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第26回大会記

2022年10月1日~2日 國學院大學

1. はじめ

 非営利法人研究学会第26回全国大会が、2022年10月1日(土)14時30分より、國學院大學渋谷キャ ンパス1号館1階1103教室を会場に行われた。90名以上の参加者を迎え、金子良太大会準備委員長 (國學院大學教授)から挨拶があった後、研究報告・討論会が行われた。

 第26回目を迎える本大会では、新型コロナの異常事態の中だからこそ、非営利組織が運営基盤の確立とミッションの達成を両立しうることを願い、統一論題のテーマを「非営利組織の財政基盤の確立へ向けて―ミッション達成と両立する取り組み―」と設定し、それぞれ報告と討論会を行うこととした。また、大会中は3名の統一論題報告、5名の自由論題報告、分野別研究会及び受託研究報告、スタディ・グループ報告が行われた。

 昨年の全国大会終了後も新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、対面開催が危ぶまれたが、 本大会は久々の対面開催となった。

 非営利組織もまた、その使命を全うするために日々努力されているが、コロナ禍において資金があっても十分な活動ができないケース、また社会的課題に立ち向かう必要性が認識されながらも資源が不足するなどの制約でミッションを達成する活動が大きな制約を受けるケースもある。非営利組織が運営基盤の確立とミッションの達成を両立しうることを願って、統一論題を「非営利組織の財政基盤の確立へ向けて―ミッション達成と両立する取り組み―」とした。

2. 統一論題

(1) 石津寿惠氏(司会・明治大学)

 統一論題のテーマに基づき、以下の3報告に共通するミッション達成と両立するための取り組みとして、非営利組織の財政基盤の特徴、ミッションと事業そして評価を巡る状況整理と問題提起がなされた。これに続き、各パネリストから以下の研究報告がなされた。

(2) 馬場英朗氏(関西大学)

テーマ「成果の可視化と非営利のミッション―PFS・SIB・休眠預金等活用・社会的投資などの視点から」

 成果の可視化の観点からミッションの達成の評価方法の課題について、日本のPFS事業例の紹介 やアメリカやイギリスと日本の非営利組織の事業評価方法の比較検討やSIB、休眠預金口座の活用とその評価等に関するご報告があった。

(3) 金子良太氏(國學院大學)

テーマ「非営利組織におけるクラウドファンディングやファンドレイジング費用の会計的課題―」

 非営利組織の経営上重要な寄付手段としてのクラウドファンディング(CF)に関する課題として、 寄付型CFの会計処理の特徴、そして会計的に事業性をどう捉えるのかという論点整理、そして海外の非営利組織への現地調査結果を踏まえた報告があった。

(4) 千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構)

テーマ「非営利組織における経営基盤の強化と法人間の連携―社会福祉法人のミッションと社会福祉連携推進法人の動向等に着目して」

 社会福祉法人のミッションを巡り、戦後に政府主導で認可された社会福祉法人制度創設前後の状況、そして最近の社会福祉連携推進法人創設といった社会福祉法人制度の歴史的展開を踏まえたご報告がなされた。

3. シンポジウム(分野別研究会 ワークショップ)

 尾上選哉氏(日本大学)のファシリテーションの下、座長の藤井 誠氏(日本大学)の方から「公益・一般法人における税務問題の実務視点からの研究」に関するご報告があった。これを受けて江田 寛氏(公認会計士)からオンラインでコメントが寄せられた。

4. 記念講演

 非営利用語辞典編集代表の堀田和宏氏(非営利法人研究学会前会長)から、本辞典を取りまとめるにあたり多くの執筆者の協力で本企画が実現できたことに対する感謝の言葉がビデオメッセージ で寄せられた。

5. 分野別報告(中間報告)

 森美智代氏(熊本県立大学)の司会の下、3つの研究会から研究活動報告がなされた。

(1) 「NPO法人研究会」(座長 初谷 勇氏(大阪商業大学)

 NPO法人の研究意義から再検討を行い、本研究会の方向性についてメンバー間で議論・再確認しあった結果、核となる議題としてNPO法人と非営利組織との存在意義の連動性、寄附税制との関係、外部環境変化への対応、市民自治や地域自治に整理した点や4回の活動内容についてのご報告があった。

(2) 「医療福祉系法人研究会」(座長 鷹野宏行氏(武蔵野大学)

 最近の研究会開催状況やZOOM会議映像公開に関するご説明等がなされた。

(3) 「大学等学校法人研究会」(座長 柴 健次氏(関西大学)

 従前のテーマであった「大学のガバナンスとアカウンタビリティ」を引き継ぎつつ、更に「経営体としての大学に求められること」を主題に掲げ、6つの研究報告を収録した中間報告書の議論を中心としたご報告がなされた。

6. 受託研究報告

「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究」(最終報告) 

 大原昌明氏(北星学園大学)の司会の下、座長の故成川正晃氏に代わり座長代行の齋藤真哉氏(横浜国立大学)を中心に研究メンバー(生島和樹氏・石田万由里氏・黒木 淳氏。石田晴美氏は当日欠席)の方から、非営利法人の会計試験を巡る状況として、公益法人検定試験の意義と課題、社会福祉法人会計簿記検定試験の現状と課題、そして試験を利用する法人や合格者へのアンケート調査結果に関する研究成果についてのご報告がなされた。

7. スタディ・グループ報告

「非営利組織の持続可能性と連携:ソーシャル・サービスの連携推進の発展可能性をめぐる多角的検討」 

 大原昌明氏(北星学園大学)の司会の下、國見真理子氏(田園調布学園大学)を座長とするスタ ディ・グループから、法律・会計・経営・海外制度比較・社会保障等の多角的側面からの分析を通じて、非営利組織のソーシャル・サービスの連携推進の発展可能性を明らかにするご報告がなされた。

8. 自由論題報告

(1) 自由論題報告①

 柴 健次氏(関西大学)の司会の下、第1報告・第2報告がなされた。

第1報告

「NPOにおける「社会投資収益率(SROI)」評価の問題点考察―費用便益分析との比較において―」 

宮本幸平氏(神戸学院大学)

 社会投資収益率(SROI)の評価におけるインパクトの評価について、費用便益分析における評価と対比しながら、問題点の指摘や代替案の導出に関するご報告がなされた。

第2報告

「人口減少社会における私立大学の維持と役割について」

林 兵磨氏(京都西山短期大学)

 人口減少社会における私立大学、とりわけ中小規模大学の維持と役割について国の私学助成金制度のあり方等の観点からご報告がなされた。

(2) 自由論題報告②

 初谷 勇氏(大阪商業大学)の司会の下、第3報告・第4報告がなされた。

第3報告

「マルチステークホルダー・プロセスにおける境界連結単位の役割」

伊藤 葵氏(富山国際大学)

 地域課題課題にむけた活動プロセスがどのようにマネジメントされていくのか、またマネジメントの主体はどのような特性や機能を有する必要があるかについてのご報告がなされた。

第4報告

「企業家の社会事業と公益観―石橋正二郎を中心に」

川野祐二氏(下関市立大学)

 石橋正二郎の自伝『水明荘夜話』とその実質的な執筆者である佐野朝男について、石橋正二郎の公益観と社会貢献意欲に関する思想を明らかにするご報告がなされた。

(3) 自由論題報告③

  吉田初恵氏(関西福祉科学大学)の司会の下、第5報告がなされた。

第5報告

「地方私立大学における地域貢献の意義と運営体制に関する考察」

渡辺 亨氏(日本経済大学)

 私立大学の地域貢献とその課題について、実際の事例を通じて、取り組みの阻害要因と課題の解決に向けた協働体制の構築方法に関するご報告がなされた。

9. 統一論題討論

 事前に寄せられた質問に対して各パネリストからのコメントと当日フロアから寄せられた質問に 対する応答等を通じて、活発な討論が行われた。

 大会は、10月2日(日)17時30分に終了した。大会準備委員長として、スムーズな運営にご協力 いただいた事務局、参加者の皆様、運営のお手伝いをいただいた学生に心から感謝申し上げます。

2023年1月4日

非営利法人研究学会第26回全国大会準備委員会

準備委員長 金子 良太(國學院大學) 

委員 國見真理子(田園調布学園大学)

中田 有祐(國學院大學) 


 

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