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第5回大会記

2001.10.5-6 中央大学

統一論題    公益法人の社会的機能と責任

国士舘大学大学院 依田俊伸

 2001年10月6日、午前9時50分から第5回公益法人研究学会全国大会が中央大学市ヶ谷キャンパスにおいて開催された。約100名の参加者を得て、活発な報告と討論が展開された。ちなみに本大会は、日本公認会計士協会によるCPE研修指定を受けた。

 現在の大きな社会経済の構造改革の中にあって、公益法人に対しても、社会的責任を忘れたり効率を軽視しているものが少なくないとして改革が求められているという状況に鑑み、本大会の統一論題は、「公益法人の社会的機能と責任」と定められた。

 自由論題報告は、3会場で行われた。第1会場〔司会:小宮 徹氏(公認会計士)〕では千葉正展氏(社会福祉・医療事業団)「介護利用型軽費老人ホーム等の経営診断指標について」、若林茂信氏(公認会計士)「公益法人会計基準の見直しに関する中間報告の問題点の検討」、第2会場〔司会:松倉達夫氏(ルーテル学院大学)〕では、吉田初恵氏(関西福祉科学大学)「介護保険の負担と給付について—自治体間格差の実証研究—」、立岡 浩氏(花園大学)「NPOとしての社会福祉法人の戦略・統治・リーダーシップ」、第3会場〔司会:佐藤俊夫氏(国士舘大学)〕では、梅津亮子氏(九州産業大学大学院)「病院看護サービスの原価測定—九州中規模病院のケーススタディを中心として—」、岡村勝義氏(神奈川大学)「公益法人情報開示の新展開—第三セクターに関連して—」の計6題の報告が行われ、それぞれ熱心な質疑応答が交わされた。

 研究部会中間報告は、2会場で行われた。第1会場では、戸田博之氏(神戸学院大学)の司会のもと、西日本部会報告「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」の報告がなされた。第2会場では、杉山 学氏(青山学院大学)の司会のもと、東日本部会報告「わが国の公益法人会計に関する研究—社会福祉法人会計の現状と問題点—」の報告が行われた。

 午後に入り、会員総会の後、興津裕康氏(近畿大学)の司会のもと、4氏による統一論題報告が行われた。報告者名、論題及びその要旨は次のとおりである。
 
論題1:公益法人の社会的役割と情報公開—会計情報を中心として—
亀岡保夫氏(公認会計士)

 公益法人は、その活動を通じて社会福祉、学術、芸術等の分野における一定の社会的必要性を充足するという「社会的機能」を営んでいるものであり、その活動が、主として民間私人の創意工夫に基づき、かつ、社会の発展に絶えず寄与しているという点において存在意義を有している。
 公益法人の本来の役割は、「不特定多数の者の利益」の実現にあるが、特に生命や生活という人間の根源的な営みに関する「不特定多数の者の利益」の実現への公益性の追求において公益法人は中核的な役割を果たしている。
 そもそも公益法人(民法第34条に基づいて設立される法人)については、既に「公益法人の設立許可及び指導監督基準」により、特定の情報の公開が定められ、一定程度の公開が達成されている。しかし、今日の市場重視型の経済システムにおいては、財源の効率的、経済的利用が重要となり、それを判断する市場(国民、市民)に対してさらに一層の情報が提供されなければならない。公益法人がその事業の内容や活動の成果について、対外的に情報公開を行うことにより社会的に高い評価を得ていくことが、法人の事業の発展・存続のために必要である。情報公開において中心となるのは財務に関する情報である。さらに、公開される情報の信頼性を担保するために公認会計士等の監査が大変有効かつ効果的である。
 以上を踏まえ、公益法人は、指導監督基準で定められているからではなく、自ら積極的に情報公開していくことが大切であり、また、監査についても、要請されるのではなく、自ら積極的に外部監査を導入していくことが望まれる。
 
論題2:公益法人への社会の期待—社会的機能と責任—
会田一雄氏(慶應義塾大学)

 現在のわが国のように、ある程度社会が成熟し、しかも行財政改革を進めるに当たり、パブリックセクターのウエイトを軽減しなければならない環境下では、公益法人制度のあり方についてはもはや行政に委ねるのではなく、社会全体で議論すべき時期を迎えている。
 公益法人の社会的機能を論じるに当たっては、まず組織の本質を解明しておく必要があり、本報告では、公益性と非営利性の意義を再確認し、社会が公益法人全体に対して何を求めているかを論じる。公益性とは、不特定多数の者の利益の実現であるが、これは法人の事業内容そのものの性格を表している。この点で、株式会社はその目的が富の最大化であるため、公益的な活動を行っていても公益性を云々されることはないが、反公益的活動を行う場合には指弾され排除される。非営利性とは、利益の獲得を目的とせず、利益を分配しないということである。したがって、非営利性においては支出の内容が十分に吟味されなければならず、特に、当該支出が資産か経費に該当するかという資産性の検討が重要となる。費用に該当する場合には、その適正性が要求される。
 次に、法人が社会から付託された機能を果たすために、いかに社会との関係性を築き、また社会との接点を見出していくのかについてのアプローチを探る。公益法人が社会の期待に応える方法として、他の法人に対して税の支援措置や補助金といった優位性を持つとするとその優位性をどのように付与するかが問題になる。これには、アメリカ型とイギリス型があるが、どのような場合であれ、社会が期待するのは、民間主体であり、行政から独立した公益法人の存在である。公益法人が社会の期待に応えるためには、アカウンタビリティ(説明責任)を十分に果たす必要がある。そのためにはディスクロージャーが不可欠である。
 ディスクロージャーの内容としては、組織目的・事業内容、財務内容が挙げられる。ディスクロージャーの方法にも様々なものが考えられるが、継続的かつタイムリーな情報公開が必要である。公益法人は社会全体により支えられると同時に社会の期待に応えるという責務を負っているのである。
 
論題3:公益法人・非営利組織の存在理由と活動環境
藤井秀樹氏(京都大学)

 本報告は、財務会計論の立場から、非営利組織の存在理由とその活動環境について検討することを目的とするが、ここでいう「非営利組織」とは、公式に設立された組織であること、民間組織であること、利益分配をしないこと、組織内部で自主的に管理されていること、運営や管理にボランティアを含むこと、公共の利益に奉仕すること、という6つの特徴を備えた組織と定義する。
 非営利組織の存在理由を大別すると、経済的機能に関わるものと、社会的価値に関わるものの2系統に分類できる。前者には市場の失敗、政府の失敗があり、後者には多元的価値と自由がある。そこで、上記2系統の存在理由の関係及び非営利組織に固有の存在理由は何かが問題となる。経済的機能に関わる存在理由は、非営利組織が経済社会において存在するための前提条件と言える。それに対して社会的価値に関わる存在理由こそ非営利組織に固有の存在理由である。というのは、社会的価値に関わる存在理由には上記の特徴が深く作用しているが、このうちのボランタリズムを不可欠の特徴とする組織は、非営利組織以外に見当たらないからである。
 ここから、非営利組織における2つのパラドックス、すなわち「非市場性のパラドックス」(非営利組織は、その非市場的資源配分機能を市場経済の中で遂行せざるを得ない。)及び「非営利性のパラドックス」(非営利組織は、財務的基盤を自律的に確保しなければならない。)が発生する。ここにプロフェッショナリズムとボランタリズムとの両立が不可避の課題となる。
 プロフェッショナリズムとボランタリズムとの両立を図るには、まずプロフェッショナリズムの向上が必要である。その環境整備のための方策として、会計学の観点から、資源調達制度の拡充とりわけ寄付の活性化と情報開示の強化を提案したい。この場合、会計は「修正された市場メカニズム」を期待どおりに機能させる情報システムとして活用されることになる。その意味で、非営利組織における会計の役割は今後ますます高まっていくものと思われる。
 
論題4:非営利事業の社会的機能と責任
堀田和宏氏(近畿大学)

 非営利事業のあるべき経済社会的機能は、政府事業の限界の補完と営利企業の市場の失敗の補完にある。したがって、個別事業としての非営利事業は、政府機関とは異なる独自性・自立性ならびに効率性を発揮する経営と営利企業とは異なる有効性と信頼性に応える経営をするべき機能を持つ。
 非営利事業の固有の責任とは、ミッションに信頼を寄せて集まる、それぞれのコンスティチューエンシー(寄付者・政府・購入者・ボランティア等)の信頼と期待に応えることである。そのためには、経営行動の意思決定の仕組みと事前計画・管理活動の過程(ガバナンス)に対する監視・評価方法と情報開示のあり方(アカウンタビリティ)を構築する必要がある。
 しかし、非営利事業においては、営利企業が持つ基本的な責任メカニズムを持たないことから、モラルハザードの危険が大きい。そこで、委任を受けた寄付者/助成者への受託責任及びクライアント/利用者への社会公共的責任を遂行するためには、まずNPOガバナンスの再構築が必要である。
 NPOガバナンスにおいては、寄付者・理事会と経営者の適正な役割分担という法的組織構造と現実の乖離の解決という問題及び外部との寄付/助成委託関係、内部の階層関係、非階層関係(ボランティア)にそれぞれガバナンスのあり方を再構築するためのガバナンスに参加させるネットワークの編成、監視・参加制度や社会勢力の監視活動の保証・促進という問題がある。ガバナンスにとって受託義務その他の義務履行責任と義務履行の説明責任はその基本的構成要素である。
 最近のアカウンタビリティが求められる背景から、アカウンタビリティが多様化かつ複雑化している。さらにアカウンタビリティの内容が財務アカウンタビリティからプロセス監視・プログラム評価のアカウンタビリティへと拡大している。
 以上から、単なる事後の説明責任ではなく、経営機関の行動と経営管理の監視(事前統制)、業績達成のモニタリング(経営管理プロセス・プログラムの監視・評価)、社会的責任の達成度を評価するメカニズムの構築、監視体制と社会的責任を問う具体的な制裁措置の構築、が必要とされる。

 シンポジウムでは、大矢知浩司氏(九州産業大学)の司会のもと、上記4氏の報告を踏まえ、公益法人・非営利組織の固有の存在理由、公益法人におけるガバナンスのモラルハザード、ディスクロージャーの3つの観点から質疑応答が整理され、熱心な討論が行われた。質問者は以下のとおりである。
島田 恒氏(龍谷大学)、坂本倬志氏(神戸学院大学)、川崎貴嗣氏(公益情報サービス)、千葉正展氏(社会福祉・医療事業団)、吉田初恵氏(関西福祉科学大学)、吉田 寛氏(神戸商科大学)、杉山 学氏(青山学院大学)、永島公朗氏(公認会計士)、松葉邦敏氏(国士舘大学)

 シンポジウム終了後、6階2611号教室において懇親会が開催された。本学会会長守永誠治氏の挨拶があり、和やかな雰囲気のなか19時10分散会した。

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