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≪査読付論文≫NPO経営者におけるアカウンタビリティの質的データ分析:マルチステークホルダー理論に基づく考察 / 中嶋貴子(大阪商業大学専任講師)・岡田 彩(東北大学准教授)

更新日:2022年12月14日

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大阪商業大学専任講師 中嶋貴子

東北大学准教授    岡田 彩


キーワード:

アカウンタビリティ NPO マルチステークホルダー 質的データ分析 NPOマネジメント


要 旨:

 本研究では、革新的なサービスによって社会的課題の解決を試みるNPO経営者らのアカウンタビリティ概念について質的データ分析による解明を試みた。マルチステークホルダー理論に準じて、NPOの経営者が有するアカウンタビリティに対する共通概念を導出した結果、1)成果向上に対する交渉的アカウンタビリティ、2)ミッションに基づく先見的アカウンタビリティ、3)参加促進に対する創造的アカウンタビリティの3つの概念が示された。さらに、Salamon[2012]が論じたNPOセクターの推進力を検討した結果、NPOセクターを推進する経営者の概念には、日本特有の概念が存在する可能性が示唆された。

 NPO経営者の有するアカウンタビリティに関する概念は、個々の組織を超えて、NPOセクターを牽引する推進力として影響を及ぼすことをNPO経営者と多様な利害関係者が共に認識することにより、NPOセクターの更なる発展が期待される。


構 成:

Ⅰ 研究の目的と背景

Ⅱ 先行研究

Ⅲ データの収集方法と概要

Ⅳ 分析結果

Ⅴ まとめと今後の課題


Abstract

 This paper examines accountability strategies of nonprofit managers working to solve social issues through innovative means. Applying multi-stakeholder theory, the study employs qualitative method and extracts three common strategies: negotiated accountability to enhance outcomes, anticipatory accountability based on respective missions, and creative accountability to encourage citizen participation. Additional analyses exploring Salamon’s four impulses shaping the nonprofit sector revealed a force potentially unique to the Japanese context. The paper argues that understanding accountability strategies of nonprofit managers is meaningful not only for better management of individual organizations, but also for development of the entire sector.

※ 本論文は学会誌編集委員会の査読のうえ、掲載されたものです。

 

Ⅰ 研究の目的と背景

 近年、日本のNPO(Non-Profit Organization)を取り巻く経営環境は、公益法人制度改革や寄付税制の改正など、急速な変化を迎えている(Okada, Ishida, Nakajima and Kotagiri[2017])1)。その中で、利潤を追求しないNPOが継続的に安定して事業を実施するためには、資金や人材、専門的技術などを活用した戦略的な経営を目指すことが求められている(田中[2000]、Worth[2012])。しかしながら、日本のNPOの財政規模は比較的小規模であり、職員数も少ないなど、経営資源が不足していることから(内閣府 [2018])、吉田[2017]が指摘するように、まずは記述論や基礎理論に基づく研究によって、NPO経営における規範や指針の検証と解明が望まれる。

 NPOが社会的課題の解決を起源とするミッションベースの組織であり、多様な利害関係者が関与することから、NPOの経営者らは個々の利害関係者に対する説明責任を果たしながら、戦略的に組織マネジメントを行うことが求められる(Drucker[1990, 1999])。また、NPOが社会変革を担うような革新的なサービスを継続的に提供するためには、NPOの組織的特徴や経営環境に対応しながら自律的で安定したマネジメントに取り組む必要がある(田尾・吉田[2009]、Worth [2012])。

 Kearns[1996]によれば、ここで重要となるのが、NPOの経営者らが組織を取り巻く多様な利害関係者のうち、「誰を重視しているのか」(to whom)、「何を目的としているのか」(for what)、そして、その達成のために、「どのような対応方法を取るのか」(how)という3つの意識である。これら3つの意識は、経営戦略における説明責任(アカウンタビリティ)の中心的概念を形成し、個々の組織における経営方針の指針となる。さらに、Salamon[2012]によれば、これらの経営方針は経営者やリーダーに内在する推進力(impulses)に起因するという。

 このように、NPOの経営戦略を形成する中心概念がNPOセクターを牽引する推進力の方向性を示す一因であるとすれば、NPO経営者に共通する概念を明らかにすることによって、NPOを担う人材育成や多様な法人格を有するNPO施策に対し有益な政策的示唆を得ることが期待される。そこで、本研究では、革新的なサービスによって社会的課題を解決しようとするNPOの経営者らは、彼らを取り巻く多様な利害関係者のうち、誰を重視して(to whom)、何を目的として(for what)、そして、どのような対応方法によって(how)、「アカウンタビリティ」という概念を形成し、どのような行為によってその説明責任を果たそうとしているのか、NPOの経営者に対する質問票とインタビューから共通する認知的・非認知的概念を抽出し、構造化することによって解明を試みる。具体的には、NPOの代表理事や事務局長など、経営に中心的に関与する経営者や職員を対象としてインタビュー調査を実施し、質的データ分析法によるコンテンツ分析を行い、経営者らがアカウンタビリティという文脈において有する共通概念を抽出していく。経営者が潜在的に有する意識や志向など、アンケート調査では十分に捉えることができない要因を捕捉したテキストデータを分析対象とすることによって、マルチステークホルダー理論に基づいたNPOの経営者や組織的行動を明らかにし、今後のNPO経営や組織マネジメントに資する示唆を導く。

 以下、Ⅱ章では、先行研究から本研究の位置づけと理論的枠組みを示し、Ⅲ章において、本研究で用いるデータと分析方法について説明する。そして、Ⅳ章において、分析結果に基づいてNPO経営者らが有するアカウンタビリティに対する概念を抽出し、利害関係者と対応方法に関する概念マトリックスから検証を試みる。最後に、Ⅴ章として、本研究における限界と今後の発展性を論じる。


Ⅱ 先行研究

 近年の研究において、アカウンタビリティは、狭義な捉え方から、より広義な概念へとその理解が転換してきている。例えばBovens[2007]は、アカウンタビリティ概念が、簿記・会計の適性性や正確性を示すものにとどまらず、政治学や社会学においても、効率性や有効性を示すパブリック・アカウンタビリティという広い概念を有するようになった経緯を法学的見地から論じている。さらに、山本[2013]が日本におけるアカウンタビリティ概念の変遷について論じた通り、政治や社会的な環境変化によって変容するものとしての理解が提唱されてきたのである。これらの変容は、NPOの経営者らが組織内外の多様な利害関係者を対象と捉えて組織の活動や経営方針に関する説明責任を果たそうとする行為として、マルチステークホルダー理論に基づき研究されてきた(Romzek and Dubnick[1987])。

 株式会社など営利企業の場合、組織と利害関係者の関係は、株主や出資者などの依頼人(プリンシパル)が経営の代理人(エージェント)という2者のプリンシパル・エージェント理論によって説明される(Finer[1941]、Steinberg[2010])。これを2者間における狭義のアカウンタビリティとするならば、公益性や社会性を有する事業に取り組むNPOの場合、組織を取り巻く利害関係者は、会員や寄付者、政府、営利企業など、資金提供者のほか、組織運営に関与する理事やスタッフ、ボランティア、市民など、より広域で多様性を有する(Kearns [1996])。そのため、NPOは活動目的や倫理観など、広義の説明責任を多様な利害関係者に尽くす必要が生じる(Cooper[1990]、Lawry[1995]、Fry[1995]、Bovens[2007]、馬場[2013]、山本[2013])。このように、NPOのアカウンタビリティを狭義のアカウンタビリティと区別したより広域的なマルチステークホルダー理論によって論じられる(Aggarwaletal.[2012]、Ebrahim[2003]、Hofmann and McSwain[2013])。

 さらに、マルチステークホルダー理論を発展させたKearns[1996]によれば、社会的な事業を展開するNPOについては、活動成果の受益者や関係者が社会全般に及ぶため、組織がアカウンタビリティにおいて果たすべき役割は、法令遵守や活動報告、事業に関する基本的な報告事項に加えて、組織が目指す成果や社会的責任に対する認識など、価値観や倫理感といった経営理念に至るまで、説明することが求められている。そのため、NPOが多様な利害関係者に対し、適切な情報や方法を用いて戦略的にアカウンタビリティを果たそうとしなければ、利害関係者における理解が得られないという問題が生じる2)

 例えば、韓国のNPO経営者らが有する概念を抽出することによりアカウンタビリティに対する概念のモデル化を試みたJeong and Kearns[2015]は、NPOの経営者やリーダーらが、組織的行為によって利害関係者に対するアカウンタビリティを果たそうとするとき、組織を取り巻く様々な利害関係者や経営環境に応じて、先見的かつ戦略的にその対応方法を決定するという示唆を得ている。また、NPOのマネジメントにおけるアカウンタビリティ概念と経営戦略は、経営者が組織を取り巻く多様な利害関係者に対する組織の対応方法から観察されることを明らかにしている。

 このように、マルチステークホルダー理論を応用することによって、複雑な概念が混在するNPOのアカウンタビリティを組織経営の視点から紐解くことが可能となる。Jeong and Kearns[2015]は、マルチステークホルダー理論に基づいて設計されたアンケート調査の結果を用いて、NPOの経営者らが有する共通概念を因子分析によって抽出している。これに対し、本研究では、経営者らが有するアカウンタビリティ概念をインタビューデータからより具体的に抽出することができる質的データ分析法によって概念モデルの形成を試みる。そのため、本研究では、Jeong and Kearns[2015]が用いたアカウンタビリティに対する組織の対応方法と利害関係者に関する概念の調査項目を参考しながら、インタビューによって得られるテキストデータのコンテンツ分析を行う。そこから、日本のNPO経営者が有するアカウンタビリティ概念を導き出すことによって、以上の先行研究によって蓄積された知見に貢献する。


Ⅲ データの収集方法と概要

1 調査対象者とデータ収集方法

 調査の対象者は表1のとおりである。インタビューは、合計8団体、9名を対象に実施された。インタビューで得られた音声やメモを用いて調査対象者ごとにテキストデータを作成した。本研究の目的を達成するためには、NPOセクターを取り巻く経営環境の変化を一定期間以上経験した代表理事や理事、事務局長、部局長級の職員など、経営方針の決定に中心的な役割を果たし、かつ意思決定の権限を有する経営者及びスタッフを調査対象者として選出する必要がある。また、インタビューでは、調査対象者による行為や言動が、誰に対し、どのような方法によってアカウンタビリティを達成するためにもたらされたものなのか、その起源について非認知的な概念を具体的な経験談や語りから明らかにしていく必要がある。そのため、本研究では、調査対象者個人の活動経歴のほか、社会通念に対する考え方や個人の倫理感にも接近しながらインタビューを進めるために、調査対象者とインタビュアーの間に一定の信頼関係が成り立っていることが望ましい。以上から、本研究では、10年程度の活動経験を有する団体のうち、著者らが既知であり、上記に該当するNPO経営者を中心に協力を依頼し、順に調査対象者を追加していくSnowball sampling(Morgan[2008]816-817頁)に従いサンプリングを行った。その際、組織の主な活動分野や公益性の基準が異なる複数の非営利法人が対象となるよう標本の多様性担保に留意した3)

 本研究では、インタビューで語られた内容をテキストデータ化しているが、単に個々の組織や対象者における現在の情報を取りまとめるだけでは、共通する概念を抽出することはできず、表面的で記述の薄い分析結果に陥ることが危惧される(佐藤[2008])。そのため、本研究では、インタビューにおいて、調査対象者が語ったこれまでの経験やNPOに対する認識などもテキストデータに含めることにより分析データに厚みを持たせている4)


表1 インタビュー対象者の一覧


2 分析の流れ

 NPOの経営者らは、多様な利害関係者のうち、誰を重視し、どのようにアカウンタビリティを果たそうとしているのかインタビュー調査から得たテキストデータを対象にコンテンツ分析を行う。コンテンツ分析などの定性分析は、既存の理論的枠組みに基づいて仮説検証を行う演繹的アプローチでは十分に捉えることができない、潜在的な意識や要因を探索することが可能となるため、新たな概念フレームワークを形成しようとする帰納的な分析に適している(佐藤[2008])。

 コンテンツ分析に際し、Jeong and Kearns[2015]が用いたアカウンタビリティに対する組織の対応方法と利害関係者に関する概念を手掛かりとして、テキストデータにコードを付与していく作業(コーディング)を実施した。具体的には、調査対象者のテキストデータを個々のケースとし、Weber[1990]のコンテンツ分析の手順に倣い該当する箇所にコードを付与した上で、最後に全ケースのコーディング結果から共通性を見出すことによって、概念モデルを組み立てていく。

 分析では、分析者の主観や解釈の過誤などが生じる危険性を回避し、客観性を確保するため、2名がコーディングを行った5)。両者のコーディング結果の不一致率が20%を超えた箇所については、両者がその箇所を確認し、コーディングの修正方法に合意を得るという作業を2回に渡り実施した。この結果、最終的なコーディング一致率は96.21%となった。また1度目のコーディング後、手掛かりとしたJeong and Kearns[2015]のコードに重複があること、またこれらでは把握できない内容があることが双方の分析者によって確認されたため、複数コードの統合と新規のコードの追加を行った6)

 次章では、分析の結果から、利害関係者と対応方法に関するテキスト分析の結果を示し、調査対象者全員に共通する概念を抽出していく。その後、利害関係者と対応方法の2つの概念をクロス集計したコード・マトリックスを作成し、概念モデルとして示すことにより、経営者らが重視する利害関係者とアカウンタビリティの果たし方について明らかにしていく。


Ⅳ 分析結果

1 利害関係者

 コンテンツ分析の結果、一部の項目を除いて重視している利害関係者に高い共通性が示された(表2)。これは、NPOの経営者らにおいて、多様な利害関係者を重視しながら、アカウンタビリティを果たそうとする意識が共通して有することを示している。特に、全調査対象者のインタビューから「一般市民・地域住民」、「政府機関」、「日本国内の他のNPO」の3つが共通するものとして抽出された。

 まず、アカウンタビリティという文脈において、NPOの経営者らは、「一般市民・地域住民」を直接的な支援者である「受益者・サービス受給者」よりも重視する志向がみられる。次に、「政府機関」については、全調査対象者から、法的規範に則って、アカウンタビリティを果たすという基本的倫理が示された。また、社会的課題に対して、政府が十分なサービスを提供できない部分に対し、NPOがその役割を担うため、戦略的に政策に介入しようという意識が示された(調査対象者C、D)。

 そして、「日本国内の他のNPO」については、NPO間の連携を強化し、自らの活動をより効果的に地域や社会に提供したいという意識が示された(調査対象者D、E、F、G、H)。このように、NPOの経営者は、組織のアカウンタビリティを検討するとき、他のNPOを重要な利害関係者と捉えている。

 なお、「その他」のコードが付与されたセグメントには、活動を支援する個人のほか、弁護士、税理士、僧侶など、特定領域の有識者に対する概念が示された。これらの人々は、個々の組織によって、関係性は異なるものの、NPOの経営者らは、アカウンタビリティを果たすために、特定領域の有識者や専門家らの助言を積極的に求めていると考えられる。


表2 利害関係者のコーディング結果


2 対応方法

 次に、説明責任の果たし方について、対応方法に関するコーディング結果から共通性を考察していく。コンテンツ分析の結果、全調査対象者のインタビューデータから、対応方法に関する20項目の概念コード全てに対し一定の共通性が示された(表3)。特に、「活動の成果を高める」、「協働的なパートナーシップを構築・維持する」、「正確な情報を提供する(財務に関する情報以外)」、「様々な意見に対応し、運営にフィードバックする」の4つについては、全調査対象者に共通する概念である。


表3 対応方法のコーディング結果


 続いて、9名中8名という高い共通性を得た項目をみると、「組織のミッションに基づいて行動する」、「取り組んでいる社会課題や活動内容について伝える」、「組織のビジョンを共有する」など、組織のビジョンやミッションに関する概念が抽出されている。また、「組織運営の効率化」、「専門家としての役割を果たす」、「代替的な戦略を提案、助言する」など、専門性を有する組織としてのプロフェッショナリズムが概念として形成されていることが伺える。さらに、経営者らは、これらの専門性や戦略性と同等に「積極的な参加機会を創出・促進する」ことにも高い共通性を有している。また、組織に関する情報の開示や発信においては、財務に関する情報以上に、組織のミッションや活動の内容など、財務以外の情報を外部に発信することを重視するという共通性が見られた。このように、NPOの経営者らは、情報発信や活動報告においても、戦略的にアカウンタビリティを果たそうとしている。

 次章では、以上の結果を踏まえて、利害関係者と対応方法がどのように関係して共通概念が構成されているのか、双方を整理しながら論じていく。


3 アカウンタビリティ概念の共通性

 表4は、利害関係者と対応方法に関するコンテンツ分析の結果をクロス集計することによって、抽出された利害関係者と対応方法の関係性を示した概念マトリックスである。全調査対象者のコンテンツ分析から、インタビューにおいて同じ箇所にぞれぞれの利害関係者と対応方法のコードが付与されたことを*印で示している。以下では、マトリックスからNPOの経営者らが有する利害関係者と対応方法における共通する箇所について、インタビューから詳細に検証することにより、NPOの経営者におけるアカウンタビリティ概念を明らかにする。

⑴ 交渉的アカウンタビリティ

 表4の横軸をみると、利害関係者(13項目)の概念コードに対する対応方法の共通性として「活動の成果を高める」、「協働的なパートナーシップを構築・維持する」という2つの概念が示された。これらの概念は、対応方法に関するコンテンツ分析(表3)においても、全調査対象者が有する概念として高い共通性が示されている。


表4 利害関係者と対応方法の概念マトリックス


 これらの結果から、NPOの経営者らは、「活動の成果を高める」ために、多様な利害関係者と「協働的なパートナーシップを構築・維持する」という方針に基づいて経営判断を行うことになる。例えば、「国内の他のNPO」、「活動の成果を高める」、「他のNPOとパートナーシップを構築する」という3つの概念が、以下のインタビューから抽出されている。

 「地域に似たような活動をしている団体もあるんですが、横のつながりがほとんどないので、コラボレーションをすることで、より良い活動ができるんじゃないかなぁと思っています。」(調査対象者D)

 実際、調査対象者Dによれば、活動を継続するために、民間企業や行政、他のNPOと新たな連携事業を展開するなど、他団体とのネットワーク形成に積極的に取り組んでいるという。

 また、利害関係者として会員に関する概念の周辺には、「様々な意見に対応し、運営にフィードバックする」という対応方法が隣接していることも確認された。例えば、調査対象者Eによれば、公益法人から公益財団法人に移行するにあたって、組織におけるガバナンスの在り方や資金の透明性に関する確保について、理事や職員だけでなく、会員や寄付者など組織内外の多様な利害関係者を交えた議論を経たという。

 以上から、NPO経営者は、新公共経営論(NPM)で重視される経営効率性や成果の向上と同様に、それぞれの利害関係者と交渉しながら戦略的にアカウンタビリティを果たそうとしていると解釈できる。そして、その概念に基づき、組織的な対応方法を決定しようとする志向が存在することから、これらは成果向上に対する交渉的なアカウンタビリティ概念と捉えることが妥当であろう。

⑵ 先見的アカウンタビリティ

 一方で、「組織運営の効率化」、「組織のミッションに基づいて行動する」という対応方法と、「一般市民・地域住民」、「政府機関」に関する概念コードが接近するインタビューからは、活動財源の確保と組織が追究するミッションについて、経営者自身が利害関係を考慮しながら、経営判断を行っている様子も伺える。

 「我々は、地元の人たちが主体となってやれるようなことをコーディネートしよう、住民の方ができること、我々ができること、それをしっかり役割分担したうえで、しっかり地域に残そうと言うのがうちのモットーです。なので、役所から委託をもらって、役所の言いなりになったり、役所の顔色を伺うばっかりじゃなくて。」(調査対象者C)

 表2において、NPOの経営者らが重視する利害関係者のうち一般市民や地域住民に対する概念が、政府機関や寄付者・会員、サービスの直接的な受益者などと共に高い共通性を得ているように、NPOの経営者は、組織のアカウンタビリティを果たすという文脈において、直接的な支援対象者や活動資金の提供者である寄付者や会員、民間企業や理事と同様に、一般市民や地域住民を中心的なアカウンタビリティの対象として認識していることが示された。

 また、「地域住民」という概念の共通性でみれば、以下のセグメントにおいて「取り組んでいる社会課題や活動内容について伝える」、「組織のビジョンを共有する」という対応方法がともに存在している。

 「地域の方、ボランティアでもあるんですが、我々の活動だけではなくて、地域全体の活動にしていこう、という目的があるので、我々だけで決めてしまうのではなくて地域の方の意見も頂きながら、やっているし、さらに強めていきたい。事業の目的を説明する上でも、活動を広めていくためにも重要だと思っています。」(調査対象者D)

 このように、NPOの経営者らは、利害関係者に対して積極的に組織が達成しようとするミッションやそれに対する具体的な活動内容や方法を積極的かつ先見的に共有しようとする概念が浮かび上がってきた。特に、地域住民や政府などNPOの情報が伝わりにくい利害関係者に対して、積極的かつ外向的に情報を開示し、先見的にNPOの活動意義やミッションの共有を行い、今後の効率的な経営を目指そうとしている。以上から、本研究ではこれらの概念を「先見的アカウンタビリティ概念」と称する。

⑶ 創造的アカウンタビリティ

 表4の対応方法では、「モチベーションを高め維持する」、「代替的な戦略を提案、助言する」、「様々な意見に対応し、運営にフィードバックする」などの項目で高い共通性が示された。

 調査対象者Aは、比較的新しいNPO法人やこれから法人格を得ようとするボランティア組織に対して組織運営に関する相談事業を行っているが、経験の少ないNPO経営者に対しては、NPOの基本的理念や倫理に基づいて助言を行うことによって、NPOとしての経営指針や規範を創造させていくという(調査対象者A)。このように専門家として、「代替的な戦略を提案、助言する」という対応方法は、表4のとおり、多様な利害関係者に関する概念と交差しながら存在していることがわかる。そして、「モチベーションを高め維持する」という対応方法では、市民を育成し、社会参加を促進するという概念が分析結果から浮かび上がってくる。例えば、大規模なイベントを多数開催する調査対象者Eは、以下のように発言している。

 「ボランティアは、対象となる母数が多過ぎる。その人たちをどうやって巻き込んでいくかが課題だ。(中略)ボランティアがある程度の数があり、彼らにも勉強をしてもらい、社会に参画してもらい、双方がプラスになることが必要ですね。」(調査対象者E)

 同様に、市民の社会参加に関しては、複数の調査対象者のインタビューから、「積極的な参加機会を創出・促進する」、「人的資源のマネジメントを専門的に行う」という対応方法が数多く確認されている。

 本来、アカウンタビリティの確保は、資源の委託者が受託者の責任を追及することにより、受託者を統制するために為される(山本[2013]113頁)が、本分析では、NPOの経営者らは、彼らの専門性や牽引力を用いて市民の社会参加を創出したり、促進しようとする対照的な意識が示された。この結果から、NPOの経営者らは、組織の活動を通じて、専門家としてのプロフェッショナリズムを発揮し、市民の社会参加を促進させるという新たな領域のアカウンタビリティ概念を有していると考えられる。そして、その過程では、NPO経営者らが、専門家として市民の育成や社会的課題の解決に対する創造的かつ代替的な戦略の提供を試みる意識が共通性として示されている。以上から、これらの概念を「創造的アカウンタビリティ概念」と称することができるだろう。


4 NPO経営における推進力

 ここまでに示されたNPO経営者が有するアカウンタビリティ概念と経営戦略には、Salamon[2012]がNPOセクターを牽引する推進力の特徴として論じた性質が多数含まれている。そこで、発展的考察として、NPOセクターがどのような方向に牽引されようとしているのか、得られた共通概念から考察を試みる。

 冒頭で述べたように、NPOは利益を追求しないミッションベースの組織であるがゆえに、多様な利害関係者が関与する経営環境の中で、社会変革と自律的経営を目指して活動する必要がある。社会的な課題を自発的に解決しようとするNPOの活動は、その革新的な活動やミッションに対して多様な利害関係者や社会における理解を深化させながら活動を推進していくため、NPO経営者が潜在的に有する推進力の共通性が高まれば、その方向にセクター全体が牽引されていくことになる。

 本研究では、Salamon[2012]が示す推進力のうち、社会的課題解決に対する市民参加(Civic action)、市民のボランティア性の促進(Voluntarism)、NPOの専門性(Professionalism)などに関連する要因が共通概念から示唆された。

 なお、Salamon[2012]では、NPOにおける商業性(Commercialism)として、利害関係者として、民間企業や起業家を重視し、市場経済に基づいた経営効率性を重視するという要因が挙げられている。表2及び表4では、「組織の効率化」と「民間企業」が全体として高い共通性を有するものの、経営において、科学的アプローチやエビデンスに基づく経営計画などを積極的に導入する経営志向は確認されなかった。よって、商業性については、その推進力を有する傾向があるものの、他の推進力と比較すると、日本のNPO経営者においては比較的弱いと考えられる。

 このように、NPO経営者の有するアカウンタビリティに関する概念は、個々の組織を超えて、NPOセクターを牽引する推進力として影響を及ぼすことをNPO経営者と多様な利害関係者が共に認識することにより、NPOセクターの更なる発展が期待される。


Ⅴ まとめと今後の課題

 本研究では、マルチステークホルダー理論に基づいて、NPOの経営者らが、多様な利害関係者のうち、誰を重視して(to whom)、何を目的として(for what)、どのような対応方法によって(how)利害関係者に対する説明責任を果たそうとしているのか、NPOの経営者にインタビュー調査を行った。コンテンツ分析によって組織のアカウンタビリティに対する共通概念を明らかにしたうえで、個々の概念を構造化することにより解明を試みた。

 その結果、NPOの経営者らは、活動分野や法人格に関わらず、組織内外の多様な利害関係を重視することが明らかにされた。また、利害関係者と対応方法を交差させたマトリックスから、⑴成果向上に対する交渉的アカウンタビリティ、⑵ミッションに基づく先見的アカウンタビリティ、⑶参加促進に対する創造的アカウンタビリティという3つの戦略が示され、その背景には、NPOの方向性を牽引する推進力が存在することも明らかにされた。アカウンタビリティ概念は変容を遂げており、本研究によってその変化の一端が示されたことは、今後のNPO経営や関連施策に対する有益な情報となることが期待される。

 最後に、本研究の限界と今後について述べる。まず、本研究では、NPOの経営者における共通概念に焦点をあてたため、質的データ分析法に基づき、調査対象者の選定には厳しい制約と限界が課された。そのため、得られた概念モデルは、限定的一般化にとどまっている。今後は、本研究により明らかにされた新たなアカウンタビリティ概念を布石として、NPOの持続的経営と社会的課題解決の促進に寄与する研究成果の蓄積が期待される。

 

[注] 1)本研究の分析対象となるNPOの範囲を定義しておく。経済学におけるNPO論では、NPOが市場を補完する存在と捉える(James and Rose-Ackerman[1986]、Salamon and Anheier[1997]、Weisbrod[1988]、山内 [1997])。他方で、経営学における組織論では、NPOが社会に対するイデオロギーや使命感、問題意識に根付いたミッションベースの組織であり、社会変革家という主体性に存在意義を見出している(田尾・吉田[2009])。以上の議論を踏まえて、本研究では、利益性の追究を目的としない非政府組織を民間非営利組織のうち、継続的な活動を前提とした組織を対象とするため、一定の法的義務を有する法人格を有する組織を対象とした。また、複数の分野や多様な利害関係者に対する経営者の概念を研究対象とするため、組織の設立が、所轄庁の許可制によってのみ得られる学校法人、社会福祉法人、宗教法人などは除いている。ただし、公益法人制度改革により新設された公益財団法人、公益社団法人、一般財団法人、一般社団法人は、旧公益法人制度から大幅な改正を経た制度に基づくこと、幅広い活動分野を選択できることから、NPO法人と対比可能な組織として本研究におけるNPOの範囲に含めている。

2)例えば、NPOの利害関係者である自治体職員が、協働経験を通じてNPOという組織を理解するプロセスを検証した小田切[2009]は、自治体職員であってもNPOの経営者や組織の特性を理解するまでにある程度の協働経験や期間が必要となることを明らかにしている。そして、NPOを有機的に理解するためには、NPOが組織としてどのように利害関係者を位置づけているのかについても解明する必要があると指摘している。

3)インタビューは、2016年10月27日から2017年3月3日までに個別の対面調査によって実施された。これらのインタビューによって得られたデータや発言内容の利用については、調査協力者及び発言内における名称等を匿名とすることで本研究への使用許諾を得ている。なお、対面インタビューによって調査対象者に内在する潜在的な非認知概念を得るために、インタビューに先立ち、調査対象者には、表2及び表3に示す質問項目を多項選択と段階評価(1最も低い-7最も高い)による個票の回答を全員から得ている。対面インタビューでは、紙面によって表2及び表3の質問項目を調査対象者に示した。同時に、事前に調査対象者自身が回答した同質問に対する回答を別紙で本人に提示しながら、半構造化インタビューを実施した。インタビューでは、以下4つの質問と表2表3に記載の選択項目を記したインタビューシートを提示しながら、質問番号順にインタビューを進めた。

 質問1. これらの人や組織は、貴団体の方針や経営に関する決定事項に、どのように影響を及ぼしていますか。
 質問2. このような多様な人や組織の期待や要望によって、経営や方針に関する意思決定に変化があったこと、あるいは変化があると予測されることはありますか。
 質問3. 貴団体において、貴団体と関わりを持つ人や組織に対する説明責任を高める必要はありますか。その場合、それぞれの方に対して、貴団体はどのような取り組みを行われましたか。これまでに取り組まれたことがあればそれらも含めて教えてください。

 質問4. 貴団体の説明責任に対するスタンスに、関わりを持つ人や組織の期待や要望が影響を及ぼしたことはありますか。ある場合、どのような影響がありましたか。 

4)例えば、経営者らにおける組織の経営方針や特定の利害関係者を重視するようになった経緯やその原因となった出来事のほか、特定の利害関係者から受けている影響力に対する意見や対応方針など、具体的な利害関係者や対応方法のほか、今後の意向や方針についても記録し、インタビュー調査で得られたインタビューメモと音声を用いてテキストデータ化を行った。また、インタビュー調査のテキスト化においては、直接的な活動や利害関係者への対応方法や行動のほか、過去や将来の経営方針、影響を受けた外的要因、インタビュー中に確認された対象者の表情や感情についてメモを付記した箇所も含めてデータ化を行った。

5)コンテンツ分析は、分析者がテキストデータの文脈を読み解きながら、調査対象者に潜在する非認知的意識を浮かび上がらせていくため、分析者の恣意性や偏ったコーディングによる分析結果に対する「信頼性の問題(the issue of reliability)」に対処する必要がある。Hwang[2016]では、2名の研究補助者に分析者のコーディング結果を確認させることにより、これらの問題に対処している。本研究では、Duriau etal.[2007]が広域な文献レビューによって先行研究における主要な対処法としてその有用性を示したWeber[1990]の分析手順に倣い2名以上の分析者によるコーディング結果の照合と検証を行う「信頼性チェック(reliability check)」として、2名の著者による検証を2回に渡って実施した。

6)コーディング作業では、まず、最初に4つのケースを用いて2名の著者が個別にプレコーディングを実施し、両者のコーディング結果を比較するという作業を繰り返した。これにより、全データにコードを付与する以前に、適切な概念コードを設定できるほか、単一分析者による過度の主観的解釈や発言内容のミスリーディングなど、コンテンツ分析における分析の過誤の発生を最小限にとどめた。その結果、Jeong and Kearns[2015]では、NPOの経営者らによるアカウンタビリティと説明責任の果たし方について、12項目の利害関係者の重要度と25項目の経営方針や行動指針の重要度を指標に用いているが、プレコーディングにより、概念コードについては、12項目で示された利害関係者のいずれにも該当しない概念が存在することが示されたことから、本研究では、「その他」の項目を加えた。また、対応方法については、25項目のうち、日本のNPO経営者が有する意識を捉える上では、過度に細分化されたものが確認されたことから、2名の分析者による合意に基づいて、20項目に集約した。

 

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[謝辞]

 本研究は、平成29年度及び平成30年度大阪商業大学研究奨励助成費の助成を受けた成果の一部である。ここに記して御礼申し上げます。

論稿提出:平成30年12月13日 

加筆修正:平成31年 4 月 8 日 




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