点ごとの制度改正の具体的な方向性」  https://www.koeki-info.go.jp/content/20230417_05shiryo.pdf (2024年 6 月 5 日アクセス)。
 雨宮孝子[2019]「公益法人制度改革10周年と今後の法人改革のあるべき姿」『学術の動向』 https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/24/5/24_5_71/_pdf/-char/ja (2024年11月29日アクセス)。
 尾上選哉[2020]「会計からみる公益法人制度改革の課題と可能性」『非営利法人研究学会誌』Vol.22、15-26頁。
 久保秀雄・出口正之[2021]「公益法人の財務三基準に関するシステム論的理解: 認定制 度の趣旨と収支相償の解釈」『非営利法人研 究学会誌』Vol.23、23-34頁。
 公益認定等委員会 公益法人の会計に関する研究会[2022]「令和 3 年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討課題について」https://www.koeki-info.go.jp/content/2021_research_report.pdf (2024年 6 月30日アクセス)。
 公益認定等委員会 公益法人の会計に関する研究会[2024]「令和 5 年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」、 https://www.koeki-info.go.jp/pictis-info/poa0003!show#prepage2 (2024年 6 月30日アクセス)。
 助成財団センター[2019]「公益法人制度改革10周年特別プロジェクト調査報告書 公益法人制度改革が助成財団に及ぼした影響と今後の課題」https://www.jfc.or.jp/wp-content/uploads/2022/05/10PT_report.pdf (2024年11月 29日アクセス)。
 日本公認会計士協会[2008]「非営利法人委員会 研究資料第 3 号 非営利法人会計の現状と展望」https://jicpa.or.jp/specialized_field/publication/files/2-13-3-2-20080902.pdf (2024年 12月26日アクセス)。
 日本公認会計士協会[2013]「非営利法人委員会研究報告第25号 非営利組織の会計枠組み構築に向けて」https://jicpa.or.jp/specialized_field/files/2-13-25-2a-20130702.pdf (2024年12月26日 アクセス)。
 馬場英朗[2017]「公益法人会計基準の実務的課題―公益認定基準と健全な組織運営をめ ぐって―」『関西大学商学論集』第62巻第 1 号、 1 -12頁。
 兵頭和花子[2019]『非営利組織における情報開示―英国チャリティ会計からの示唆―』中央経済社。
 Charity Commission for England and Wales [2019]“Charities SORP (FRS 102)”, second ed., https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5e6102c286650c513b442f14/charitiessorp-frs102-2019a.pdf (2024年12月 1 日アクセス).
(論稿提出:令和 7 年 1 月 5 日)

コメント


公益社団法人 非営利法人研究学会
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-6-1 栄信ビル9階
お問い合わせ:office(あっとまーく)npobp.or.jp

  • Facebook Clean Grey
  • Twitter Clean Grey
  • LinkedIn Clean Grey

Copyright(C) 2017, Association for Research on NPOBP, All rights reserved

bottom of page