≪査読付論文≫「地域レベルの市民活動」の顕出と振興:「特定非営利活動」(特定非営利活動促進法 別表第20号)の設定および運用を事例として
- 非営利法人研究学会事務局
- 3月5日
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大阪商業大学教授 初谷 勇
関東学院大学地域創生実践研究所客員研究員 藤澤浩子
キーワード:
地域レベルの市民活動 特定非営利活動 特定非営利活動促進法別表第20号
条例設定 認証事務 地方自治体の自律性
要 旨:
1998年、民法の特別法として制定された特定非営利活動促進法で、公益法人との「棲み分け」のため、特定非営利活動は12項目が限定列挙され、その後、2002年に 5 項目、2011年に 3 項目が追加され、現在、第 1 ~20号の20項目となっている。2006年の公益法人制度改革により、一般法人法と特定非営利活動促進法が並立関係となり、特定非営利活動は例示列挙化したと考えられる。
2011年に追加された第20号は、「前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動」である。第20号は、都道府県等が条例制定により、地域課題の解決に資する独自の特定非営利活動を提示し、市民の選択に委ねることができる。
第20号を活動に選択して認証された特定非営利活動法人数はまだ少数ながら、全国的に漸増している。都道府県等が、区域内の地域課題を明示し、それに取り組む「地域レベルの市民活動団体」を顕出させ振興する視点を持って、第20号をNPO政策のツールとしてさらに活用することが期待される
構 成:
Ⅰ 問題関心
Ⅱ 「市民活動」概念の形成および普及過 程と「特定非営利活動」の定位
Ⅲ 「特定非営利活動」の拡充
Ⅳ 「特定非営利活動」の条例設定(NPO 法別表第20号)の意義と状況
Ⅴ 考察
Abstract
In 1998, the Act on Promotion of Specified Non-Profit Activities, enacted as a special law under the Civil Code, limited the enumeration of specified non-profit activities to 12 items in order to segregate them from public interest corporations. Five specified non-profit activities were then added in 2002 and three activities were added in 2011. There are currently 20 activities, from No. 1 to 20.
With the 2006 reform of the public interest corporation system, the Act on General Incorporated Associations and General Incorporated Foundations and the Act on Promotion of Specified Non-Profit Activities became parallel, and specified non-profit activities are enumerated as examples.
Item 20, which was added in 2011, defines activities specified by Ordinance of the prefecture or designated city as equivalent to the activities set forth in the preceding items. No. 20 allows prefectures and designated cities to present their own specified non-profit activities that help address local issues through the enactment of ordinances, and to leave it to the citizens to choose their own activities.
Although the number of corporations engaging in specified non-profit activities that have been certified by selecting No. 20 as their activities remains small, the number is gradually increasing nationwide. It is expected that prefectures and designated cities, etc., will further utilize No. 20 as a tool for NPO policy with the goal of clearly indicating local issues within the area, and revealing and promoting local-level civic activity organizations that address those issues.
※ 本論文は学会誌編集委員会の査読のうえ、掲載されたものです。
Ⅰ 問題関心
1998年特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という)制定当初12項目が限定列挙されていた特定非営利活動は、2002年法改正で 5 項目(現・ 第14~18号。以下各号の「第」を省略)、2011年改正で 3 項目( 4 、 5 号及び20号)が追加され、現在 1 ~20号の20項目が列挙されている。この間認証された特定非営利活動法人(以下「NPO法人」という)が「主たる目的」として選択し定款に記載した項目の推移を見ると、項目(号)によって増減の傾向に大きな相違がある。
20項目のうち末尾の20号は、「前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動」であるが、同号に基づくNPO法人数は少数ながら漸増しており、増加傾向にある活動分野の一つとして注目される。
NPO法が一般法としての民法の特別法として制定された当初、公益法人と「棲み分け」のために採られた「特定非営利活動」の限定列挙1) は、2006年民法改正及び公益法人制度改革関連三法制定によって一般法人法とNPO法がともに非営利法人の個別根拠法として並立する関係となったことから、もはや限定の必要がなくなり、例示列挙化していると考えられる。
公益法人制度改革後の2011年法改正により追加された20号は、そうした例示の一つとして、 都道府県・指定都市にとって、自律的に「準ずる活動」を定めることを通じて独自の特定非営利活動を提示して利用者の選択に委ね、NPO政策(非営利法人政策)2)を創出し展開するツールとなりうる存在である。
筆者らは、認証NPO法人総数が2014年以降漸減傾向にある中で、NPO法人の「新たな展 開を促す、あるいは推進する方法、手段(政策、事業等)」を検討してきたが、その一つとして「特定非営利活動」をその発足の背景に立ち返り、市民活動の観点から再定位して活用を促進・ 推進することが有効ではないかと考えている3)。
NPO法人は、設立認証申請に当たり「主たる目的」とする特定非営利活動を法別表から選択して定款に記載する必要がある。いかなる活動を特定非営利活動として法定するかは、活動分野選択に影響を与える法政策でもある。20号の追加趣旨に立ち返り、その活用を検討することは、NPO法人の新展開を考える鍵ともなろう。
そこで本論では、都道府県と指定都市による20号に基づく「条例設定」および同号による認証の運用状況を調査検討のうえ、「条例設定」の意義と課題について考察し、課題への対応方策について提言を試みることとしたい。
なお、NPO法人制度には、パブリック・サポート・テストの各基準のうち「条例個別指定」 制度がある4)。本論では、これと区別するため、20号にいう「前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める」ことを「条例設定」と称するものとする。
Ⅱ 「市民活動」概念の形成および普及過程と「特定非営利活動」の定位
1 「市民活動」概念の形成及び普及過程
わが国において「市民活動」概念はどのように形成され普及してきたか。
「市民活動」に言及、論及する先行研究を学際的、時系列的に追跡し整理を試みた藤澤 [2011]は、「先行的研究の成果から、60年代後半から70年代前半の住民運動の最盛期、政治・ 行政への参加や気運の高まりとともに革新自治体が数を増していく中で、地域主義や地方分権が唱えられ、80年代初頭には、地域/地方における自治の担い手として、市民活動団体が注目されるようになった」とする[藤澤2011:28]。
そして、「市民活動」概念が、学術的に確定した定義が共有されている状況とは言い難いことから、「地域における自然保護分野の市民活動」の「長期継続要因」を研究するにあたり、山岡義典の示した概念上の位置づけ等を整理し、「わが国における地域レベルの市民活動とその担い手組織、市民活動団体の現状を概観」するというアプローチを採っている[同上:31]。
その上で、「地域レベル」の「市民活動」とそれを行う組織をどのようにとらえるか、という理念的な問いと、その活動が、どのような組織によって、どのように展開されてきたのか、という具体的な問いに関する探究を行っている[同上:13]。そこでは、「市民活 動」を「民間で持続的に行われる非営利目的の組織的活動」ととらえ、「市民活動を行う団体」 を「市民活動団体」といい、「法人格の有無および法人種別を問わない民間の非営利組織」を指すとしている。また、人間の日常的な生活圏域を「地域」ととらえる観点から、「地域レベル」 を、「一つの市区町村内から複数の県にまたがる範囲」ととらえている[同上:13-14]。
以下、本論でも、「地域レベルの市民活動」の概念を同様にとらえて援用する
2 「特定非営利活動」と「市民活動」の関係
NPO法は、「第 1 章 総則」で目的規定と定義規定を置いている。まず、第 1 条(目的)において「ボランティア活動をはじめとする市民 が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする」とし、「特定非営利活動」は、「市民が行う自由な社会貢献活動」と同視され、「ボランティア活動」を包含するものと定めている。ここにいう「市民が行う自由な社会貢献活動」は、前掲の「市民活動」 概念に近似し、ほぼ「市民活動」と同視することができる。
次いで、第 2 条(定義)において「特定非営利活動」は「別表に掲げる活動に該当する活動」であることが求められ、かつ「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」とされている。つまり、①別表に列挙された「活動」リストへの該当性と②「公益目的」の充足という二重の限定、画定がなされている。
以上より、「特定非営利活動」は、従来形成され普及してきた「市民活動」概念を継承、体現しつつも、①と②の限定により市民活動から一定範囲の活動を抽出したものと理解される。
3 民間非営利セクターにおける「地域レベル の市民活動団体」の定位
図表 1 は、NPO法制定当初、「市民活動」の観点から、特定非営利活動と、旧公益法人制度の公益法人(社団法人・財団法人)の事業活動との関係を図解している[藤澤2010:33、図 1 - 1 ]。同図は、「山岡(2005:59)の『民間非営利セクターを構成する三層の組織類型の概念図』をもとに、市民活動団体および地域レベルで活動する市民活動団体の概念を付加したものである。同図は、地域レベルの市民活動団体が、主に市町村内もしくは都道府県域程度の広がりで活動する比較的小規模の団体で、組織形態は通常、任意団体あるいはNPO法人であることが多いが、その他の非営利・公益法人や財団法人・社団法人の場合もある、ということを示している」[藤澤2010:32-33]。
NPO法制定以降、都道府県・指定都市では、任意団体、NPO法人、公益法人を対象として多様なNPO政策を展開してきた。「地域レベルの市民活動」は、これら大規模自治体にとっても、そのNPO政策やPPP(Public Private Partnership)の対象として常に関心が寄せられてきた。 図表 2 は、現状における地域レベルの市民活動団体の概念図(2024年現在)を示している。
図表 1 地域レベルの市民活動団体の概念図(NPO法制定 当初)

出所:藤澤[2011:33]
図表 2 地域レベルの市民活動団体の概念図(2024年 現在)

出所:図表 1 を改訂し筆者作成
Ⅲ 「特定非営利活動」の拡充
次に、特定非営利活動が20項目となった2012年以降の活動分野(号数)別(以下「分野別」という)法人数の増減を見る。 図表 3 は内閣府NPOホームページで公表されている分野別法人数推移表の公表開始時点 (2012年 6 月末)及び最新時点(2024年 3 月末) の両時点の法人総数(A・C)に占める分野別法人数の割合(B・D)(%)、及び両時点間の分野別法人件数の増減(C-A)と割合の増減(D-B)(%pt)を示す。全国の認証法人数は、 12年間で4,195件 増加しているが、 2018年 3 月末の51,866件をピークに、その後現在まで微減傾向で推移している。分野別にみると、各分野とも件数の減少は見られない。しかし、法人総数に占める割合でみると、7 号、11号、 18号、14号が各々減少している(号の 順は減少割合の大きい順)。20号が法人 数に占める割合は法人数の 1 %に満たない。
次に、図表4 は、分野別のNPO法人数の推移(2012-2024)を示す。
さらに、 図表5 は、所轄庁別のNPO法人数の推移を⑴から⑸の傾向別に分類したものである。2012年から 2024年の間に、⑴⑵⑶で認証法人数が増加し、⑷⑸で減少している。⑴の13都道府県 3 指定都市では、概ね右肩上がりに増加している。
⑴の右肩上がりの増加傾向のカテゴリーに、後述する20号を条例設定している三重、鳥取の 2 県が含まれている点、20号認証法人数上位12県中10県が⑴から⑶に含まれている点は興味深い。
図表 3 分野別NPO法人数 推移(2012-24)
分野別法人数推移表の開始時点(2012/ 6 /30)と最新時点(2024/ 3 /31)の法人総数及び分野別件 数と割合一覧(全国)

出所:筆者作成
図表 4 分野別NPO法人数推移の傾向(2012-24)

出所:筆者作成
図表 5 所轄庁別NPO法人数推移(2012-24)の傾向

注)〇番号は第20号認証法人数順位
出所:筆者作成
Ⅳ 「特定非営利活動」の条例設定 (NPO法別表第20号)の意義と状況
1 20号に基づく条例設定の意義
前掲のように、民法改正及び公益法人制度改革関連三法制定により、NPO法と一般社団・財団法人法は、それぞれNPO法人と一般社団・ 財団法人の個別根拠法として並立する関係となった。その結果、2011年改正で追加された 4 、 5号及び20号を含め、現在の特定非営利活動20項目は、認証時に公益法人の公益目的事業との棲み分けを特に考慮する必要がない。
20号は、19号までに掲げる活動に「準ずる活動」として都道府県又は指定都市の条例で定める活動とされている。ここにいう「準ずる」とは、 1 ~19号がおのおのどのような活動を意味するかという立法趣旨の普及や各号の特定非営利活動の適用、運用の結果、一般に一定共有されている意味内容を基準として、それにならい、それに見合った「上乗せ」(例えば既存の分野を複数たばねるようなテーマを顕出)や「横出し」(例えば既存の分野には無いテーマを顕出)の取扱いをすることと考えられる(図表 6 参照)。
例えば、 1 号「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」は、法制定当初の条文解説では「この号は、衆議院での修正で、医療活動が含まれることを明確にするため、『医療』の文言が加えられました。人々の健康の保持、生活衛生や障害者等の保健等の向上などに資する活動を示すものです」とされていた[橘、正木1998: 56]。20号を適用することにより、都道府県及び指定都市は、地域特性も考慮に入れつつ 1 号の意味内容を基準としてそれにならい、それに見合った取扱いをするものとして、既存の「保 健、医療又は福祉」の概念の分化や範疇の伸縮に対応した「準ずる活動」を上乗せ・横出しにより自由に設定できる。
本論のⅡの 2 で述べたように、「特定非営利活動」は、従来形成され普及してきた「市民活動」概念を継承、体現していると考えられるが、①別表に列挙された活動への該当性と、②「公益目的」の充足という画定によって「市民活動」の中から一定範囲を抽出した活動といえる。しかし、20号は、従来どおり②「公益目的」の充足性を求めつつ、①列挙された活動への該当性の点で、所轄庁に活動設定の自律性を「準ずる活動」という条件の下に認めたものといえる。
特定非営利活動は、当初、限定列挙であるとともに、列挙されている活動しか選択できないという制限列挙でもあった。本来、市民活動は新たな社会課題が浮上すれば、その解決のために活動も新たなものが生まれるという性格のものであるから、活動のリストは例示列挙で概括列挙であるほうが、社会環境や情勢の変化に適応しやすいはずである(例えば「その他」条項を設けるなど)。しかし、NPO法は、公益法人との棲み分けの要請から別表を限定列挙かつ制限列挙の活動リストとしてスタートした。
2011年改正で、20号が追加されたのは、1 ~ 19号を例示列挙あるいは概括列挙ととらえうる余地を都道府県と指定都市に認めたものともいえる。都道府県や指定都市にとっては、NPO法人の認証権限に加え、認証対象となりうるNPO法人が「主たる目的」とすべき「特定非営利活動」を自律的に独自設定するという自治体立法政策上の裁量を付与されたわけである。 20号が追加されて10年を経たが、この間、都道府県や指定都市は、この新たな権限をどのように理解し、活用してきたといえるだろうか。
図表 6 特定非営利活動第20号の「準ずる活動」(イメージ図)

出所:筆者作成
2 20号に基づく条例設定の状況
20号に基づく条例設定の運用状況について、ま ず、全国の所轄庁別の20号法人数を見る(図表 7 )。
20号法人総数は都道府県:375、指定都市: 11、合計:386である(2024年 7 月29日現在)。 図表 7 では、順位Aとして20号法人数順位を示した。上位10位(法人数10件以上)は、①三重県:133、②福島県:35、③鳥取県:24、④ 岩手県:21、⑤滋賀県:19、⑥宮城県:15、⑥ 和歌山県:15、⑦大阪府:13、⑧大分県:12、 ⑨栃木県11、⑩島根県:10となっている。
このうち、条例設定を行っている団体(以下 「条例設定団体」という)は①三重県と③鳥取県の 2 県のみで、合わせて157法人ある。
条例設定を行っていない団体(以下「条例未 設定団体」という)のうち20号法人数が多い②福島県、④岩手県、⑤滋賀県、⑥宮城県、⑥和歌山県について、各県の特定非営利活動促進法施行条例と「特定非営利活動法人 設立・管理運営の手引き」等を見ると、「第20号の活動について、条例では定めていません」等の注記が福島・岩手・宮城の 3 県で確認できた5)。
以上より、現在のところ、都道府県や指定都市が、20号に基づき特定非営利活動を独自に条例設定する権限を積極的に活用しているとは言い難い。一方、条例未設定団体である所轄庁(三重・鳥取両県以外)において、認証された20号法人が合計229(386-157)ある。この認証状況はどのような事情によるものだろうか。
そこで、上記の20号法人数の多い都道府県等 の認証実務担当者に、[ 1 ]条例設定の検討の有無とその理由、[ 2 ]20号に係る認証事務の 運用状況等を2024年 9 月架電聴取した(回答は 口頭・文書含む)。
回答の得られた11団体6)への聴取結果を見ると、まず、[ 1 ]条例未設定団体で、2011年改正による20号の追加以降、条例設定に向けた検討を行った事実(記録)は確認できなかった。 1 県から「平成23年のNPO法改正により、これまで以上に広範な分野が活動分野として認められたことから、条例による新たな活動分野の設定については、これまでの運用状況を勘案し、追加の必要が無かったものと考えます」(宮城県)と顧みる回答があった。
次に、[ 2 ]認証事務における20号の運用状況を見ると、条例設定団体(三重・鳥取両県)では、20号に基づく独自の特定非営利活動の存在を選択肢として検討するよう注意喚起している。一方、条例未設定団体の場合、申請者が20号を選択しようとしているときに、⒜許容する例( 2 団体)と、⒝20号に基づく「準ずる活動」の条例設定が無いことを示し、(b-1)20号を選 択しないよう(又は 1 ~19号から選択するよう)、あるいは(b-2)定款に記載した20号を削除し修正するよう、注意喚起する例( 4団体)、⒞黙過、 不干渉( 2 団体)、⒟不明( 1 団体)に分かれる。 なお、条例未設定団体の中には、NPO法人の設立・運営に係る手引き等で上記の⒝未設定や(b-1)の不選択を示唆する例がある(後掲・注 5 ) 参照)。
図表 7 特定非営利活動第20号による所轄庁別認証法人数(2024年 7 月29日 現在)




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