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第7回大会記

2003.10.10–11 成蹊大学

統一論題    非営利組織の経営と課題
 1 非営利組織とNPO法
 2 非営利組織の社会貢献
 3 非営利組織の業績評価をめぐる諸問題の会計学的考察
 4 非営利組織の税務に関する諸問題

白鴎大学 鷹野宏行

 公益法人研究学会第7回全国大会は、2003年10月10日(金)〜11日(土)の日程で、成蹊大学において開催された。両日ともに秋らしい好天に恵まれた。第1日目は理事会の開催に当てられた。以下では、第2日目の研究報告大会の模様を中心に、学会開催状況を紹介することにする。

自由論題
 午前中は3会場に分かれて自由論題が行われた。自由論題報告の報告者と報告テーマは、以下のとおりである。連休初日、かつ午前中の開催にもかかわらず、多数の会員の参加を得て、各会場で熱心な質疑応答が交わされた。

第一会場 司会・永島公朗氏(公認会計士)
1. 江田 寛氏(公認会計士)「収益事業課税における資本取引及び損益取引概念の検討」
2. 早坂 毅氏(税理士)「現物給付と割引販売−わが国の非営利法人会計における取り扱いの現実とその望ましい姿−」

第二会場 司会・松倉達夫氏(ルーテル学院大学)
1. 渡辺孝雄氏(第一福祉大学)「福祉サービスにおける成果主義にもとづく目標管理の導入について」
2. 大森 信氏(城西国際大学)「福祉ビジネスに関する研究−訪問介護ビジネスを展開する企業間比較−」
3. 吉田忠彦氏(近畿大学)「非営利組織のパートナーシップ政策」

第三会場 司会・島田 恒氏(龍谷大学)
1. 東海林邦彦氏(北海道大学)「非営利組織法制改革・試案−総論的部分に限定して」
2. 西村友幸氏(釧路公立大学)「自律協働体系としてのボランタリー組織」

研究部会報告
 引き続いて、興津裕康氏(近畿大学)の司会により、研究部会報告が行われた。研究テーマは以下のとおりである。
1. 東日本部会 主査・松葉邦敏氏(国士舘大学)
      「わが国の公益法人会計に関する研究」
2. 西日本部会 主査・堀田和弘氏(近畿大学)
      「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」

総 会
 昼食・休憩の後、会員総会より午後の部のプログラムにはいった。本学会事務局・常任理事の川崎貴嗣氏(公益情報サービス)から、会務報告、会計報告等が行われ、理事会提案は総会においてすべて承認された。続いて、昨年より創設された学会賞及び学術奨励賞の発表が行われた。第2回学会賞は該当者なし、第2回学術奨励賞には江頭幸代氏(広島商船専門学校)「環境コストと撤去コスト」、及び今枝千樹氏(京都大学大学院)「非営利組織の業績評価と会計情報拡張の必要性」を選定したことが審査委員会から報告され、審査委員長の守永誠治氏より賞状と副賞が授与された。

統一論題報告・統一論題シンポジウム
 総会終了後、統一論題報告・統一論題シンポジウムが石崎忠司氏(中央大学)の総合司会のもと行われた。報告者と報告要旨は以下のとおりである。

1.小島廣光氏(北海道大学)「非営利組織とNPO法」
 小島氏の発表は、わが国において長い間、必要性が認識されながらも立法化されてこなかったNPO法が、阪神・淡路大震災の発生からわずか6年間で「なぜ」そして「どのように」して立法化されたのかについて焦点を当て検討がなされた。小島氏はまず、NPO法の立法過程を分析するための理論的枠組みとして「改訂・政策の窓モデル」を導出する。その後、NPO法の全立法過程を6つの期間に区分し、詳細な年代記分析を試みている。そして、立法過程の実態を17の命題として整理され、その命題は、①如何なる参加者が、NPO法に対する思いをまず自らの信念として認識したのか、②如何なる政策アクティビストが、その信念を具体的に固め、法律案骨子を社会的に創造したのか、③如何なる場で、そのような法律案骨子の創造が行われたのか、④その法律案骨子が、より大きな場で法律案として提示された結果、如何にしてNPO法の立法問題が「政府・国会のアジェンダ」における高い優先順位を獲得したのか、という4つの問に対する答えになっていると主張した。

2.作間逸雄氏(専修大学)「非営利組織の社会貢献」
 作間氏の発表は、標準的経済理論を「合理的な愚か者」の理論として批判することにより、「公共性」の観点から非営利組織の社会貢献の可能性を検討することに主眼が置かれた。作間氏に主張では、「合理的な愚か者」の理論とは、ノーベル経済学賞受賞のセン教授により展開された理論で、正統派規範理論は個人が持つ選好を唯一の繊細な道具として、「個人の私的利害の追求」、「個人の厚生の評価」、「個人の選択行動の合理化」という3つの異なるタイプの問題に対処しようとしているとするもので、選好、利害、厚生、選択を必然的に連結する正統派規範理論は、人間行動の動機の多様性をすべて捨象して、人間をたった1つの選好に隷属する「合理的な愚か者」として処遇するものであるとセン教授の批判するところを引き合いに出される。そして作間氏は、セン教授の「機能」と「ケイパビリティー」という概念を援用して、分析を試みられた。

3.今枝千樹氏(京都大学大学院)「非営利組織の業績評価をめぐる諸問題の会計学的考察」
 今枝氏の発表は、非営利組織における業績の考え方について整理したうえで、アメリカの非営利組織における業績評価の現状、とりわけ非営利組織に対する第三者評価機関の視点及び役割について、整理検討することに焦点が当てられた。まず、今枝氏は、非営利組織に対しての3E(economy,efficiency,effectiveness)評価の適用可能性について、肯定的な視点で議論を展開される。そして、アメリカにおけるインターミディアリ(intermediary)の存在について紹介し、その評価の視点と役割について、複数の団体の事例を引き合いに出して、その評価基準ついても敷衍する。インターミディアリによる外部評価は、非営利組織自らが行う内部評価に関する情報に信頼性を付与することによって、非営利組織と寄附者を結び付ける役割を果していると結論づけた。

4.畑山 紀氏(札幌学院大学)「非営利組織の税務に関する諸問題」
 畑山氏は大会直前に体調を崩され欠席された。急遽、大会準備委員長の成道秀雄氏(成蹊大学)よりレジュメの代読が行われた。内容については上記事情に鑑み省略する。

以上の報告の後に、シンポジウムが開催され、統一論題報告に対する多数の質問が寄せられた。高橋選哉氏(福山大学)、保谷六郎氏(社会経済研究会)、江田 寛氏(公認会計士)、山田康裕氏(滋賀大学)、千葉正展氏(福祉医療機構)、菊池章夫氏(岩手県立大学)、橋本俊也氏(税理士)、藤井秀樹氏(京都大学)、東海林邦彦氏(北海道大学)などから質問が寄せられ、活発な討論が行われた。


懇親会
 統一論題報告・統一論題シンポジウム終了後、成蹊大学10号館12階ホールにて懇親会が開催された。大会準備委員長の成道秀雄氏(成蹊大学)からの開会の辞に続き、成蹊大学経済学部長の高木新太郎氏から式辞が述べられた。続いて、新会長に選出された松葉邦敏氏(国士舘大学)による挨拶があり、戸田博之氏(神戸学院大学)の乾杯の発声により懇親会が始められた。懇親会は終始和やかな雰囲気のもと執り行われ、19時00分に散会した。

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