学会賞・学術奨励賞の審査結果

第9回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告

平成22年9月25日
非営利法人研究学会
審査委員長:石崎忠司

 

 非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第9回学会賞(平成21年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成21年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成21年度全国大会における報告
に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。


1. 学会賞
 該当作なし


2. 学術奨励賞
 該当作なし 

 

3. 学術奨励賞特賞
  江田 寛(公認会計士)「NPO会計基準を民間で作成することの意義」(平成21年度非営利法人研究学会全国大会統一論題報告、於・名古屋大学,『非営利法人研究学会誌』Vol.12所収)
【論文の概要と授賞理由】
 1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて,10年余が経過した。その間,NPO法人は質量の両面にわたって飛躍的な発展を遂げ,今やわが国の経済社会にとって無くてはならない存在となった。ところがその会計制度については,NPO法に若干の関連規定があるのみで,計算書類作成のための包括的な基準は現在に至るまで存在しない。
 こうした不正常な状態を改めるとともに,NPO法人の今後のさらなる発展の制度的基盤を整備するべく,NPO法人の支援団体等が中心となって2009年3月にNPO法人会計基準の策定作業を開始した。著者は,その策定主体であるNPO法人会計基準策定委員会の委員長を務めた。本稿は,そうした立場にあった著者の視点から,NPO法人会計基準策定作業の経緯と意義を取りまとめたものである。
 本稿の主たる貢献は,以下の2点にある。第1は,「NPO会計基準を民間で作成することの意義」を,当事者の観点から明らかにしていることである。他の非営利法人会計基準の事例が示すように,行政主導の基準設定は,行政目的を優先した作業となりがちである。その弊害として,基準が法人の活動実態から乖離したものになる傾向があり,またそのことから,資源提供者や国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)の視点が弱くなるという問題も,派生することになる。著者によれば,これらの弊害を回避しながらその会計制度を整備拡充することが,NPO法人の今後の発展にとっては避けて通れない課題の1つとなるのである。
 第2は,NPO-GAAPの形成に向けた独自の洞察を行うとともに,その具体的な実践経験を報告していることである。民間主導で基準設定を行った場合,上掲のような弊害を回避することが可能となる一方で,基準の法制度的な強制力はまったく期待できないという難問が新たに生じることになる。そのような状況下で,新しく策定する基準がNPO-GAAP(一般に認められたNPO会計原則)となるためには,当該基準は,「少なくともNPO法人の過半数が自主的に採用してくれるものでなければならない」(江田論文12頁)。その可能性を担保するのは,「この会計基準が,市民参加型のオープンなプロセスで作られたという事実」(同20頁)であると,著者はいう。
 策定委員会の「論点報告」に収録された9項目の論点の第1番目に「小規模法人に対する配慮」が掲げられていることは,一見すると奇異に映るかもしれないが,こうした論点整理が,上掲のような趣旨にもとづいて組織された「市民参加型のオープンなプロセス」における関係者の激論をふまえたものであることを理解すれば,そこには極めて重要な意味合いが込められていることが看取されるのである。すなわち,このような「配慮」が,民間の力でNPO-GAAPを形成するうえで,欠かせない課題だったのである。そしてまた,このような「配慮」のもとで初めて,複式簿記の採用を前提とした画期的なNPO法人会計基準を策定することが可能となったのである。
 策定委員会が策定した会計基準(2010年7月公表)は,わが国のNPO法人制度史上初めて成立した包括的なNPO法人会計基準となる。策定委員会は,その作業を民間の力で完遂したのである。本論文の学術的意義は上述の通りであるが,それに加えて,策定委員会のそうした基準設定活動を指導した著者の実務者としての功績は,独自の社会的貢献を示すものであり,特段の評価に値する。それは,わが国のNPO法人制度史に残る偉業といってよいであろう。
 以上の理由から,本論文は,非営利法人の制度又は実務に携わる実務者を対象にその業績を顕彰することを趣旨として本年度から創設された学術奨励賞特賞授賞に相応しい著作であると,審査委員会は全会一致で認めた。

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