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  • 会長挨拶 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    ページ TOP ページ TOP 会長挨拶  2025年10月に開催された第29回全国大会における役員改選にあたり、当学会の規定に基づき、新会長に選出されました。1997年に公益法人とその諸活動を中心に据えた新たな研究の場として創設された本学会は、その後、民間非営利活動の広がりに伴う研究対象の多様化に対応して、2005年に現在の「非営利法人研究学会」に名称変更されました。2017年には公益認定を受けて、公益社団法人への移行を実現しました。志をひとつにして学会創設にご尽力いただいた先生方に思いを馳せ、また今日に至る着実な歩みを振り返り、学会の円滑な運営にあらためて重い責任を強く自覚するとともに、本学会のミッションの達成に向けて決意を新たにしております。  本学会の目的は、ますますその存在意義が高まっている非営利法人をめぐる諸問題を、さまざまな視点と方法に基づいて研究し、その学術的成果を広く社会に還元することにあります。  新しい資本主義の在り方が問われる中で、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を含む長期にわたるサステナビリティ課題は、いまや非営利法人の経営にとっても無視できなくなりました。加えて、性別、人種、国籍、年齢等、多様性のある個々人の幸福を含意するウェルビーイングへの関心の高まりは、「誰ひとり取り残さない」持続可能な開発目標(SDGs)を包含する未来の方向性を示しているとも言われています。心身ともに健康であり、加えて人と人とのつながりが社会全体に新たな価値を創造することが求められるとき、非営利法人の働きは社会課題を解決し、豊かさを実感しうる社会を志向するうえで不可欠です。ウェルビーイングな社会の実現に向けて、社会のあらゆる局面での非営利法人の力強い働きに対する期待は大きく、当該領域に係る研究もより一層厚みを増す必要があります。  前会長である齋藤真哉先生のリーダーシップの下で、全国大会におけるグループ研究が拡充される等、東日本、西日本の各部会とともに、大変有意義な研究報告と議論の場が備えられました。また、本学会の特徴でもある非営利法人制度に係る政策責任者や実務界との交流や対話もより一層充実して参りました。このような学会のプレゼンスを高める方向性を継承し、加えて査読制度に基づく学術的水準の高い学会誌の充実に努め、公益法人としての本学会の社会に対する情報発信に取り組んで参ります。       本学会の発展は、これまで会員各位の弛みない日々の研究努力に裏づけられており、同時に、学会の諸活動に対する会員各位のご理解とご支援により支えられてきました。今後も引き続き開かれた学会を目指す本学会のミッションに賛同される方々の入会をお待ちしております。                  会長 古庄 修

  • 第1回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    1997.10.4 青山学院大学 統一論題 公益法人研究の現状と課題—公益法人研究の原点を巡って—  1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動  2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察  3 社会福祉法人会計の本質  公益法人研究学会(会長:守永誠治氏)の第1回大会は、1997年10月4日、青山学院大学青山キャンパスの11号館において開催された。  統一論題「公益法人研究の現状と課題─公益法人研究の原点を巡って─」のもと、興津裕康氏(近畿大学)の総合司会により二題の研究報告並びに討論が行われた。  また、自由論題の報告と記念講演も併せて行われた。 1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動    報告:吉田忠彦氏(近畿大学豊岡短期大学)  吉田氏は「非営利組織としての公益法人の戦略行動《と題し、公益法人を非営利セクターの中核として捉えた上で、その経営戦略を規定する要因と戦略の類型について報告された。すなわち、非営利組織は①自ら掲げる使命遂行を目的とするが、②一方では組織の存続・拡大の慣性も働き、マクロ的には③組織の生存領域及び規模は政府(主務官庁)の調整に大きく影響される、と分析。そうした環境に適応するために、非営利組織は事業構造の戦略、競争の戦略、協調戦略をとるべきだと強調した。ただ、それらの戦略は、サービスの受け手だけでなく、支払い手となる多様な関連他者からのフィードバック情報に基づいて策定されるため、吊声獲得や協調戦略が重視されなければならないと主張された。 2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察—アメリカ非営利法人会計基準との比較—    報告:若林茂信氏(東京経営短期大学)  若林氏は「公益法人会計の問題点と改質向上への一考察《と題して報告された。この中で氏は現在国際的に最高の水準にある、私的セクターに属する非営利法人を対象としたアメリカの会計基準の発展の軌跡から現状を展望、その顕著な特色として12項目を抽出。このうち、日本の公益法人(広義に想定)会計を改質向上させるために適切と思われる8項目を教訓として選定され、これを公益法人会計の問題点を考察する上での好個の研究資料として活用すべきであることを主張された。 3 社会福祉法人会計の本質—施設会計を中心として—    報告:松倉達夫氏(中部女子短期大学)  松倉氏は自由論題として「社会福祉法人会計の本質《をテーマに、特に施設会計を中心に報告された。現在社会福祉法人に適用されている経理規定準則は1976年に発表され、それ以前の会計指針に比して近代化し、改善されたが、なお実務上問題があることを、氏は次の事項を掲げて本質を追究し、問題点の理論的な指摘がなされた。①消費経済体、②受託者会計、③複式簿記の徹底、④発生主義会計、⑤経理責任の明確化、⑥管理組織の確立、⑦予算の重要性、⑧収支計算書と貸借対照表。  以上の報告のほか、統一論題を総括するパネルディスカッションが開かれ、松葉邦敏氏(成蹊大学)を座長として、報告者の吉田氏、若林氏に白井万佐夫氏(公認会計士)、永島公朗氏(産能短期大学)、朊部信男氏(産能短期大学)がパネラーとなり、大会参加者を交えて活発な討論が展開された。  また、今大会では武田昌輔氏(成蹊大学)が「公益法人課税の史的変遷と今日的課題」と題して記念講演をされ、大会に華をそえた。  この後、会場を青学会館に移して懇親会が催され、青山学院大学を代表して経営学部長の杉山学氏が挨拶、会田一雄氏(慶應義塾大学)による乾杯の発声があり、会員の親睦と学会の今後の発展を祈った。 第1回大会記

  • 第14回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第14回大会記 2010.9.25・26 早稲田大学 統一論題 非営利法人制度改革と市民社会ガバナンス 公認会計士  清水貴之  非営利法人研究学会の第14回大会は、2010年9月25日・26日の両日、早稲田大学8号館(大会委員長:小林麻理氏)において開催され、100名を超える会員が参集した。その前日(9月24日)には常任理事会及び理事会が開かれた。 大会1日目は事辞典刊行委員会、会員総会に引き続き、本大会の統一論題「非営利法人制度改革と市民社会ガバナンス」に関するキーノートスピーチの後、パネリストよりそれぞれの立場から報告が行われ、柴健次氏(関西大学)の司会の下に討論が行われた。 【統一論題報告と討論】  キーノートスピーチは、大内俊身氏(元東京高等裁判所民事部総括判事・前内閣府公益認定等委員会委員)が「非営利法人制度の現状と課題」について行った。旧民法法人(公益法人)制度に対する批判と、そうした課題に対応した主たる立法の動きについて触れた後、新しい非営利法人制度の概要として、一般法人と公益法人の内容及び先の課題が解消されたか等について述べられた。旧民法法人制度において問題であった権利能力のない社団・財団が、準則主義の採用により一般法人としての設立が可能となった点は、画期的なことであると指摘された。  統一論題報告では、吉田忠彦氏(近畿大学)氏が、ガバナンス論の観点から「社会ガバナンスとNPO」について報告した。ガバナンス論には、政府によるコントロールの修正又は代替方法としての国家単位のネットワーク・ガバナンス論とマネジメントの上位概念としての組織単位のコーポレート・ガバナンス論があると分類した上で、現在、ガバナンスが問題となっているのは中央政府が機能不全を来していることが原因であるとした。  入山映氏(サイバー大学)は、市民セクターの社会における重要性を強調する観点から、「公益法人制度改悪 その根底にあるもの」について報告した。その中で公益とは、現在の公益法人制度においては、非営利かつ不特定多数とされているが、ガバナンスとは自分のことは自分で決め、その上で責任も自分で取るということであり、そもそも公益概念への適否の枠組みを政府が決定すること自体が間違っていると指摘した。公益概念に基づく現公益法人制度は廃し、非営利法人という制度に一本化すべきであると提言された。  髙山昌茂氏(公認会計士)は、予算がガバナンスにおいて果たす機能の観点から「公益法人制度改革とガバナンス 損益予算について」の論題で報告した。公益法人の予算に関する取扱いは、昭和52年策定の会計基準及び昭和60年会計基準の予算準拠主義による収支予算書から、平成16年会計基準の内部管理事項としての収支予算書、そして、平成20年会計基準の損益予算へと変遷してきたが、損益予算ではガバナンスの観点からは限界があり、公益法人にとって真に必要な予算とは収支予算ではないかと指摘された。  討論においては、今般の公益法人制度改革において、準則主義による法人設立の意義については共通の認識が得られたものの、公益認定制度のあり方やNPO法人との関係などについて活発な質疑・討論が行われた。 【自由論題報告】  大会2日目午前中は、4会場に分かれて15の自由論題報告が行われた、各会場の報告者及び論題は以下のとおりである。 第1会場[司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学)]  ⑴村山秀幸氏(公認会計士)「公益認定法の収支相償規定の意味と実務的対応の検討」、⑵竹内拓氏(自由が丘産能短期大学)「ファンドレイジングの変遷とその対応策」、⑶田中弥生氏(大学評価・学位授与機構)/馬場英朗氏(愛知学泉大学)/石田祐氏(明石工業高等専門学校)「新しい公共と税制優遇―認定NPO 法人は寄付文化を促進するか?―」 第2会場[司会:会田一雄氏(慶応義塾大学)]  ⑴小野英一氏(東北公益文科大学大学院)「NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を活かした非営利組織マネジメントについて」、⑵川野祐二氏(下関市立大学)「公益志向の近代市民結社とイノベーション:自治的アソシエーションの拡大と民主主義」、⑶八島雄士氏(九州共立大学)「行政とNPO の協働におけるバランスト・スコアカードの適用可能性」、⑷大原昌明氏(北星学園大学)/鈴木克典氏(北星学園大学)「『自転車タクシー事業の現状と課題』―事業者へのヒアリング調査に基づいて―」 第3会場[司会:江田寛氏(公認会計士)]  ⑴古市雄一朗氏(福山大学)「非営利組織の会計における貸借対照表の意義」、⑵馬場英朗氏(愛知学泉大学)「3省庁からみた民間非営利組織への事業積算―イコール・フッティングは考慮されているか?―」、⑶兵頭和花子氏(兵庫県立大学)「非営利組織の財務的基盤とその会計」、⑷佐久間義浩氏(富士大学)「非営利組織における内部統制の現状―公的医療機関における内部統制に関するアンケート調査による分析―」 第4会場[司会:富永さとる氏(パブリック・ベネフィット研究所)]  ⑴伊藤葵氏(早稲田大学大学院)「日本型地域プラットフォームの形成―行政とNPOの連携による効果的なガバナンスに向けて―」、⑵角谷嘉則氏(立命館大学)「ボランティアの専門性の高度化―障害者の就労支援を事例として―」、⑶東郷寛氏(近畿大学)「公民パートナーシップ(PPP)のマネジメント:先行研究レビュー」、⑷初谷勇氏(大阪商業大学)「非営利法人制度改革と市民社会の安全」 【特別講演】  午後からは、田中羊子氏(ワーカーズコープセンター事業団・専務理事)による「『新しい公共』の創造と協同労働の可能性」と題する特別講演が行われた。田中氏は、協同労働の協同組合という新しい就労機会創出の仕組みとしてのワーカーズコープのこれまでの活動内容を紹介され、事業者が、利用者や地域と協同して事業を行なうことにより、「新しい公共」の場が創出されるとともに利用者や地域のニーズに合ったサービス提供が行われると指摘された。 【研究部会報告】  特別講演の質疑終了後、東日本研究部会[主査:小林麻理氏(早稲田大学)]と西日本研究部会[主査:藤井秀樹氏(京都大学)]からそれぞれの部会報告が行われ、最後に大会準備委員長の小林麻理氏の閉会挨拶により盛況のうちに閉幕した。

  • 第17回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第17回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成30年9月8日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏    非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第17回学会賞(平成29年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成29年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成29年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 九州部会報告 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    九州部会報告 ■第9回九州部会記 日時 :2016年7月9日(土) 場所 :久留米大学 第1報告「公園維持管理における組織と人の役割」 山内元六氏(山鹿市役所)  本報告では、公園施設の事例分析を通じ、「協働概念に基づくアソシエーション組織」の検討を行った。熊本県山鹿市の“湯の瀬川公園”では、国や市、地域住民や公園利用者といったメンバーから構成される“菊池川育てねっと”が公園の維持管理を行っている。この官民連携の組織は様々なステークホルダーから構成されており、R.M.マッキーバーが提唱した「社会集団類型のアソシエーション」であると考えられる。また、官民が協力して清掃等の維持管理活動に取り組んでいることから協働概念に基づく活動であるとも考えられる。この事例から、共通の目的が存在する際には、アソシエーションと協働概念が紐づけられることを明らかにした(文責:山内)。 第2報告「防災と地域ガバナンス ― 被災者支援のあり方を中心に ― 」 黒木誉之氏(長崎県立大学)  熊本地震の特徴は、車中泊避難等による指定避難所以外での避難者の多さである。この問題は熊本県だけの問題ではなく、熊本県以外の地域も今後対応を検討しておく必要がある。そこで今回の調査は、震源地となった熊本県益ましきまち城町を対象に、①指定避難所以外で被災者が避難された場所を確認(条件の抽出)し、②その場所に避難された被災者への救援活動の実態を調査し課題等を明らかにすることを目的として行った。  現段階の調査結果として、①について、公園やショッピングモール、コンビニエンスストア等の駐車場に加え、幹線道路の路肩等について報告を行った。②については、企業やNGO・NPOの活動のみならず、SNSの活用による個人の活動が行政や団体による活動の隙間を埋めているとの報告を行った。  今後は現地での継続調査に加え、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町での調査も実施予定である(文責:黒木)。 第3報告「非営利組織体会計における純資産分類の意義と財務評価」 日野修造氏(中村学園大学)  非営利組織体の財務評価と純資産の分類には密接な関係があると考え、純資産分類の意義と財務評価に焦点を当てて、報告を行った。また検討の基点は、アメリカの非営利組織体会計に関する文献である。  検討の手順はまず、純資産の各分類手法を確認した。次に非営利組織体の財務評価は財務的弾力性、ハードマネー創出能力及び純資産の維持により評価することを明らかにした上で、一時拘束純資産に着目した財務分析について私見を述べた。  結果として、非営利組織体の純資産は資源提供者の提供資源に対する拘束の影響を考慮することが極めて重要であるとした。そして、さらに一時拘束純資産の分類区分を設けることで、より充実した財務評価・分析が可能になることを明らかにした(文責:日野)。 ■第8回九州部会記 日時 :2015年12月19日(土) 場所 :熊本県立大学 1. 基調講演 「非営利組織会計基準の統一化に向けた 課題と展望 ― 日本公認会計協会『論点整理』に寄せて ―」 藤井秀樹氏(京都大学)  本年(2015年)5月に公表された日本公認会計士協会『非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理』に拠りながら、基準統一化に向けた課題を整理し、当該問題の今後の展開方向を展望した。海外(とりわけ英米)の先例との異動及び企業会計との関係に焦点を当てた検討を行った結果、⑴非営利組織の範囲や財務報告の目的については海外の先例と相違はないが、⑵企業会計の枠組みから独立した非営利組織会計の枠組みを構築しようとしている点、⑶基礎概念については個別文書を作らず、会計基準に組み込む形で示そうとしている点で、『論点整理』は独自のアプローチを採用していることが明らかとなった。企業会計基準委員会(ASBJ)との協力関係の形成が、今後の主要な課題のひとつとなろう(文責:藤井)。 2. 部会報告 第1報告「非営利・公益法人としての私立大学」 伊佐 淳氏(久留米大学)  日本の私立大学は、法制度上、非営利法人の一種である学校法人であり、広義の公益法人の範疇に位置付けられている。したがって、私立大学は、非営利の公益法人であるということができる。翻って、2014(平成26)年、学校教育法が改正されたが、そこに至る議論の過程では、大企業におけるガバナンスやマネジメントを、大学の運営者がお手本とするべきものとされた観がある。すなわち、素早い意思決定のためのガバナンスの構築や、学長の強力なリーダーシップによる教学部門の改革が強調されているのである。しかしながら、営利法人ではなく、非営利・公益法人としての私立大学においては、経営部門のトップに対するチェック・アンド・バランスを果たすためのガバナンスこそが重視されねばならないのではないか(文責:伊佐)。 第2報告「 農業における非営利法人の役割」 源田佳史(公認会計士)  以下の3つの点について報告した。まず、①「農協法改正に伴う農協の非営利規定の削除に対する対応」では、農協運営における経済性や効率性を重視していった結果、反作用としての公益的な業務(生活購買や厚生事業)は、非営利法人へ移管する傾向を解説した。次に、②「TPP対応としての輸出農産物の各農業団体の調整機能としての中立性公平性の確保」では、農協や農業団体、農業関連企業が利益調整を行いつつ、「オール九州」としての農産物輸出やインバウンド需要喚起のための調整機能があることを紹介した。最後に、③「農業地域の担い手の高齢化に伴う耕作放棄地の拡大や鳥獣害対策のための非営利法人の活用」では、耕作放棄対策として農事組合法人の設立や農地中間管理機構(非営利法人)の活動支援がなされていることや、鳥獣害対策のための非営利活動の必要性を指摘した(文責:源田)。 第3報告「公立病院の経営改革の現状 ― 新公立病院改革ガイドライン(2015年)を踏まえて ―」(熊本県を事例として) 森 美智代氏(熊本県立大学)  本報告では、2007年に公表された公立病院改革ガイドラインと2015年に公表された新公立病院改革ガイドラインの比較検討をした。 公立病院の運営は、自治体の管轄のもとで、公共サービスとして画一性が求められてきた。 また人事及び予算の権限は自治体にあり、予算至上主義によって医療機関の経営改善に遅れがあった。 しかし2000年代に入ると自治体には財政健全化計画の策定が義務付けられ(地方公共団体の財政の健全化に関する法律:2009年健全化法)、この法律とともに公立病院改革が進められてきた。 2007年ガイドラインでは①「経営効率化」②「再編・ネットワーク化」③「経営形態の見直し」が3つの柱となっている。これを継続して、2015年新ガイドラインでは、④「地域医療構想」を踏まえた役割が明確化された。 したがって公立病院の果たすべき役割の精査・病床の機能区分ごとの将来の病床数の必要量等が示され、地域医療構想が確認された。新しいガイドラインでは、特に経営の安定化のための目標指標が追加された。熊本の公立病院を事例として、経営改革の現状を紹介した(文責:森)。 九州部会

  • 第6回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第6回大会記 2002.7.26-27 京都大学 統一論題 非営利組織の業績評価とアカウンタビリティ 近畿大学  吉田忠彦  公益法人研究学会第6回全国大会は、2002年7月26日(金)の理事会に続いて、7月 27日(土)に「非営利組織の業績評価とアカウンタビリティ」を統一論題とし、京都大学で開催された。  午前中は9つの自由論題報告が、3つの会場に別れて行われた。第一会場では、柴 健次氏(関西大学)の司会で、江頭幸代氏(九州産業大学大学院)、川野祐二氏(財・助成財団センター)、伊藤 務氏(財・平安建都千二百年記念協会)、第二会場では、松本敏 史氏(同志社大学)の司会で、用丸るみ子氏(鹿児島国際大学大学院)、橋本敏也氏(税理士)、立岡 浩氏(花園大学)、第三会場では、吉田忠彦(近畿大学)の司会で、今枝 千樹氏(京都大学大学院)、兵頭和花子氏(神戸大学大学院)、若林茂信氏(公認会計士)の報告が行われた。午前9時30分スタートの第一報告から、立ち見が出る会場もあり、討論とも大変な盛り上がりを見せた。  その後会場を大会議室に移し、吉田 寛氏(神戸商科大学)の司会によって研究部会報 告が行われ、東日本部会が「わが国の公益法人会計に関する研究」(座長・松葉邦敏氏)を、西日本部会が「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」(座長・堀田和宏氏) を報告した。  午後からは会員総会が行われ、学術研究団体登録申請の経過報告もなされた。さらに、 第1回学会賞および学術奨励賞の発表もあった。学会賞は堀田和宏氏(近畿大学)、学術奨励賞は梅津亮子氏(九州産業大学大学院)がそれぞれ受賞された。 統一論題の概要  統一論題は会田一雄氏(慶應義塾大学)が司会をつとめられ、古庄 修氏(亜細亜大学 短期大学部)、江田 寛氏(公認会計士)、瓦田太賀四氏(神戸商科大学)の三氏の報告の後、討論という形で進められた。  古庄 修氏(亜細亜大学 短期大学部)の報告「非営利組織のアカウンタビリティとディスクロージャー−英国チャ リティの検討を中心として−」では、イギリスにおけるチャリティ制度とその会計について概略が説明された後、チャリティの実務勧告書(SORP)の設定経緯、米国会計基準と比較した財務報告の特徴が説明され、チャリティを対象にしたアニュアル・リポート表彰制度などの動向から、記述方法が利益尺度を持たないチャリティでは財務情報の補完以上の役割を有するといった示唆がなされた。  続いて江田 寛氏(公認会計士)の報告「民法法人の収支予算制度と業績評価」は日本の公益法人を中心にしたもの。昭和61年の『公益法人の運営に関する指導監督基準』(指導監督基準)では、事業計画と収支予算による事前審査と、事業結果及び収支計算の結果との比較によって事業執行の妥当性を検証するという業績評価が主務官庁によってなされ るというものであったのに対し、1996年の新指導監督基準においては、法人情報、事業情 報及び会計情報を一般の閲覧に供することとされ、主務官庁ばかりでなく、不特定多数の国民を意識した運営管理と業績評価のあり方が必要になったと指摘する。事業計画および 収支予算を中心とする管理や業績評価は、自発的な事業を趣旨とするタイプの非営利組織には適さないものである。また、業績評価にはサービスの内容、提供された資源の使い方、 運営方法、財務的生存力などの視点が必要であると主張された。  最後の瓦田太賀四氏(神戸商科大学)の報告「非営利組織のリスクとアカウンタビリテ ィ」では、アカウンタビリティが資金提供者のリスクという視点から検討され、サービスの代価を支払う事業型であれば、モニター可能であるために合理的行動がとれるため、リ スクはせいぜい一時的であること。サービス代価が支払われない福祉型では、支払手は事 業の社会的意義から資金を拠出し、配当や残余財産の分配などを求めないため、そもそも リスクという考え方が当てはまらないことが指摘された。そこから、そうしたリスクに対して「説明義務」を果たす、すなわちアカウンタビリティ解除を達成するという視点では なく、与えられた役割に対して積極的に説明の可能性を開く「説明可能性」という視点でアカウンタビリティを捉える必要があると主張された。  3氏の報告の後、フロアから寄せられた質問紙に応答しながら討論に入った。公益目的 の事業を担う組織の多様化に伴って、業績評価とアカウンタビリティの問題は、より複雑性を増しているが、他方で現実の社会や政策が、少子高齢化や行財政改革の流れを背景に、 民間非営利セクターへの依存の度合いを高めている。こうしたタイミングであるだけに、非常に活発な討論となった。質問およびコメントは、興津裕康氏(近畿大学)、大矢知浩司氏(九州産業大学)、岡村勝義氏(神奈川大学)、柴 健次氏(関西大学)、村井秀樹氏(日本大学)、陳 氏(神戸商科大学)、早坂 毅氏(税理士)、橋本俊也氏(税理士)、大峠理沙氏(神戸商科大学大学院)の諸氏から寄せられた。  その後、場所を同大学の生協中央食堂に移し、懇親会が催された。今回創設された学会 賞・学会奨励賞の受賞者のスピーチも交え、終始なごやかなうちに会員の親睦がはかられた。

  • 221227規程変更Q&A | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    【改正された規程】 全国大会運営規定 (令和4年12月27日改正) 部会運営規程 (令和4年12月27日改正) 分野別研究会運営規程 (令和4年12月27日改正) 【新設された規程】 特別委員会運営規程 (令和4年12月27日新設) <改正に関するQ&A> [全国大会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:大きな変更箇所は第7条です。    これまで自由論題の申し込みは地域部会の報告を経ることが要件となっていました。    改正後は地域部会の報告を経ず直接大会準備委員会に申し込む方法も追加され、2つのルートとなりました。    なお、部会報告を経ない場合は、6,000字程度の報告要旨を申込みの際にご提出いただきます。    また、自由論題の報告者数に制限があるときは、地域部会で報告された方が優先となります。   Q:23年度の全国大会(大阪商大)の自由論題報告に申し込みたいと考えています。申込みはいつから始まり、申込期限はいつになりますか?   A:全国大会準備委員会から、3月末ないし4月初め頃に自由論題報告については募集要領など詳細をご案内する予定です。     申込締め切りは、大会準備の都合上6月末の予定と伺っています。 [地域部会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:大きな変更箇所は第3条です。    これまで地域部会は、北海道部会・関東部会・中部部会・関西部会・九州部会の5つの部会に    分かれて活動していましたが、改正後はエリアを大きく2つに分け、東日本部会と西日本部会とすることになりました。   Q:5つの部会はどのように分かれますか?   A:東日本部会(北海道・関東地方)、西日本部会(中部・関西・九州地方)となりますが、     会員は地域に関係なく部会に参加することができます。   Q:改正の趣旨はどのようなものですか?   A:これまで各地域部会で年3回以上の開催が定められていました。     ただ、地域によって会員数にバラつきがあり、会員の少ない地域では思うような部会の開催が難しく、     合同部会という形で開催していました。その状況に加え、コロナウイルスの影響で対面からリモート環境下へと切り替わり、     遠隔地からでも容易に参加することが可能になったことから、地域を大きく2つに分けた部会編成となりました。   Q:新しい部会長・役員は決まっていますか?   A:東日本部会長は鷹野宏行氏(武蔵野大学)、西日本部会長は吉田初恵氏(関西福祉科学大学)の就任が理事会で承認されています。    その他役員の人選は改めてお知らせします。   Q:地方での部会開催はなくなりますか?   A:部会は2つとなりますが、地域性を考慮して運営委員を用意します。    部会は部会長と運営委員が地域性を考えながら対面・リモートで開催します。なお、規程では会員はいずれの    地域部会にも参加できると定められているため、地域を超えての参加が可能となります。    東日本部会では全国大会前に3回、大会終了後に2回の開催予定と伺っています。   Q:新部会はいつから始まりますか?   A:役員の新体制が決まり次第、新しい部会が始動します。 [分野別研究会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:来年度(23年度)で最終報告を迎える「大学等学校法人研究会」「NPO法人研究会」「医療福祉系法人研究会」、    再来年度(24年度)で最終報告となる「公益・一般法人研究会」の活動が終了した後に、分野別研究会運営規程は廃止となります。   Q:分野別の研究活動はどのようになりますか?   A:規程廃止後、分野別研究会としての活動はなくなりますが、新しく始まる「特別委員会」として、     新たな研究活動を続けていくことになります。 [特別委員会運営規程]   Q:特別委員会制定の目的は何ですか?   A:特定の分野に限らず、複数の分野に跨る課題や新たな課題について研究を行うことを目的としています。   Q:どのようなことを研究しますか?   A:研究テーマは様々な分野に跨るように設定することを想定しています。 ※Q&Aは学会Webサイトで随時更新していきます。 規程改正のQ&A

  • 情報公開 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    定款・役員名簿(法人概要を参照) 第九期(2022年8月1日~2023年7月31日)  貸借対照表 第八期(2021年8月1日~2022年7月31日)  貸借対照表 第七期(2020年8月1日~2021年7月31日)  貸借対照表 第六期(2019年8月1日~2020年7月31日)  貸借対照表 第五期(2018年8月1日~2019年7月31日)  貸借対照表 第四期(2017円11月1日~2018 年7月31日 )※公益認定後  貸借対照表 第三期(2017年8月1日~2017年10月31日)※公益認定前  貸借対照表 第二期(2016年8月1日~2017年7月31日 )   貸借対照表 第一期(2016年1月7日~2016年7月31日 )   貸借対照表 情報公開

  • 第25回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第25回大会記 2021年9月25~26日 関西大学 統一論題 非営利法人の理念と制度  2021年(令和3年)9月25日(土)・26日(日)の日程で、非営利法人研究学会第25回全国大会が関西大学を主催校として開催された。統一論題は「非営利法人の理念と制度」であった。 第25回目を迎える本大会では、前年同様に新型コロナの異常事態の中での開催となり、すべての プログラムをライブ配信によるオンライン開催とした。こうした非常事態だからこそ、あえて非営 利組織の本質を考えることを目的に、統一論題のテーマを「非営利法人の理念と制度」と設定し、 それぞれ報告と討論会を行うこととした。  また、大会中は3名の統一論題報告、8名の自由論題報告、3つの分野別研究会及び受託研究報告が行われた。また、本大会の研究報告は2日間のプログラムとして編成し、あわせて、大会前日の9月24日(金) に常任理事会と理事会を開催し、25日(土)に社員総会と新理事会を開催した。 統一論題報告 趣旨・司会 柴 健次氏(関西大学)  本学会の過去の記録を振り返ると、法人種別のテーマが論じられ、あるいは会計基準が論じられるなど、時々の話題が取り上げられてきた。しかし、非営利組織の本質とは何かにつき論じる機会があっていいのではないかと思い、テーマを「非営利法人の理念と制度」にした。法学分野を代表して岡本仁宏 氏に、経営学分野を代表して小島廣光 氏に、会計学分野を代表して日野修造 氏にご登壇いただいた。形式的に3分野から出ていただいたというより、学問分野の異なる3分野間でのより良いコミュニケーションを図るきっかけを作ることも目的であった。 第1 報告 「非営利団体は、今、どこにいるのか:市民社会論の視角から」( 岡本仁宏氏・関西学院大学)  本報告では、世紀転換期非営利法人制度改革の次に来るべき21世紀非営利法人制度改革の課題を明らかにするために、非営利組織の歴史社会的な状況の市民社会論の視角からの確認が行われた。さらに、市民社会の実 証的把握と規範的把握の概要が示され、今、市民社会論から改革課題を位置づけることの意義が論じられた。最後に、IT革命の下での市民社会の変容に伴う可能性について言及し創造的適応の必要性が示唆された。 第2 報告 「非営利法人制度改革の研究―新・政策の窓モデルによる実証分析―」( 小島廣光氏・星城大学)  本報告は、わが国において長い間必要性が認識されながらも行われてこなかった非営利法人制度改革が、21世紀の初頭に「なぜ」そして「どのように」実現したのかを事例研究によって解明することが目的とされた。まず、新・政策の窓モデルにもとづいて、2つの事例(公益法人制度改革ならびにNPO法と寄付税制の改正)の詳細な年代記分析が行われた。次に、それぞれの事例の共通 点と相違点に関する発見事実を析出するとともに、政策形成の本質に関する命題が導出された。 第3 報告 「非営利法人会計における資本と収益の区別―アンソニーの提言を受けて―」( 日野修造氏・中村学園大学)  本報告は、資本と収益の区別問題を非営利組織会計の分野に適用し検討が行われた。まず、純資 産を拘束によって区分する純資産概念が主流であることを明らかにした上で、非営利組織会計にお いても純利益の測定が重要であり、資本と収益を区別した純資産の構造を主張するR.Nアンソニー の提言について検討が行われた。そして、アンソニーの提言を加味した非営利組織の純資産区分が 提案された。なお、報告では非営利組織が獲得した純利益は、サービス提供可能資源正味残高純増 額であることが明らかにされた。 自由論題報告 司会(第1・第2・第5・第6各報告) 中嶋貴子氏(大阪商業大学) 司会(第3・第4・第7・第8各報告) 初谷 勇氏(大阪商業大学) 第1 報告 「オーケストラ団体における活動財源の集中度と予測可能性に関する実証分析」( 武田紀仁氏・税理士、日本大学経済学研究科博士後期課程)   本報告では、文化芸術活動の主体となる非営利組織体が獲得する収入源の種類・性質・収入源の 集中度が非営利組織体の持続性に及ぼす影響を調べるため、オーケストラ団体のサンプルを用いた分析が行われた。その結果、収入源と持続性の関係を分析するうえでは、収入源の種類や集中度に加えて、設立経緯などに起因する団体の属性と収入源の予測可能性の関連性を考慮して分析を行うことの重要性が説明された。また、文化芸術活動の主体となる非営利組織体のうちオーケストラ団体では、団体の属性により収入構造に差異が存在し、団体の属性と関連性のある予測可能性が高い収入源に対して依存度が高いことがデータから示された。 第2 報告 「NPO支援組織と制度ロジック変化 ―アリスセンターのケース―」( 吉田忠彦氏・近畿大学)  本報告は、日本においてNPO支援組織がどのように発生し、どのようにひとつの制度として普及していったのか、そして組織はその制度とどのように向い合うのかを、そのパイオニアとされる アリスセンターをケースとして分析された。長期にわたる事業の変遷などの分析から、同組織は「市民運動」、「NPO」、「中間支援組織」などの複数の制度ロジックを使い分けながら事業を模索して いたと論じられた。 第3 報告 「クライシス下における信用保証協会の役割 ―中小企業支援に着目して―」( 櫛部幸子氏・鹿児島国際大学〈報告時〉、現在は大阪学院大学)   本報告は、信用保証協会がどのような非営利法人であるかを説明し、そのうえで、公的資金を基 礎とする信用保証協会にデフォルトが生じることの是非や、クライシス下においてどのような視点 をもとに保証判断をすべきなのか等を検討するものである。信用保証協会はクライシス下においても、事業の継続性が望める中小企業に対し信用保証をすべきであり、保証判断の際に、中小企業に更なる会計情報等の提出を求めることが重要であると指摘されている。 第4 報告 「公益法人をめぐるサードセクター論とビジネスセントリズム・ガバメントセントリズム」( 出口正之氏・国立民族学博物館)  公益法人制度改革・税制改革は、いずれも思想的には「政府でもない企業でもない原理を持ちう る第三セクターとしての非営利セクター」に対する期待から打ち出されたものであった。言い換え れば、民間公益セクターの行動原理の独自性の認識が前提であった。 ところが、民間公益セクターに対するこのような理念的積極論があるにもかかわらず、大企業に 対する規制等を適用しようとする「ビジネスセントリズム」、政府に対する規制等を適用しようとする「ガバメントセントリズム」によって、公益法人を律する規制が「効率的ではない」(ビジネ スのルール)、「公平ではない」(ガバメントのルール)といった不文律のルール適用が、大量の明文化された法規制の上に被され、公益法人側に守るべきルールの共有化が揺らぐアノミー現象が起 こりかねない状況が生じていることが明らかにされた。 第5 報告 「非営利組織における自己組織性の実証的研究~公益法人を対象とした調査に基づいて~」( 吉永光利氏・公益財団法人倉敷市スポーツ振興協会・岡山大学大学院)  本報告は、非営利組織における自己組織性(組織が自己決定・自律的に組織変革を図る特性)に ついて、実証主義に基づいた定量的・定性的方法による諸調査の分析結果と考察を提示するものである。具体的な調査では、主に中国地方に所在する公益法人を対象(361法人)とし、アンケート 調査(119法人から回答)とインタビュー調査(17法人に実施)が行われた。そして、これらの調査から得られたデータを基に非営利組織における自己組織性の実態について論じられている。 第6 報告 「活動領域特化型中間支援組織における支援内容の変化と機能の移管―総合型地域スポーツクラブ の事例分析―」( 伊藤 葵氏・富山国際大学)  本報告は、多様な主体が連携したサービスを提供が求められる公共圏における中間支援組織の役割に着目し、総合型地域スポーツクラブを事例とし、組織の成長に応じた支援内容と支援の担い手の変化が分析された。組織の成長過程では、支援の担い手は公的な機関から民間へと移行すること、 支援内容は組織間のコーディネーションが重視されていくことが示された。また、支援対象組織へ の支援機能の移管や複数の組織での支援機能の分担についても指摘されている。 第7 報告 「地方自治体における内部統制と公務員倫理」( 井寺美穂氏・熊本県立大学)    本報告は、地方自治体において「公務員倫理」や「内部統制」、「リスク管理」などの名称で類似の取組みが行われていることに着目した上で、近年、制度化が行われた内部統制に係る取組みと公務員倫理を確保するための各種取組みの目的や実施内容等を比較考察しながら、それらの相違や共通性等を検討されたものである。その上で、地方自治体はその団体の規模に応じて、取組みに格差がみられ、今後、特に小規模団体の取組みが重要になるのではないかと指摘されている。 第8 報告 「非営利組織の国際会計基準プロジェクトと日本への示唆」( 金子良太氏・國學院大學)    報告の最初に、非営利組織の会計の国際的枠組みを形成することを目標とするIFR4NPOプロジェ クトの概要が述べられた。本報告では、プロジェクトにより策定される非営利組織会計の目的、非営利組織に特有の会計の課題に加えて、IFR4NPOに資金を拠出したり策定プロジェクトにかかわる個人や団体等に着目し、わが国への示唆が示された。 分野別委員会報告 司会:吉田忠彦氏(近畿大学) 「NPO法人研究会」報告 出口正之 氏(国立民族学博物館)    この1年の間(2020年10月から2021年9月)の間に、NPO法人にとって極めて重要な報告書が二点出ている。一点は新時代に合わせた報告であり、「NPO法人会計基準策定10周年記念行事 ~歴史秘話 基準誕生の頃の話を聴く夕べ~」と題され、ZOOMによるNPO法人会計基準10周年の会議記録と関係資料・動画が公表されている。  また、もう一つは、特定非営利活動法人NPO会計税務専門家ネットワーク福祉サービスに関する法人税課税問題検討委員会『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』(委員長岩永清滋 氏)である。収益事業課税は政策の中でたびたび論じされている一方、収益事業課税とは何かに ついて十分に検討されていた研究書はこれまでほとんどなかったものと言える。本報告書は歴史、 税法、関連法規、判例等に十分に目配りして現行の収益事業課税の問題点を詳細に検討されている。 NPO法人部会としてもこれらのNPO法人を巡る大きな出来事に対して、学会各方面の学術的関 心を喚起するために江田 寛 氏、岩永清滋 氏を招いて検討がなされ、いずれも学術的に非営利の会計や税制を議論するうえで欠くことのできないものとなっていることが確認された。 「医療・福祉系法人研究会」報告 ( 千葉正展氏・独立行政法人福祉医療機構)    医療・福祉系法人研究会は、現在の福祉・医療に係る制度・政策の流れのなかで、「地域包括ケア」、 「地域共生社会」など地域における様々な社会資源と医療法人、社会福祉法人等との関係性が重要なテーマになるとの認識の下、これまでの部会の活動においては「地域医療連携推進法人制度」や 「地域との連携を進めている名古屋の南医療生協の視察」など研究活動が進められてきた。そうした流れの中で国においては、令和2年に社会福祉法が改正され新たに「社会福祉連携推進法人制度」 (以下「福祉連携法人制度」)がスタートすることとなった。  以上を踏まえ、福祉連携法人制度検討の背景、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会での主な議論と論点、改正社会福祉法における福祉連携法人制度の規定内容等が紹介されるとともに、本学会会員の何名かが別途参画した厚生労働省の「社会福祉法人会計基準等検討会」における社会福 祉連携推進法人会計基準の検討状況とそこでの検討の論点などについても報告され、医療・福祉系 法人における今後の展開や課題等について考察がなされた。 「大学等学校法人研究会」報告( 古庄 修氏・日本大学)    大学等学校法人研究部会は、広く「大学のガバナンスとアカウンタビリティ」を主題として、学 校法人の経営と会計をめぐる理論・実務・政策に係る諸提言の総合化を目指して、最終報告が行わ れた。最終報告書として、①「大学法人の会計―非営利法人会計の議論に資するための考察―」(柴 健次)、②「学校法人における固定資産と学校法人会計基準との関わりについて―特に社会科学系統 の学部を有する四年制大学に関心を寄せて―」(林 兵磨)、③「私立大学版ガバナンス・コードの 意義と課題」(古庄 修)、④「大規模私立大学ガバナンスの構築(試論)」(堀田和宏)の各論稿の 概要が報告された。 今後、本部会の活動は、柴 健次部会長の下で委員を再構成し、継続することになるとの報告があった。 受託研究報告 司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学) 「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究( 座長 成川正晃氏・東京経済大学)    本研究報告は、受託研究として組織された「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究会」の研究報告である。非営利組織の活動を捕捉し財務情報として開示、利用されることにより社会全体に非営利組織に対する理解が普及していくという観点から、非営利組織の会計処理を対象とした検定試験の社会への貢献度合いを把握し、今後の発展は可能かを調査・研究することを目的として設置された。 当日は、本研究会の各研究担当者から検定試験の概要の調査について報告するとともに、公益会計法人検定試験では、資格の有効性を分析し、組織における資格の効用および利活用の可能性を、 社会福祉会計簿記認定試験では人的資本論とシグナリング理論を用いた効果に関する検討を示し、 その後質疑が行われた。 御礼  非営利法人研究学会第25回大会は対面形式での開催が叶わず、第24回に引き続いてリモート(ライブ配信)開催となりました。長引くコロナ禍の社会的影響は大きく、諸学会もまた新しいスタイルを模索しているようです。本学会もそうでした。  今大会は関西大学主催ですが、大阪商業大学からも応援いただきました。両大学から成る準備委 員会は統一論題と同じくらい自由論題を重視する方針で合意に達しました。学会員への問題提起をしていただく統一論題、そして学会員の研究発表の場となる自由論題を等しく重視したのです。その方針に対応して、準備委員会の仕事を、①自由論題運営、②統一論題運営、③大会運営と大きく 分け、3分野が自律的に運営されました。こうしたことはコロナ禍であったからこそできたのかもしれません。複数の大学による合同開催の可能性を探れたのかもしれません。  当学会では元々全国大会の自由論題を重視しています。地域部会長の承認を得て、全国大会へエ ントリーするという仕組みそのものが自由論題重視の姿勢だと思っております。各地域部会長に努力していただき8本のエントリーが実現しました。  統一論題は掲げた統一テーマは重要であります。その上で、法律、経営、会計等の研究者が相互 理解可能な状況を作りたいと報告者に無理なお願いもしました。ご登壇いただいた3先生には無理も聞いていただき、話題の共有に努力いただきました。  常設の分野別委員会と受託研究についてはそれぞれご報告いただきました。これらは中間報告な り最終報告をすることが会員への義務であると位置づけられていることから、すべての委員会にご 報告いただきました。  以上で報告は15本になりました。その報告を準備委員会委員が、企画者、座長、司会者としてかかわっておりますので、本大会記も準備委員会で作成できたかもしれません。しかし、そうするこ とは大会記に主観的な評価を持ち込むことになりかねません。そこで、ご報告者15名全員に報告要 旨の提供をお願いしました。準備委員会が多少表現の統一性を求める修正をしたこと以外は、報告 者による要旨を大会記の素材として利用させていただきました。 以上を踏まえ、ここに大会記を示すことができました。大会における報告者、司会者、各報告へ の参加者・質問者ほかすべての関係者に御礼申し上げます。 2022年5月12日 非営利法人研究学会第24回全国大会準備委員会 準備委員長 柴 健次(関西大学) 委員 橋本 理(関西大学) 馬場英朗(関西大学) 初谷 勇(大阪商業大学) 中嶋貴子(大阪商業大学)  

  • ワーキングペーパー | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    ワーキングペーパー  本学会では、非営利分野の発展に寄与することを目的として『ワーキングペーパー』を発行しています。 ▶ワーキングペーパー投稿規程(PDF) ◆2019年度ワーキングペーパー一覧 ワーキングペーパー

  • 第1回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第1回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成14年7月27日 非営利法人研究学会 審査委員長:守永誠治  公益法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、学会賞(平成13年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)及び学術奨励賞(平成13年度全国大会の報告に基づく大学院生並びに若手研究者の論文)の候補作品を慎重に審議した結果、つぎの2点の論文を受賞論文として選定しましたので、ここに報告いたします。なお、著書については学会賞に該当するものはありませんでした。 1. 学会賞 堀田和宏(近畿大学)「非営利事業の社会的機能と責任」(平成13年度公益法人研究学会全国大会統一論題報告、於・中央大学、『公益法人研究学会誌』VOL.4掲載) 【受賞論文の内容と受賞理由】   もともと、非営利事業の責任は、それぞれのもつミッションを持続的に遂行するということにあり、このミッションに信頼を寄せて集まる寄付者、政府・地方自治体、購入者、利用者、ボランティアなどの利害関係者の信頼と期待に応えることである。そのために、非営利事業に求められている社会経済的機能とその責任を明らかにし、その結果、どこに解決すべき問題があるかを明らかにしようとする。本論文の出発点がここにある。  非営利事業の社会経済的機能とその責任について、つぎの4つのカテゴリーが示されている。つまり、非営利組織特有の寄付行為者とミッションに対する受託責任、サービス測定・評価に弱いクライアントの信頼に応える責任、準公共財のサービス供給に対するいわゆる社会公共的責任、組織自体の継続性確保のための組織維持責任がこれである。これが、期待と信頼になるのであるが、このような期待と信頼に反して、意外とも思われるマイナスの機能、つまりモラルハザードをもつ可能性が出てくることを指摘している。非営利事業なるがゆえに生ずるモラルハザードを分析し、信頼性のゆえに、この種のモラルハザードを防ぐ手だて—公共の規制、利害関係者の統治力や競争促進制度—が十分に整備されていないため、この中で自己生産的な経営が制度化されていると指摘する。  このような問題を克服するために、まず第1に、外部からの「統治力」を補強することが急務であり、第2にこの「統治力」を保証するための経営者側の「アカウンタビリティ」を拡大・深化させるべきであると考えている。第1の点は、本論文の強調するNPOガバナンスのあり方を再構築する方向である。また、第2の点は、「今日のアカウンタビリティは、多様な利害関係者がそれぞれなりの経営への統治力を確保できるように、経営の透明性と公正性を証明する責任」としてこれを展開、つまり拡大・深化する必要があることを力説する。  本論文は、非営利事業に求められる社会経済的機能とその責任を明らかにし、非営利事業なるがゆえに生ずるモラルハザードを取り上げ、これを克服するためにNPOガバナンスの再構築とそれを可能にするアカウンタビリティを拡大・深化させる必要性を明らかにしようとしている点に特徴がみられ、問題の着眼点、分析方法と検討内容、提言など論文の展開を通じて卓越した非営利事業研究に対する姿勢を窺うことができる。このような研究は、受賞者の長年にわたる研究生活の中から生み出されたものであって、一朝一夕にして成し遂げられるものでないことは何人も認めるところである。同時に、この研究が非営利事業研究の今後の発展に寄与するところ大であるとの審査委員の一致した見解を得た。  以上の点から本論文を学会賞として選定した。 2. 学術奨励賞 梅津亮子(九州産業大学大学院博士後期課程)「看護サービスの活動レベルの原価標準設定」(平成13年度公益法人研究学会全国大会自由論題報告、於・中央大学、『公益法人研究学会誌』VOL.4掲載) 【受賞論文の内容と受賞理由】   本論文は、無形サービス活動の効率性(efficiency)と有効性(effectiveness)の測定・評価という枠組みの中で、これまで独自の研究領域として認識されていない看護サービスを対象とした原価計算モデルの開発を試みたものである。  論者が取り上げる原価計算モデルは、活動レベルの標準と患者レベルの標準から看護サービスを捉えることにあるが、本論文は、原価計算モデルの基礎的な部分を構成する看護サービスの活動レベルでの原価標準設定を中心に論述したものである。  原価計算を一般化できるような測定尺度とするためには、異なる環境のもとでの利用が難しい実際原価ではなく、標準原価が望ましいと考えている。看護サービスの測定・評価体系の中で標準を設けるということは、看護サービスとりわけ看護活動を測定可能なように具現化することを意味する。それ故に、本論文では、看護活動という単位によって原価標準を実証的に測定することを試みている。  そのため膨大な看護サービス関係及び活動基準原価計算関係の文献を渉猟した上で、看護サービス活動を115活動に分類して「看護活動標準調査表」を作成し、国立N病院の協力を求め全6病棟でデータを実際に収集している(本論文では呼吸器病棟の事例を提示している)。調査事項は、病棟ごとの患者1人に対して1つの看護活動を1回行う場合の保険点数、材料品目と費用、活動プロセス、作業時間等である。作業時間については、各活動を準備・説明・実施・後片付けに分けて測定している。この区分はクリティカル・パス分析に資するためという。また、説明を特に独立させているのは、この作業がInformed Consentと患者の満足を高める重要な作業と考えているからである。  本論文では、看護サービスを看護活動という具体的な行動に細分化することによって、その活動の現場における原価を把握し、看護必要度分類別の患者1人当たり原価とを統合することで、看護サービスについての原価標準の計算が可能であることを明らかにし、また、その結果はモデルの妥当性と可能性を示すものとなっている点に、これまでの研究にない貢献が見られるところである。特に、看護サービスに関する原価計算は、これまで十分に論じられることがなく、また、ここで示された方法は、他の無形サービスの分析においても利用可能である点にも注目すべきであろう。「看護サービスの効率性と有効性の測定・評価」という、いわば長編小説の構成部分を短編論文という形にしているため多少の難点も指摘できるであろうが、その研究体系・オリジナリティ・文献渉猟の確かさ・その努力からみて学術奨励賞に十分値するとの審査委員の一致した見解を得た。  以上の点から学術奨励賞に本論文を選定した。

  • 第17回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第17回大会記 2013.9.21-22 近畿大学 統一論題 非営利法人における制度・会計・税制の改革を総括する 日本大学大学  古庄 修  非営利法人研究学会第17回大会は、本年9月21日(土)から9月22日(日)の日程で、大阪府東大阪市の近畿大学(大会実行委員長 吉田忠彦近畿大学教授)において開催された。  本大会の統一論題は、「非営利法人における制度・会計・税制の改革を総括する」であり、大会初日の理事会等に引き続き、2日間にわたり会員各位の多彩な研究成果が披瀝された。  以下、ここでは本学会プログラムのなかで統一論題報告、部会報告および特別公開セッションにおける報告と討論の概要をお伝えする。16篇に及ぶ個人または共同研究に基づく自由論題報告については、いずれも研究意欲旺盛かつ学会の発展に資する内容であったが、紙幅の都合上、割愛させて頂く。  なお、会員総会の開会に先立ち、本研究学会の常任理事として草創期の学会運営ならびに学会誌の編集に一方ならぬご尽力を賜った故川崎貴嗣氏のご冥福を祈り、氏に対する感謝とともに黙祷が捧げられたことを付記したい。 【統一論題報告】  大会2日目に、本大会を記念し、出口正之氏(国立民族学博物館教授)による基調講演「公益法人制度改革を総括する—移行期間終了を目前に控えて—」が行われた。出口氏は、内閣府公益認定等委員会の第1期(非常勤)および第2期(常勤)の6年間にわたり当該委員を務められた。氏の見識と深い洞察に基づく公益法人制度改革の経緯の詳細な説明と総括を受けて、広く非営利法人をめぐる税制、会計および制度の各観点から、上記統一論題報告が行われた。  登壇した3名の報告者とテーマは、①成道秀雄氏(成蹊大学教授)「非営利法人税制の今後の課題」、②古庄 修(日本大学教授)「非営利法人会計基準の統一問題—わが国における財務報告制度改革を指向して—」、③齋藤真哉氏(横浜国立大学教授)「非営利法人制度の現状と課題」であった。  成道氏は、平成20年度における非営利法人課税の大改正をふまえて、問題点の整理と今後の課税の在り方について議論を展開された。氏は、非営利型法人の要件充足を確認する制度を設けるべきこと、一般社団・財団法人法第131条に基づく基金の課税上の性格が検討されるべきことを提言するとともに、公益認定法人と非営利型法人に対するみなし寄附金の取扱い、法人形態の変更時における累積所得金額の課税制度、収益事業課税、金融収益課税および宗教法人・学校法人等に対する本来の事業に対する課税等、課税の在り方をめぐる論点を明示し、非営利法人が事業を安定的に継続していくために、非課税とすべき範囲の拡張に繋がる見直しを主張された。  古庄(筆者)は、英国における財務報告制度の再編成とそのなかに組み込まれた非営利法人(英国では公益目的事業体(PBE)と定義する)の会計基準をめぐる議論の経緯と到達点をふまえて、わが国における非営利法人会計(基準)の現在を相対化して捉えることにより、これまで主張されてきた非営利法人に横断的な会計基準の必要性と可能性を改めて検討した。企業会計と非営利法人会計の相克の歴史を乗り越えて、現在まで「セクター中立」に基づいて両者が接近し、共通化が進められてきたとしても、両者の間にある距離感を適切に保持する必要もある。かかる観点から、最近日本公認会計士協会から公表された研究報告書を素材として、横断的かつ首尾一貫した「会計枠組み構築」の必要性、統一的な非営利法人会計基準と法人別会計指針の相互の連係および会計基準設定主体の在り方に係る論点を考察するとともに、当該統一会計基準の設定をめぐる学会の役割と課題を示した。  齋藤氏は、非営利法人の本質を捉えて、非営利法人の存在意義とその変化の理由を市場の失敗と政府の失敗を論拠として説明されたうえで、新たな制度への移行が進められている一般社団・財団法人、公益社団・財団法人をはじめとする非営利法人制度全体を総括し、その現状をふまえた課題を検討された。氏は、準則主義(登記主義)と認可主義の理解をふまえて、許可主義を採用した旧公益法人制度の問題を指摘するとともに、準則主義における非営利法人の自立と自律の必要性を強調された。また、公益の意味を税制優遇との関係において再確認したうえで、公益性の認定における収支相償をめぐる課題、および特例民法法人から一般社団・財団法人への移行、合併等の組織変更に伴う課題として非営利法人のミッションの見直しが必要となる問題を具体的な事例を示して明快に説明された。  各報告直後に行われた討論においては、吉田忠彦氏を座長として、非営利法人制度の現状認識を共有し、当該制度改革の到達点と課題について活発な質疑が交わされた。 【部会報告】  大会3日目に開催された研究部会報告においては、東日本部会として岡村勝義氏(神奈川大学)を委員長とする「日本及び諸外国における非営利法人制度に関する研究—制度史・制度設計・報告制度・税制度等を中心として—」と、西日本部会として森 美智代氏(熊本県立大学)を委員長とする「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」の各報告が行われた。 東日本部会報告については、わが国において新たに施行された非営利法人制度を諸外国の非営利法人制度の歴史的経緯、制度設計の方法および制度自体の特徴を主としてガバナンスや財務報告制度と関連させて検討することにより、非営利法人制度の在り方に論究した最終報告書が示された。本報告書には、「公益法人の制度転換と会計枠組みの変化」、「NPO法人会計基準の検討」、「わが国学校法人会計基準のこれまでの展開と最近の動向」、「協同組合持分会計に関する研究」、「英国チャリティの会計—チャリティ会計とチャリティ委員会の役割—」、「英国の非営利組織—非営利法人制度と財務報告の制度的枠組み—」、「米国における非営利組織の類型と会計基準設定の現状」および「米国における寄付に係る会計基準—1992年改訂公開草案—」の各論考が、収録されている。当日は、尾上選哉氏(大原大学院大学准教授)が米国における寄付に関する会計基準について、特に収集品の会計処理の特徴と論点を検討された。  もう一つの西日本部会報告については、地域における行政をめぐる環境の変化と地域の連係とガバナンスの在り方、そして地域における医療と福祉の在り方に焦点をあて、熊本県等における具体的な事例研究に基づいて報告書が一貫した主題の下にまとめられた。本報告書には、地域における行政の現状を考察した「環境の変化と自治体職員像の変容」、「地域の公共を担う地縁組織—その重要性と活性化のあり方—」、「コミュニティと自治—中山間地域における地域ガバナンス—」が、また地域における医療と福祉問題に論究し、「大学のミッションと財務報告の役割」、「公立病院の医療改革の現状」、「地域包括ケアシステムの現状と課題—定期巡回・随時対応サービスを中心に—」の各論考が収録されている。  なお、本学会総会において地域部会が再編成され、今後、北海道、関東、中部、関西および九州に各部会が配置されることが決定した。研究者と実務家の双方向の議論の場として、学会の底上げに繋がる各部会のより一層の発展を祈念したい。 【特別公開セッション】  本年度の学会では、特別セッションとして、江田寛氏(公認会計士)を座長とするパネルディスカッション「善意は被災者に届いているか—東日本大震災の寄付の大半が行政的配分に委ねられた理由を探る—」が企画された。本セッションは、会員の研究成果を外部に公開し、議論の場を積極的に提供することにより社会に貢献することを目的としており、当日の登壇者は、岩永清滋氏(公認会計士)、大久保朝江氏(NPO法人杜の伝言板ゆるる代表理事)、藤井秀樹氏(京都大学教授)、牧口一二氏(NPO法人ゆめ風基金代表理事)の4名であった。  被災者に分配される義援金は公共的配分手続きに基づき、公平・平等を旨とするが、他方で、被災後4か月が経過した時点で義援金は3,000億円に達していたにもかかわらず、被災者に配分されたのはその25%である775億円にすぎなかった。また、被災者支援の資金となる支援金も一部に集中し、その他の団体が資金不足となる等、いびつな偏りが見られたという。本セッションにおいては、義援金と支援金の定義およびその相違点について理解を深めるところから始まり、寄附が義援金に集中した理由や、NPOの現場における支援金の調達方法等、明確な問題意識をもって「善意」の効率的な配分システムの在り方とその構築に向けた熱情に溢れた活発な議論が展開された。

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