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  • 第16回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第16回大会記 2012.8.25-26 北星学園大学 統一論題 地域活性化と非営利活動 北海学園大学  菅原浩信  非営利法人研究学会第16回大会は、2012年8月25日(土)〜26日(日)の2日間にわたり、北星学園大学を会場に開催され、会員を含め約90名の参加者があった。なお、前日の8月24日(金)には、常任理事会および理事会が開催された。 【1日目】  大会1日目(25日)は、北星学園大学の田村信一学長からの挨拶の後、総会が開催された。大会委員長及び会長からの挨拶、会務報告(新入会員の紹介、学会誌VOL.14の発行、平成23年度事業報告)、第11回学会賞・学術奨励賞・学術奨励特賞の審査結果報告、事辞典刊行事業の報告が行われた。その後、平成23年度収支決算案、平成25年度事業計画・収支予算案、会則の改正、理事等の任期満了に伴う改選等の審議が行われた。  総会終了後、引き続き統一論題「地域活性化と非営利活動」の報告・討論(司会:樽見弘紀氏(北海学園大学))が行われた。統一論題の報告では、以下の3名の報告者から報告が行われた。  第1報告として、杉岡直人氏(北星学園大学)による「地域活性化と地方自治体の取り組み:北海道における自治体とNPOのパートナーシップの実際から」についての報告が行われた。北海道における行政とNPOのパートナーシップの状況が報告されるとともに、行政とNPOのパートナーシップを推進するための要件が示された。また、先駆的な福祉NPOの事例として、「ネットワークサロン」「べてるの家」の紹介があった。  第2報告として、早瀬京太氏(北海道経済部経営支援局中小企業課中小企業支援グループ主幹)による「行政の視点からみた非営利活動と地域活性化−住民参加型まちづくり事業の効果と課題−」についての報告が行われた。住民参加型プログラムの事例として「マッチングファンド」(シアトル市)、「企画提案制度」「サイクリングロードアート事業」(札幌市厚別区)が紹介されるとともに、住民参加型プログラムにおける効果と課題が示された。  第3報告として、河西邦人氏(札幌学院大学)による「社会的企業による地域活性化」についての報告が行われた。北海道における社会的企業の事例として「ねおす」「ネットワークサロン」「西神楽グラウンドワーク」の3つをあげ、それらの活動内容等をふまえ、ソーシャルビジネスの創出における2つのメカニズムが提示されるとともに、社会的企業が地域活性化を実現するための要件が示された。  報告終了後、休憩をはさんで討論が行われた。討論では、ここ10年来、北海道でNPOの成功事例が新たに出現していない背景、人口減少や高齢化が進展する中での住民参加型プログラムのあり方、厚別区の事業名に「資金」が入っていない理由、ソーシャルビジネスの定義づけ、営利企業のCSRとソーシャルビジネスの関係、社会的成果と経済的成果のトレードオフ、社会的企業と社会的ネットワークの関係、「ボランタリーの失敗」への対応等、様々な論点が出され、活発な議論が行われた。  統一論題報告・討論終了後、北星学園大学学生会館にて懇親会が行われた。 【2日目】  大会2日目(26日)は、午前中に自由論題報告が行われた。自由論題は、3つの会場に分かれ、計15本の報告が行われた。各会場の報告者および論題は、以下の通りである。 ●第1会場(司会:⑴〜⑶千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構)、⑷〜⑸今枝千樹氏(愛知産業大学)) ⑴ 深山誠也氏(北海道大学大学院)「社会福祉法人の戦略と組織−高齢者介護組織を対象とする実証研究−」 ⑵ 山口忠保氏(東北公益文化大学大学院)「自治体の公共交通政策の現状と課題−小山市のコミュニティバス運行の事例を中心に−」 ⑶ 源田佳史氏(公認会計士)「NPO法人の農業参入について−NPO法人の農業参入の可能性と限界−」 ⑷ 林孝之氏(厚別区介護予防センターもみじ台)「NPOが地域のサロン活動の担い手となることの意義」 ⑸ 湯上千春氏(東京工業大学)「福祉ワーカーズ・コレクティブの持続的な発展要因の事例分析」 ●第2会場(司会:⑴〜⑶江田寛氏(公認会計士・税理士)、⑷〜⑸会田一雄氏(慶応義塾大学)) ⑴ 神保集氏(国士舘大学大学院)「一般社団法人の基金について−基金の会計的な性質−」 ⑵ 水谷文宣氏(慶応義塾大学大学院)「香港の民間非営利組織会計実務−会計基準の不在と新法案」 ⑶ 早坂毅氏(税理士)「遺贈・相続による寄付の仕組みに関する調査・研究」 ⑷ 村山秀幸氏(公認会計士)「平成20年度公益法人会計基準の会計間取引と公益目的取得財産残額への影響」 ⑸ 馬場英朗氏(愛知学泉大学)「NGOの監査とガバナンス−資金拠出制度による指導機能と私的自治」 ●第3会場(司会:⑴〜⑶小島廣光氏(札幌学院大学)、⑷〜(⑸平本健太氏(北海道大学)) ⑴ 伊藤葵氏(早稲田大学大学院)「公民連携におけるインターミディアリーの重要性」 ⑵ 野口寛樹氏(京都大学大学院)・定松功氏(龍谷大学)・大石尚子氏(龍谷大学)「大学を中心とした産官学民連携による地域活性化〜亀岡カーボンマイナスプロジェクトの事例を中心に」 ⑶ 今井良広氏(兵庫県)「公有資産のコミュニティ移転−英国の事例から−」 ⑷ 小熊仁氏(金沢大学)「わが国の観光分野における公民間コラボレーションの検討と非営利組織の役割」 ⑸ 初谷勇氏(大阪商業大学)「地域共治組織の制度設計と市民社会組織(CSO)の再編」  午後からは、栗田敬子氏(NPO法人エコ・モビリティサッポロ代表)による講演「人をつなぐベロタクシー」が行われた。講演では、札幌でのベロタクシーの現状、全国での運行状況、札幌で運行しようと思った理由、事業化に向けた課題とその解決方策、今後の可能性等について、具体的な説明が行われた。  講演終了後、部会報告が行われた(司会:原田満徳氏(松山大学))。東日本部会からは「日本及び諸外国における非営利法人制度に関する研究−制度史・制度設計・報告制度・税制度等を中心として−」(岡村勝義氏(神奈川大学)、古庄修氏(日本大学)、金子良太氏(国学院大学))について、西日本部会からは「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」(森美智代氏(熊本県立大学)、澤田道夫氏(熊本県立大学)、黒木誉之氏(熊本県立大学)、河谷はるみ氏(九州看護福祉大学))について、それぞれ研究の進捗状況等の報告が行われた。  最後に、大会委員長からの閉会挨拶が行われ、盛況のうちに閉幕した。

  • 会長挨拶 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    ページ TOP ページ TOP 会長挨拶  2025年10月に開催された第29回全国大会における役員改選にあたり、当学会の規定に基づき、新会長に選出されました。1997年に公益法人とその諸活動を中心に据えた新たな研究の場として創設された本学会は、その後、民間非営利活動の広がりに伴う研究対象の多様化に対応して、2005年に現在の「非営利法人研究学会」に名称変更されました。2017年には公益認定を受けて、公益社団法人への移行を実現しました。志をひとつにして学会創設にご尽力いただいた先生方に思いを馳せ、また今日に至る着実な歩みを振り返り、学会の円滑な運営にあらためて重い責任を強く自覚するとともに、本学会のミッションの達成に向けて決意を新たにしております。  本学会の目的は、ますますその存在意義が高まっている非営利法人をめぐる諸問題を、さまざまな視点と方法に基づいて研究し、その学術的成果を広く社会に還元することにあります。  新しい資本主義の在り方が問われる中で、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を含む長期にわたるサステナビリティ課題は、いまや非営利法人の経営にとっても無視できなくなりました。加えて、性別、人種、国籍、年齢等、多様性のある個々人の幸福を含意するウェルビーイングへの関心の高まりは、「誰ひとり取り残さない」持続可能な開発目標(SDGs)を包含する未来の方向性を示しているとも言われています。心身ともに健康であり、加えて人と人とのつながりが社会全体に新たな価値を創造することが求められるとき、非営利法人の働きは社会課題を解決し、豊かさを実感しうる社会を志向するうえで不可欠です。ウェルビーイングな社会の実現に向けて、社会のあらゆる局面での非営利法人の力強い働きに対する期待は大きく、当該領域に係る研究もより一層厚みを増す必要があります。  前会長である齋藤真哉先生のリーダーシップの下で、全国大会におけるグループ研究が拡充される等、東日本、西日本の各部会とともに、大変有意義な研究報告と議論の場が備えられました。また、本学会の特徴でもある非営利法人制度に係る政策責任者や実務界との交流や対話もより一層充実して参りました。このような学会のプレゼンスを高める方向性を継承し、加えて査読制度に基づく学術的水準の高い学会誌の充実に努め、公益法人としての本学会の社会に対する情報発信に取り組んで参ります。       本学会の発展は、これまで会員各位の弛みない日々の研究努力に裏づけられており、同時に、学会の諸活動に対する会員各位のご理解とご支援により支えられてきました。今後も引き続き開かれた学会を目指す本学会のミッションに賛同される方々の入会をお待ちしております。                  会長 古庄 修

  • 第1回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    1997.10.4 青山学院大学 統一論題 公益法人研究の現状と課題—公益法人研究の原点を巡って—  1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動  2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察  3 社会福祉法人会計の本質  公益法人研究学会(会長:守永誠治氏)の第1回大会は、1997年10月4日、青山学院大学青山キャンパスの11号館において開催された。  統一論題「公益法人研究の現状と課題─公益法人研究の原点を巡って─」のもと、興津裕康氏(近畿大学)の総合司会により二題の研究報告並びに討論が行われた。  また、自由論題の報告と記念講演も併せて行われた。 1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動    報告:吉田忠彦氏(近畿大学豊岡短期大学)  吉田氏は「非営利組織としての公益法人の戦略行動《と題し、公益法人を非営利セクターの中核として捉えた上で、その経営戦略を規定する要因と戦略の類型について報告された。すなわち、非営利組織は①自ら掲げる使命遂行を目的とするが、②一方では組織の存続・拡大の慣性も働き、マクロ的には③組織の生存領域及び規模は政府(主務官庁)の調整に大きく影響される、と分析。そうした環境に適応するために、非営利組織は事業構造の戦略、競争の戦略、協調戦略をとるべきだと強調した。ただ、それらの戦略は、サービスの受け手だけでなく、支払い手となる多様な関連他者からのフィードバック情報に基づいて策定されるため、吊声獲得や協調戦略が重視されなければならないと主張された。 2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察—アメリカ非営利法人会計基準との比較—    報告:若林茂信氏(東京経営短期大学)  若林氏は「公益法人会計の問題点と改質向上への一考察《と題して報告された。この中で氏は現在国際的に最高の水準にある、私的セクターに属する非営利法人を対象としたアメリカの会計基準の発展の軌跡から現状を展望、その顕著な特色として12項目を抽出。このうち、日本の公益法人(広義に想定)会計を改質向上させるために適切と思われる8項目を教訓として選定され、これを公益法人会計の問題点を考察する上での好個の研究資料として活用すべきであることを主張された。 3 社会福祉法人会計の本質—施設会計を中心として—    報告:松倉達夫氏(中部女子短期大学)  松倉氏は自由論題として「社会福祉法人会計の本質《をテーマに、特に施設会計を中心に報告された。現在社会福祉法人に適用されている経理規定準則は1976年に発表され、それ以前の会計指針に比して近代化し、改善されたが、なお実務上問題があることを、氏は次の事項を掲げて本質を追究し、問題点の理論的な指摘がなされた。①消費経済体、②受託者会計、③複式簿記の徹底、④発生主義会計、⑤経理責任の明確化、⑥管理組織の確立、⑦予算の重要性、⑧収支計算書と貸借対照表。  以上の報告のほか、統一論題を総括するパネルディスカッションが開かれ、松葉邦敏氏(成蹊大学)を座長として、報告者の吉田氏、若林氏に白井万佐夫氏(公認会計士)、永島公朗氏(産能短期大学)、朊部信男氏(産能短期大学)がパネラーとなり、大会参加者を交えて活発な討論が展開された。  また、今大会では武田昌輔氏(成蹊大学)が「公益法人課税の史的変遷と今日的課題」と題して記念講演をされ、大会に華をそえた。  この後、会場を青学会館に移して懇親会が催され、青山学院大学を代表して経営学部長の杉山学氏が挨拶、会田一雄氏(慶應義塾大学)による乾杯の発声があり、会員の親睦と学会の今後の発展を祈った。 第1回大会記

  • 第14回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第14回大会記 2010.9.25・26 早稲田大学 統一論題 非営利法人制度改革と市民社会ガバナンス 公認会計士  清水貴之  非営利法人研究学会の第14回大会は、2010年9月25日・26日の両日、早稲田大学8号館(大会委員長:小林麻理氏)において開催され、100名を超える会員が参集した。その前日(9月24日)には常任理事会及び理事会が開かれた。 大会1日目は事辞典刊行委員会、会員総会に引き続き、本大会の統一論題「非営利法人制度改革と市民社会ガバナンス」に関するキーノートスピーチの後、パネリストよりそれぞれの立場から報告が行われ、柴健次氏(関西大学)の司会の下に討論が行われた。 【統一論題報告と討論】  キーノートスピーチは、大内俊身氏(元東京高等裁判所民事部総括判事・前内閣府公益認定等委員会委員)が「非営利法人制度の現状と課題」について行った。旧民法法人(公益法人)制度に対する批判と、そうした課題に対応した主たる立法の動きについて触れた後、新しい非営利法人制度の概要として、一般法人と公益法人の内容及び先の課題が解消されたか等について述べられた。旧民法法人制度において問題であった権利能力のない社団・財団が、準則主義の採用により一般法人としての設立が可能となった点は、画期的なことであると指摘された。  統一論題報告では、吉田忠彦氏(近畿大学)氏が、ガバナンス論の観点から「社会ガバナンスとNPO」について報告した。ガバナンス論には、政府によるコントロールの修正又は代替方法としての国家単位のネットワーク・ガバナンス論とマネジメントの上位概念としての組織単位のコーポレート・ガバナンス論があると分類した上で、現在、ガバナンスが問題となっているのは中央政府が機能不全を来していることが原因であるとした。  入山映氏(サイバー大学)は、市民セクターの社会における重要性を強調する観点から、「公益法人制度改悪 その根底にあるもの」について報告した。その中で公益とは、現在の公益法人制度においては、非営利かつ不特定多数とされているが、ガバナンスとは自分のことは自分で決め、その上で責任も自分で取るということであり、そもそも公益概念への適否の枠組みを政府が決定すること自体が間違っていると指摘した。公益概念に基づく現公益法人制度は廃し、非営利法人という制度に一本化すべきであると提言された。  髙山昌茂氏(公認会計士)は、予算がガバナンスにおいて果たす機能の観点から「公益法人制度改革とガバナンス 損益予算について」の論題で報告した。公益法人の予算に関する取扱いは、昭和52年策定の会計基準及び昭和60年会計基準の予算準拠主義による収支予算書から、平成16年会計基準の内部管理事項としての収支予算書、そして、平成20年会計基準の損益予算へと変遷してきたが、損益予算ではガバナンスの観点からは限界があり、公益法人にとって真に必要な予算とは収支予算ではないかと指摘された。  討論においては、今般の公益法人制度改革において、準則主義による法人設立の意義については共通の認識が得られたものの、公益認定制度のあり方やNPO法人との関係などについて活発な質疑・討論が行われた。 【自由論題報告】  大会2日目午前中は、4会場に分かれて15の自由論題報告が行われた、各会場の報告者及び論題は以下のとおりである。 第1会場[司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学)]  ⑴村山秀幸氏(公認会計士)「公益認定法の収支相償規定の意味と実務的対応の検討」、⑵竹内拓氏(自由が丘産能短期大学)「ファンドレイジングの変遷とその対応策」、⑶田中弥生氏(大学評価・学位授与機構)/馬場英朗氏(愛知学泉大学)/石田祐氏(明石工業高等専門学校)「新しい公共と税制優遇―認定NPO 法人は寄付文化を促進するか?―」 第2会場[司会:会田一雄氏(慶応義塾大学)]  ⑴小野英一氏(東北公益文科大学大学院)「NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を活かした非営利組織マネジメントについて」、⑵川野祐二氏(下関市立大学)「公益志向の近代市民結社とイノベーション:自治的アソシエーションの拡大と民主主義」、⑶八島雄士氏(九州共立大学)「行政とNPO の協働におけるバランスト・スコアカードの適用可能性」、⑷大原昌明氏(北星学園大学)/鈴木克典氏(北星学園大学)「『自転車タクシー事業の現状と課題』―事業者へのヒアリング調査に基づいて―」 第3会場[司会:江田寛氏(公認会計士)]  ⑴古市雄一朗氏(福山大学)「非営利組織の会計における貸借対照表の意義」、⑵馬場英朗氏(愛知学泉大学)「3省庁からみた民間非営利組織への事業積算―イコール・フッティングは考慮されているか?―」、⑶兵頭和花子氏(兵庫県立大学)「非営利組織の財務的基盤とその会計」、⑷佐久間義浩氏(富士大学)「非営利組織における内部統制の現状―公的医療機関における内部統制に関するアンケート調査による分析―」 第4会場[司会:富永さとる氏(パブリック・ベネフィット研究所)]  ⑴伊藤葵氏(早稲田大学大学院)「日本型地域プラットフォームの形成―行政とNPOの連携による効果的なガバナンスに向けて―」、⑵角谷嘉則氏(立命館大学)「ボランティアの専門性の高度化―障害者の就労支援を事例として―」、⑶東郷寛氏(近畿大学)「公民パートナーシップ(PPP)のマネジメント:先行研究レビュー」、⑷初谷勇氏(大阪商業大学)「非営利法人制度改革と市民社会の安全」 【特別講演】  午後からは、田中羊子氏(ワーカーズコープセンター事業団・専務理事)による「『新しい公共』の創造と協同労働の可能性」と題する特別講演が行われた。田中氏は、協同労働の協同組合という新しい就労機会創出の仕組みとしてのワーカーズコープのこれまでの活動内容を紹介され、事業者が、利用者や地域と協同して事業を行なうことにより、「新しい公共」の場が創出されるとともに利用者や地域のニーズに合ったサービス提供が行われると指摘された。 【研究部会報告】  特別講演の質疑終了後、東日本研究部会[主査:小林麻理氏(早稲田大学)]と西日本研究部会[主査:藤井秀樹氏(京都大学)]からそれぞれの部会報告が行われ、最後に大会準備委員長の小林麻理氏の閉会挨拶により盛況のうちに閉幕した。

  • 第17回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第17回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成30年9月8日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏    非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第17回学会賞(平成29年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成29年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成29年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 九州部会報告 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    九州部会報告 ■第9回九州部会記 日時 :2016年7月9日(土) 場所 :久留米大学 第1報告「公園維持管理における組織と人の役割」 山内元六氏(山鹿市役所)  本報告では、公園施設の事例分析を通じ、「協働概念に基づくアソシエーション組織」の検討を行った。熊本県山鹿市の“湯の瀬川公園”では、国や市、地域住民や公園利用者といったメンバーから構成される“菊池川育てねっと”が公園の維持管理を行っている。この官民連携の組織は様々なステークホルダーから構成されており、R.M.マッキーバーが提唱した「社会集団類型のアソシエーション」であると考えられる。また、官民が協力して清掃等の維持管理活動に取り組んでいることから協働概念に基づく活動であるとも考えられる。この事例から、共通の目的が存在する際には、アソシエーションと協働概念が紐づけられることを明らかにした(文責:山内)。 第2報告「防災と地域ガバナンス ― 被災者支援のあり方を中心に ― 」 黒木誉之氏(長崎県立大学)  熊本地震の特徴は、車中泊避難等による指定避難所以外での避難者の多さである。この問題は熊本県だけの問題ではなく、熊本県以外の地域も今後対応を検討しておく必要がある。そこで今回の調査は、震源地となった熊本県益ましきまち城町を対象に、①指定避難所以外で被災者が避難された場所を確認(条件の抽出)し、②その場所に避難された被災者への救援活動の実態を調査し課題等を明らかにすることを目的として行った。  現段階の調査結果として、①について、公園やショッピングモール、コンビニエンスストア等の駐車場に加え、幹線道路の路肩等について報告を行った。②については、企業やNGO・NPOの活動のみならず、SNSの活用による個人の活動が行政や団体による活動の隙間を埋めているとの報告を行った。  今後は現地での継続調査に加え、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町での調査も実施予定である(文責:黒木)。 第3報告「非営利組織体会計における純資産分類の意義と財務評価」 日野修造氏(中村学園大学)  非営利組織体の財務評価と純資産の分類には密接な関係があると考え、純資産分類の意義と財務評価に焦点を当てて、報告を行った。また検討の基点は、アメリカの非営利組織体会計に関する文献である。  検討の手順はまず、純資産の各分類手法を確認した。次に非営利組織体の財務評価は財務的弾力性、ハードマネー創出能力及び純資産の維持により評価することを明らかにした上で、一時拘束純資産に着目した財務分析について私見を述べた。  結果として、非営利組織体の純資産は資源提供者の提供資源に対する拘束の影響を考慮することが極めて重要であるとした。そして、さらに一時拘束純資産の分類区分を設けることで、より充実した財務評価・分析が可能になることを明らかにした(文責:日野)。 ■第8回九州部会記 日時 :2015年12月19日(土) 場所 :熊本県立大学 1. 基調講演 「非営利組織会計基準の統一化に向けた 課題と展望 ― 日本公認会計協会『論点整理』に寄せて ―」 藤井秀樹氏(京都大学)  本年(2015年)5月に公表された日本公認会計士協会『非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理』に拠りながら、基準統一化に向けた課題を整理し、当該問題の今後の展開方向を展望した。海外(とりわけ英米)の先例との異動及び企業会計との関係に焦点を当てた検討を行った結果、⑴非営利組織の範囲や財務報告の目的については海外の先例と相違はないが、⑵企業会計の枠組みから独立した非営利組織会計の枠組みを構築しようとしている点、⑶基礎概念については個別文書を作らず、会計基準に組み込む形で示そうとしている点で、『論点整理』は独自のアプローチを採用していることが明らかとなった。企業会計基準委員会(ASBJ)との協力関係の形成が、今後の主要な課題のひとつとなろう(文責:藤井)。 2. 部会報告 第1報告「非営利・公益法人としての私立大学」 伊佐 淳氏(久留米大学)  日本の私立大学は、法制度上、非営利法人の一種である学校法人であり、広義の公益法人の範疇に位置付けられている。したがって、私立大学は、非営利の公益法人であるということができる。翻って、2014(平成26)年、学校教育法が改正されたが、そこに至る議論の過程では、大企業におけるガバナンスやマネジメントを、大学の運営者がお手本とするべきものとされた観がある。すなわち、素早い意思決定のためのガバナンスの構築や、学長の強力なリーダーシップによる教学部門の改革が強調されているのである。しかしながら、営利法人ではなく、非営利・公益法人としての私立大学においては、経営部門のトップに対するチェック・アンド・バランスを果たすためのガバナンスこそが重視されねばならないのではないか(文責:伊佐)。 第2報告「 農業における非営利法人の役割」 源田佳史(公認会計士)  以下の3つの点について報告した。まず、①「農協法改正に伴う農協の非営利規定の削除に対する対応」では、農協運営における経済性や効率性を重視していった結果、反作用としての公益的な業務(生活購買や厚生事業)は、非営利法人へ移管する傾向を解説した。次に、②「TPP対応としての輸出農産物の各農業団体の調整機能としての中立性公平性の確保」では、農協や農業団体、農業関連企業が利益調整を行いつつ、「オール九州」としての農産物輸出やインバウンド需要喚起のための調整機能があることを紹介した。最後に、③「農業地域の担い手の高齢化に伴う耕作放棄地の拡大や鳥獣害対策のための非営利法人の活用」では、耕作放棄対策として農事組合法人の設立や農地中間管理機構(非営利法人)の活動支援がなされていることや、鳥獣害対策のための非営利活動の必要性を指摘した(文責:源田)。 第3報告「公立病院の経営改革の現状 ― 新公立病院改革ガイドライン(2015年)を踏まえて ―」(熊本県を事例として) 森 美智代氏(熊本県立大学)  本報告では、2007年に公表された公立病院改革ガイドラインと2015年に公表された新公立病院改革ガイドラインの比較検討をした。 公立病院の運営は、自治体の管轄のもとで、公共サービスとして画一性が求められてきた。 また人事及び予算の権限は自治体にあり、予算至上主義によって医療機関の経営改善に遅れがあった。 しかし2000年代に入ると自治体には財政健全化計画の策定が義務付けられ(地方公共団体の財政の健全化に関する法律:2009年健全化法)、この法律とともに公立病院改革が進められてきた。 2007年ガイドラインでは①「経営効率化」②「再編・ネットワーク化」③「経営形態の見直し」が3つの柱となっている。これを継続して、2015年新ガイドラインでは、④「地域医療構想」を踏まえた役割が明確化された。 したがって公立病院の果たすべき役割の精査・病床の機能区分ごとの将来の病床数の必要量等が示され、地域医療構想が確認された。新しいガイドラインでは、特に経営の安定化のための目標指標が追加された。熊本の公立病院を事例として、経営改革の現状を紹介した(文責:森)。 九州部会

  • 第6回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第6回大会記 2002.7.26-27 京都大学 統一論題 非営利組織の業績評価とアカウンタビリティ 近畿大学  吉田忠彦  公益法人研究学会第6回全国大会は、2002年7月26日(金)の理事会に続いて、7月 27日(土)に「非営利組織の業績評価とアカウンタビリティ」を統一論題とし、京都大学で開催された。  午前中は9つの自由論題報告が、3つの会場に別れて行われた。第一会場では、柴 健次氏(関西大学)の司会で、江頭幸代氏(九州産業大学大学院)、川野祐二氏(財・助成財団センター)、伊藤 務氏(財・平安建都千二百年記念協会)、第二会場では、松本敏 史氏(同志社大学)の司会で、用丸るみ子氏(鹿児島国際大学大学院)、橋本敏也氏(税理士)、立岡 浩氏(花園大学)、第三会場では、吉田忠彦(近畿大学)の司会で、今枝 千樹氏(京都大学大学院)、兵頭和花子氏(神戸大学大学院)、若林茂信氏(公認会計士)の報告が行われた。午前9時30分スタートの第一報告から、立ち見が出る会場もあり、討論とも大変な盛り上がりを見せた。  その後会場を大会議室に移し、吉田 寛氏(神戸商科大学)の司会によって研究部会報 告が行われ、東日本部会が「わが国の公益法人会計に関する研究」(座長・松葉邦敏氏)を、西日本部会が「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」(座長・堀田和宏氏) を報告した。  午後からは会員総会が行われ、学術研究団体登録申請の経過報告もなされた。さらに、 第1回学会賞および学術奨励賞の発表もあった。学会賞は堀田和宏氏(近畿大学)、学術奨励賞は梅津亮子氏(九州産業大学大学院)がそれぞれ受賞された。 統一論題の概要  統一論題は会田一雄氏(慶應義塾大学)が司会をつとめられ、古庄 修氏(亜細亜大学 短期大学部)、江田 寛氏(公認会計士)、瓦田太賀四氏(神戸商科大学)の三氏の報告の後、討論という形で進められた。  古庄 修氏(亜細亜大学 短期大学部)の報告「非営利組織のアカウンタビリティとディスクロージャー−英国チャ リティの検討を中心として−」では、イギリスにおけるチャリティ制度とその会計について概略が説明された後、チャリティの実務勧告書(SORP)の設定経緯、米国会計基準と比較した財務報告の特徴が説明され、チャリティを対象にしたアニュアル・リポート表彰制度などの動向から、記述方法が利益尺度を持たないチャリティでは財務情報の補完以上の役割を有するといった示唆がなされた。  続いて江田 寛氏(公認会計士)の報告「民法法人の収支予算制度と業績評価」は日本の公益法人を中心にしたもの。昭和61年の『公益法人の運営に関する指導監督基準』(指導監督基準)では、事業計画と収支予算による事前審査と、事業結果及び収支計算の結果との比較によって事業執行の妥当性を検証するという業績評価が主務官庁によってなされ るというものであったのに対し、1996年の新指導監督基準においては、法人情報、事業情 報及び会計情報を一般の閲覧に供することとされ、主務官庁ばかりでなく、不特定多数の国民を意識した運営管理と業績評価のあり方が必要になったと指摘する。事業計画および 収支予算を中心とする管理や業績評価は、自発的な事業を趣旨とするタイプの非営利組織には適さないものである。また、業績評価にはサービスの内容、提供された資源の使い方、 運営方法、財務的生存力などの視点が必要であると主張された。  最後の瓦田太賀四氏(神戸商科大学)の報告「非営利組織のリスクとアカウンタビリテ ィ」では、アカウンタビリティが資金提供者のリスクという視点から検討され、サービスの代価を支払う事業型であれば、モニター可能であるために合理的行動がとれるため、リ スクはせいぜい一時的であること。サービス代価が支払われない福祉型では、支払手は事 業の社会的意義から資金を拠出し、配当や残余財産の分配などを求めないため、そもそも リスクという考え方が当てはまらないことが指摘された。そこから、そうしたリスクに対して「説明義務」を果たす、すなわちアカウンタビリティ解除を達成するという視点では なく、与えられた役割に対して積極的に説明の可能性を開く「説明可能性」という視点でアカウンタビリティを捉える必要があると主張された。  3氏の報告の後、フロアから寄せられた質問紙に応答しながら討論に入った。公益目的 の事業を担う組織の多様化に伴って、業績評価とアカウンタビリティの問題は、より複雑性を増しているが、他方で現実の社会や政策が、少子高齢化や行財政改革の流れを背景に、 民間非営利セクターへの依存の度合いを高めている。こうしたタイミングであるだけに、非常に活発な討論となった。質問およびコメントは、興津裕康氏(近畿大学)、大矢知浩司氏(九州産業大学)、岡村勝義氏(神奈川大学)、柴 健次氏(関西大学)、村井秀樹氏(日本大学)、陳 氏(神戸商科大学)、早坂 毅氏(税理士)、橋本俊也氏(税理士)、大峠理沙氏(神戸商科大学大学院)の諸氏から寄せられた。  その後、場所を同大学の生協中央食堂に移し、懇親会が催された。今回創設された学会 賞・学会奨励賞の受賞者のスピーチも交え、終始なごやかなうちに会員の親睦がはかられた。

  • 221227規程変更Q&A | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    【改正された規程】 全国大会運営規定 (令和4年12月27日改正) 部会運営規程 (令和4年12月27日改正) 分野別研究会運営規程 (令和4年12月27日改正) 【新設された規程】 特別委員会運営規程 (令和4年12月27日新設) <改正に関するQ&A> [全国大会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:大きな変更箇所は第7条です。    これまで自由論題の申し込みは地域部会の報告を経ることが要件となっていました。    改正後は地域部会の報告を経ず直接大会準備委員会に申し込む方法も追加され、2つのルートとなりました。    なお、部会報告を経ない場合は、6,000字程度の報告要旨を申込みの際にご提出いただきます。    また、自由論題の報告者数に制限があるときは、地域部会で報告された方が優先となります。   Q:23年度の全国大会(大阪商大)の自由論題報告に申し込みたいと考えています。申込みはいつから始まり、申込期限はいつになりますか?   A:全国大会準備委員会から、3月末ないし4月初め頃に自由論題報告については募集要領など詳細をご案内する予定です。     申込締め切りは、大会準備の都合上6月末の予定と伺っています。 [地域部会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:大きな変更箇所は第3条です。    これまで地域部会は、北海道部会・関東部会・中部部会・関西部会・九州部会の5つの部会に    分かれて活動していましたが、改正後はエリアを大きく2つに分け、東日本部会と西日本部会とすることになりました。   Q:5つの部会はどのように分かれますか?   A:東日本部会(北海道・関東地方)、西日本部会(中部・関西・九州地方)となりますが、     会員は地域に関係なく部会に参加することができます。   Q:改正の趣旨はどのようなものですか?   A:これまで各地域部会で年3回以上の開催が定められていました。     ただ、地域によって会員数にバラつきがあり、会員の少ない地域では思うような部会の開催が難しく、     合同部会という形で開催していました。その状況に加え、コロナウイルスの影響で対面からリモート環境下へと切り替わり、     遠隔地からでも容易に参加することが可能になったことから、地域を大きく2つに分けた部会編成となりました。   Q:新しい部会長・役員は決まっていますか?   A:東日本部会長は鷹野宏行氏(武蔵野大学)、西日本部会長は吉田初恵氏(関西福祉科学大学)の就任が理事会で承認されています。    その他役員の人選は改めてお知らせします。   Q:地方での部会開催はなくなりますか?   A:部会は2つとなりますが、地域性を考慮して運営委員を用意します。    部会は部会長と運営委員が地域性を考えながら対面・リモートで開催します。なお、規程では会員はいずれの    地域部会にも参加できると定められているため、地域を超えての参加が可能となります。    東日本部会では全国大会前に3回、大会終了後に2回の開催予定と伺っています。   Q:新部会はいつから始まりますか?   A:役員の新体制が決まり次第、新しい部会が始動します。 [分野別研究会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:来年度(23年度)で最終報告を迎える「大学等学校法人研究会」「NPO法人研究会」「医療福祉系法人研究会」、    再来年度(24年度)で最終報告となる「公益・一般法人研究会」の活動が終了した後に、分野別研究会運営規程は廃止となります。   Q:分野別の研究活動はどのようになりますか?   A:規程廃止後、分野別研究会としての活動はなくなりますが、新しく始まる「特別委員会」として、     新たな研究活動を続けていくことになります。 [特別委員会運営規程]   Q:特別委員会制定の目的は何ですか?   A:特定の分野に限らず、複数の分野に跨る課題や新たな課題について研究を行うことを目的としています。   Q:どのようなことを研究しますか?   A:研究テーマは様々な分野に跨るように設定することを想定しています。 ※Q&Aは学会Webサイトで随時更新していきます。 規程改正のQ&A

  • 情報公開 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    定款・役員名簿(法人概要を参照) 第九期(2022年8月1日~2023年7月31日)  貸借対照表 第八期(2021年8月1日~2022年7月31日)  貸借対照表 第七期(2020年8月1日~2021年7月31日)  貸借対照表 第六期(2019年8月1日~2020年7月31日)  貸借対照表 第五期(2018年8月1日~2019年7月31日)  貸借対照表 第四期(2017円11月1日~2018 年7月31日 )※公益認定後  貸借対照表 第三期(2017年8月1日~2017年10月31日)※公益認定前  貸借対照表 第二期(2016年8月1日~2017年7月31日 )   貸借対照表 第一期(2016年1月7日~2016年7月31日 )   貸借対照表 情報公開

  • 第25回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第25回大会記 2021年9月25~26日 関西大学 統一論題 非営利法人の理念と制度  2021年(令和3年)9月25日(土)・26日(日)の日程で、非営利法人研究学会第25回全国大会が関西大学を主催校として開催された。統一論題は「非営利法人の理念と制度」であった。 第25回目を迎える本大会では、前年同様に新型コロナの異常事態の中での開催となり、すべての プログラムをライブ配信によるオンライン開催とした。こうした非常事態だからこそ、あえて非営 利組織の本質を考えることを目的に、統一論題のテーマを「非営利法人の理念と制度」と設定し、 それぞれ報告と討論会を行うこととした。  また、大会中は3名の統一論題報告、8名の自由論題報告、3つの分野別研究会及び受託研究報告が行われた。また、本大会の研究報告は2日間のプログラムとして編成し、あわせて、大会前日の9月24日(金) に常任理事会と理事会を開催し、25日(土)に社員総会と新理事会を開催した。 統一論題報告 趣旨・司会 柴 健次氏(関西大学)  本学会の過去の記録を振り返ると、法人種別のテーマが論じられ、あるいは会計基準が論じられるなど、時々の話題が取り上げられてきた。しかし、非営利組織の本質とは何かにつき論じる機会があっていいのではないかと思い、テーマを「非営利法人の理念と制度」にした。法学分野を代表して岡本仁宏 氏に、経営学分野を代表して小島廣光 氏に、会計学分野を代表して日野修造 氏にご登壇いただいた。形式的に3分野から出ていただいたというより、学問分野の異なる3分野間でのより良いコミュニケーションを図るきっかけを作ることも目的であった。 第1 報告 「非営利団体は、今、どこにいるのか:市民社会論の視角から」( 岡本仁宏氏・関西学院大学)  本報告では、世紀転換期非営利法人制度改革の次に来るべき21世紀非営利法人制度改革の課題を明らかにするために、非営利組織の歴史社会的な状況の市民社会論の視角からの確認が行われた。さらに、市民社会の実 証的把握と規範的把握の概要が示され、今、市民社会論から改革課題を位置づけることの意義が論じられた。最後に、IT革命の下での市民社会の変容に伴う可能性について言及し創造的適応の必要性が示唆された。 第2 報告 「非営利法人制度改革の研究―新・政策の窓モデルによる実証分析―」( 小島廣光氏・星城大学)  本報告は、わが国において長い間必要性が認識されながらも行われてこなかった非営利法人制度改革が、21世紀の初頭に「なぜ」そして「どのように」実現したのかを事例研究によって解明することが目的とされた。まず、新・政策の窓モデルにもとづいて、2つの事例(公益法人制度改革ならびにNPO法と寄付税制の改正)の詳細な年代記分析が行われた。次に、それぞれの事例の共通 点と相違点に関する発見事実を析出するとともに、政策形成の本質に関する命題が導出された。 第3 報告 「非営利法人会計における資本と収益の区別―アンソニーの提言を受けて―」( 日野修造氏・中村学園大学)  本報告は、資本と収益の区別問題を非営利組織会計の分野に適用し検討が行われた。まず、純資 産を拘束によって区分する純資産概念が主流であることを明らかにした上で、非営利組織会計にお いても純利益の測定が重要であり、資本と収益を区別した純資産の構造を主張するR.Nアンソニー の提言について検討が行われた。そして、アンソニーの提言を加味した非営利組織の純資産区分が 提案された。なお、報告では非営利組織が獲得した純利益は、サービス提供可能資源正味残高純増 額であることが明らかにされた。 自由論題報告 司会(第1・第2・第5・第6各報告) 中嶋貴子氏(大阪商業大学) 司会(第3・第4・第7・第8各報告) 初谷 勇氏(大阪商業大学) 第1 報告 「オーケストラ団体における活動財源の集中度と予測可能性に関する実証分析」( 武田紀仁氏・税理士、日本大学経済学研究科博士後期課程)   本報告では、文化芸術活動の主体となる非営利組織体が獲得する収入源の種類・性質・収入源の 集中度が非営利組織体の持続性に及ぼす影響を調べるため、オーケストラ団体のサンプルを用いた分析が行われた。その結果、収入源と持続性の関係を分析するうえでは、収入源の種類や集中度に加えて、設立経緯などに起因する団体の属性と収入源の予測可能性の関連性を考慮して分析を行うことの重要性が説明された。また、文化芸術活動の主体となる非営利組織体のうちオーケストラ団体では、団体の属性により収入構造に差異が存在し、団体の属性と関連性のある予測可能性が高い収入源に対して依存度が高いことがデータから示された。 第2 報告 「NPO支援組織と制度ロジック変化 ―アリスセンターのケース―」( 吉田忠彦氏・近畿大学)  本報告は、日本においてNPO支援組織がどのように発生し、どのようにひとつの制度として普及していったのか、そして組織はその制度とどのように向い合うのかを、そのパイオニアとされる アリスセンターをケースとして分析された。長期にわたる事業の変遷などの分析から、同組織は「市民運動」、「NPO」、「中間支援組織」などの複数の制度ロジックを使い分けながら事業を模索して いたと論じられた。 第3 報告 「クライシス下における信用保証協会の役割 ―中小企業支援に着目して―」( 櫛部幸子氏・鹿児島国際大学〈報告時〉、現在は大阪学院大学)   本報告は、信用保証協会がどのような非営利法人であるかを説明し、そのうえで、公的資金を基 礎とする信用保証協会にデフォルトが生じることの是非や、クライシス下においてどのような視点 をもとに保証判断をすべきなのか等を検討するものである。信用保証協会はクライシス下においても、事業の継続性が望める中小企業に対し信用保証をすべきであり、保証判断の際に、中小企業に更なる会計情報等の提出を求めることが重要であると指摘されている。 第4 報告 「公益法人をめぐるサードセクター論とビジネスセントリズム・ガバメントセントリズム」( 出口正之氏・国立民族学博物館)  公益法人制度改革・税制改革は、いずれも思想的には「政府でもない企業でもない原理を持ちう る第三セクターとしての非営利セクター」に対する期待から打ち出されたものであった。言い換え れば、民間公益セクターの行動原理の独自性の認識が前提であった。 ところが、民間公益セクターに対するこのような理念的積極論があるにもかかわらず、大企業に 対する規制等を適用しようとする「ビジネスセントリズム」、政府に対する規制等を適用しようとする「ガバメントセントリズム」によって、公益法人を律する規制が「効率的ではない」(ビジネ スのルール)、「公平ではない」(ガバメントのルール)といった不文律のルール適用が、大量の明文化された法規制の上に被され、公益法人側に守るべきルールの共有化が揺らぐアノミー現象が起 こりかねない状況が生じていることが明らかにされた。 第5 報告 「非営利組織における自己組織性の実証的研究~公益法人を対象とした調査に基づいて~」( 吉永光利氏・公益財団法人倉敷市スポーツ振興協会・岡山大学大学院)  本報告は、非営利組織における自己組織性(組織が自己決定・自律的に組織変革を図る特性)に ついて、実証主義に基づいた定量的・定性的方法による諸調査の分析結果と考察を提示するものである。具体的な調査では、主に中国地方に所在する公益法人を対象(361法人)とし、アンケート 調査(119法人から回答)とインタビュー調査(17法人に実施)が行われた。そして、これらの調査から得られたデータを基に非営利組織における自己組織性の実態について論じられている。 第6 報告 「活動領域特化型中間支援組織における支援内容の変化と機能の移管―総合型地域スポーツクラブ の事例分析―」( 伊藤 葵氏・富山国際大学)  本報告は、多様な主体が連携したサービスを提供が求められる公共圏における中間支援組織の役割に着目し、総合型地域スポーツクラブを事例とし、組織の成長に応じた支援内容と支援の担い手の変化が分析された。組織の成長過程では、支援の担い手は公的な機関から民間へと移行すること、 支援内容は組織間のコーディネーションが重視されていくことが示された。また、支援対象組織へ の支援機能の移管や複数の組織での支援機能の分担についても指摘されている。 第7 報告 「地方自治体における内部統制と公務員倫理」( 井寺美穂氏・熊本県立大学)    本報告は、地方自治体において「公務員倫理」や「内部統制」、「リスク管理」などの名称で類似の取組みが行われていることに着目した上で、近年、制度化が行われた内部統制に係る取組みと公務員倫理を確保するための各種取組みの目的や実施内容等を比較考察しながら、それらの相違や共通性等を検討されたものである。その上で、地方自治体はその団体の規模に応じて、取組みに格差がみられ、今後、特に小規模団体の取組みが重要になるのではないかと指摘されている。 第8 報告 「非営利組織の国際会計基準プロジェクトと日本への示唆」( 金子良太氏・國學院大學)    報告の最初に、非営利組織の会計の国際的枠組みを形成することを目標とするIFR4NPOプロジェ クトの概要が述べられた。本報告では、プロジェクトにより策定される非営利組織会計の目的、非営利組織に特有の会計の課題に加えて、IFR4NPOに資金を拠出したり策定プロジェクトにかかわる個人や団体等に着目し、わが国への示唆が示された。 分野別委員会報告 司会:吉田忠彦氏(近畿大学) 「NPO法人研究会」報告 出口正之 氏(国立民族学博物館)    この1年の間(2020年10月から2021年9月)の間に、NPO法人にとって極めて重要な報告書が二点出ている。一点は新時代に合わせた報告であり、「NPO法人会計基準策定10周年記念行事 ~歴史秘話 基準誕生の頃の話を聴く夕べ~」と題され、ZOOMによるNPO法人会計基準10周年の会議記録と関係資料・動画が公表されている。  また、もう一つは、特定非営利活動法人NPO会計税務専門家ネットワーク福祉サービスに関する法人税課税問題検討委員会『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』(委員長岩永清滋 氏)である。収益事業課税は政策の中でたびたび論じされている一方、収益事業課税とは何かに ついて十分に検討されていた研究書はこれまでほとんどなかったものと言える。本報告書は歴史、 税法、関連法規、判例等に十分に目配りして現行の収益事業課税の問題点を詳細に検討されている。 NPO法人部会としてもこれらのNPO法人を巡る大きな出来事に対して、学会各方面の学術的関 心を喚起するために江田 寛 氏、岩永清滋 氏を招いて検討がなされ、いずれも学術的に非営利の会計や税制を議論するうえで欠くことのできないものとなっていることが確認された。 「医療・福祉系法人研究会」報告 ( 千葉正展氏・独立行政法人福祉医療機構)    医療・福祉系法人研究会は、現在の福祉・医療に係る制度・政策の流れのなかで、「地域包括ケア」、 「地域共生社会」など地域における様々な社会資源と医療法人、社会福祉法人等との関係性が重要なテーマになるとの認識の下、これまでの部会の活動においては「地域医療連携推進法人制度」や 「地域との連携を進めている名古屋の南医療生協の視察」など研究活動が進められてきた。そうした流れの中で国においては、令和2年に社会福祉法が改正され新たに「社会福祉連携推進法人制度」 (以下「福祉連携法人制度」)がスタートすることとなった。  以上を踏まえ、福祉連携法人制度検討の背景、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会での主な議論と論点、改正社会福祉法における福祉連携法人制度の規定内容等が紹介されるとともに、本学会会員の何名かが別途参画した厚生労働省の「社会福祉法人会計基準等検討会」における社会福 祉連携推進法人会計基準の検討状況とそこでの検討の論点などについても報告され、医療・福祉系 法人における今後の展開や課題等について考察がなされた。 「大学等学校法人研究会」報告( 古庄 修氏・日本大学)    大学等学校法人研究部会は、広く「大学のガバナンスとアカウンタビリティ」を主題として、学 校法人の経営と会計をめぐる理論・実務・政策に係る諸提言の総合化を目指して、最終報告が行わ れた。最終報告書として、①「大学法人の会計―非営利法人会計の議論に資するための考察―」(柴 健次)、②「学校法人における固定資産と学校法人会計基準との関わりについて―特に社会科学系統 の学部を有する四年制大学に関心を寄せて―」(林 兵磨)、③「私立大学版ガバナンス・コードの 意義と課題」(古庄 修)、④「大規模私立大学ガバナンスの構築(試論)」(堀田和宏)の各論稿の 概要が報告された。 今後、本部会の活動は、柴 健次部会長の下で委員を再構成し、継続することになるとの報告があった。 受託研究報告 司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学) 「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究( 座長 成川正晃氏・東京経済大学)    本研究報告は、受託研究として組織された「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究会」の研究報告である。非営利組織の活動を捕捉し財務情報として開示、利用されることにより社会全体に非営利組織に対する理解が普及していくという観点から、非営利組織の会計処理を対象とした検定試験の社会への貢献度合いを把握し、今後の発展は可能かを調査・研究することを目的として設置された。 当日は、本研究会の各研究担当者から検定試験の概要の調査について報告するとともに、公益会計法人検定試験では、資格の有効性を分析し、組織における資格の効用および利活用の可能性を、 社会福祉会計簿記認定試験では人的資本論とシグナリング理論を用いた効果に関する検討を示し、 その後質疑が行われた。 御礼  非営利法人研究学会第25回大会は対面形式での開催が叶わず、第24回に引き続いてリモート(ライブ配信)開催となりました。長引くコロナ禍の社会的影響は大きく、諸学会もまた新しいスタイルを模索しているようです。本学会もそうでした。  今大会は関西大学主催ですが、大阪商業大学からも応援いただきました。両大学から成る準備委 員会は統一論題と同じくらい自由論題を重視する方針で合意に達しました。学会員への問題提起をしていただく統一論題、そして学会員の研究発表の場となる自由論題を等しく重視したのです。その方針に対応して、準備委員会の仕事を、①自由論題運営、②統一論題運営、③大会運営と大きく 分け、3分野が自律的に運営されました。こうしたことはコロナ禍であったからこそできたのかもしれません。複数の大学による合同開催の可能性を探れたのかもしれません。  当学会では元々全国大会の自由論題を重視しています。地域部会長の承認を得て、全国大会へエ ントリーするという仕組みそのものが自由論題重視の姿勢だと思っております。各地域部会長に努力していただき8本のエントリーが実現しました。  統一論題は掲げた統一テーマは重要であります。その上で、法律、経営、会計等の研究者が相互 理解可能な状況を作りたいと報告者に無理なお願いもしました。ご登壇いただいた3先生には無理も聞いていただき、話題の共有に努力いただきました。  常設の分野別委員会と受託研究についてはそれぞれご報告いただきました。これらは中間報告な り最終報告をすることが会員への義務であると位置づけられていることから、すべての委員会にご 報告いただきました。  以上で報告は15本になりました。その報告を準備委員会委員が、企画者、座長、司会者としてかかわっておりますので、本大会記も準備委員会で作成できたかもしれません。しかし、そうするこ とは大会記に主観的な評価を持ち込むことになりかねません。そこで、ご報告者15名全員に報告要 旨の提供をお願いしました。準備委員会が多少表現の統一性を求める修正をしたこと以外は、報告 者による要旨を大会記の素材として利用させていただきました。 以上を踏まえ、ここに大会記を示すことができました。大会における報告者、司会者、各報告へ の参加者・質問者ほかすべての関係者に御礼申し上げます。 2022年5月12日 非営利法人研究学会第24回全国大会準備委員会 準備委員長 柴 健次(関西大学) 委員 橋本 理(関西大学) 馬場英朗(関西大学) 初谷 勇(大阪商業大学) 中嶋貴子(大阪商業大学)  

  • 第18回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第18回大会記 2014.9.10-11 横浜国立大学 統一論題 公益性の判断基準 税理士  上松公雄  非営利法人研究学会第18回大会が、横浜国立大学(大会準備委員長:齋藤真哉〔横浜国立大学〕)において、平成26年9月10日から11日までの2日間に渡って開催された。  前日の常任理事会及び理事会、1日目の総会の開催に引き続いて、統一論題「非営利法人に係る公益性の判断基準」(司会:佐藤倫正氏〔愛知学院大学〕)の報告が行われた。 【統一論題報告】  第1報告の岡村勝義氏(神奈川大学)「一般社団・財団法人の公益性判断基準」においては、公益性判断基準について、公益認定基準のうち、1号基準(事業目的)、6号基準(収支相償)、8号基準(公益目的事業比率)、9号基準(遊休財産保有制限)と旧制度の「指導監督基準」との比較が行われ、「指導監督基準」を承継しつつ、独自なものとして、公益目的事業について不特定多数条項(不特定多数の者の利益の増進に寄与するもの)による質的規制(1号基準)と財務三基準(6・8・9号基準)による財務的側面からの量的規制の強化が付加されていることが明らかにされた。また、それぞれの問題点として、質的規制については、不特定多数条項の判断において裁量の余地があり判断にズレが生ずる恐れがあること、財務三基準については、税制上の優遇措置との連動性までも強化されたため、財務三基準=税制優遇措置の適用基準となっていることの指摘がなされた。  第2報告の初谷勇氏(大阪商業大学)「特定非営利活動法人の公益性判断基準」においては、法人制度の沿革について行政システムの集権・分権等との観点と関連せしめて整理された上で、公益法人(公益社団・財団法人)とNPO法人における公益性判断主体及び公益性判断基準、そして、公益増進性判断主体及び公益増進性判断基準の転換状況と相違点について報告された。すなわち、公益性判断基準については、公益法人制度は、公益性判断基準の「統一化への伏流」から基準の「消失」であり、NPO法人制度は「法定」からその「拡充」とされた。また、公益増進性判断基準については、公益法人制度では、「自由裁量」から「法定・統一化」であるのに対し、NPO法人制度では、「根拠法の転換と基準緩和の昂進」であるとされた。  NPO法人の場合のこれらの相違は、認証主義、あるいは、行政主導の下での地方分権・分散化と対象の拡充に向けた対応の深まりという「程度」の問題と捉えることができるものとされた。   第3及び第4報告は、諸外国における公益性判断基準に対する研究であり、第3報告の金子良太氏(國學院大學)「アメリカの非営利法人の公益性判断基準」においては、内国歳入法501(C)⑶団体を対象に、その特徴及び連邦税の非課税団体の認定の仕組みについて解説された。501(C)⑶団体については、パブリック・チャリティ(PC)とプライベート・ファウンデーション(PF)の区分があり、さらに、PCには、①宗教・学校医療・公立大学後援団体等の連邦・州で認可を得た法人、②PST等の審査に合格した団体、③事業型PSTに合致した団体、④パブリック・チャリティ支援型組織の4類型が存し、それぞれについて、公益性の認定基準が異なり、かつまた、租税の特典の内容も異なることが明らかにされた。日本と比較した特徴として、広く一般から寄附を集める団体の優遇は大きいものの、特定者からの寄附で成立するPFには租税回避を防止するための規制等が存することが紹介された。 第4報告の尾上選哉氏(大原大学院大学)「英国チャリティの公益性判断基準」では、所轄庁であるチャリティ委員会の公益性認定の判断基準をチャリティの登録時を中心として考察された。  2006年チャリティ法以後、チャリティとは、専らチャリティの目的のために設立された組織として定義され、チャリティ目的であるためには、①目的記述要件(組織の目的〔使命〕がチャリティ法に規定する13の目的記述に該当するかどうか)と②パブリック・ベネフィット・テスト(目的が有益であるかどうか及び公に便益をもたらすかどうか)を充足するかどうかについて、チャリティ委員会が決定することが確認された。   以上の4報告を基に、パネル・ディスカッションへと進み、まず、コメンテーターの江田寛氏(公認会計士)は公益性判断に係る視点として将来社会に貢献するか否かの点、また、課税の優遇措置に関しても将来の豊かさを獲得するという積極的視点の必要性が説かれ、報告者に対して、公益認定基準におけるパネル・ディスカッションは学際的な議論となった公益・一般法人 No.879 2014.10.154財務三要件、チャリティ委員会方式による公益性判断において将来性判断が可能かどうかの見解を問う質問がなされた。  続いて、同じくコメンテーターの馬場英朗氏(関西大学)から、公益認定に係る制度の狙いが、当初は、民間の主体性の発揮及び客観的判断基準(恣意性の排除)にあったものが、運用の過程において、税制上の優遇措置との関係から、新規事業を開始するに際して行政(課税当局)の判断を仰ぐこととなり、判断主体がシフトしてしまっているのではないかとの問題提起がなされ、報告者の見解が問われた。  さらに、フロアから日米英の人口比と各国における公益性を有する法人の比が大きく異なっていることの原因となる制度の違いについてなど複数の質問が寄せられ活発な質疑応答が行われた。  最終日は、午前に、特別セッション「非営利組織の会計枠組み構築に向けて」(司会:齋藤真哉氏)が行われた。 【特別セッション】  森洋一氏(日本公認会計士協会)による基調報告において「非営利組織の会計枠組み構築に向けて(日本公認会計士協会非営利法人委員会研究報告第25号)」(以下、研究報告25号という。)の概要について説明された。すなわち、非営利組織の範囲について、事業活動を通じて稼得した利益を分配することを目的としない組織であると定義し、会計枠組み構築に向けては、①会計の基本的枠組みの共有、②モデル会計基準の開発、③会計基準の統合化という段階的アプローチが提案された。そして、基本的枠組みを構築するためには、これを一元的に取り扱う体制が不可欠であるとし、この場合の会計基準設定主体に求められる要件について、利害関係者の参画と代表性、独立性、透明性とガバナンス、正当性、専門性、財政基盤が挙げられた。その上で、会計基準設定主体として、①行政内に設置、②民間新団体を設立、③民間の会計基準設定組織内に設置の3方式が考えられるところ、課題は当然あるものの、③の民間の会計基準設定組織内に設置の方式が望ましいものとされた。紙幅の都合上、詳細に触れることはできないが、研究報告25号の報告に係る研究に取り組まれた背景としての非営利セクターに対する期待と課題、わが国の情報開示と会計の状況についても丁寧な説明が行われた。  続くパネル・ディスカッションにおいては、まず、報告者に対して、パネリストの鷹野宏行氏(武蔵野大学)から①アメリカの非営利法人会計に係る概念フレームワーク及び会計基準とのあり方及び②会計基準設定主体の資金調達についての見解を問う質問及びコメントがなされた。次いで、同じくパネリストの古庄修氏(日本大学)は、研究報告25号の意義、機能についてコメントされた後、①比較可能性についての情報ニーズ、会計プロフェッションにおける統一化の実需、②非営利法人の範囲(非営利性の定義)、③非財務報特別セッションの司会は今大会実行委員長の齋藤真哉氏公益・一般法人 No.879 2014.10.15学会ニュース 5告の開示の進め方について質問された。  さらに、フロアの会員と一体となって、①非営利組織の範囲、②フレームワークと会計基準との関係、③非財務情報の役割、④会計基準設定主体について、活発な質疑応答、議論が行われた(時間切れとなり、③、④の問題点は割愛となった)。 【西日本部会報告】  大会プログラムの最後は、西日本部会(九州部会)報告として「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」(司会:早坂毅氏〔税理士・行政書士〕)の最終報告が行われた。  冒頭に森美智代氏(熊本県立大学)から最終報告書の提出に係る報告と関係者への謝辞が述べられた。引き続いて、渡辺亨氏(熊本市都市政策研究所)より「熊本地域の地下水保全事業におけるNPOの役割」についての報告が行われた。  報告においては、NPOが関係した官民協働に係る成功事例(熊本地域の地下水保全事業〔かんくまセミコンモデル〕)が紹介され、官民協働におけるNPOの役割について確認された。すなわち、官民協働においてNPOがモデルケースを構築し、その成功事例を示すことで、行政や企業の参入を促す起爆剤となり得ることの指摘がなされた。 【自由論題報告】  自由論題報告は、第一会場(司会:船越洋之氏(湘北短期大学))において、髙屋雅彦氏(近畿大学)「病院と公益性に関して-精神科診療を例として-」、河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)「在宅医療を担う医療体制の在り方」、森美智代氏「非営利法人組織における会計の役割-日独における医療改革をとおして-」、第二会場(司会:竹内拓氏(自由が丘産能短期大学))において、黒木誉之氏(熊本県立大学)「内発的発展による地域再生-水俣市の「もやい直し」を主軸とした市民協働の地域づくり-」、井寺美穂氏(熊本県立大学)「行政倫理システムの機能および逆機能-政府における取組みを中心に-」、西村友幸氏(釧路公立大学)「非営利組織はアドホクラシーか?」、第三会場(司会:江頭幸代氏(関東学院大学))において、菊池遼氏(東北大学大学院生)「NPO 法人の新認定制度に関する一考察-認定NPO法人へのインタビュー調査から-」、藤井誠氏(日本大学)「非営利法人課税の本質」、出口正之氏(国立民族学博物館)「学校法人・社会福祉法人創設における制度改革との比較における公益法人制度改革」の全報告が行われた(各報告に対するコメンテーターについては省略した)。

  • 第8回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第8回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成21年9月26日 非営利法人研究学会 審査委員長:大矢知浩司  非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第8回学会賞(平成20年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)及び学術奨励賞(平成20年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果、今次は残念ながら学術奨励賞に該当する論文はなく、下記の論文を学会賞に値するものと認め選定しましたので、ここに報告いたします。 1. 学会賞 伊藤研一(摂南大学)・道明義弘(奈良大学〔名誉教授〕)「大統領府創設の“ねらい”ー行政組織の効率測定と予算配分:サイモンとバーナードー」(平成20年度非営利法人研究学会全国大会報告、於・日本大学、『非営利法人研究学会誌』VOL.11所収) 【受賞論文の特徴と受賞理由】  本稿は、先に第10回全国大会統一論題で報告され、その報告をベースに纏められた論考「アメリカ行政府の構造改革ー組織論はF. D. ローズベルトを助けたか?ー」(『非営利法人研究学会誌』VOL.9所収)で論じられた1939年のローズベルト米大統領による行政府の構造改革についての概括的な説明をさらに押し進め、行政府の効率測定と予算配分問題を、詳細かつ出来るだけ具体的に明らかにしようとするものである。この課題は、伊藤の初期サイモン研究において、サイモンの研究課題が社会的な背景の下において実行されており、1930年代の社会的経済的な状況の解明が必須であることを明らかにしてきているが、サイモンにおける理論形成の背景を社会的な全体状況の下で解明し、サイモン理論の創造・形成の過程を、社会的な行動との関係の下で明らかにしようとする試みは、この伊藤の試みを除けば、ほとんどなされたことがないと思われる。このような試みを通じて、理論が時代の子であることを伊藤は具体的に明らかにするとともに、時代の変遷において、理論がどのように位置づけられるかを解明できるという。この初期サイモンを研究する過程の一環として、先の論稿と本稿がある。  効率測定については、ローズベルト大統領の構造改革以前には、1916年に連邦政府は、後に予算局に吸収されることになる効率局を設置して、行政府の効率測定を実行しようとしている。本稿では、効率局による年次の報告書を手掛かりに、効率局の行動を要約し、その行動が予算局にどのように結びつき、予算局においては、どのような行動が期待されていたのかを明らかにしようとしている。1933年に予算局に吸収された効率局については、わが国ではこれまで注目されることがなく、したがって、その行動が紹介されることはなかったが、現在、わが国の行政において重要な課題とされている行政の縦割り問題を解決し、行政における効率を高めるためには、改めてこの効率局の行動を見直す必要があろうと論者は言う。  効率局においては、人事における効率評定システムの作成と評価の実行、各省の業務遂行についての調査と効率化、業務の重複についての調査、統計資料の作成と管理という職務を実行していたが、効率局を予算局に吸収した理由の1つは、予算配分にこの効率局において蓄積したノウハウを利用しようとすることにある。効率局の行動を予算局との関係の下において明らかにしたのは、本稿が最初であろう。  大恐慌を経て、アメリカの時代的な要請であった効率問題の解決は、また、このような時代背景の下において生み出されてきているサイモン理論に大きな影響を与えており、サイモン理論の理論的な基礎は一貫して「効率」にあると、伊藤・道明は喝破している。時代と切り結ぶことによって、サイモンは、時代の中から、その要請に応えるべく彼の理論を構成していることが明らかになっている。連邦政府における構造改革は、効率問題を通じて、サイモンの理論と結びついている。サイモンにとって、連邦政府の構造改革に辣腕を振るったブラウンロー委員会の構成メンバーであるメリアムはシカゴ大学の恩師であり、また、ギューリックとは効率研究を通じて、リドレーを介して知悉の関係にある。後日、サイモンは、ギューリックに対して、構造改革の理論的基礎が伝統理論であるとして激しい論難を浴びせたが、この論難がサイモンの効率測定研究の成果に基づくことを、伊藤・道明は明らかにしようとするものであった。  本稿においては、ブラウンロー委員会の提案のうち予算局に関する部分を取り上げ、1939年の構造改革における変革をGovernment Manualの組織図を示すことによって詳細に跡づけるとともに、担当官の氏名を明らかにすることで、その中にサイモンの知己が任命されていることを見出している。予算局が大統領府に移管されるとともに、その権限は大きく変化し、予算配分と情報管理という枢要な職能を果たすようになる。そこにサイモンは知人を有していたし、また、他の政府機関にも知己を持っている。このように、当時のサイモンは、政府の中心的な機関に属する人物との関係を有しており、彼の理論形成には、当時の時代的な全体状況が色濃く反映しているという。  ブラウンロー委員会の提案において示されている予算局の大統領府への移管と、その職能の拡大は、そのまま1939年の構造改革において実行されていることが明らかにされている。ブラウンロー委員会における予算局に関する提案と、ローズベルト大統領の議会への提案Reorganization Plan No.1 of 1939 とは、軌を一にするものであり、大統領は、委員会の提案どおりに予算局を大統領府へ移管し、予算局の職能を拡大するという提案を行っていることが分かる。経営管理の腕として、大統領は予算局の行動には極めて重要な役割を期待した。これは、ギューリックの考え方を具体化したものであり、伝統的な経営理論の成果の1つとみなすことができる。そこでの理論的なバックボーンは、管理原則論であり、管理過程論であった。  このギューリックの理論に対して、激しい論難を浴びせたサイモンの考え方の基礎には、彼自身の効率研究成果が横たわっている。本稿においては、その論難へ至る研究成果、効率測定問題の研究過程を詳細に追跡しており、リドレーとの共同研究において、リドレーの有効性を重視しつつも、サイモンは独自に効率重視の考え方を提示し、共同研究をリードしたことを明らかにしている。サイモンは、効率測定を操作可能なものとして提示することが必要と考えており、そのフレームワークを案出しようとしている。このようにして生み出された効率の考え方が、生涯を通じて、サイモンの研究成果における通奏低音となっているというのが、伊藤・道明の見解である。  ローズベルト大統領は、大恐慌を克服し、民主主義を守り抜くために必要な要件として、効率を掲げているが、この考え方は、ギューリックにもサイモンにも共通したものであった。しかし、ギューリックには、操作可能な形での効率概念のフレームワークが欠けていたのに対して、サイモンにおいては、不完全ではあるが、操作可能な形で、そのフレームワークを提示できたという自負が見られるとともに、時代の要請に応えるという充足感が溢れている。同時代のバーナードも、時代とともに歩み、有効性と効率性を組み合わせた評価フレームワークを提示している。  本稿では、ローズベルト大統領がニュー・ディール政策を実行し、効率を求めて、連邦行政府の構造改革を断行する時代にあって、サイモンの初期研究においても、効率問題が主要な関心事であり、時代と切り結びつつ、サイモンは自分の考え方をまとめていっていることを、構造改革に関する文献とサイモン・リドレーが著している文献とに基づきつつ詳細に明らかにしている。時代の動きを描きつつ、それにシンクロする形で、サイモンという研究者の自らの理論形成の過程を明らかにしており、両者に共通するキーワードとして、効率という概念を見出しているところに、本稿の特徴が見られる。  以上から、問題指摘の独創性、文献渉猟、論述展開の緻密さ、効率性と予算との関係を明確にした現代的意義づけ等、極めて優れた大作であり、審査委員会は一致して、学会賞にふさわしい論文に選定した。 2. 学術奨励賞 該当者なし

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