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≪論文≫公益法人の拡充のために公益法人税制が果たすべき機能の考察

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税理士 苅米 裕


キーワード:

財務三基準 収益事業課税 非営利型法人 所得の源泉と財産の費消活動 法人税の課税ベース 課税の繰延べ措置 寄附金の全額損金算入


要 旨:

 新公益法人制度は、民間非営利活動に対して、「機動的な対応が構造的に難しい政府部門や、採算性が求められる民間営利部門では十分に対応できない活動領域を担っていくことが期待され(てい)る」。本制度改革から10年が経過し、現下の急激な一般社団・財団法人の増加は、単に民間非営利活動が推進されていると評価できるものではない。公益法人税制による非営利活動の推進のため、①公益法人等の法人税の課税ベース自体を再考するべきか、②非営利型法人の収益事業課税により生じた非課税所得の余剰財源に対する課税を検討するべきか、及び、③公益法人の事業運営に寄与する公益法人税制を拡充するべきであるか等、各々の事業体の機能を考慮した課税制度の設計を検討する必要がある。本稿は、急増している一般社団・財団法人を顧慮し、公益法人への移行を促進するため、法人税制の面から考察をしたものである。


構 成:

Ⅰ はじめに ―制度改革から10年経過・新制度により公益法人税制が引き寄せたもの―

Ⅱ 公益法人制度の理念と公益法人等に対する法人税制との連携

Ⅲ 公益法人等の法人税制再構築の検討

Ⅳ おわりに


Abstract

 The amended public-interest corporation system expects that non-profit organizations (NPOs) will serve the areas that are structurally hard to handle promptly by political sectors and the areas that are hard to handle by profit making sectors. Ten years have passed since the reform of this system, and despite the rapid increase of incorporated associations and foundations, we feel progress in the promotion of NPOs has been insufficient. It is necessary to develop a taxation system that takes into account the functions of each type of organization. This study was conducted to examine the following points from the perspective of the corporate taxation system to promote the transition of incorporated associations and foundations to public-interest corporations and their non-profit activities:

 (1) The need to reconsider corporate tax bases for public-interest corporations, etc.;

 (2) The need to impose tax on financial surplus derived from non-taxable income produced by profit-making business taxation for individual NPOs;

 (3) The need to expand the public-interest corporation taxation system to contribute to the public-interest corporation business operations; and so forth.

Ⅰ はじめに

―制度改革から10年経過・新制度により公益法人税制が引き寄せたもの―

 新たな公益法人制度は、民間非営利活動1)について、「自己実現を図る機会を提供するものであり、これを促進することは、少子高齢社会を迎えている我が国の社会を活性化する観点からも有意義であ(ること)、また、…機動的な対応が構造的に難しい政府部門や、採算性が求められる民間営利部門では十分に対応できない活動領域を担っていくことが期待される2)」として、そのビジョンを具体化するため「公益的活動の健全な発展を促進し、一層活力ある社会の実現を図る2)」ことを課題に掲げるものであった。本制度改革は、10年が経過した今日において、非営利活動の促進としての機能を果たし、課題の解決に寄与したと実感できているだろうか。

 新公益法人制度のスタートは、平成25年11月30日の移行期間満了時において、旧公益法人(特例民法法人)24,317法人が、公益社団・財団法人への移行認定9,054法人(37%)に対して、一般社団・財団法人への移行認可11,682法人(48%)及び解散・合併等をした3,581法人(15%)3)となり、公益法人(公益認定法2三)が制度改革前の旧公益法人に比して大幅に減少することとなった。そして、現下の法人数は、公益社団・財団法人が9,714法人(13%)、一般社団・財団法人が67,188法人(87%)となっている4)。新公益法人制度を起点に法人数が3倍に拡大したことは、公益目的事業5)を行うことを主たる目的とする公益法人が、制度改革前に存していた公益法人数の40%にも満たない状況であることに象徴され、一般社団・財団法人が55,506法人増加し約5.7倍以上に膨れ上がっている実情からすれば、単に政府が期待をしていた民間非営利活動が推進されていると評価できるものではない。

 この急激な一般社団・財団法人の増加要因は、公益法人制度改革により、法人が行う事業の公益性にかかわらず、登記により容易に法人を設立することが可能となったことに基因するものであろう。特に一般社団法人等6)に対して問題視していたことは、株式等のような出資持分がないことを利用し、個人が所有する財産を移転させ、理事や社員を同族関係者で占めることにより当該財産を間接的に支配し、所有の実態を変えずに半永久的に相続税の課税対象にならない効果を得るためのスキームに活用されることである7)。そのほかに考えられる一般社団・財団法人の増加要因としては、法人税法上の非営利型法人8)に対する法人税の収益事業課税9)に象徴される公益法人等の優遇税制の適用により、内部留保を確保することが目的であろう。このようなビジョンを持つ一般社団・財団法人の発現は、公益法人制度の理念を揺るがす公益法人税制の綻びを表象するものといえ、非営利活動の促進を阻害することにもなりかねない。

 本稿は、公益法人として非営利活動を実施することが期待される一般社団・財団法人に対して、公益認定の推進と公益目的事業の拡大に資するため、税制面における施策を思案し、提言することを目的とするものである。


Ⅱ 公益法人制度の理念と公益法人等に対する法人税制との連携

 公益法人の運営において、公益認定の基準のうち財務三基準10)の充足は、事業運営上監視を求められる重要なテーマとなっている。しかし、その側面には、法人税の課税制度として、①収支相償要件により実質的に利益が生ずることを想定していない公益目的事業を非課税(法令5②)とし、②当該公益目的事業の費消財源となる公益目的事業財産の確保を担う公益目的事業以外の事業を収益事業課税の対象にし、かつ、③収支相償要件に平仄を合わせるよう法人税法上の収益事業に属する資産のうちから公益目的事業のために支出した金額を寄附金とみなして損金の額に算入する(みなし寄附金)等の優遇措置が講じられている(法法37⑤、法令73①三イ、73の2)。

 これらのうち上記②を収益事業課税の対象としたのは、公益法人が、遊休財産額の保有制限要件により、法人税法における収益事業以外の事業により非課税とされた余剰を含めて、事業規模の制御及び財産の費消活動に意識を注ぎながら非営利活動を実施していること、また、公益目的事業比率要件により、収益事業等の事業規模の制御を強いられながら公益目的事業財産の確保を追求していることに対する配慮であると考えられる。これらの新公益法人税制は、公益法人の財務三基準により制度の財務理念を具体化したことから、事業運営に対する監視が課題として浮上し、公益認定法に基づく手続規定との摩擦を誘引している反面、「旧公益法人税制に比して、公益法人の公益活動の奨励・増進の趣旨により適合したものとなっている。11)」。

 他方、一般社団・財団法人のうち移行法人(整備法123①)は、公益目的支出計画(整備法119①)に基づく収入の発生を期待しない実施事業等(整備法119②)により、公益目的財産額(整備法14)をゼロにする費消活動を課せられている。この公益目的支出計画の遂行は、公益法人の公益目的事業の運営理念と同視できるものであるから、非営利型法人を収益事業課税の対象としていることについて、公益目的支出計画完了後の事業継続のための補完的機能と非営利活動の促進を担う法人格としての期待が込められているといえよう。しかし、移行法人以外の非営利型法人は、移行法人と同様に収益事業課税の対象としているところ、収益事業以外の事業による所得が非課税とされ、その後の財産の費消が法人の自由な運営に委ねられていることから、非課税所得に係る余剰財源について、何の事業に費消されているのか、あるいは内部留保として蓄積しているのか、不透明な状況になっている。また、この状況を放置することは、収益事業以外の事業について、仮に営利法人の事業と競合していないことを非課税とする理由(イコール・フッティング論)であるとしても、非課税所得の財源が当該競合していない事業で費消していることが明確でなければ、営利法人と課税ベースの差を設ける収益事業課税の本旨を逸脱することになろう。

 一般社団・財団法人が急増しているにもかかわらず、公益法人への移行が微増となっているのは、財務三基準の制約下にある公益法人の公益活動の奨励・増進を図る公益法人税制の思考が、自己統治に委ねられている非営利型法人の優遇措置として投影されたことにより、両者の税制上の不均衡を露呈したことも大きな要因であろう。本来民間非営利活動の実施団体には、公益法人制度の理念を後押しすることを主眼とし、各々の事業体の機能に基づく課税根拠と政府部門や民間営利部門では対応しきれない活動領域を遂行する上でのインセンティブ効果を併せ持つ公益法人税制の構築が求められる。


Ⅲ 公益法人等の法人税制再構築の検討

 公益法人税制による非営利活動の推進のため、①公益法人等の法人税の課税ベース自体を再考するべきか、②非営利型法人(移行法人等を除く12)。)の収益事業課税により生じた非課税所得の余剰財源に対する課税を検討するべきか、及び、③公益法人の事業運営に寄与する公益法人税制を拡充するべきであるか等、各々の事業体の機能を考慮した課税制度の設計を検討する。


1 公益法人等の法人税の課税ベースの再考

 公益法人制度の理念は、公益法人の収支相償要件及び移行法人の公益目的支出計画に表れているとおり、財産の費消活動による非営利活動のコントロールが求められている。そうすると、公益法人等の法人税は、当該理念を考慮せずに現行の収益事業課税に採用されている所得の源泉に基づいて課税するか否かを判断すべきか、あるいは、当該理念を尊重し非営利活動による財産の費消活動を捉えて課税ベースを認識すべきか、検討要素として浮上することになろう。

 この点について、藤谷武史氏の提案する公益法人等に対する法人税制は、「非営利法人の全所得を課税所得に含めた上で、促進すべき使途(公益活動支出)を即時償却扱いとする課税方法がある(これは、特定の投資活動を促進するための租税特別措置と同じ仕組みである。)。13)」とし、非営利活動促進のため「技術的修正としては、公益活動支出が現実になされたときに過去に支払った税額を上限に還付を行う仕組みが考えられる。…これが税務行政上不可能であれば、合理的な期間内での支出計画の承認に基づく非課税の積立金制度を設けることも可能である。13)」と論じられ、収益事業課税の思考にある所得の源泉による課税判定から財産の使途に着目した非課税制度へ改変するものである。また、同氏の提案には、財産の費消をコミットすべく、当時から特定費用準備資金(公益認定法規則18)及び資産取得資金(公益認定法規則22③三)の活用を提案しているところについて、先見性が感じられる。さらに、本課税方式について「財政が逼迫する法人が収益事業所得を公益活動の内部補助に用いている場合には課税されず、公益活動を行わず内部留保だけを増大させる法人には課税がなされることになり、現行制度よりも実際上妥当な結果を導く。13)」とし、本稿の問題意識に通じるところがある。しかし、本課税方式の提案は、「公益活動支出に着目して非課税とすること」、及び「内部留保を増大させる法人に課税される効果があること」から、目に留まるものであるが、そもそも外部経済をもたらす非営利法人に対して営利法人と同様の全所得課税方式にすることを前提としていることから、非営利法人に対する課税根拠を欠き、骨子の部分において受け入れることができない。

 他方、米国では、非営利法人について、本来の事業と実質的な関連性のない事業から生じた収益を課税の対象とする「非関連事業所得課税」が採用されている(米国内国歳入法典[IRC]§511-513、515)。ところで、米国の非営利法人に対する課税方式は、非関連事業所得課税が採用されるまでの間、非課税とすべきか否かの判断基準について、非営利法人の獲得した収益の源泉ではなく、収益により獲得した財産の使途を基準としていた歴史がある。しかし、本歴史は、非課税の判断について財産の使途を基準としていたことにより、租税回避に利用されるとともに、営利法人との競合が生じたことから、1950年の税制改正において、現行の非関連事業所得課税に改正されたという経緯がある14)。そうすると、我が国の収益事業課税は、1950年以降継続して採用されていること、同時期において米国が非関連事業所得課税に改正した背景を考慮すべきであり、また、非営利法人課税ワーキング・グループ15)の審議を経た後も存続していることを勘案すると、公益法人制度の理念を尊重し財産の費消活動を課税ベースとすることについて、消極的にならざるを得ない。


2 収益事業課税により生じた非課税所得の余剰財源に対する課税の考察

 移行法人等以外の非営利型法人は、自己統治による非営利活動の中で収益事業課税の対象となり、収益事業以外の事業による所得が非課税と判断された場合、その後の非課税となった財産の費消活動や内部留保の状態について、基本的に租税行政庁からの監視領域とはならない。このような環境下では、公益法人が収支相償要件や遊休財産額の保有制限要件の下で収益事業課税の適用を受けていることに対して、自由な非営利活動という魅力から脱却する意識などは芽生えず、むしろ公益法人の移行認定を目指す意識をついばんでいると考えられる。

 ところで、IRC第4942条は、本来非営利法人が目的としている公益活動及び関連事業により稼得した所得を非営利活動に分配することを要請するもので、不適切な内部留保の蓄積を解消する趣旨により、未分配となった所得を規制税として課税することとしている(以下「未分配所得課税」という。)。この未分配所得課税は、事業型私立財団(IRC4942(j)⑶)に該当しないプライベート・ファウンデーション(IRC509(a))について適用されるものであるところ、その課税年度の翌課税年度開始の日において有する①の分配可能額が②の適格分配額を超える場合における、その超える部分の金額(以下「未分配所得」という。)に対して、30%の税率により課税するものである(IRC§4942(a))。さらに、未分配所得課税の適用を受けた非営利法人について、当該課税年度後の年度において未分配所得の残額があるときは、当該各課税期間終了の日の残額に相当する未分配所得に対して、100%の税率により追加税を課税することとしている(IRC§4942(b))。

 ① 分配可能額:本来目的の公益活動16)や関連事業の遂行に直接使用しない純資産の価額(総資産の価額から、負債の額及び本来目的のために使用している資産の価額から対応負債を控除した額を、控除して得た額)に5%を乗じた額(IRC§4942(d)(e))。

 ② 適格分配額:公益活動のための支出(IRC§4942(g)⑴(A))、公益活動のために使用する資産の取得支出(IRC§4942(g)⑴(B))及び米国内国歳入庁長官の承認を受けた5年以内の公益活動プロジェクトのための積立金(IRC§4942(g)⑵)。

 移行法人等以外の非営利型法人の収益事業課税は、非課税所得による余剰財源の使途及び内部留保の状況について、非営利性を喪失しない限り、課税問題に派生することはない。そこで、公益法人の財務三基準のような監視機能を持たない法人には、未分配所得課税に準じた規制税を導入することにより、非営利活動への財産の費消を促し、公益法人との税制上の格差を与えるべきであろう。

 ただし、未分配所得課税は、事業型私立財団に該当しないプライベート・ファウンデーションに対する規制税であることからすると、安易に導入を促進することでは反発も大きなものとなり得る。そうすると、移行法人等以外の非営利型法人の収益事業課税は、我が国独自の課税方式を提案する必要があるところ、収益事業以外の事業の所得金額が一過性の余剰であることの検証ができないことを考慮し、公益法人との制度上の格差を是正するため、収益事業課税の課税ベースを維持し、かつ、収益事業以外の事業の所得金額を発生事業年度において非課税とするのではなく、翌事業年度以降に当該所得金額を繰り越し、収益事業以外の事業によって余剰財産の費消を要請することにより、事実上課税の繰延措置に転換するべきであろう。


3 公益法人の事業運営に寄与する公益法人税制の拡充

 公益法人は、公益目的事業実施のための財源確保を収益事業等に依拠しており、公益目的事業の拡大志向と公益目的事業比率要件とが対立する構図となる。この状況が深刻な公益法人にとっては、寄附金収入が重要な財源となるところ、第三者である個人・法人からの非営利活動への理解と資金提供が不可欠であり、我が国の寄附文化の浸透が強く望まれている。

 しかし、現行の法人税の寄附金税制は、法人が公益法人に寄附金を支出した場合において、仮に公益法人が特定公益増進法人に該当しても、全額損金の額に算入されることにはならない。たとえば、期末資本金1億円の普通法人は、所得金額(1億円)の10%(1千万円)を公益法人に寄附を支出した場合、損金算入限度額(4百万円)を超える部分の金額(6百万円)が損金不算入となり、法人税等の実効税率を37%とすると約2百万円の課税を受けることになるから、キャッシュアウト約1千2百万円が生ずることになる。これを租税行政庁の側から見ると、損金算入限度額4百万円に対する法人税等の実効税率37%に相当する約150万円の租税が減額されたことになる。民間非営利法人に対して、「機動的な対応が構造的に難しい政府部門や、採算性が求められる民間営利部門では十分に対応できない活動領域を担っていくことが期待される2)」旨のスローガンを掲げていることからすれば、公益法人税制として、民間営利部門の資金提供(1千万円)と租税(2百万円)に対して、マイナスの租税(2百万円)を追加する、言わば間接的な補助金の交付体制を構築することが本旨とはいえないだろうか。つまり、本来は、民間営利部門が寄附金に対する租税(2百万円)を納付し、政府部門が民間非営利部門に補助金(2百万円)を交付するところ、寄附金を全額損金算入することで、一気に目的を達することが可能となろう。

 ところで、非営利法人課税ワーキング・グループの審議では、「寄附金税制の見直しの基本的方向」について、要旨、次のような指摘がされていた。「少子高齢化が進展して社会の多様化が進む中、より一層厚みのある社会システムを構築していくという側面からも、『民間が担う公共』の領域の役割が重要であって、それを支える公益的な非営利法人による民間非営利活動に国民が積極的に参加するための社会インフラ整備という視点に立ち、欧米並みに寄附文化を育てていくという観点から、税制面として、公益目的の寄附金に係る優遇税制をより充実すべきではないかという考え方もあろうかと思います。17)」旨の寄附金に対する優遇税制を拡充する発言がなされていた。しかし、この意見に対して、「個人も、法人も、寄附文化を育てていかなければなりません。ただ、法人の損金算入の問題は、これまで拡充することに対して異論はなかったのですが、最近疑問が湧いてきました。それは、寄附を含めた企業の社会的責任というのがビジネスに直結する流れになってきているからです。つまり、社会的責任を果たすということがビジネスに有利になるのだという考え方がマーケットの中で既に醸成してきているということです。それが企業価値になってきていることからすると、損金算入を拡大するよりも、納税をしながら寄附金を拠出した方が企業価値は上がるという見方もできないわけではありません。したがって、あまり野放図に寄附金の損金算入を拡大するのは如何なものでしょうか。17)」旨の反論も述べられていた。

 本来寄附金は、広告宣伝費とは異なり、反対給付を求めず対価関係のない支出であるところ、法人の業務に関連のある公益法人に対して拠出することがあっても、ビジネスに直結するという考え方には抵抗がある。企業の社会的責任は、近年のオープンイノベーションに象徴されるとおり、雇用の創出、産学連携、企業の共同開発等にまで発展する経済社会に対するディベロップメントであろう。その潮流に派生する寄附金は、企業価値を高める効果が無いとまでいわずとも、後押しが無ければ鈍化する傾向にあり、根源のテーマとして寄附文化の成長を急務とする。それに呼応するかのように、非営利法人課税ワーキング・グループは、議論の大要として「公益目的の寄附金に係る損金算入枠については、近年、企業の社会的責任や社会貢献が強く求められるようになってきており、寄附金税制の充実の必要性の観点から、これを拡充する方向で見直すべきである。18)」旨、取りまとめられている。

 そこで、公益法人には、現行の公益法人に対する寄附金について損金算入限度額を規定しているところ、非営利活動の健全な発展を促進するため、公益目的事業に使途が特定されている寄附金を全額損金の額に算入することにより、民間営利部門からの資金提供と政府部門の補助金に準ずるマイナスの租税を先導させ、民間非営利部門の活動領域を支援する財源機能を構築する必要があろう。ただし、寄附金の優遇税制による拡充措置は、当然、租税回避の手段に濫用されるようなことがあってはならない。そのため、当該寄附金は、公益法人が実施する公益目的事業に使途が特定されていることを顕在化する必要があるから、指定正味財産として財務管理を行い、受け入れた寄附財産に対する公益法人の責任と義務の履行を財務諸表に対する注記等を通じて明確にすることが求められる。


Ⅳ おわりに

 本稿は、急増している一般社団・財団法人を顧慮し、公益法人への移行を促進するため、法人税制の面から検討をしたものである。これによると、①収益事業課税の法人税の課税ベースを踏襲しながら、②移行法人等以外の非営利型法人の収益事業課税により生じた非課税所得を課税の繰延べ措置に改変すること、また、③公益法人に対する公益目的事業に使途を特定する寄附金は全額損金算入とする措置を講ずべきこと、であると着地するに至った(図表参照)。

 本提案は、公益法人に対して公益法人制度の牽制が希薄な一般社団・財団法人との税制優遇措置の格差を是正し、公益法人の財源調達機能を充実させることにより、一般社団・財団法人の公益認定の道筋を照らすことが目的である。そして、本稿は、多くの一般社団・財団法人が公益法人に移行することを期待するものであり、「公益的活動の健全な発展を促進し、一層活力ある社会の実現を図る」ことに尽力されることを望むものである。


図表1-1 公益法人等に対する法人税制の再構築の検討

(筆者作成) 


図表1-2 公益法人等に対する法人税制の再構築の検討

                (筆者作成)


[注]

1)民間非営利活動は、民間営利活動以外の活動であり、民間が行う公益的活動の全般を意味するものとして本稿では使用する。

2)「報告書 平成16年11月19日公益法人制度改革に関する有識者会議」3-4頁。http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/koueki-bappon/yushiki/h161119houkoku.pdf(2019年12月19日最終閲覧、カッコ内筆者加筆)

3)公益法人制度改革における移行期間の満了について(速報)。平成25年12月10日。https://www.koeki-info.go.jp/pictis_portal/other/pdf/20131210_ikousinsei_sokuho.pdf(2019年12月19日最終閲覧)

4)各々の法人件数は、国税庁ホームページにおいて、「社会保障・税番号制度・法人番号公表サイト」から2019年12月19日に筆者が抽出したものである。

5)公益目的事業は、学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表に掲げる23種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものと規定している(公益認定法2四)。

6)一般社団法人等とは、一般社団法人又は一般財団法人をいい、また、特定一般社団法人等とは、一般社団法人等であって、①被相続人の相続開始の直前における当該被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が2分の1を超えること、②被相続人の相続の開始前5年以内において当該被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であることの①又は②の要件のうち、いずれかを満たすものをいう(相法66の2②一、三)。

7)このような相続税負担の回避は、平成30年度税制改正において、特定一般社団法人等の理事の死亡に際し、その時点における法人の純資産額を基礎に計算した金額について、みなし遺贈財産として課税対象とすることになったことから、今後同様の節税スキームに対して抑止効果があると考えられている(相法66の2)。

8)法人税法施行令第3条《非営利型法人》は、一般社団・財団人のうち収益事業課税の適用対象となる法人を法人税法独自に「非営利型法人」と定義付け、また、①非営利徹底型法人と、②共益型法人の二形態に分類し、各々対象となる法人の要件を規定している。

9)法人税法に規定する収益事業とは、販売業、製造業その他の政令で定める34の特掲事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう(法法2十三、法令5)。また、内国法人である公益法人等(非営利型法人を含む。)の各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得については、各事業年度の所得に対する法人税を課さない旨規定している(法法7、以下「収益事業課税」という。)。

10)公益認定法第5条《公益認定の基準》は、第6号が「その行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること(以下「収支相償要件」という。)」、第8号が「その事業活動を行うに当たり、公益目的事業比率が100分の50以上となると見込まれるものであること(以下「公益目的事業比率要件」という。)」、第9号が「その事業活動を行うに当たり、遊休財産額が年間の公益目的事業に係る事業費の額を超えないと見込まれるものであること(以下「遊休財産額の保有制限要件」という。)」と規定している(これらの公益認定の基準を「財務三基準」という。)。

11)金子宏『租税法 第23版』(弘文堂、2019)、450-454頁。

12)余剰財源に対する課税の検討は、移行法人について、公益目的支出計画による事業運営が公益法人の理念と同視できること、また、非営利型法人のうち共益型法人について、会員から徴収した会費を共益的な活動に費消することを前提としていることから除外すべきと考える。

13)藤谷武史「非営利公益法人の所得課税-機能的分析の試み」ジュリスト1265号、128-129頁(有斐閣、2004.4)。

14)石村耕治『日米の公益法人課税法の構造』(成文堂、1992.11)、「財務省代表は、多くの免税団体が『免税活動とまったく無関係な事業に従事し、免税の意味を逸脱してしまっている』実情を指摘した(Hearings on Revenue Revision Before the House Committee on Ways and Means,77th Cong.,2d Sess.89(1942))。1943年歳入法(Revenue Act of 1943)の制定の際に作成された下院報告書(H.R.Rep.No.871,78th Cong.,1d Sess.24(1943))中で、多くの免税団体が課税を受ける企業にとり直接の競争相手となっていること。そして、このような傾向は徐々に拡大しており、事実上、免税の特典が脱税ないしは節税のための抜け穴と化していることを強調している。」、260-277頁参考。

15)2005年4月15日税制調査会に設置された、基礎問題小委員会及び非営利法人課税ワーキング・グループ合同会議(以下「非営利法人課税ワーキング・グループ」という。)は、新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制のあり方についての検討を開始し、以後6回にわたり審議を行った。

16)公益活動とは、専ら宗教、慈善、学術、公共の安全、文学、教育、国際アマチュアスポーツの促進、子供又は動物に対する虐待の防止活動をいう(IRC170(c)⑵(B))。

17)第34回基礎問題小委員会・第2回非営利法人課税ワーキング・グループ合同会議議事録に基づき、筆者がその内容を要約したものである。

18)非営利法人課税ワーキング・グループ「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」平成17年6月。https://www.cao.go.jp/zei-cho/history/

 1996-2009/etc/2005/pdf/170617.pdf(2019年12月31日最終閲覧)

(論稿提出:令和2年1月3日)





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