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- 最終報告(公益・一般法人研究会) | 公益社団法人 非営利法人研究学会
非営利法人研究学会 公益・一般法人研究会 公益・一般法人制度の研究【2017年度最終報告】 -日・英・米の制度の比較研究-
- 会長挨拶 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
ページ TOP ページ TOP 会長挨拶 2025年10月に開催された第29回全国大会における役員改選にあたり、当学会の規定に基づき、新会長に選出されました。1997年に公益法人とその諸活動を中心に据えた新たな研究の場として創設された本学会は、その後、民間非営利活動の広がりに伴う研究対象の多様化に対応して、2005年に現在の「非営利法人研究学会」に名称変更されました。2017年には公益認定を受けて、公益社団法人への移行を実現しました。志をひとつにして学会創設にご尽力いただいた先生方に思いを馳せ、また今日に至る着実な歩みを振り返り、学会の円滑な運営にあらためて重い責任を強く自覚するとともに、本学会のミッションの達成に向けて決意を新たにしております。 本学会の目的は、ますますその存在意義が高まっている非営利法人をめぐる諸問題を、さまざまな視点と方法に基づいて研究し、その学術的成果を広く社会に還元することにあります。 新しい資本主義の在り方が問われる中で、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を含む長期にわたるサステナビリティ課題は、いまや非営利法人の経営にとっても無視できなくなりました。加えて、性別、人種、国籍、年齢等、多様性のある個々人の幸福を含意するウェルビーイングへの関心の高まりは、「誰ひとり取り残さない」持続可能な開発目標(SDGs)を包含する未来の方向性を示しているとも言われています。心身ともに健康であり、加えて人と人とのつながりが社会全体に新たな価値を創造することが求められるとき、非営利法人の働きは社会課題を解決し、豊かさを実感しうる社会を志向するうえで不可欠です。ウェルビーイングな社会の実現に向けて、社会のあらゆる局面での非営利法人の力強い働きに対する期待は大きく、当該領域に係る研究もより一層厚みを増す必要があります。 前会長である齋藤真哉先生のリーダーシップの下で、全国大会におけるグループ研究が拡充される等、東日本、西日本の各部会とともに、大変有意義な研究報告と議論の場が備えられました。また、本学会の特徴でもある非営利法人制度に係る政策責任者や実務界との交流や対話もより一層充実して参りました。このような学会のプレゼンスを高める方向性を継承し、加えて査読制度に基づく学術的水準の高い学会誌の充実に努め、公益法人としての本学会の社会に対する情報発信に取り組んで参ります。 本学会の発展は、これまで会員各位の弛みない日々の研究努力に裏づけられており、同時に、学会の諸活動に対する会員各位のご理解とご支援により支えられてきました。今後も引き続き開かれた学会を目指す本学会のミッションに賛同される方々の入会をお待ちしております。 会長 古庄 修
- 第25回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第25回大会記 2021年9月25~26日 関西大学 統一論題 非営利法人の理念と制度 2021年(令和3年)9月25日(土)・26日(日)の日程で、非営利法人研究学会第25回全国大会が関西大学を主催校として開催された。統一論題は「非営利法人の理念と制度」であった。 第25回目を迎える本大会では、前年同様に新型コロナの異常事態の中での開催となり、すべての プログラムをライブ配信によるオンライン開催とした。こうした非常事態だからこそ、あえて非営 利組織の本質を考えることを目的に、統一論題のテーマを「非営利法人の理念と制度」と設定し、 それぞれ報告と討論会を行うこととした。 また、大会中は3名の統一論題報告、8名の自由論題報告、3つの分野別研究会及び受託研究報告が行われた。また、本大会の研究報告は2日間のプログラムとして編成し、あわせて、大会前日の9月24日(金) に常任理事会と理事会を開催し、25日(土)に社員総会と新理事会を開催した。 統一論題報告 趣旨・司会 柴 健次氏(関西大学) 本学会の過去の記録を振り返ると、法人種別のテーマが論じられ、あるいは会計基準が論じられるなど、時々の話題が取り上げられてきた。しかし、非営利組織の本質とは何かにつき論じる機会があっていいのではないかと思い、テーマを「非営利法人の理念と制度」にした。法学分野を代表して岡本仁宏 氏に、経営学分野を代表して小島廣光 氏に、会計学分野を代表して日野修造 氏にご登壇いただいた。形式的に3分野から出ていただいたというより、学問分野の異なる3分野間でのより良いコミュニケーションを図るきっかけを作ることも目的であった。 第1 報告 「非営利団体は、今、どこにいるのか:市民社会論の視角から」( 岡本仁宏氏・関西学院大学) 本報告では、世紀転換期非営利法人制度改革の次に来るべき21世紀非営利法人制度改革の課題を明らかにするために、非営利組織の歴史社会的な状況の市民社会論の視角からの確認が行われた。さらに、市民社会の実 証的把握と規範的把握の概要が示され、今、市民社会論から改革課題を位置づけることの意義が論じられた。最後に、IT革命の下での市民社会の変容に伴う可能性について言及し創造的適応の必要性が示唆された。 第2 報告 「非営利法人制度改革の研究―新・政策の窓モデルによる実証分析―」( 小島廣光氏・星城大学) 本報告は、わが国において長い間必要性が認識されながらも行われてこなかった非営利法人制度改革が、21世紀の初頭に「なぜ」そして「どのように」実現したのかを事例研究によって解明することが目的とされた。まず、新・政策の窓モデルにもとづいて、2つの事例(公益法人制度改革ならびにNPO法と寄付税制の改正)の詳細な年代記分析が行われた。次に、それぞれの事例の共通 点と相違点に関する発見事実を析出するとともに、政策形成の本質に関する命題が導出された。 第3 報告 「非営利法人会計における資本と収益の区別―アンソニーの提言を受けて―」( 日野修造氏・中村学園大学) 本報告は、資本と収益の区別問題を非営利組織会計の分野に適用し検討が行われた。まず、純資 産を拘束によって区分する純資産概念が主流であることを明らかにした上で、非営利組織会計にお いても純利益の測定が重要であり、資本と収益を区別した純資産の構造を主張するR.Nアンソニー の提言について検討が行われた。そして、アンソニーの提言を加味した非営利組織の純資産区分が 提案された。なお、報告では非営利組織が獲得した純利益は、サービス提供可能資源正味残高純増 額であることが明らかにされた。 自由論題報告 司会(第1・第2・第5・第6各報告) 中嶋貴子氏(大阪商業大学) 司会(第3・第4・第7・第8各報告) 初谷 勇氏(大阪商業大学) 第1 報告 「オーケストラ団体における活動財源の集中度と予測可能性に関する実証分析」( 武田紀仁氏・税理士、日本大学経済学研究科博士後期課程) 本報告では、文化芸術活動の主体となる非営利組織体が獲得する収入源の種類・性質・収入源の 集中度が非営利組織体の持続性に及ぼす影響を調べるため、オーケストラ団体のサンプルを用いた分析が行われた。その結果、収入源と持続性の関係を分析するうえでは、収入源の種類や集中度に加えて、設立経緯などに起因する団体の属性と収入源の予測可能性の関連性を考慮して分析を行うことの重要性が説明された。また、文化芸術活動の主体となる非営利組織体のうちオーケストラ団体では、団体の属性により収入構造に差異が存在し、団体の属性と関連性のある予測可能性が高い収入源に対して依存度が高いことがデータから示された。 第2 報告 「NPO支援組織と制度ロジック変化 ―アリスセンターのケース―」( 吉田忠彦氏・近畿大学) 本報告は、日本においてNPO支援組織がどのように発生し、どのようにひとつの制度として普及していったのか、そして組織はその制度とどのように向い合うのかを、そのパイオニアとされる アリスセンターをケースとして分析された。長期にわたる事業の変遷などの分析から、同組織は「市民運動」、「NPO」、「中間支援組織」などの複数の制度ロジックを使い分けながら事業を模索して いたと論じられた。 第3 報告 「クライシス下における信用保証協会の役割 ―中小企業支援に着目して―」( 櫛部幸子氏・鹿児島国際大学〈報告時〉、現在は大阪学院大学) 本報告は、信用保証協会がどのような非営利法人であるかを説明し、そのうえで、公的資金を基 礎とする信用保証協会にデフォルトが生じることの是非や、クライシス下においてどのような視点 をもとに保証判断をすべきなのか等を検討するものである。信用保証協会はクライシス下においても、事業の継続性が望める中小企業に対し信用保証をすべきであり、保証判断の際に、中小企業に更なる会計情報等の提出を求めることが重要であると指摘されている。 第4 報告 「公益法人をめぐるサードセクター論とビジネスセントリズム・ガバメントセントリズム」( 出口正之氏・国立民族学博物館) 公益法人制度改革・税制改革は、いずれも思想的には「政府でもない企業でもない原理を持ちう る第三セクターとしての非営利セクター」に対する期待から打ち出されたものであった。言い換え れば、民間公益セクターの行動原理の独自性の認識が前提であった。 ところが、民間公益セクターに対するこのような理念的積極論があるにもかかわらず、大企業に 対する規制等を適用しようとする「ビジネスセントリズム」、政府に対する規制等を適用しようとする「ガバメントセントリズム」によって、公益法人を律する規制が「効率的ではない」(ビジネ スのルール)、「公平ではない」(ガバメントのルール)といった不文律のルール適用が、大量の明文化された法規制の上に被され、公益法人側に守るべきルールの共有化が揺らぐアノミー現象が起 こりかねない状況が生じていることが明らかにされた。 第5 報告 「非営利組織における自己組織性の実証的研究~公益法人を対象とした調査に基づいて~」( 吉永光利氏・公益財団法人倉敷市スポーツ振興協会・岡山大学大学院) 本報告は、非営利組織における自己組織性(組織が自己決定・自律的に組織変革を図る特性)に ついて、実証主義に基づいた定量的・定性的方法による諸調査の分析結果と考察を提示するものである。具体的な調査では、主に中国地方に所在する公益法人を対象(361法人)とし、アンケート 調査(119法人から回答)とインタビュー調査(17法人に実施)が行われた。そして、これらの調査から得られたデータを基に非営利組織における自己組織性の実態について論じられている。 第6 報告 「活動領域特化型中間支援組織における支援内容の変化と機能の移管―総合型地域スポーツクラブ の事例分析―」( 伊藤 葵氏・富山国際大学) 本報告は、多様な主体が連携したサービスを提供が求められる公共圏における中間支援組織の役割に着目し、総合型地域スポーツクラブを事例とし、組織の成長に応じた支援内容と支援の担い手の変化が分析された。組織の成長過程では、支援の担い手は公的な機関から民間へと移行すること、 支援内容は組織間のコーディネーションが重視されていくことが示された。また、支援対象組織へ の支援機能の移管や複数の組織での支援機能の分担についても指摘されている。 第7 報告 「地方自治体における内部統制と公務員倫理」( 井寺美穂氏・熊本県立大学) 本報告は、地方自治体において「公務員倫理」や「内部統制」、「リスク管理」などの名称で類似の取組みが行われていることに着目した上で、近年、制度化が行われた内部統制に係る取組みと公務員倫理を確保するための各種取組みの目的や実施内容等を比較考察しながら、それらの相違や共通性等を検討されたものである。その上で、地方自治体はその団体の規模に応じて、取組みに格差がみられ、今後、特に小規模団体の取組みが重要になるのではないかと指摘されている。 第8 報告 「非営利組織の国際会計基準プロジェクトと日本への示唆」( 金子良太氏・國學院大學) 報告の最初に、非営利組織の会計の国際的枠組みを形成することを目標とするIFR4NPOプロジェ クトの概要が述べられた。本報告では、プロジェクトにより策定される非営利組織会計の目的、非営利組織に特有の会計の課題に加えて、IFR4NPOに資金を拠出したり策定プロジェクトにかかわる個人や団体等に着目し、わが国への示唆が示された。 分野別委員会報告 司会:吉田忠彦氏(近畿大学) 「NPO法人研究会」報告 出口正之 氏(国立民族学博物館) この1年の間(2020年10月から2021年9月)の間に、NPO法人にとって極めて重要な報告書が二点出ている。一点は新時代に合わせた報告であり、「NPO法人会計基準策定10周年記念行事 ~歴史秘話 基準誕生の頃の話を聴く夕べ~」と題され、ZOOMによるNPO法人会計基準10周年の会議記録と関係資料・動画が公表されている。 また、もう一つは、特定非営利活動法人NPO会計税務専門家ネットワーク福祉サービスに関する法人税課税問題検討委員会『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』(委員長岩永清滋 氏)である。収益事業課税は政策の中でたびたび論じされている一方、収益事業課税とは何かに ついて十分に検討されていた研究書はこれまでほとんどなかったものと言える。本報告書は歴史、 税法、関連法規、判例等に十分に目配りして現行の収益事業課税の問題点を詳細に検討されている。 NPO法人部会としてもこれらのNPO法人を巡る大きな出来事に対して、学会各方面の学術的関 心を喚起するために江田 寛 氏、岩永清滋 氏を招いて検討がなされ、いずれも学術的に非営利の会計や税制を議論するうえで欠くことのできないものとなっていることが確認された。 「医療・福祉系法人研究会」報告 ( 千葉正展氏・独立行政法人福祉医療機構) 医療・福祉系法人研究会は、現在の福祉・医療に係る制度・政策の流れのなかで、「地域包括ケア」、 「地域共生社会」など地域における様々な社会資源と医療法人、社会福祉法人等との関係性が重要なテーマになるとの認識の下、これまでの部会の活動においては「地域医療連携推進法人制度」や 「地域との連携を進めている名古屋の南医療生協の視察」など研究活動が進められてきた。そうした流れの中で国においては、令和2年に社会福祉法が改正され新たに「社会福祉連携推進法人制度」 (以下「福祉連携法人制度」)がスタートすることとなった。 以上を踏まえ、福祉連携法人制度検討の背景、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会での主な議論と論点、改正社会福祉法における福祉連携法人制度の規定内容等が紹介されるとともに、本学会会員の何名かが別途参画した厚生労働省の「社会福祉法人会計基準等検討会」における社会福 祉連携推進法人会計基準の検討状況とそこでの検討の論点などについても報告され、医療・福祉系 法人における今後の展開や課題等について考察がなされた。 「大学等学校法人研究会」報告( 古庄 修氏・日本大学) 大学等学校法人研究部会は、広く「大学のガバナンスとアカウンタビリティ」を主題として、学 校法人の経営と会計をめぐる理論・実務・政策に係る諸提言の総合化を目指して、最終報告が行わ れた。最終報告書として、①「大学法人の会計―非営利法人会計の議論に資するための考察―」(柴 健次)、②「学校法人における固定資産と学校法人会計基準との関わりについて―特に社会科学系統 の学部を有する四年制大学に関心を寄せて―」(林 兵磨)、③「私立大学版ガバナンス・コードの 意義と課題」(古庄 修)、④「大規模私立大学ガバナンスの構築(試論)」(堀田和宏)の各論稿の 概要が報告された。 今後、本部会の活動は、柴 健次部会長の下で委員を再構成し、継続することになるとの報告があった。 受託研究報告 司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学) 「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究( 座長 成川正晃氏・東京経済大学) 本研究報告は、受託研究として組織された「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究会」の研究報告である。非営利組織の活動を捕捉し財務情報として開示、利用されることにより社会全体に非営利組織に対する理解が普及していくという観点から、非営利組織の会計処理を対象とした検定試験の社会への貢献度合いを把握し、今後の発展は可能かを調査・研究することを目的として設置された。 当日は、本研究会の各研究担当者から検定試験の概要の調査について報告するとともに、公益会計法人検定試験では、資格の有効性を分析し、組織における資格の効用および利活用の可能性を、 社会福祉会計簿記認定試験では人的資本論とシグナリング理論を用いた効果に関する検討を示し、 その後質疑が行われた。 御礼 非営利法人研究学会第25回大会は対面形式での開催が叶わず、第24回に引き続いてリモート(ライブ配信)開催となりました。長引くコロナ禍の社会的影響は大きく、諸学会もまた新しいスタイルを模索しているようです。本学会もそうでした。 今大会は関西大学主催ですが、大阪商業大学からも応援いただきました。両大学から成る準備委 員会は統一論題と同じくらい自由論題を重視する方針で合意に達しました。学会員への問題提起をしていただく統一論題、そして学会員の研究発表の場となる自由論題を等しく重視したのです。その方針に対応して、準備委員会の仕事を、①自由論題運営、②統一論題運営、③大会運営と大きく 分け、3分野が自律的に運営されました。こうしたことはコロナ禍であったからこそできたのかもしれません。複数の大学による合同開催の可能性を探れたのかもしれません。 当学会では元々全国大会の自由論題を重視しています。地域部会長の承認を得て、全国大会へエ ントリーするという仕組みそのものが自由論題重視の姿勢だと思っております。各地域部会長に努力していただき8本のエントリーが実現しました。 統一論題は掲げた統一テーマは重要であります。その上で、法律、経営、会計等の研究者が相互 理解可能な状況を作りたいと報告者に無理なお願いもしました。ご登壇いただいた3先生には無理も聞いていただき、話題の共有に努力いただきました。 常設の分野別委員会と受託研究についてはそれぞれご報告いただきました。これらは中間報告な り最終報告をすることが会員への義務であると位置づけられていることから、すべての委員会にご 報告いただきました。 以上で報告は15本になりました。その報告を準備委員会委員が、企画者、座長、司会者としてかかわっておりますので、本大会記も準備委員会で作成できたかもしれません。しかし、そうするこ とは大会記に主観的な評価を持ち込むことになりかねません。そこで、ご報告者15名全員に報告要 旨の提供をお願いしました。準備委員会が多少表現の統一性を求める修正をしたこと以外は、報告 者による要旨を大会記の素材として利用させていただきました。 以上を踏まえ、ここに大会記を示すことができました。大会における報告者、司会者、各報告へ の参加者・質問者ほかすべての関係者に御礼申し上げます。 2022年5月12日 非営利法人研究学会第24回全国大会準備委員会 準備委員長 柴 健次(関西大学) 委員 橋本 理(関西大学) 馬場英朗(関西大学) 初谷 勇(大阪商業大学) 中嶋貴子(大阪商業大学)
- 第12会大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第12回大会記 2008.9.5-6 日本大学 統一論題 非営利組織の業績測定・評価に関する多角的アプローチ 日本大学 堀江正之 はじめに 非営利法人研究学会第12回全国大会は、2008年9月5日・6日の両日、日本大学(準備委員長:堀江正之)において開催された。その前日(4日)には理事会が開かれ、事務局から会務報告のほか、総会提出のための前年度決算案・次年度予算案等の議案を承認した。 1日目は総会に続いて統一論題報告と討議があり、2日目は自由論題報告・特別講演と研究部会報告が行われた。なお、今次大会の参加者は、当日申込みを含め101名であった。 【統一論題報告・討議】 統一論題のテーマは「非営利組織の業績測定・評価に関する多角的アプローチ」であり、石崎忠司(中央大学)座長の下、報告と討議が進められた。 どこの学会でも見受けられることであるが、「統一論題という名の自由論題」と揶揄されるように、各報告者が自らの関心テーマをほんの少々統一論題テーマに引っ掛けるだけのものとなりがちである。そのため今次大会は、堀田和宏氏(近畿大学名誉教授)が最初に登壇されて、討論のための「土俵」の確定が試みられた。 堀田氏は、その前半で、まずもって「誰が、誰のために、何のために、どれの、どこを、どのように」測定・評価するかを確認して確定する必要があると指摘、「断片的な業績評価システムを首尾一貫した整合性あるシステムに統合する包括的業績評価システムのフレームワーク確立」の重要性を訴えられた。 その議論を受けて、堀田報告の後半では、BSCの4つの視点、CCAF(カナダ包括監査財団)の12の属性の視点、J.Cuttらの提言等を検討され、組織の持続性、組織の社会性、非営利組織における組織有効性のジレンマを小括とされ、再び「評価の本質とその限界の再考」、「非営利組織とは何か」に遡った検討の中で、多様なサービスの性質及び形態に適合する測定・評価フレームワークの構築を主張された。 これに引き続き、第1報告として、梅津亮子氏(九州産業大学)が「サービスの原価と見えない価値」と題して、組織外のボランティアが組織に対して無償のサービスを提供する流れ(ボランティア→組織)、組織の職員がエンドユーザーに対して無償のサービスを提供する流れ(組織→エンドユーザー)という2つのパターンから、インプットとアウトプット関係の中で、原価測定と評価の枠組みの中に位置づけ、無償によるサービス活動を原価によって可視化し、活動内容を評価していくための仕組みを提案された。 第2報告の今枝千樹氏(愛知産業大学)は、「非営利組織の業績報告」と題して、アメリカ政府会計基準審議会によって1994年に公表された概念書第2号の改訂公開草案と、公表された返答の要請について、かかる概念書の改訂部分と改訂の背景及びガイドラインの整理・検討に基づいて、政府組織を含む広義の非営利組織における業績報告のあり方について詳細な検討を加えられ、その内容及び設定過程についての検討が、我が国の政府機関における業績報告に係る議論の参考になると主張された。 第3報告の齋藤真哉氏(横浜国立大学)は、「非営利組織の公益性評価—公益認定の基準を踏まえて—」と題して、新たな公益法人制度上の公益認定基準を取り上げて、非営利組織にとっての公益性の社会的意義とその評価について検討された。公益性は社会システムの中で支援する必要があるか否かにより評価し、公益性と税制優遇はリンクしている等のポイントを示され、単なる公益性評価ではなく、非営利組織の公益性評価というところを強調され、そこに非営利組織の存在意義を求める必要があると主張された。 以上の報告に対し、座長の石崎氏より、積極的にフロアー、特に自由論題報告予定者のうち、今回の統一論題のテーマと関連深い方に意見が求められ、活発な討論が展開された。 【自由論題報告】 自由論題報告は合計で18報告あり、紙幅の関係もあって、そのすべてを紹介できないが、院生会員の報告も3分の1強を占め、学会の将来的な活性化を感じさせるものであった。 その内容も、非営利組織を巡るガバナンス・管理・会計・財務・税務・監査等の諸問題を広くカバーするものであった。大会では統一論題が重視される傾向にあるが、自らの地道な研究成果を披露する自由論題にこそ、本当に面白いものがあるように思わせる報告が多かった。 【特別講演・研究部会報告】 今次大会では、本学会副会長の興津裕康氏(近畿大学名誉教授)による「企業会計と非営利の会計—財務会計研究からみた非営利組織の会計を考える—」、そして開催校側から勝山進氏(日本大学商学部部長)による「組織の環境会計」と題する特別講演が行われた。 興津氏は、公益法人会計基準を中心に、非営利の会計を企業会計の視点から検討され、公益法人会計基準は企業会計基準に極めて類似してきたように思われるが、「これでよいのか、非営利の会計の色彩が失われてきているのではないか」と結ばれた。 また勝山氏は、昨今その研究が急速に進められつつある環境会計の現状と課題について、国際動向を踏まえて整理され、自治体の環境会計、大学の環境会計などの事例も紹介されながら非営利組織への適用可能性を探られた。 特別講演に続き、小林麻理氏(早稲田大学)を主査とする東日本研究部会報告が行われ、公益認定基準を巡る諸問題について、メンバーによる研究の成果報告が行われ、フロアーを交えた活発な意見交換が行われた。 おわりに 非営利組織の業績測定・評価は、一息に「多様性あり」と言ってしまえばそれまでである。「多角的であること、多角的にならざるを得ないこと」を深く考えてみることに意味があるように思う。統一論題だけでなく、自由論題もともに直接・間接の違いはあるかも知れないが、基底において、いずれもこの問題に迫るものであった。 〈付記〉 本稿の執筆に際しては、大原大学院大学の江頭幸代氏のお力添えをいただいた。記して感謝したい。
- 第18回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第18回大会記 2014.9.10-11 横浜国立大学 統一論題 公益性の判断基準 税理士 上松公雄 非営利法人研究学会第18回大会が、横浜国立大学(大会準備委員長:齋藤真哉〔横浜国立大学〕)において、平成26年9月10日から11日までの2日間に渡って開催された。 前日の常任理事会及び理事会、1日目の総会の開催に引き続いて、統一論題「非営利法人に係る公益性の判断基準」(司会:佐藤倫正氏〔愛知学院大学〕)の報告が行われた。 【統一論題報告】 第1報告の岡村勝義氏(神奈川大学)「一般社団・財団法人の公益性判断基準」においては、公益性判断基準について、公益認定基準のうち、1号基準(事業目的)、6号基準(収支相償)、8号基準(公益目的事業比率)、9号基準(遊休財産保有制限)と旧制度の「指導監督基準」との比較が行われ、「指導監督基準」を承継しつつ、独自なものとして、公益目的事業について不特定多数条項(不特定多数の者の利益の増進に寄与するもの)による質的規制(1号基準)と財務三基準(6・8・9号基準)による財務的側面からの量的規制の強化が付加されていることが明らかにされた。また、それぞれの問題点として、質的規制については、不特定多数条項の判断において裁量の余地があり判断にズレが生ずる恐れがあること、財務三基準については、税制上の優遇措置との連動性までも強化されたため、財務三基準=税制優遇措置の適用基準となっていることの指摘がなされた。 第2報告の初谷勇氏(大阪商業大学)「特定非営利活動法人の公益性判断基準」においては、法人制度の沿革について行政システムの集権・分権等との観点と関連せしめて整理された上で、公益法人(公益社団・財団法人)とNPO法人における公益性判断主体及び公益性判断基準、そして、公益増進性判断主体及び公益増進性判断基準の転換状況と相違点について報告された。すなわち、公益性判断基準については、公益法人制度は、公益性判断基準の「統一化への伏流」から基準の「消失」であり、NPO法人制度は「法定」からその「拡充」とされた。また、公益増進性判断基準については、公益法人制度では、「自由裁量」から「法定・統一化」であるのに対し、NPO法人制度では、「根拠法の転換と基準緩和の昂進」であるとされた。 NPO法人の場合のこれらの相違は、認証主義、あるいは、行政主導の下での地方分権・分散化と対象の拡充に向けた対応の深まりという「程度」の問題と捉えることができるものとされた。 第3及び第4報告は、諸外国における公益性判断基準に対する研究であり、第3報告の金子良太氏(國學院大學)「アメリカの非営利法人の公益性判断基準」においては、内国歳入法501(C)⑶団体を対象に、その特徴及び連邦税の非課税団体の認定の仕組みについて解説された。501(C)⑶団体については、パブリック・チャリティ(PC)とプライベート・ファウンデーション(PF)の区分があり、さらに、PCには、①宗教・学校医療・公立大学後援団体等の連邦・州で認可を得た法人、②PST等の審査に合格した団体、③事業型PSTに合致した団体、④パブリック・チャリティ支援型組織の4類型が存し、それぞれについて、公益性の認定基準が異なり、かつまた、租税の特典の内容も異なることが明らかにされた。日本と比較した特徴として、広く一般から寄附を集める団体の優遇は大きいものの、特定者からの寄附で成立するPFには租税回避を防止するための規制等が存することが紹介された。 第4報告の尾上選哉氏(大原大学院大学)「英国チャリティの公益性判断基準」では、所轄庁であるチャリティ委員会の公益性認定の判断基準をチャリティの登録時を中心として考察された。 2006年チャリティ法以後、チャリティとは、専らチャリティの目的のために設立された組織として定義され、チャリティ目的であるためには、①目的記述要件(組織の目的〔使命〕がチャリティ法に規定する13の目的記述に該当するかどうか)と②パブリック・ベネフィット・テスト(目的が有益であるかどうか及び公に便益をもたらすかどうか)を充足するかどうかについて、チャリティ委員会が決定することが確認された。 以上の4報告を基に、パネル・ディスカッションへと進み、まず、コメンテーターの江田寛氏(公認会計士)は公益性判断に係る視点として将来社会に貢献するか否かの点、また、課税の優遇措置に関しても将来の豊かさを獲得するという積極的視点の必要性が説かれ、報告者に対して、公益認定基準におけるパネル・ディスカッションは学際的な議論となった公益・一般法人 No.879 2014.10.154財務三要件、チャリティ委員会方式による公益性判断において将来性判断が可能かどうかの見解を問う質問がなされた。 続いて、同じくコメンテーターの馬場英朗氏(関西大学)から、公益認定に係る制度の狙いが、当初は、民間の主体性の発揮及び客観的判断基準(恣意性の排除)にあったものが、運用の過程において、税制上の優遇措置との関係から、新規事業を開始するに際して行政(課税当局)の判断を仰ぐこととなり、判断主体がシフトしてしまっているのではないかとの問題提起がなされ、報告者の見解が問われた。 さらに、フロアから日米英の人口比と各国における公益性を有する法人の比が大きく異なっていることの原因となる制度の違いについてなど複数の質問が寄せられ活発な質疑応答が行われた。 最終日は、午前に、特別セッション「非営利組織の会計枠組み構築に向けて」(司会:齋藤真哉氏)が行われた。 【特別セッション】 森洋一氏(日本公認会計士協会)による基調報告において「非営利組織の会計枠組み構築に向けて(日本公認会計士協会非営利法人委員会研究報告第25号)」(以下、研究報告25号という。)の概要について説明された。すなわち、非営利組織の範囲について、事業活動を通じて稼得した利益を分配することを目的としない組織であると定義し、会計枠組み構築に向けては、①会計の基本的枠組みの共有、②モデル会計基準の開発、③会計基準の統合化という段階的アプローチが提案された。そして、基本的枠組みを構築するためには、これを一元的に取り扱う体制が不可欠であるとし、この場合の会計基準設定主体に求められる要件について、利害関係者の参画と代表性、独立性、透明性とガバナンス、正当性、専門性、財政基盤が挙げられた。その上で、会計基準設定主体として、①行政内に設置、②民間新団体を設立、③民間の会計基準設定組織内に設置の3方式が考えられるところ、課題は当然あるものの、③の民間の会計基準設定組織内に設置の方式が望ましいものとされた。紙幅の都合上、詳細に触れることはできないが、研究報告25号の報告に係る研究に取り組まれた背景としての非営利セクターに対する期待と課題、わが国の情報開示と会計の状況についても丁寧な説明が行われた。 続くパネル・ディスカッションにおいては、まず、報告者に対して、パネリストの鷹野宏行氏(武蔵野大学)から①アメリカの非営利法人会計に係る概念フレームワーク及び会計基準とのあり方及び②会計基準設定主体の資金調達についての見解を問う質問及びコメントがなされた。次いで、同じくパネリストの古庄修氏(日本大学)は、研究報告25号の意義、機能についてコメントされた後、①比較可能性についての情報ニーズ、会計プロフェッションにおける統一化の実需、②非営利法人の範囲(非営利性の定義)、③非財務報特別セッションの司会は今大会実行委員長の齋藤真哉氏公益・一般法人 No.879 2014.10.15学会ニュース 5告の開示の進め方について質問された。 さらに、フロアの会員と一体となって、①非営利組織の範囲、②フレームワークと会計基準との関係、③非財務情報の役割、④会計基準設定主体について、活発な質疑応答、議論が行われた(時間切れとなり、③、④の問題点は割愛となった)。 【西日本部会報告】 大会プログラムの最後は、西日本部会(九州部会)報告として「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」(司会:早坂毅氏〔税理士・行政書士〕)の最終報告が行われた。 冒頭に森美智代氏(熊本県立大学)から最終報告書の提出に係る報告と関係者への謝辞が述べられた。引き続いて、渡辺亨氏(熊本市都市政策研究所)より「熊本地域の地下水保全事業におけるNPOの役割」についての報告が行われた。 報告においては、NPOが関係した官民協働に係る成功事例(熊本地域の地下水保全事業〔かんくまセミコンモデル〕)が紹介され、官民協働におけるNPOの役割について確認された。すなわち、官民協働においてNPOがモデルケースを構築し、その成功事例を示すことで、行政や企業の参入を促す起爆剤となり得ることの指摘がなされた。 【自由論題報告】 自由論題報告は、第一会場(司会:船越洋之氏(湘北短期大学))において、髙屋雅彦氏(近畿大学)「病院と公益性に関して-精神科診療を例として-」、河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)「在宅医療を担う医療体制の在り方」、森美智代氏「非営利法人組織における会計の役割-日独における医療改革をとおして-」、第二会場(司会:竹内拓氏(自由が丘産能短期大学))において、黒木誉之氏(熊本県立大学)「内発的発展による地域再生-水俣市の「もやい直し」を主軸とした市民協働の地域づくり-」、井寺美穂氏(熊本県立大学)「行政倫理システムの機能および逆機能-政府における取組みを中心に-」、西村友幸氏(釧路公立大学)「非営利組織はアドホクラシーか?」、第三会場(司会:江頭幸代氏(関東学院大学))において、菊池遼氏(東北大学大学院生)「NPO 法人の新認定制度に関する一考察-認定NPO法人へのインタビュー調査から-」、藤井誠氏(日本大学)「非営利法人課税の本質」、出口正之氏(国立民族学博物館)「学校法人・社会福祉法人創設における制度改革との比較における公益法人制度改革」の全報告が行われた(各報告に対するコメンテーターについては省略した)。
- 地域部会について | 公益社団法人 非営利法人研究学会
地域部会について 非営利法人研究学会には、現在、東日本部会と西日本部会の二つの地域部会があります。それぞれの部会は地域に根差した活動を通じて、非営利法人に関する研究や情報交換を行っています。 将来的には、これらの部会が他の研究会と連携を深め、より広範な地域、内容での活動や共同研究に取り組んでいくことを目指しています。 <地域部会> 東日本部会長 鷹野宏行 運営委員 大原昌明 運営委員 尾上選哉 運営委員 川島和浩 幹 事 佐藤正隆 西日本部会長 吉田初恵 運営委員 伊佐 淳 運営委員 橋本俊也 運営委員 宮本幸平 幹 事 小口将典 幹 事 種村理太郎 ●(旧)関東部会の活動報告(クリック) ●(旧)関西部会の活動報告(クリック) ●(旧)九州部会の活動報告(クリック)
- ワーキングペーパー | 公益社団法人 非営利法人研究学会
ワーキングペーパー 本学会では、非営利分野の発展に寄与することを目的として『ワーキングペーパー』を発行しています。 ▶ワーキングペーパー投稿規程(PDF) ◆2019年度ワーキングペーパー一覧 ワーキングペーパー
- 第5回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第5回大会記 2001.10.5-6 中央大学 統一論題 公益法人の社会的機能と責任 国士舘大学大学院 依田俊伸 2001年10月6日、午前9時50分から第5回公益法人研究学会全国大会が中央大学市ヶ谷キャンパスにおいて開催された。約100名の参加者を得て、活発な報告と討論が展開された。ちなみに本大会は、日本公認会計士協会によるCPE研修指定を受けた。 現在の大きな社会経済の構造改革の中にあって、公益法人に対しても、社会的責任を忘れたり効率を軽視しているものが少なくないとして改革が求められているという状況に鑑み、本大会の統一論題は、「公益法人の社会的機能と責任」と定められた。 自由論題報告は、3会場で行われた。第1会場〔司会:小宮 徹氏(公認会計士)〕では千葉正展氏(社会福祉・医療事業団)「介護利用型軽費老人ホーム等の経営診断指標について」、若林茂信氏(公認会計士)「公益法人会計基準の見直しに関する中間報告の問題点の検討」、第2会場〔司会:松倉達夫氏(ルーテル学院大学)〕では、吉田初恵氏(関西福祉科学大学)「介護保険の負担と給付について—自治体間格差の実証研究—」、立岡 浩氏(花園大学)「NPOとしての社会福祉法人の戦略・統治・リーダーシップ」、第3会場〔司会:佐藤俊夫氏(国士舘大学)〕では、梅津亮子氏(九州産業大学大学院)「病院看護サービスの原価測定—九州中規模病院のケーススタディを中心として—」、岡村勝義氏(神奈川大学)「公益法人情報開示の新展開—第三セクターに関連して—」の計6題の報告が行われ、それぞれ熱心な質疑応答が交わされた。 研究部会中間報告は、2会場で行われた。第1会場では、戸田博之氏(神戸学院大学)の司会のもと、西日本部会報告「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」の報告がなされた。第2会場では、杉山 学氏(青山学院大学)の司会のもと、東日本部会報告「わが国の公益法人会計に関する研究—社会福祉法人会計の現状と問題点—」の報告が行われた。 午後に入り、会員総会の後、興津裕康氏(近畿大学)の司会のもと、4氏による統一論題報告が行われた。報告者名、論題及びその要旨は次のとおりである。 論題1:公益法人の社会的役割と情報公開—会計情報を中心として— 亀岡保夫氏(公認会計士) 公益法人は、その活動を通じて社会福祉、学術、芸術等の分野における一定の社会的必要性を充足するという「社会的機能」を営んでいるものであり、その活動が、主として民間私人の創意工夫に基づき、かつ、社会の発展に絶えず寄与しているという点において存在意義を有している。 公益法人の本来の役割は、「不特定多数の者の利益」の実現にあるが、特に生命や生活という人間の根源的な営みに関する「不特定多数の者の利益」の実現への公益性の追求において公益法人は中核的な役割を果たしている。 そもそも公益法人(民法第34条に基づいて設立される法人)については、既に「公益法人の設立許可及び指導監督基準」により、特定の情報の公開が定められ、一定程度の公開が達成されている。しかし、今日の市場重視型の経済システムにおいては、財源の効率的、経済的利用が重要となり、それを判断する市場(国民、市民)に対してさらに一層の情報が提供されなければならない。公益法人がその事業の内容や活動の成果について、対外的に情報公開を行うことにより社会的に高い評価を得ていくことが、法人の事業の発展・存続のために必要である。情報公開において中心となるのは財務に関する情報である。さらに、公開される情報の信頼性を担保するために公認会計士等の監査が大変有効かつ効果的である。 以上を踏まえ、公益法人は、指導監督基準で定められているからではなく、自ら積極的に情報公開していくことが大切であり、また、監査についても、要請されるのではなく、自ら積極的に外部監査を導入していくことが望まれる。 論題2:公益法人への社会の期待—社会的機能と責任— 会田一雄氏(慶應義塾大学) 現在のわが国のように、ある程度社会が成熟し、しかも行財政改革を進めるに当たり、パブリックセクターのウエイトを軽減しなければならない環境下では、公益法人制度のあり方についてはもはや行政に委ねるのではなく、社会全体で議論すべき時期を迎えている。 公益法人の社会的機能を論じるに当たっては、まず組織の本質を解明しておく必要があり、本報告では、公益性と非営利性の意義を再確認し、社会が公益法人全体に対して何を求めているかを論じる。公益性とは、不特定多数の者の利益の実現であるが、これは法人の事業内容そのものの性格を表している。この点で、株式会社はその目的が富の最大化であるため、公益的な活動を行っていても公益性を云々されることはないが、反公益的活動を行う場合には指弾され排除される。非営利性とは、利益の獲得を目的とせず、利益を分配しないということである。したがって、非営利性においては支出の内容が十分に吟味されなければならず、特に、当該支出が資産か経費に該当するかという資産性の検討が重要となる。費用に該当する場合には、その適正性が要求される。 次に、法人が社会から付託された機能を果たすために、いかに社会との関係性を築き、また社会との接点を見出していくのかについてのアプローチを探る。公益法人が社会の期待に応える方法として、他の法人に対して税の支援措置や補助金といった優位性を持つとするとその優位性をどのように付与するかが問題になる。これには、アメリカ型とイギリス型があるが、どのような場合であれ、社会が期待するのは、民間主体であり、行政から独立した公益法人の存在である。公益法人が社会の期待に応えるためには、アカウンタビリティ(説明責任)を十分に果たす必要がある。そのためにはディスクロージャーが不可欠である。 ディスクロージャーの内容としては、組織目的・事業内容、財務内容が挙げられる。ディスクロージャーの方法にも様々なものが考えられるが、継続的かつタイムリーな情報公開が必要である。公益法人は社会全体により支えられると同時に社会の期待に応えるという責務を負っているのである。 論題3:公益法人・非営利組織の存在理由と活動環境 藤井秀樹氏(京都大学) 本報告は、財務会計論の立場から、非営利組織の存在理由とその活動環境について検討することを目的とするが、ここでいう「非営利組織」とは、公式に設立された組織であること、民間組織であること、利益分配をしないこと、組織内部で自主的に管理されていること、運営や管理にボランティアを含むこと、公共の利益に奉仕すること、という6つの特徴を備えた組織と定義する。 非営利組織の存在理由を大別すると、経済的機能に関わるものと、社会的価値に関わるものの2系統に分類できる。前者には市場の失敗、政府の失敗があり、後者には多元的価値と自由がある。そこで、上記2系統の存在理由の関係及び非営利組織に固有の存在理由は何かが問題となる。経済的機能に関わる存在理由は、非営利組織が経済社会において存在するための前提条件と言える。それに対して社会的価値に関わる存在理由こそ非営利組織に固有の存在理由である。というのは、社会的価値に関わる存在理由には上記の特徴が深く作用しているが、このうちのボランタリズムを不可欠の特徴とする組織は、非営利組織以外に見当たらないからである。 ここから、非営利組織における2つのパラドックス、すなわち「非市場性のパラドックス」(非営利組織は、その非市場的資源配分機能を市場経済の中で遂行せざるを得ない。)及び「非営利性のパラドックス」(非営利組織は、財務的基盤を自律的に確保しなければならない。)が発生する。ここにプロフェッショナリズムとボランタリズムとの両立が不可避の課題となる。 プロフェッショナリズムとボランタリズムとの両立を図るには、まずプロフェッショナリズムの向上が必要である。その環境整備のための方策として、会計学の観点から、資源調達制度の拡充とりわけ寄付の活性化と情報開示の強化を提案したい。この場合、会計は「修正された市場メカニズム」を期待どおりに機能させる情報システムとして活用されることになる。その意味で、非営利組織における会計の役割は今後ますます高まっていくものと思われる。 論題4:非営利事業の社会的機能と責任 堀田和宏氏(近畿大学) 非営利事業のあるべき経済社会的機能は、政府事業の限界の補完と営利企業の市場の失敗の補完にある。したがって、個別事業としての非営利事業は、政府機関とは異なる独自性・自立性ならびに効率性を発揮する経営と営利企業とは異なる有効性と信頼性に応える経営をするべき機能を持つ。 非営利事業の固有の責任とは、ミッションに信頼を寄せて集まる、それぞれのコンスティチューエンシー(寄付者・政府・購入者・ボランティア等)の信頼と期待に応えることである。そのためには、経営行動の意思決定の仕組みと事前計画・管理活動の過程(ガバナンス)に対する監視・評価方法と情報開示のあり方(アカウンタビリティ)を構築する必要がある。 しかし、非営利事業においては、営利企業が持つ基本的な責任メカニズムを持たないことから、モラルハザードの危険が大きい。そこで、委任を受けた寄付者/助成者への受託責任及びクライアント/利用者への社会公共的責任を遂行するためには、まずNPOガバナンスの再構築が必要である。 NPOガバナンスにおいては、寄付者・理事会と経営者の適正な役割分担という法的組織構造と現実の乖離の解決という問題及び外部との寄付/助成委託関係、内部の階層関係、非階層関係(ボランティア)にそれぞれガバナンスのあり方を再構築するためのガバナンスに参加させるネットワークの編成、監視・参加制度や社会勢力の監視活動の保証・促進という問題がある。ガバナンスにとって受託義務その他の義務履行責任と義務履行の説明責任はその基本的構成要素である。 最近のアカウンタビリティが求められる背景から、アカウンタビリティが多様化かつ複雑化している。さらにアカウンタビリティの内容が財務アカウンタビリティからプロセス監視・プログラム評価のアカウンタビリティへと拡大している。 以上から、単なる事後の説明責任ではなく、経営機関の行動と経営管理の監視(事前統制)、業績達成のモニタリング(経営管理プロセス・プログラムの監視・評価)、社会的責任の達成度を評価するメカニズムの構築、監視体制と社会的責任を問う具体的な制裁措置の構築、が必要とされる。 シンポジウムでは、大矢知浩司氏(九州産業大学)の司会のもと、上記4氏の報告を踏まえ、公益法人・非営利組織の固有の存在理由、公益法人におけるガバナンスのモラルハザード、ディスクロージャーの3つの観点から質疑応答が整理され、熱心な討論が行われた。質問者は以下のとおりである。 島田 恒氏(龍谷大学)、坂本倬志氏(神戸学院大学)、川崎貴嗣氏(公益情報サービス)、千葉正展氏(社会福祉・医療事業団)、吉田初恵氏(関西福祉科学大学)、吉田 寛氏(神戸商科大学)、杉山 学氏(青山学院大学)、永島公朗氏(公認会計士)、松葉邦敏氏(国士舘大学) シンポジウム終了後、6階2611号教室において懇親会が開催された。本学会会長守永誠治氏の挨拶があり、和やかな雰囲気のなか19時10分散会した。
- 第8回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第8回大会記 2004.9.3-4 九州産業大学 統一論題 非営利組織のガバナンスと活動のディスクロージャー 1 NPO法人のガバナンス 2 非営利組織の活動状況の開示 3 公益法人会計基準の改訂と今後の課題 4 非営利組織のガバナンスとアカウンタビリティ 青山学院大学 杉山 学 公益法人研究学会第8回全国大会は、2004年9月3日(金)・4日(日)の両日、九州産業大学において開催された。第1日目は理事会が開催され、第2日目は報告および討議が行われた。紙幅の関係上、統一論題報告の要約と自由論題報告者・報告テーマ、研究部会報告者・報告テーマを紹介することにする。 ⑴ 統一論題報告・統一論題討議 「非営利組織のガバナンスと活動のディスクロージャー」を統一論題のテーマとして下記の報告が行われた。 小島廣光氏(北海道大学)「NPO法人のガバナンス」 小島氏は㈰マネジメント、㈪内部ガバナンスおよび㈫外部ガバナンスについて財団法人とNPO法人を比較検討し、特に5つの視点からNPO法人の外部ガバナンスの特徴を明らかにされた。そして外部ガバナンスは、マネジメントの自発性・自律性をより尊重すると同時に、その透明性を求めており、NPO法人の存続・成長の不可欠の要件としてこのような外部ガバナンスの重要性を主張された。 梅津亮子氏(九州産業大学)「非営利組織の活動状況の開示—財団法人鉄道弘済会および医療法人静寿会の事例を中心として—」 梅津氏は、財団法人鉄道弘済会の事業報告について官報を、また医療法人静寿会の事業報告については、梅津氏がその作成に直接関わった活動報告書を検討し、公益法人における活動(事業)報告書の重要性を強調された。 加古宜士氏(早稲田大学)「公益法人会計基準の改訂と今後の課題」 加古氏は、平成15年3月28日に公表された「公益法人会計基準(案)」(公益法人会計基準検討会:座長加古宜士氏)の特徴を、特に財務諸表の体系について、広く一般の国民に対する分かり易い外部報告の充実という視点から、予算や決算といった法人のガバナンスに係る計算書類(収支計算書)は外部報告の財務諸表から除外し、損益計算書と同様な正味財産増減計算書(フロー式)を原則とすること、また寄付者の意図を明確にするため正味財産を二区分した点などを明らかにされた。 堀田和宏氏(近畿大学)「非営利組織のガバナンスとアカウンタビリティ」 堀田氏は、組織と経営者がプログラム—パフォーマンス測定・評価の視点や評価基準を自ら設定して「自己評価をする枠組み」を設定すること、さらにパフォーマンス評価を多次元の視点から「外部評価をする枠組み」を設定することの重要性を明らかにし、特に経営者の経営倫理の確保と社会的評価の枠組みの設定が求められることを主張された。 以上の報告に対し、興津裕康氏(近畿大学)の司会により、出席者からの多岐にわたる質問がなされ、活発な質疑応答を通して報告者の主旨が明確となり、出席者全員にとって有意義なひと時となった。 ⑵ 自由論題報告 報告者および報告テーマは次の通りである。 第1会場:司会・藤井秀樹氏(京都大学) 野口房子氏(県立長崎シーボルト大学)「高齢社会政策の二国間比較—日本とスウェーデン—」 依田俊伸氏(国士舘大学)「医療法人における出資と非営利性—最高裁平成15年6月27日決定を手がかりにして—」 成道秀雄氏(成蹊大学)「認定NPO法人の認定要件の検討」 第2会場:司会・小宮 徹氏(公認会計士) 用丸るみ子氏(税理士)「地域開発と公益活動のバランス」 吉田初恵氏(関西福祉科学大学)「介護保険制度改革に向けての論点」 北沢紀史夫氏(財団法人日本医薬情報センター)「日本医薬情報センターにおけるガバナンスの実際」 第3会場:司会・齋藤真哉氏(青山学院大学) 于 佳氏(九州産業大学大学院)「多国籍企業現地子会社の情報開示—現地国との調和—」 原田 隆氏(独立行政法人産業技術総合研究所)「公的アカウンタビリティと業績評価」 高橋選哉氏(吉備国際大学)「非営利組織体の活動報告」 西村友幸氏(釧路公立大学)「アソシエーションの中の官僚制—厚生労働省所管の社団法人における職員数の規定因—」 第4会場:司会・松倉達夫氏(ルーテル学院大学) 桜井政成氏(東京福祉大学)「非営利組織における理事会の義務と役割に関する理論的考察」 東郷 寛氏(バーミンガム大学大学院)「イギリス住宅協会の経営戦略」 橋本俊也氏(税理士)「非営利組織体の会計目的とディスクロージャー」 吉田忠彦氏(近畿大学)「中間支援組織の類型と課題」 ⑶ 研究部会報告 司会・原田満範氏(岡山商科大学) 東日本研究部会:主査・小島廣光氏(北海道大学) 「NPO,政府,企業間の戦略的パートナーシップ」 西日本研究部会:主査・吉田忠彦氏(近畿大学) 「地域と非営利組織のマネジメント」 なお、次年度は、松葉邦敏会長のもと(石崎忠司氏(中央大学)および成道秀雄氏(成蹊大学)が推進役)に設置された「公益法人の財源(贈与・遺贈等)に関する多角的研究」をテーマとした特別研究部会の報告が予定されており、その成果が期待される。 ⑷ 第3回学会賞・学術奨励賞 学会賞には小島廣光氏(北海道大学)の著作『政策形成とNPO法—問題,政策,そして政治』(有斐閣、2003年11月)が選定された。なお、今次は学術奨励賞は該当者なしであった。 4日には大会準備委員会のご尽力により、参加者は人間国宝十四代酒井田柿右衛門九州産業大学大学院芸術研究科教授の指導のもと「柿右衛門様式窯・窯開き」に立ち会う貴重な経験をさせて頂いたことを記して感謝申し上げたい。
- 九州部会報告 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
九州部会報告 ■第9回九州部会記 日時 :2016年7月9日(土) 場所 :久留米大学 第1報告「公園維持管理における組織と人の役割」 山内元六氏(山鹿市役所) 本報告では、公園施設の事例分析を通じ、「協働概念に基づくアソシエーション組織」の検討を行った。熊本県山鹿市の“湯の瀬川公園”では、国や市、地域住民や公園利用者といったメンバーから構成される“菊池川育てねっと”が公園の維持管理を行っている。この官民連携の組織は様々なステークホルダーから構成されており、R.M.マッキーバーが提唱した「社会集団類型のアソシエーション」であると考えられる。また、官民が協力して清掃等の維持管理活動に取り組んでいることから協働概念に基づく活動であるとも考えられる。この事例から、共通の目的が存在する際には、アソシエーションと協働概念が紐づけられることを明らかにした(文責:山内)。 第2報告「防災と地域ガバナンス ― 被災者支援のあり方を中心に ― 」 黒木誉之氏(長崎県立大学) 熊本地震の特徴は、車中泊避難等による指定避難所以外での避難者の多さである。この問題は熊本県だけの問題ではなく、熊本県以外の地域も今後対応を検討しておく必要がある。そこで今回の調査は、震源地となった熊本県益ましきまち城町を対象に、①指定避難所以外で被災者が避難された場所を確認(条件の抽出)し、②その場所に避難された被災者への救援活動の実態を調査し課題等を明らかにすることを目的として行った。 現段階の調査結果として、①について、公園やショッピングモール、コンビニエンスストア等の駐車場に加え、幹線道路の路肩等について報告を行った。②については、企業やNGO・NPOの活動のみならず、SNSの活用による個人の活動が行政や団体による活動の隙間を埋めているとの報告を行った。 今後は現地での継続調査に加え、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町での調査も実施予定である(文責:黒木)。 第3報告「非営利組織体会計における純資産分類の意義と財務評価」 日野修造氏(中村学園大学) 非営利組織体の財務評価と純資産の分類には密接な関係があると考え、純資産分類の意義と財務評価に焦点を当てて、報告を行った。また検討の基点は、アメリカの非営利組織体会計に関する文献である。 検討の手順はまず、純資産の各分類手法を確認した。次に非営利組織体の財務評価は財務的弾力性、ハードマネー創出能力及び純資産の維持により評価することを明らかにした上で、一時拘束純資産に着目した財務分析について私見を述べた。 結果として、非営利組織体の純資産は資源提供者の提供資源に対する拘束の影響を考慮することが極めて重要であるとした。そして、さらに一時拘束純資産の分類区分を設けることで、より充実した財務評価・分析が可能になることを明らかにした(文責:日野)。 ■第8回九州部会記 日時 :2015年12月19日(土) 場所 :熊本県立大学 1. 基調講演 「非営利組織会計基準の統一化に向けた 課題と展望 ― 日本公認会計協会『論点整理』に寄せて ―」 藤井秀樹氏(京都大学) 本年(2015年)5月に公表された日本公認会計士協会『非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理』に拠りながら、基準統一化に向けた課題を整理し、当該問題の今後の展開方向を展望した。海外(とりわけ英米)の先例との異動及び企業会計との関係に焦点を当てた検討を行った結果、⑴非営利組織の範囲や財務報告の目的については海外の先例と相違はないが、⑵企業会計の枠組みから独立した非営利組織会計の枠組みを構築しようとしている点、⑶基礎概念については個別文書を作らず、会計基準に組み込む形で示そうとしている点で、『論点整理』は独自のアプローチを採用していることが明らかとなった。企業会計基準委員会(ASBJ)との協力関係の形成が、今後の主要な課題のひとつとなろう(文責:藤井)。 2. 部会報告 第1報告「非営利・公益法人としての私立大学」 伊佐 淳氏(久留米大学) 日本の私立大学は、法制度上、非営利法人の一種である学校法人であり、広義の公益法人の範疇に位置付けられている。したがって、私立大学は、非営利の公益法人であるということができる。翻って、2014(平成26)年、学校教育法が改正されたが、そこに至る議論の過程では、大企業におけるガバナンスやマネジメントを、大学の運営者がお手本とするべきものとされた観がある。すなわち、素早い意思決定のためのガバナンスの構築や、学長の強力なリーダーシップによる教学部門の改革が強調されているのである。しかしながら、営利法人ではなく、非営利・公益法人としての私立大学においては、経営部門のトップに対するチェック・アンド・バランスを果たすためのガバナンスこそが重視されねばならないのではないか(文責:伊佐)。 第2報告「 農業における非営利法人の役割」 源田佳史(公認会計士) 以下の3つの点について報告した。まず、①「農協法改正に伴う農協の非営利規定の削除に対する対応」では、農協運営における経済性や効率性を重視していった結果、反作用としての公益的な業務(生活購買や厚生事業)は、非営利法人へ移管する傾向を解説した。次に、②「TPP対応としての輸出農産物の各農業団体の調整機能としての中立性公平性の確保」では、農協や農業団体、農業関連企業が利益調整を行いつつ、「オール九州」としての農産物輸出やインバウンド需要喚起のための調整機能があることを紹介した。最後に、③「農業地域の担い手の高齢化に伴う耕作放棄地の拡大や鳥獣害対策のための非営利法人の活用」では、耕作放棄対策として農事組合法人の設立や農地中間管理機構(非営利法人)の活動支援がなされていることや、鳥獣害対策のための非営利活動の必要性を指摘した(文責:源田)。 第3報告「公立病院の経営改革の現状 ― 新公立病院改革ガイドライン(2015年)を踏まえて ―」(熊本県を事例として) 森 美智代氏(熊本県立大学) 本報告では、2007年に公表された公立病院改革ガイドラインと2015年に公表された新公立病院改革ガイドラインの比較検討をした。 公立病院の運営は、自治体の管轄のもとで、公共サービスとして画一性が求められてきた。 また人事及び予算の権限は自治体にあり、予算至上主義によって医療機関の経営改善に遅れがあった。 しかし2000年代に入ると自治体には財政健全化計画の策定が義務付けられ(地方公共団体の財政の健全化に関する法律:2009年健全化法)、この法律とともに公立病院改革が進められてきた。 2007年ガイドラインでは①「経営効率化」②「再編・ネットワーク化」③「経営形態の見直し」が3つの柱となっている。これを継続して、2015年新ガイドラインでは、④「地域医療構想」を踏まえた役割が明確化された。 したがって公立病院の果たすべき役割の精査・病床の機能区分ごとの将来の病床数の必要量等が示され、地域医療構想が確認された。新しいガイドラインでは、特に経営の安定化のための目標指標が追加された。熊本の公立病院を事例として、経営改革の現状を紹介した(文責:森)。 九州部会
- 文献四季報 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
書 名:非営利法人経営論 執筆者:岩﨑保道[編著] 所属機関:高知大学評価改革機構 発行所:大学教育出版 発行年月:2014年10月 総ページ数:190 書 名:非営利組織のソーシャル・アカウンティング― 社会価値会計・社会性評価のフレームワーク構築に向けて ― 執筆者:馬場英朗 所属機関:関西大学 発行所:日本評論社 発行年月:2013年10月 総ページ数:218 書 名:ボランティアの今を考える 執筆者:桜井政成[編著] 所属機関:立命館大学 発行所:ミネルヴァ書房 発行年月:2013年9月 総ページ数:222 書 名:戦略的協働の経営 執筆者:後藤祐一 所属機関:長崎大学 発行所:白桃書房 発行年月:2013年4月 総ページ数:140 書 名:非営利組織の理論と今日的課題 執筆者:堀田和宏 所属機関:近畿大学 発行所:公益情報サービス 発行年月:2012年3月 総ページ数:917 書 名:非営利組織の理論と今日的課題 執筆者:堀田和宏 所属機関:近畿大学 発行所:公益情報サービス 発行年月:2012年3月 総ページ数:917 書 名:市民社会政策論―3・11後の政府・NPO・ボランティアを考えるために― 執筆者:田中弥生 所属機関:(独法)大学評価・学位授与機構 発行所:明石書店 発行年月:2011年8月 総ページ数:384 書 名:現代企業簿記会計 執筆者:横山和夫 所属機関:東京理科大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月 総ページ数:504 書 名:非営利組織体の会計 執筆者:杉山 学 他 編著 所属機関:青山学院大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月 総ページ数:330 文献四季報 このページは本学会会員が発表した図書・学術論文を収録するものです。会員の研究学績を広く社会に紹介するために設けました。情報がありましたらメール等にてお寄せください。 なお、執筆者の所属機関は発表当時のものです。 ■図書の部
- 学会誌Web | 公益社団法人 非営利法人研究学会
非営利法人研究学会誌 Web版 非営利法人研究学会事務局 2月25日 20 分 ≪論文≫非営利組織におけるクラウドファンディングやファンドレイジング費の会計的課題 PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 國學院大學教授 金子良太 キーワード: ファンドレイジング費 クラウドファンディング ミッション FASB 要 旨:... 非営利法人研究学会事務局 2月25日 20 分 ≪論文≫成果の可視化と非営利活動のミッション―PFS・SIB・休眠預金等活用・社会的投資などの視点から― PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 関西大学教授 馬場英朗 キーワード: 成果連動型民間委託契約 インパクト評価 EBPM イノベーション... 非営利法人研究学会事務局 2月25日 27 分 ≪論文≫非営利組織の財政基盤の確立―ミッションへの共感醸成の重要性― PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 明治大学教授 石津寿惠 キーワード: ミッション 行政委託 社会的企業 資金調達 社会福祉 要 旨:... 非営利法人研究学会事務局 2023年2月16日 24 分 ≪査読付論文≫オーケストラ団体における活動財源の構造と予測可能性に関する実証分析 / 武田紀仁(日本大学大学院博士後期課程、税理士) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 日本大学大学院博士後期課程、税理士 武田紀仁 キーワード: 文化芸術活動の主体となる非営利組織 収入源の多様性 財務... 非営利法人研究学会事務局 2023年2月16日 23 分 ≪査読付論文≫クライシス下における信用保証協会の役割―中小企業支援に着目して― / 櫛部幸子(大阪学院大学准教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 大阪学院大学准教授 櫛部幸子 キーワード: 中小企業支援 クライシス デフォルト 信用保証協会 信用補完制度... 非営利法人研究学会事務局 2023年2月16日 29 分 非営利組織会計における資本と収益の検討から新時代の企業会計へ―営利・非営利会計の共通性の探求・アンソニーの提言を受けて― / 日野修造(中村学園大学教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 中村学園大学教授 日野修造 キーワード: FASB JICPA SDGs SFAC第4号 SFAC第6号 概念・モデ... 非営利法人研究学会事務局 2023年2月16日 37 分 ≪査読付論文≫NPO支援組織と制度ロジック変化―アリスセンターのケース― / 吉田忠彦(近畿大学教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 近畿大学教授 吉田忠彦 キーワード: アリスセンター NPO支援組織 制度ロジック 中間支援組織 サポートセンター... 非営利法人研究学会事務局 2023年2月16日 42 分 非営利団体は、今、どこにいるのか―市民社会論の視角から― / 岡本仁宏(関西学院大学教授 ) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 関西学院大学教授 岡本仁宏 キーワード: 市民社会 非営利法人 NPO SNS 世紀転換期非営利法人制度改革... 事務局 2023年1月11日 23 分 ≪査読付論文≫NPO法人による交通空白地有償運送の効率性評価 / 小熊 仁(高崎経済大学准教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 高崎経済大学准教授 小熊 仁 キーワード: 交通空白地有償運送 ボランティア運転手 DEA(Data... 事務局 2023年1月11日 20 分 ≪査読付研究ノート≫大阪市の孤立死の現状と2 地域における孤立死対策の比較 / 小川寛子 (京都産業大学大学院博士後期課程) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 京都産業大学大学院博士後期課程 小川寛子 キーワード: 社会的孤立 孤立死 組織間協働 森之宮スマートエイジング 西成... 事務局 2023年1月6日 15 分 ≪査読付論文≫非営利組織における課税事業に対する費用移転の抑制に関する研究:公益法人制度改革による影響分析 / 夏吉裕貴(横浜市立大学大学院博士後期課程)・黒木 淳(横浜市立大学准教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 キーワード: 公益法人 公益目的事業費 課税事業 公益法人制度改革 要 旨:... 事務局 2023年1月6日 29 分 ≪査読付論文≫公益法人の財務三基準に関するシステム論的理解:認定制度の趣旨と収支相償の解釈 / 久保秀雄 (京都産業大学准教授) ・出口正之 (国立民族学博物館名誉教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 キーワード: 収支相償 財務三基準 システム論 公益の増進 自律 逸脱 正の規制的クリープ現象 要 旨:... 事務局 2022年12月28日 26 分 ≪論文≫地方自治体の内部統制の現状と課題― パブリック・ガバナンスの充実強化に向けて― / 石川恵子(日本大学教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 日本大学教授 石川恵子 キーワード: 地方自治体 内部統制 パブリック・ガバナンス 人口減少化 持続可能性地方自治法 ... 事務局 2022年12月26日 21 分 ≪論文≫社会福祉法人のガバナンスの現状と課題― ガバナンス・コードを視野に― / 吉田初恵(関西福祉科学大学教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 関西福祉科学大学教授 吉田初恵 キーワード: 社会福祉法人のガバナンス ガバナンス・コード 社会福祉法人制度改革 ステ... 事務局 2022年12月25日 33 分 ≪査読付論文≫同一説と相違説:非営利会計の本質を考える国内外の議論の視点 / 出口正之(国立民族学博物館名誉教授) PDFファイル版はこちら ※表示されたPDFのファイル名はサーバーの仕様上、固有の名称となっています。 ダウンロードされる場合は、別名で保存してください。 国立民族学博物館名誉教授 出口正之 キーワード:同一説 相違説 現金主義 発生主義 ハイブリッド型 国際非営利会計基準... trust588 2021年3月26日 35 分 ≪論文≫公益法人税制優遇のルビンの壺現象:価値的多様性と手段的多様性への干渉 / 出口正之 (国立民族学博物館教授) 本稿は公益法人税制が課税強化から促進税制への180度転換となったことに関する政策的意図を辿り、理論的な裏付けを行ったものである。税制改正のカギを握るのは、公益法人としての行政や企業にはない特性の発揮、すなわち、「価値的多様性」と「手段的多様性」の重要性を指摘した。 trust588 2021年3月26日 27 分 ≪論文≫会計からみる公益法人制度改革の課題と可能性 / 尾上選哉(日本大学教授) 本稿は、会計の観点から、公益法人制度改革の趣旨に照らして新公益法人制度が有効な社会システムとして機能しているかについて、現状を検討することを通じて改善すべき課題を明らかにするとともに、会計が今後の公益法人制度の発展にどのように寄与し得るかを論じるものである。 trust588 2021年3月26日 21 分 ≪論文≫公益法人の拡充のために公益法人税制が果たすべき機能の考察 / 苅米 裕(税理士) 新公益法人制度は、各々の事業体の機能を考慮した課税制度の設計を検討する必要がある。本稿は、急増している一般社団・財団法人を顧慮し、公益法人への移行を促進するため、法人税制の面から考察をしたものである。 trust588 2021年3月26日 21 分 ≪特別報告≫非営利組織における財務報告の検討に関する報告~財務報告の基礎概念・モデル会計基準の提案~について / 松前江里子(公認会計士) 非営利組織は、社会的保障活動への期待を大きく受けており、彼らが果たすべき責任は、会計を含むガバナンスの仕組みによって支えられる。今回、提案されたモデル会計基準は、非営利組織の行動を説明する目的に対応して、非営利組織の自立性を前提とした会計基準という考え方を基本としている。 trust588 2021年3月26日 22 分 ≪査読付論文≫地方創生における地域資源の戦略的活用とその成功要因 ―広島安芸高田神楽のケーススタディ― / 今枝千樹(愛知産業大学准教授)・ 藤井秀樹(京都大学大学院教授) 地方創生の起爆剤となりうる地域資源を開発するには、資源の戦略的な重点配分が不可欠であり、そのためには地域資源の提供者と支援者との間の情報の非対称を可能な限り緩和する必要がある。かかる問題意識にもとづいて広島安芸高田神楽のケーススタディを行い、以下の知見を得た。
