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弁護士 濱口博史
キーワード:
NPO法 一般法人法 公益認定法 準則主義 認可主義 すみわけ論 法人法 強行法規 任意法規 統合 今後の方向性
要 旨:
NPO法の制定時においてはNPO法人と旧民法法人とのすみわけが論ぜられたが、民法改正と一般法人法及び公益認定法の制定によって状況が変わった。そこでは、所轄庁による認証に基づく設立の意味が問われている。また、準則主義をとり、税法上ではあるが非営利型の類型をもつ一般法人法との関係が問題となるに至った。そして、これらを踏まえたとき、NPO法の今後の方向性が問われる。本稿では、以上について素描を試みる。
構 成:
Ⅰ はじめに
Ⅱ 認証の仕組みをとることの意味
Ⅲ 一般法人法との関係
Ⅳ 今後のNPO法の方向性
Abstract
When Act on Promotion of Specified Non-profit Activities was enacted, since the former Civil Code had validity, the segregation of these two laws was intensively discussed. But after the reformation of Civil code and the establishment of Act on General Incorporated Associations and General Incorporated Foundations and Act on Authorization of Public Interest Incorporated Associations and Public Interest Incorporated Foundation, the situation had changed. Since then the segregation of the two laws had become meaningless. Behalf of that, it had become important to discuss about two issues. The first is the meaning of the granting certification of incorporation by the competent authorities under Act on Promotion of Specified Non-profit Activities. The second is the relation between Promotion of Specified Non-profit Activities and Act on General Incorporated Associations and General Incorporated Foundations which adopted the system of standard regulation concerning formation of incorporation and allows the General Incorporated Associations and General Incorporated Foundations to become the “non-profit-type” incorporation that is under tax laws.
Ⅰ はじめに
本稿では、特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という。)の20年を法律専門家の目から検討する。平成30年9月8日に行った学会報告と同様に、視点を限っての報告としたい。
1 NPO法の制定と改正
NPO法は、平成10月3月19日に公布され、同年12月1日施行された。そしてその後、数次の改正が行われた。認定制度以外では、大きいものでは、平成13年改正(平成13年10月1日。平成10年制定時の条項に従い、認定NPO法人制度が創設された。)、平成14年度改正(12月11日成立、平成15年5月1日施行。内容は、特定非営利活動の種類の追加、暴力団を排除するための措置の強化等である。)、平成23年度改正(平成23年6月15日成立、平成24年6月1日施行。内容は、地方自治体で一元的に事務を実施すること、制度の使いやすさと信頼性向上のための見直し等である。)、平成28年度改正(平成28年6月1日成立、同7日公布。内容は、認証申請の添付書類の縦覧期間の短縮等である。)がある。
これらの改正によって、同法は、着実に、使いやすく、かつ、信頼性を高める方向への改正を積み重ねていると評価できる。
一方で、これまでに中間法人法(平成13年6月15日公布・平成14年4月1日施行)、会社法(平成17年7月26日公布・平成18年5月1日施行)、公益法人関連三法(平成18年6月2日公布・平成20年12月1日全面施行)1)などの関係する法律が改正となっている。しかし、NPO法は、これらによる大きな影響は直接には受けてはいない。
以下では、NPO法施行20周年の節目に、公益法人関連三法の制定、特に、一般法人法が制定されたなかで、NPO法はどのような位置を占めているのか(ただし、本稿では、認定部分には言及しないこととする。)、また、同法には、今後に向けてどのような課題があるのかを検討したい。
2 すみわけ論
⑴ 準則主義に近い認可主義
NPO法制定当時は、民法34条が存在した。本来であれば、民法を改正して、非営利法人の一般法をつくるのがすじであるという見解は多かったものの、民法改正には多大の時間を必要とするため、特別法として制定されることとなり2)、特別法である以上、公益法人とのすみわけがなされるような立法がなされるべきであるとされた3)。そして、この論理4)によれば、民法34条は「許可」としているのであるから、準則主義は不可であるとされた5)(もっとも、「準則主義に近い認可主義」とがとられた6)。)。
⑵ すみわけのための要件7)
また、民法の特別法であるというすみわけ論から、要件が検討された。NPO法2条1項が特定非営利活動の分野を限った(立法当初は12分野)のはこのためである8)。
なお、すみわけの要件として他に何をあげるかは、立場による9)。
3 公益法人関連三法の制定による影響
⑴ 公益法人関連三法の制定
公益法人関連三法では、旧民法法人を規律する民法33条以下を廃止して、(現)民法33条1項及び2項を置き、同条1項を受ける形で、非営利法人一般に準則主義によって法人格を与える一般法人法10)11)と一般法人に公益の認定を与える公益認定法を定め、併せて、旧民法法人から新しい公益法人又は一般法人へ移行することを定めた。
⑵ 非営利型の一般社団法人の制度の創設
そして、一般法人については、税制において、一定の要件を満たせば、公益法人等に含まれる類型が設けられた(法人税法2条6、別表第二、2条9の2、法人税法施行令3条)。
⑶ NPO法に対する影響
① 2のとおり、立法当初のNPO法は、民法34条の特別法であるという前提があった。ところが、⑴で述べたように、公益法人関連三法は、許可主義を宣明していた民法34条を廃した。そのため、民法34条の存在を根拠としたNPO法におけるすみわけ論も意味を失った。また、非営利法人は、準則主義によって設立されることが原則となった。
よって、NPO法人も、法人格を取得させるための規制としては、論理的には、準則主義で足りることとなった。
② さらに、上述⑵のように、税制上、NPO法人と同様に公益法人等に含まれるタイプの法人類型が設けられている。
③ そこで、次のことが問題となる。
ⅰ)NPO法は、現時点で、準則主義に近いとはいえ認証の仕組みをとることがどのような意味を持つか12)。これは、NPO法における法人法を超えた部分に関わる問題である。
ⅱ)準則主義をとる一般法人法との関係はどのようなものか。これは、NPO法における法人法に関わる部分の問題である(もっとも、後述するように、不特定多数の者の利益にかかわる部分も影響を与える。なお、本稿では、非営利型特有の問題は具体的には扱わない。他日を期したい。)。
ⅲ)ⅰ)ⅱ)と関連するが、NPO法の将来はどのように考えられるか、である。
Ⅱ 認証の仕組みをとることの意味13)
1 認証の仕組みの意味
⑴ 認証によって得られるもの(機能・効果)
そして、民間の不特定多数の者の利益を推進する活動は一般法人においてこれを行うことは一切禁ぜられていないことからすれば、それは、「特定非営利活動法人」という名称をもつ法人のカテゴリー16)に属するということの標識であるように思われる。つまり、法人格の取得を超えたところでNPO法人に独自なのは、かかるカテゴリーに含まれるとする名称を得、維持するために必要とされる活動と組織の要件の存在17)、これらに基づく認証及びこれに引き続く所轄庁による監督(同法41条以下。なお、29条及び30条)並びに市民の監督(法28条)が名称に対する信頼性を担保し、それによって、市民の信頼などを調達できるというところであると考えられる。
⑵ NPO法における認証の制度の意味
NPO法における認証の制度は、⑴で述べた機能・効果を認証によって保証する制度と言えるのではないか18)。
2 問題の所在
NPO法における認証の制度が、このような機能・効果を有するということを前提としたとき、問題は、これらの機能・効果を得るためには、所轄庁による認証とこれに引き続く監督が必要なのか、換言すれば、準則主義では確保できないのか、である。私的自治では困難なのか(なおⅢ1⑴の点はここでは考慮しない。)。
3 一つの考え方
私的自治をもって、これらを実現することは十分可能であるとすることも一つの考え方であろう。その場合には、準則主義で対応できることになる。
しかし、後述する社員等の監視監督のインセンティブの弱さに鑑みると、これらの機能・効果を得るにあたって、私的自治に全く委ねることは適当ではないのではないか19)とも思われる。
その先には、いくつかの考え方がありうる。一つには、私的自治が弱い分について、情報公開を強化して、市民が参加や寄付において相手先を選ぶための前提を充実させたうえ、情報公開のみ所轄庁が監督するという方法が考えられる。また、そうではなく、現行法通りとする考え方、あるいは中間的な考え方がありうる20)。
Ⅲ 一般法人法との関係
1 NPO法の観点から
Ⅱでは、法人法を超える部分について、NPO法が認証の制度を有している必要はないのではないかと問うた。Ⅲでは、仮に認証の制度を残すとした場合に、法人法の部分21)が適切な規制になっているのかを検討する。
⑴ まず、認証や監督の対象をどのようにみるかである。法人法の部分を所轄庁が監督をすることができるのが現行法であるが(NPO法41条)、一般法人法と比較すると、不特定多数の者の利益に係る活動そのものに直接関わらない法人法の遵守までその対象として考える必要は必ずしもないと思われる22)。
とはいえ、一方で、法人法の不遵守がその不特定多数の者の利益に係る活動に不適切な影響を及ぼすことも考えられるので、法人法の部分についても監督の対象となるということはありうることである23)。
そこで、法人法の部分が認証及び監督の対象になることを可としたとしても、一般的な監督の条項で行われるのではなく、明文で法人法の部分の法規範の遵守の有無を監督するという条項を存在させ、その条項はできる限り少なくし、そのもとにおいてのみ監督を可とすべきではないだろうか。
⑵ では、現在のNPO法において、現在の法人法の規律で十分か24)。一般法人法に比べて簡素である点が問題となる(なお、⑴で述べた通り、法人法の部分への所轄庁の監督は最小限にするものとすることを前提として以下検討を加える。)
NPO法は、旧民法の条文を取り込んだ。しかし、旧民法のそれは主務官庁による監督がある前提での規定であった。そして、実際、旧民法法人では、厳しい監督がなされていた。そこで、この論理を延長すれば、NPO法人においても、旧民法法人の条文を取り込んだということは、同様の監督がなされるべきということにもなる。ところが、NPO法では、所轄庁による監督は最小限のものであるべきとされている。そこで、これをどうみるかであるが、定款自治と市民による監督を尊重しているとみるべきではないかと考えられる。
では、定款自治をどのように積極化すべきか。この点、現行法において、非営利法人における社員のインセンティブの弱さ等により定款自治が機能しない部分が仮にあるとすれば25)、この部分については、強行規定(それとは異なる定款の定め等が一切無効となる規定。)及び任意規定(定款の定めがない場合のデフォルトの規定。定款で別段の定めを置くことができるが、定款に別段の定めがない場合は、その規定の適用がある。)を存在せしめ、これらの規定(後述するように、一般法人法を参考にすべきであると思われる。)によって、定款自治を活発化させる方策をとるべきと考えられる。紛争が生じた場合の解決は、所轄庁の監督によるのではなく、裁判所による解決を予定することになる。なお市民による監督については別途検討する必要があろう。
2 一般法人法の観点から
⑴ 一方参考にすべき一般法人法には、次の問題がある。
⑵ 一般法人法には、会社法があまり変形されずに持ち込まれたため、機関についての強行規定が多数ある。しかし、複雑なガバナンスを要することがある非営利法人の実態やあるべき姿にそぐわないのではないかと思われる場面がある。硬直的又は厳格な点があるのである26)。たとえば、機関の権限分配について、理事及び監事の選任や決算関係の承認・報告は、社員総会のみに認められている(一般法人法63条、同法126条2項3項。)のは、硬直的であろう(ちなみに、NPO法ではそのようではない。同法14条の5参照。)。隠された利益分配が残るとするならば、会社法の規制も踏まえなければならないとされるが、収益をあげない法人まで会社法に近づけるのは、過度な負担となる可能性があるのではないか27)。
かくして、一般法人法における実態やあるべき姿にそぐわない規制については、廃止するか、少なくとも任意規定化することが必要なのではないかと考えられる。また、合同会社(会社法575条以下。)を参考にして小規模な団体について機関が分離していないタイプを用意してもよいのではないかと思われる28)。
Ⅳ 今後のNPO法の方向性
1 論理的にありえる議論
⑴ 認証に関わる部分について
①1 NPO法人(全体)を準則主義化する。
②2 NPO法人を規律する法律を、法人法をになう部分と「不特定かつ多数の者の利益」を規律する部分に分け、前者を準則主義によるものとし、後者はそのままにする。
③3 現状を変化させない。
⑵ 一般法人法との関係について
上記の⑴を踏まえると、1~3のそれぞれを取るなかで、次のとおりとなると思われる(なおここでは、前述Ⅲ1⑴の問題はとりあげないものとする。)。
①1-1 1をとる場合に、さらに、一般法人と統合することが考えられる。
②1-2 1をとるが、一般法人とは、統合しない方向をとるということも考えられる。
③2-1 2をとる場合、さらに、法人法の部分については、一般法人法と統合することが考えられる31)。そのうえで、認証は別の仕組みとするという建てつけが考えられる。法人のほうからみれば、法人格をとったものに対して、認証をするという建てつけとなる。
なおこの場合、非営利型を一般法人法において位置づけることも検討する必要がある(この場合、公示についても検討する必要がある。)。
④2-2 2をとる場合でも、一般法人法とは統合しないということも考えられる。
⑤3-0 3をとり、個別に一般法人法を参考にして、また、一般法人法とのバランスを踏まえつつ、現実の運用をみながら、必要があれば、NPO法の改正を行っていくということも考えられる。
2 どの方向性が妥当か
全体の準則主義化は困難として(前述Ⅱ3)認証制度を残す(⑴の2又は3)とした場合について以下は検討する。
⑴ 認証制度自体について
前述Ⅱ3及びⅢ1⑴の通りである。
⑵ 法人法の部分について
理論的には、上記2-1がありうる方向性であると思われる。
しかし、一般法人との統合は当面は困難であると思われる32)。そこで、当面は、3-0の方策をとり、一方で、一般法人法においても適切に柔軟化して、適切な時点で適切な方法で両者を統合するということ(2-1)が考えられる。
3 NPO法の今後の課題
2を踏まえると、当面認証制度を残し、NPO法において一般法人法の規制を批判的に取り入れることが現実的である33)。その際の注意点は次のとおりであろう。
⑴ 一般法人法を参考にしつつ、強行規定を適切に取り入れるべきである。また、場面によっては、任意規定を適切に設定すべきである。
社員総会の招集手続(一般法人法37条以下)についても程度はともかくとして取り入れたほうがよいと思われる。
理事周りでの検討課題は、大きくは次のとおりである34)。理事会(一般法人法60条2項、90条以下)、代理権の内部的制限の第三者対抗(同法77条5項)、代理行為の委任(NPO法17条2項)、表見理事(一般法人法82条)、忠実義務(同法83条)35)並びに利益相反及び競業避止義務(同法84条、92条)、報告義務(同法85条。なお、同法98条)、行為の差止め(同法86)、任務懈怠の場合の法人又は第三者に対する責任(同法111条、117条)36)、代表訴訟(同法278条以下)などがある。また、監事についてもその権限の充実と独立性の確保は検討の余地がある(同法99条以下)。
一般法人法になく会社法にある法技術を持ち込むこともありうる。たとえば、監査役会(会社法326条2項、390条以下)37)などである。
情報公開の制度についても留意をするべきである。
[注] 1)なお、社会福祉法改正(平成28年3月31日公布・平成29年4月1日全面施行)。
2)堀田・雨宮編『NPO法コンメンタール』(1998年、日本評論社)8頁参照。
3)上掲堀田・雨宮編11頁参照。ただし、特別法であるからすみわけが必要という論理は必然ではないと考えられる(シーズ=市民活動を支える制度をつくる会「市民活動推進法・試案(法人制度)&討議用資料(1996年)42頁参照。
4)「すみわけ論」と言われる(橘幸信「知っておきたいNPO法〔初版〕」〔1999年〕28頁参照。ただし、漢字の使い方にはいろいろあり、同書では「棲み分け」との文言を用いる。)。
5)この点についても批判があった(上掲シーズ=市民活動を支える制度をつくる会46頁参照)。
6)上掲堀田・雨宮編17頁参照。
7)このように、すみわけ論には、二つの意義がある。ⅰ)認証であるとされたこと、ⅱ)すみわけのための要件が必要とされたことである。本稿では、ⅱ)は詳しくは論じないが、一般法人法が目的や活動の種類を限定しないこととの対比で、これらのすみわけのための要件とされたものがNPO法がどのような位置づけになるべきか(すみわけのためだけの要件であったため、不要となるのか、それとも、別の意味を持っていた又は今後もたされるために、要件としては有用とされるのか。)は別途論じられるべき問題である。注9も参照。
8)上掲堀田・雨宮編79頁参照
9)たとえば、役員のうちの報酬を受ける者の数の制限(NPO法2条2項1号ロ)は、すみわけ要件であるとするもの(上掲橘10頁、48頁)とこれに反対すると思われるもの(上掲堀田・雨宮編90頁)がある。
10)正確には、それぞれ、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」である。
11)会社法に倣ったものであり、これ自体問題をはらむが本稿では取り上げない。
12)むろん、論理的にという意味である。また、もとより、公益法人制度関連三法以前においても、この独自の意味が問われていなかったわけではない。
13)認定特定非営利活動法人又は公益法人制度における認定を得るための前提として選択するという側面の検討(これには、双方の認定の部分を比較検討する必要がある。)も必要であるが、本稿では触れない。
14)とはいえ、この法人格を超えた部分の議論は、概念的には、法人格の部分が準則主義であってもなくても同じ問題ではある。
15)両者の違いだけをいうのであれば、要件論も含まれるが、ここでは、認証によって得られる効果を問題とする。
16)本法の「市民の行う」「自由な」「社会貢献活動」「ボランティア活動」「特定非営利活動の健全な発展を促進」(1条)という文言には特定非営利活動が、寄付やボランティアに代表される自由で自発的な活動であること、特定非営利活動の運動性、アドボカシー機能若しくは市民性涵養の機能を有すること、市民的な参加と協力を推進する母体となること、特定非営利活動同士(組織同士も含まれるだろう)の連帯性が重要であること等を読み込むことが可能である。ここにもカテゴライズされた法人の独自の意味がありうる。
17)「特定かつ不特定の者の利益」「(別表により指定された)特定非営利活動」(2条)、「公益」(1条)に関連するもの、その他である。これらにどのような要件が含まれるのかは、次の問題である。これは、非営利型の一般法人の要件(すでに、ここに利益の不分配はふくまれる。2条2項1号参照。)、すみわけ要件との関係を議論しなければならない。
18)もっとも、この機能・効果を得るための所轄庁による監督が、法人法の部分にまで影響を与えていることも否定できない(むしろ、後述のⅢ1⑴からすれば、これが現行法上も前提となっているといえる。)。
19)別の考え方では、要件を現状よりも軽くして私的自治によっても守りやすい形にすることが考えられるが、そうすると、名称への信頼が一ランク落ちることにもなる。また、一般法人と近づくことになって、そこの関係も問題となる。
20)その他の試みとして、大村敦志『学術としての民法Ⅱ新しい民法学へ』(東京大学出版会、2009年)、岡本仁宏「法制度」(坂本治也編『市民社会論』〔法律文化社、2017年〕所収)184頁。
21)厳密にはどの部分であるかを特定することは困難である。さしあたり、機関の部分を念頭に置くことにしたい(以下も同じ。)。
22)設立を準則主義として官の関与なしとしても、市民による監督の観点を残すならば、残る部分がある以上、同じことになる。
23)一般法人法は、公の機関による監督がないため、ガバナンスは、少なくとも株式会社と同等でなければならないとの考え方があるとの見解がある(尾崎安央「学校法人のガバナンスに関する一考察」江頭憲治郎先生古希『企業法の進路』〔有斐閣、2017年〕351頁、北村雅史「一般社団法人の機関制度の検討」NBL1104号〔2017年〕35頁参照)。これを裏返すと、公の機関による監督があれば、ガバナンスが株式会社以下でよいように読める。そうとすれば、問題があるのではないか。
24)NPO法(ただし、認定に関わる部分は除く)と一般法人法との違いについて合理的に説明がつくかという問題のたて方がある。答え方の道すじとしては、ⅰ)NPO法人と一般法人の実質に差がないことを前提とすれば、両者の違いは合理的ではないということになり、ⅰ)-1NPO法の規定が不適当である、ⅰ)-2一般法人法のそれが不適当であるという考え方がありうる。また、ⅱ)NPO法人と一般法人の実質に差があるということも考えられる。本文のⅢを踏まえて、検討することになろう。
25)上掲堀田・雨宮編36頁(濱口博史発言)
26)佐久間毅「非営利法人法のいま」法律時報80巻11号(2008年)15頁は、「中間法人法と異なり、団体の性格を考慮した法人の類型化がされなかったため、ガバナンスに関する規律はやや重たいものとなっている」とし、理事会への規制の強化(95条)をあげる。
27)神作裕之「一般社団法人と会社」ジュリスト1328号(2007年)18頁参照、後藤元伸「非営利法人制度」(ジュリスト増刊『民法の争点』〔2007年〕所収)60頁、佐久間毅「非営利法人に関する法の現状と課題」(日本私法学会第75回大会ワークショップ資料)(2011年)8頁。なお、注26も参照。
28)これはNPO法にもないが、NPO法、一般法人法のいずれにおいても検討の余地が十分にある。民間法制・税制調査会「公益法人制度改正要望に関する報告書」(2012年)18頁、上掲北村35頁。
29)神作裕之「非営利団体のガバナンス」NBL
467号(2003年)24頁など。ただし、岡本上掲184頁は、営利法人と非営利法人は、相対化されているとする。また、能見善久教授は、比較的小さい一般社団法人では、社員の非経済的インセンティブは強いとする(「非営利法人に関する法の現状と課題」〔日本私法学会第81回大会シンポジウム〔2017年〕における発言〔私法80号〔2018年〕12頁〕)。
30)神作上掲NBL767号31頁は、非営利団体の理事の忠実義務についての米国の議論を紹介している。この点について、松元暢子『非営利法人の役員の信認義務 ― 営利法人の役員の信認義務との比較考察』(商事法務、2014年)、能見教授の上掲シンポジウムでの発言(私法80号12頁)参照。
31)NPO法は議員立法であり、制定及び改正については、市民による立法活動による部分が大きい法律である。そして、公益法人関連三法の制定の際には、政府の側では公益法人との統合の動きもあったが、市民による活動によってこれが断念された経緯もある。そのほか、公益法人及び一般法人とNPO法人にはさまざまな違いがある。ここでは、これらの現実の統合の可能性については捨象して、純粋に理論的にみた場合の立法技術について検討するものである。また、いうまでもなく、一般法人法の現在の規制とNPO法の規制の双方を適切に変更しながら統合するという前提である。以下同じである。
32)なお、一般法人法の条項をNPO法において類推解釈をして用いることにも留意と議論が必要である。
33)注31で述べた理由によることもあるが、一般法人法を適切に改正するということ(特に、現在のNPO法人の柔軟な運営を取り込むことができるような改正を加えるということ)もなかなか困難であると考えられるからである。
34)佐久間上掲「非営利法人に関する法の現状と課題」、同・私法74号(2012年)151頁以下参照
35)この点については、むしろ強くするという方向性も考えられる。注30参照。
36)佐久間毅「法人通則―非営利法人法制の変化を受けて」NBL1104号(2017年)44頁、山下徹哉「非営利法人の理事の対第三者責任の意義と機能に関する一考察」NBL1104号(2017年)61頁以下参照
37)北村上掲34頁参照
[参考文献]
大村敦志『学術としての民法Ⅱ 新しい日本の民法学へ』(東京大学出版会、2009年)
尾崎安央「学校法人のガバナンスに関する一考察」『江頭憲治郎先生古稀記念 企業法の進路』(有斐閣、2017年)
神作裕之「非営利団体のガバナンス」NBL767号(2003年)24頁
神作裕之「一般社団法人と会社 営利性と非営利性」ジュリスト1328号(2007年、有斐閣)
北村雅史「一般社団法人の機関制度の検討」NBL1104号(2017年)
後藤元伸「非営利法人制度」(ジュリスト増刊『民法の争点』[2007年]所収、有斐閣)
佐久間毅「非営利法人法のいま」法律時報80巻11号(2008年、日本評論社)
佐久間毅「非営利法人に関する法の現状と課題」(日本私法学会第75回大会ワークショップ資料)(2011年)
佐久間毅「法人通則 ― 非営利法人法制の変化を受けて」NBL1104号(2017年)
シーズ=市民活動を支える制度をつくる会「市民活動推進法・試案(法人制度)&討議用資料(1996年)
橘幸信『知っておきたいNPO法(初版)』(1999年、大蔵省印刷局)
能見善久「非営利法人に関する法の現状と課題」(日本私法学会第81回大会シンポジウム・2017年、私法80号(2018年)
堀田力・雨宮孝子編『NPO法コンメンタール』(1998年、日本評論社)
松元暢子『非営利法人の役員の信認義務 ― 営利法人の役員の信認義務との比較考察』(商事法務、2014年)
民間法制・税制調査会「公益法人制度改正要望に関する報告書」(2012年)
山下徹哉「非営利法人の理事の対第三者責任の意義と機能に関する一考察」NBL1104号(2017年)
(論稿提出:平成30年12月19日)
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