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  • 第18回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第18回大会記 2014.9.10-11 横浜国立大学 統一論題 公益性の判断基準 税理士  上松公雄  非営利法人研究学会第18回大会が、横浜国立大学(大会準備委員長:齋藤真哉〔横浜国立大学〕)において、平成26年9月10日から11日までの2日間に渡って開催された。  前日の常任理事会及び理事会、1日目の総会の開催に引き続いて、統一論題「非営利法人に係る公益性の判断基準」(司会:佐藤倫正氏〔愛知学院大学〕)の報告が行われた。 【統一論題報告】  第1報告の岡村勝義氏(神奈川大学)「一般社団・財団法人の公益性判断基準」においては、公益性判断基準について、公益認定基準のうち、1号基準(事業目的)、6号基準(収支相償)、8号基準(公益目的事業比率)、9号基準(遊休財産保有制限)と旧制度の「指導監督基準」との比較が行われ、「指導監督基準」を承継しつつ、独自なものとして、公益目的事業について不特定多数条項(不特定多数の者の利益の増進に寄与するもの)による質的規制(1号基準)と財務三基準(6・8・9号基準)による財務的側面からの量的規制の強化が付加されていることが明らかにされた。また、それぞれの問題点として、質的規制については、不特定多数条項の判断において裁量の余地があり判断にズレが生ずる恐れがあること、財務三基準については、税制上の優遇措置との連動性までも強化されたため、財務三基準=税制優遇措置の適用基準となっていることの指摘がなされた。  第2報告の初谷勇氏(大阪商業大学)「特定非営利活動法人の公益性判断基準」においては、法人制度の沿革について行政システムの集権・分権等との観点と関連せしめて整理された上で、公益法人(公益社団・財団法人)とNPO法人における公益性判断主体及び公益性判断基準、そして、公益増進性判断主体及び公益増進性判断基準の転換状況と相違点について報告された。すなわち、公益性判断基準については、公益法人制度は、公益性判断基準の「統一化への伏流」から基準の「消失」であり、NPO法人制度は「法定」からその「拡充」とされた。また、公益増進性判断基準については、公益法人制度では、「自由裁量」から「法定・統一化」であるのに対し、NPO法人制度では、「根拠法の転換と基準緩和の昂進」であるとされた。  NPO法人の場合のこれらの相違は、認証主義、あるいは、行政主導の下での地方分権・分散化と対象の拡充に向けた対応の深まりという「程度」の問題と捉えることができるものとされた。   第3及び第4報告は、諸外国における公益性判断基準に対する研究であり、第3報告の金子良太氏(國學院大學)「アメリカの非営利法人の公益性判断基準」においては、内国歳入法501(C)⑶団体を対象に、その特徴及び連邦税の非課税団体の認定の仕組みについて解説された。501(C)⑶団体については、パブリック・チャリティ(PC)とプライベート・ファウンデーション(PF)の区分があり、さらに、PCには、①宗教・学校医療・公立大学後援団体等の連邦・州で認可を得た法人、②PST等の審査に合格した団体、③事業型PSTに合致した団体、④パブリック・チャリティ支援型組織の4類型が存し、それぞれについて、公益性の認定基準が異なり、かつまた、租税の特典の内容も異なることが明らかにされた。日本と比較した特徴として、広く一般から寄附を集める団体の優遇は大きいものの、特定者からの寄附で成立するPFには租税回避を防止するための規制等が存することが紹介された。 第4報告の尾上選哉氏(大原大学院大学)「英国チャリティの公益性判断基準」では、所轄庁であるチャリティ委員会の公益性認定の判断基準をチャリティの登録時を中心として考察された。  2006年チャリティ法以後、チャリティとは、専らチャリティの目的のために設立された組織として定義され、チャリティ目的であるためには、①目的記述要件(組織の目的〔使命〕がチャリティ法に規定する13の目的記述に該当するかどうか)と②パブリック・ベネフィット・テスト(目的が有益であるかどうか及び公に便益をもたらすかどうか)を充足するかどうかについて、チャリティ委員会が決定することが確認された。   以上の4報告を基に、パネル・ディスカッションへと進み、まず、コメンテーターの江田寛氏(公認会計士)は公益性判断に係る視点として将来社会に貢献するか否かの点、また、課税の優遇措置に関しても将来の豊かさを獲得するという積極的視点の必要性が説かれ、報告者に対して、公益認定基準におけるパネル・ディスカッションは学際的な議論となった公益・一般法人 No.879 2014.10.154財務三要件、チャリティ委員会方式による公益性判断において将来性判断が可能かどうかの見解を問う質問がなされた。  続いて、同じくコメンテーターの馬場英朗氏(関西大学)から、公益認定に係る制度の狙いが、当初は、民間の主体性の発揮及び客観的判断基準(恣意性の排除)にあったものが、運用の過程において、税制上の優遇措置との関係から、新規事業を開始するに際して行政(課税当局)の判断を仰ぐこととなり、判断主体がシフトしてしまっているのではないかとの問題提起がなされ、報告者の見解が問われた。  さらに、フロアから日米英の人口比と各国における公益性を有する法人の比が大きく異なっていることの原因となる制度の違いについてなど複数の質問が寄せられ活発な質疑応答が行われた。  最終日は、午前に、特別セッション「非営利組織の会計枠組み構築に向けて」(司会:齋藤真哉氏)が行われた。 【特別セッション】  森洋一氏(日本公認会計士協会)による基調報告において「非営利組織の会計枠組み構築に向けて(日本公認会計士協会非営利法人委員会研究報告第25号)」(以下、研究報告25号という。)の概要について説明された。すなわち、非営利組織の範囲について、事業活動を通じて稼得した利益を分配することを目的としない組織であると定義し、会計枠組み構築に向けては、①会計の基本的枠組みの共有、②モデル会計基準の開発、③会計基準の統合化という段階的アプローチが提案された。そして、基本的枠組みを構築するためには、これを一元的に取り扱う体制が不可欠であるとし、この場合の会計基準設定主体に求められる要件について、利害関係者の参画と代表性、独立性、透明性とガバナンス、正当性、専門性、財政基盤が挙げられた。その上で、会計基準設定主体として、①行政内に設置、②民間新団体を設立、③民間の会計基準設定組織内に設置の3方式が考えられるところ、課題は当然あるものの、③の民間の会計基準設定組織内に設置の方式が望ましいものとされた。紙幅の都合上、詳細に触れることはできないが、研究報告25号の報告に係る研究に取り組まれた背景としての非営利セクターに対する期待と課題、わが国の情報開示と会計の状況についても丁寧な説明が行われた。  続くパネル・ディスカッションにおいては、まず、報告者に対して、パネリストの鷹野宏行氏(武蔵野大学)から①アメリカの非営利法人会計に係る概念フレームワーク及び会計基準とのあり方及び②会計基準設定主体の資金調達についての見解を問う質問及びコメントがなされた。次いで、同じくパネリストの古庄修氏(日本大学)は、研究報告25号の意義、機能についてコメントされた後、①比較可能性についての情報ニーズ、会計プロフェッションにおける統一化の実需、②非営利法人の範囲(非営利性の定義)、③非財務報特別セッションの司会は今大会実行委員長の齋藤真哉氏公益・一般法人 No.879 2014.10.15学会ニュース 5告の開示の進め方について質問された。  さらに、フロアの会員と一体となって、①非営利組織の範囲、②フレームワークと会計基準との関係、③非財務情報の役割、④会計基準設定主体について、活発な質疑応答、議論が行われた(時間切れとなり、③、④の問題点は割愛となった)。 【西日本部会報告】  大会プログラムの最後は、西日本部会(九州部会)報告として「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」(司会:早坂毅氏〔税理士・行政書士〕)の最終報告が行われた。  冒頭に森美智代氏(熊本県立大学)から最終報告書の提出に係る報告と関係者への謝辞が述べられた。引き続いて、渡辺亨氏(熊本市都市政策研究所)より「熊本地域の地下水保全事業におけるNPOの役割」についての報告が行われた。  報告においては、NPOが関係した官民協働に係る成功事例(熊本地域の地下水保全事業〔かんくまセミコンモデル〕)が紹介され、官民協働におけるNPOの役割について確認された。すなわち、官民協働においてNPOがモデルケースを構築し、その成功事例を示すことで、行政や企業の参入を促す起爆剤となり得ることの指摘がなされた。 【自由論題報告】  自由論題報告は、第一会場(司会:船越洋之氏(湘北短期大学))において、髙屋雅彦氏(近畿大学)「病院と公益性に関して-精神科診療を例として-」、河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)「在宅医療を担う医療体制の在り方」、森美智代氏「非営利法人組織における会計の役割-日独における医療改革をとおして-」、第二会場(司会:竹内拓氏(自由が丘産能短期大学))において、黒木誉之氏(熊本県立大学)「内発的発展による地域再生-水俣市の「もやい直し」を主軸とした市民協働の地域づくり-」、井寺美穂氏(熊本県立大学)「行政倫理システムの機能および逆機能-政府における取組みを中心に-」、西村友幸氏(釧路公立大学)「非営利組織はアドホクラシーか?」、第三会場(司会:江頭幸代氏(関東学院大学))において、菊池遼氏(東北大学大学院生)「NPO 法人の新認定制度に関する一考察-認定NPO法人へのインタビュー調査から-」、藤井誠氏(日本大学)「非営利法人課税の本質」、出口正之氏(国立民族学博物館)「学校法人・社会福祉法人創設における制度改革との比較における公益法人制度改革」の全報告が行われた(各報告に対するコメンテーターについては省略した)。

  • 第10回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第10回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成23年9月14日 非営利法人研究学会 審査委員長:石崎忠司  非営利法人研究学会学会賞審査委員会は、第10回学会賞、学術奨励賞、学術奨励賞特賞の候補作を慎重に選考審議した結果、今次は下記の論文を学術奨励賞に値するものと認め、選定しましたので、ここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  佐久間義浩「非営利組織における内部統制の現状―自治体病院におけるアンケート調査による分析―」 【受賞理由】  本論文は,全国の自治体病院を対象にアンケート調査を実施し,内部統制の構築・運用の実態を明らかにするとともに,調査データの統計分析を通じて自治体病院における内部統制の導入要因の検証を試みたものである。本論文における調査・分析の結果,回答した病院の6割弱がすでに内部統制を導入していること,そして内部統制の導入要因としては病院の規模が相対的に強く作用していることが,明らかにされている。  今日,患者のニーズに対応したきめ細かい医療サービスの提供が今まで以上に強く求められる一方で,自治体病院をはじめとした医療機関の財政問題が深刻化している。しかし,これまで医療機関の管理運営においては「経営」や「ガバナンス」といった視点からのアプローチがなされることは極めて稀であり,そうした事情が,医療機関における情報開示制度の未成熟性と相俟って,社会科学分野での研究の進展を阻む要因となってきた。本論文は,こうした制約を持つ未開拓分野の研究に真正面から取り組んだものであり,学界に大きな一石を投じる好著に仕上がっている。本論文は,医療機関の経営分析を手掛ける後続の研究が必ず踏まえなくてはならない先行研究になるであろう。これが本論文の第1の功績である。  また,本論文では,実態の解明に際して周到な実証研究の手続きがとられており,研究の貢献と課題が明確に提示されている。こうした本格的な実証研究論文が本学会誌に掲載されたのは本論文が最初であり,その意味で本論文は,非営利組織研究の新しい分野を切り拓いたものと位置づけることができる。本学会のとりわけ若手会員の今後の研究を活性化する貴重な先行事例となるであろう。これが本論文の第2の功績である。  本論文では,医療機関が抱える固有の経営問題への言及がなく,また実証分析を通じて得られた知見も常識の域を出ないなどの問題点もあるが,それらは,著者の今後の研究課題を示すものであって,本論文の学術的価値をいささかも損なうものではない。以上の理由から,本論文は,学術奨励賞授賞に相応しい著作であると,審査委員会は全会一致で認めた。 3. 学術奨励賞特賞    該当作なし

  • 第23回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第23回大会記 〈2019年9 月15〜16日 久留米大学〉 統一論題 公益法人制度改革10周年―公益法人の可能性と課題を探る― 齋藤真哉  横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授  令和元年9 月15日(日)より16日(月)の日程で、非営利法人研究学会第23回全国大会が、久留米大学(御井キャンパス・本館)において行われた。   大会1 日目に、「公益法人制度改革10周年―公益法人の可能性と課題を探る―」を統一論題とする研究報告及びディスカッションが行われた。当該論題は、「民による公益の増進」を目的として、公益法人制度改革関連三法が平成20年12月に施行されてから10年が経過したことを機に、その制度改革の目的が達成されているのか、制度上の今後の課題は何かという問題意識に基づいて、さらには公益法人が果たす社会的役割に対する今後の展望についても検討すべきとの趣旨から設定されたものであり、制度と会計、税務の各観点から公益法人制度を見直すことを内容とした。  登壇した3 名の報告者とテーマは、①出口正之氏(国立民族学博物館)「税制優遇のルビンの壺:価値的多様性と手段的多様性の奨励」、②尾上選哉氏(大原大学院大学)「会計からみる公益法人制度改革の課題と可能性」、③苅米裕氏(苅米裕税理士事務所)「公益法人の拡充のために公益法人税制が果たすべき機能の考察」であった。なおコーディネーター(座長)は、齋藤真哉(横浜国立大学)が務めた。 統一論題報告 第1 報告 「税制優遇のルビンの壺:価値的多様性と手段的多様性の奨励」(出口正之・国立民族学博物館)  出口氏は、公益法人制度の改革における公益法人制度改革関連三法の立法趣旨が、「民間による公益の増進」にあったことを再確認し、そこでの重要な要素として「多様性」と「機動性」があったと整理された。そして民間における公益を増進するためには、行政の関与が最小限に止められる必要があるとの認識が示された。そして、その例として研究助成の場合を取り上げて、もし研究助成を民間に任せるとしても行政が統一された基準等により制約を掛けるならば、民間においても事務費等が掛かるため、たとえば日本学術振興会だけが研究助成を決定した方が効率的であることを説明された。そこで民間の公益法人の行為等を税制優遇等により規制することは、かえってパレート最適を妨げることが考えられるとの見解が示された。ルビンの壺とは、背景に黒地を用いて白地で壺を描いた図であり、白地に注目すれば壺に見え、黒地に注目すれば向かい合った2 人の顔に見えるというものである。官のロジックになじまない領域にそれを持ち込んでいることを、「ルビンの壺現象」と呼び、そもそも多様性のある民間に税制優遇を根拠としてそうした多様性を消し去るような官の介入があることが、本来の立法趣旨である「民間による公益の増進」を阻害する結果を導いているという問題点が指摘された。 第2 報告 「会計からみる公益法人制度改革の課題と可能性」(尾上選哉・大原大学院大学)  尾上氏は、会計の観点から、公益法人制度改革の趣旨に照らして、改革後の制度が有効な社会的システムとして機能しているのか、改善すべき課題は何か、今後の公益法人制度の発展に会計がどのように寄与しうるのかについて論じられた。改革後の制度の有効性については、制度改革により公益認定された法人の数よりも、一般法人の数の増加が著しい(後者が前者の約100倍)現状を踏まえて、制度改革が公益の増進に直結したのかについては疑問があるとの含意が示された。そして公益法人制度を支える柱としての会計について、公益法人に適した会計基準・会計制度になっているのかについて、課題が提示された。すなわち、1 つには、持分権者不在の公益法人(非営利法人)に対して、資本主理論に立脚する企業会計の理論と手法を導入していること、今1 つには、資源提供者に対する受託責任に関する会計情報の量・質の低下である。それらの課題に対して、公益法人の会計を法人主体理論に立脚して構築すること、またそうした理論に基づいた貸借対照表の表示方法の組換えや財産目録の活用、規模別の会計基準の適用が提唱された。さらに、一般法人の情報開示の検討や一般法人に適用される会計基準が必要であるとの見解が示された。そうすることで、情報開示と法人自治が推進され、一般法人をも含めた民による公益の増進が期待できると主張された。 第3 報告 「公益法人の拡充のために公益法人税制が果たすべき機能の考察」(苅米裕・苅米裕税理士事務所)  苅米氏は、制度改革により「公益的活動の健全な発展を促進し、一層活力ある社会の実現を図る」という課題の解決に寄与できたのかという問題意識に基づいて、税制の観点から制度改革後の税制について検討を加えられた。まず改革以降の法人税の課税を、公益認定された法人及び一般法人の両方について概括的に説明された。すなわち、税法上は、公益法人等と非営利型法人、普通法人との分類により、収益事業課税か全所得課税か、また公益目的事業に対する非課税措置、みなし寄附金制度等について整理された。その上で、財産相続に関わる節税スキームとして一般社団法人等が利用されているとの指摘をされた。具体的には、相続財産を一般法人に移転させることで、その所有権は喪失するものの、自ら又は子供が理事に就任することで、実質的な支配を継続することができるという内容である。特に非営利型の場合、寄附金収入は非課税となる点も確認された。こうしたスキームに対して一定の場合に相続税が課されることが紹介された。加えて、税制とも関わる公益認定の財務三基準や公益目的支出計画について言及された。それらを踏まえて、公益法人等に対しては全所得課税を前提として公益活動支出を即時償却扱いとする方法や、非営利型法人に対して公益活動等に使用しない純資産の一部に追加課税する方法等を取り上げて検討がなされた。  各研究報告に続いて行われたディスカッションにおいては、公益法人をめぐる諸課題、具体的には公益認定のあり方、監督やガバナンス(自律性)、情報開示、税制優遇に関して、活発な質疑応答が行われた。 特別企画  日本公認会計士協会「非営利組織における財務報告の検討〜財務報告の基礎概念・モデル会計基準の提案〜」に関する報告及びパネルディスカッションは、会田一雄(慶應義塾大学)をコーディネーターとして実施された。  まず、松前江里子氏(日本公認会計士協会)により、環境変化に応じて非営利セクター全体に共通の会計枠組の必要性を背景に、非営利組織における財務報告の基礎概念とモデル会計基準について、プロジェクトの活動経過を踏まえて、報告がなされた。続いてパネルディスカッションに入り、藤井秀樹氏(京都大学)より今回のプロジェクトの社会的意義及び組織特性から導出されたモデル会計基準の特質について、また、日野修造氏(中村学園大学)より純資産の区分とフロー財務表の表示形式に焦点を向け、米国FASと比較しながらモデル会計基準により作成される情報内容が論じられた。さらに、会場からの質問に対して、報告者及びパネリストからの回答及び討論が活発に展開され、今後の非営利セクター内での会計基準統合化の途を展望し、本報告を総括した(文責:会田一雄)。 自由論題報告 自由論題報告第1 会場 第1 報告 「副(福)業の可能性を拓く―福祉職の人材基盤強化にむけた中間支援組織の挑戦」(平尾剛之・きょうとNPOセンター、吉田忠彦・近畿大学)   65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会、いわゆる「超高齢社会」を先進国の中で最初に日本が迎えている。生産労働人口が減少し、これまでの「当たり前」では対応できない、また多様な働き方が求められている現状において、中間支援組織であるきょうとNPOセンターは公益財団法人トヨタ財団の助成を得て、福祉現場での副業によるキャリア形成を推進するための福業推進プロジェクトを形成し、福祉職への就労機会の創出や社会支援基盤の強化にむけた取組みに挑戦している(文責:吉田忠彦)。 第2 報告 「非営利組織におけるコア・スタッフの育成と確保のための人的資源管理施策―中間支援組織を事例として」 (東郷寛、團泰雄・近畿大学)   日本の支援型NPOの多くは経営基盤が不安定であるために、コア・スタッフのリテンションが困難であるという課題を抱えているが、ミッションを具現化するための経営課題にうまく対処するためにはコア・スタッフのリテンションやそれに伴う人的資源管理(HRM)施策の整備が不可欠である。従来のNPOにおけるHRMに関する研究ではこの点が十分に論じられていない。  そこで、本研究ではHRMの視点から、3 つの支援型NPOの事例分析をもとに、支援型NPOが社会的価値を生み出すための条件に関する以下の仮説を導出した。①共通の経営環境下にある組織間でも、社会的価値創造を支える戦略的行為能力に差が見られる、②コア・スタッフの確保と育成面での違いが、戦略的行為能力の違いを生み出している、③組織の成長とHRMの仕組み化の程度がコア・スタッフのリテンションの程度とスタッフの組織内キャリア形成の促進の程度を規定する、④組織内の知識と情報の循環が活性化するとスタッフのエンゲージメントが高まり、スタッフの成長ひいてはコア・スタッフのリテンションに影響を与える。  また、事例分析からはコア・スタッフの役割の重要性やエンゲージメントを高める施策の重要性が明らかとなり、今後はコア・スタッフの育成施策が能力向上や組織成果につながるメカニズムの特定などが課題となることを示した(文責:東郷寛)。 第3 報告 「NPO支援をめぐる施設、組織、政策―アクターネットワーク・セオリーの視点から」(吉田忠彦・近畿大学)  わが国のNPO支援をめぐる施設、組織、政策の相互作用について、ラトゥールらによって推進されるアクターネットワーク・セオリーの視点から分析することを目的として、神奈川県によって1996年に設立された「かながわ県民活動サポートセンター」の設立プロセスと「かながわボランタリー活動推進基金21」の設置プロセスをケースとして取り上げた。  センターも基金も、当時の知事の強いリーダーシップによって導かれたが、それだけでは実現しなかった。その背景となる要素があった。神奈川県では米軍基地があることで住民運動が盛んであったし、神奈川県や横浜市では長年にわたって革新自治体が強く、行政と市民活動とはある程度の相互依存関係もあった。さらに、その長年にわたる革新自治体によって行政の財政事情が悪化しており、それが元大蔵官僚であった知事を生むことになった。またもう1 つ大きな点は、横浜駅から徒歩数分という利便性の高い所に県の行財政改革の対象となる県民センターという箱モノがあったことである。日本の社会全体の流れにおいても、阪神・淡路大震災が発生し、ボランティア革命と呼ばれるような動きがあり、NPO法成立に向けてのさまざまな場所での活動が活発化していた。これらの諸要素が相互作用していたのである。決してワンマンな知事の意向や力だけでセンターや基金はできたわけではなく、基本の計画でさえその後にも市民団体との間で交渉が続けられ、変化していったのである(文責:吉田忠彦)。 自由論題報告第2 会場 第1 報告 「地方創生と公民協働のまちづくり」(澤田道夫・熊本県立大学)  「地方創生」の取り組みについては、2015年に地方版総合戦略が策定されて以降、全国でさまざまな取り組みが展開されている。しかし、そもそも「地方創生」が始まったきっかけについてはあまり知られていない。地方創生の取り組みが始まったのは日本創成会議が2014年に発表したレポート(いわゆる増田レポート)からである。同レポートにおいて、今後の人口減少社会の中で市区町村の半数に当たる896の自治体が「消滅可能性都市」という指摘を受け、全国にショックが広がった。これに対処するために国が始めたのが「地方創生」である。 ではなぜ「消滅可能性都市」なのか。同レポートでは若年女性が2010年から2040年までの30年間に50%以上減少する自治体を消滅可能性都市と呼んだ。若年女性が域外に流出してしまうことが次世代の人口を減少させ、地域の持続可能性を低下させる。すなわち、地方創生の鍵を握るのは若い世代の雇用・出産・子育て等に関する支援ということになる。しかし多くの市町村ではこの事実を理解しないまま、既存の地域振興策のマイナーチェンジに終始しているのが実態であろう。 この点において、本学会が研究対象とする非営利法人は、若年女性の活躍の場となるケースも多く、地方創生にとって重要な役割を果たしている。今後自治体が地方創生の取り組みを進めるに当たり、非営利法人との協働が必要であろう(文責:澤田道夫)。 第2 報告 「民間非営利活動と地域資源活用に関する経済学的考察―広島安芸高田神楽の事例研究―」 (今枝千樹・愛知産業大学、藤井秀樹・京都大学)  地方創生につながる地域資源を開発するには、資源の戦略的な重点配分が不可欠であり、そのためには地域資源の提供者と支援者の間の情報の非対称を緩和する必要がある。かかる問題意識から広島安芸高田神楽のケーススタディを行い、以下の知見を得た。第1 に、事情に精通したマルチプレイヤーが情報の非対称性の緩和に大きく貢献し、支援の傾斜配分を可能にしていることである。第2 に、地域資源として活用可能な神楽団の選抜にあたり、競演大会での優勝実績がシグナリングとして機能していることである。第3 に、神楽が地域資源として実質的に機能していることである。第4 に、持続可能な取組みとするには人材の育成が大きな鍵になることである(文責:今枝千樹)。 第3 報告 「中山間地域を支える非営利法人の地域おこし活動―その意義と活動構造を中心に―」 (井寺美穂・熊本県立大学)  本報告は、耕作放棄地の増加や地域づくりの衰退など多くの課題を抱える中山間地域のひとつである熊本県山鹿市の岳間地域において、地域おこし活動を積極的に展開する特定非営利活動法人(NPO法人)-岳間ほっとネット-の活動事例を分析対象としながら、地域における法人活動の意義やその活動構造について考察を試みるものである。地域担当職員制度の効果により、きめ細やかな行政メニューが提供され、積極的な活動展開が行われているという仮説のもと、研究を展開している。  結論としては、①活動の中心である少人数のブレーンが役割分担をしながら、地域内外の他団体とのパイプ役を果たし、団体間連携が図られていること、②「当事者志向」の地域担当職員が「地域係」という担当業務を担いながら地域支援を行うことにより、NPO法人の積極的な活動展開につながっていることを明らかにしている(文責:井寺美穂)。 自由論題報告第3 会場 第1 報告 「子ども食堂におけるドメインの定義」(菅原浩信・北海学園大学)  本報告は、子ども食堂において、どのようなドメインの定義がなされているのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、新潟県内の6 つの子ども食堂を分析対象として採り上げ、当該子ども食堂の運営団体の代表者等に対する聴取調査を実施し、その結果についての分析及び考察を試みている(文責:菅原浩信)。 第2 報告 「NPO法人の認定制度からみえてきた問題点について―支援団体からの聞き取りを通じて―」(川村基・四国大学)  本報告は、わが国において、NPO法人の数に比して認定NPO法人の数が少ない理由を、支援団体への聞き取り調査から明らかにすることを目的としている。認定NPO法人が少ない理由として、①認定制度の問題点と②NPO法人のマネジメントの2 つが指摘された(文責:川村基)。 第3 報告 「災害とソーシャル・キャピタルに関する一考察」(黒木誉之・長崎県立大学)  本報告は、熊本地震の熊本県益城町と東日本大震災の宮城県南三陸町の現地調査の結果から、被災者による取り組みをソーシャル・キャピタルの視点から分析したものである。分析の結果、次の3 点が明らかにされた。①平時期には祭りなどが重要である。②災害期にはサードプレイスが必要である。③復旧期以降には緩やかなネットワークを形成するサードプレイスが必要である(文責:黒木誉之)。 自由論題報告第4 会場 第1 報告 「18世紀の懐徳堂から考察する資本維持」(水谷文宣・関東学院大学)  現代日本における高橋(2003)は資本維持のためにも減価償却は根拠がないとする。アメリカにおいてはSFAC No.6が資本維持は必要と唱えている。日本の実務家からあるかもしれない反応は、日本ではどうか、実務ではどうかというものである。研究手法としては、アーカイバル・メソッドを採用した。懐徳堂は18世紀に大阪で設立された私立学校であり、武士ではなく町人が経営していた。大阪大学総合図書館の懐徳堂文庫に大量の史料が保管されている。本報告では現存する最古の『懐徳堂義金簿』を活用した。1781年に前書きが書かれている。  修繕が必要となり懐徳堂は存続の危機となった。学校において建物はサービス提供能力に直結する。収入が支出を超過していることが実体資本維持の達成を示す。イギリスの複会計システムと相性が良いのは取替法であり、『懐徳堂義金簿』には取替という言葉が登場していた。ただし当時の日本は鎖国中であった。古典的にはシュミットが物価変動を考慮した実体資本維持を提唱していた。齋藤(2016)はシュミットとは異なる実体資本維持を提唱している。懐徳堂は齋藤(2016)の言う実体資本維持はしていたと言える。学校法人会計基準には基本金概念があり資本維持の発想がある。残された課題は、シュミットの実体資本維持が懐徳堂でも現代会計でも採られていない理由は何かということである(文責:水谷文宣)。 第2 報告 「非営利法人会計における公正価値情報の有用性の考察」(宮本幸平・神戸学院大学)  報告では、非営利法人会計において、近年新たに導入された公正価値会計の情報が有用となるかにつき、経済学の分析ツールである「比較制度分析」を援用して分析を行った。  まず、非営利法人会計の「基本目的」(objectives)につき、非営利法人会計概念書に基づいて整理された。非営利法人会計の「基本目的」(objectives)に関して、FASB概念書第4 号によれば、資源提供者その他の情報利用者が、用役を提供し続ける組織体の能力を評価するのに役立つこととされる。このようなFASBの規定につき、非営利法人会計の概念として措定すべき重要なものが、財務的に保持していかなければならない能力である「財務的生存力」であることが説明された。  次に、非営利法人会計において公正価値評価を導入することの、会計理論的問題点が明らかにされた。保有する金融商品や有形固定資産が公正価値で評価されることになれば、未実現損益が認識されて、財務的生存力の査定に影響を及ぼす可能性がある。公益法人会計/貸借対照表に対し、不確実性及び非客観性が実現利益と比べて強い公正価値評価額が誘導されれば、社会福祉法人会計や学校法人会計よりも、財務生存力を査定する能力の点で劣ることになることが指摘された。  さらに、「比較制度分析」による、非営利法人における、公正価値会計導入の要因分析が行われた。公正価値会計情報を適正に表示して資金提供を受け続けている「非営利法人」の期待将来利得の割引価値をV a、現在資金提供を受けていない「非営利法人」の期待将来利得の割引価値をViuと(i =h、C )とすると、次の式が導出される。  そしてこれをもとに、非営利法人が、公正価値会計情報を表示しないインセンティブを持たない、以下の条件式が導出された。  式より、αと3 つの小カッコの中がいずれも正であるため、WはπC及びπhの値に依存している。ここでπCの値が低いときは、損失非表示を行ったことによる再契約率が低いことを示す。そして、πCの値が低い場合には、「非営利法人」が将来に得られたはずの利得を失う確率( 1 -πC)が高くなり、この場合に「非営利法人」の利得Wが小さくなる。したがって、非営利法人が公正価値会計情報を適正に表示すれば利得が増加することが、本ゲーム・モデルから導出される式によって明らかになると結論付けた(文責:宮本幸平)。 第3 報告 「英国の小規模チャリティと会計」(上原優子・立命館アジア太平洋大学)  わが国の非営利・公益法人の中で、小規模なものは多い。これらの法人では組織的体力が弱いために、十分な管理体制や適切な財務諸表の作成が困難な状況にあるものが存在する。NPO法人も公益法人も、そもそもの法人の趣旨から考えれば、社会に貢献する組織が数多く成長し、活性化することが望まれている。  英国のチャリティも同様に、小規模な組織は多いが、その組織規模の負担を考慮した制度が存在する。財務諸表の作成に関しては、一定規模以下のチャリティには、現金主義での財務諸表の作成が認められている。専門性を必要とする会計について、負担を感じている組織も多いことが予想されるわが国の小規模法人の状況を考えると、英国のように段階的な会計処理を検討することには意義があると考える(文責:上原優子)。 NPO法人研究部会ワークショップ「現場の声に耳を傾ける」  NPO法人研究部会報告というタイトルではあるが、せっかく地方で実施する大会なので大会実行委員会から「ご当地企画」として現場の声を実際に聞きたいという要望があり、異例の形のセッションとなった。  大会委員長の伊佐淳氏から上記の意図が述べられた後、公益財団法人佐賀未来創造基金専務理事吉村興太郎氏から、設立の経緯、公益法人への道、現在の広範なプログラムの説明がなされた。その後、事業拡大のために行政庁を佐賀県から内閣府へ変更しようとしたところ、佐賀県認定なのに熊本地震でボランティアを派遣したことを責められるなどして結局諦めた経緯が語られた。次に、認定NPO法人ピースウィンズジャパンをはじめ非営利組織での経験豊富である、宮原信孝氏が一般財団法人を立ち上げたばかりの筑後川コミュニティ財団の設立の経緯を報告した。久留米には市民団体が約400近くあり、寄付をしてもよいという人もいるが、鍵は税控除だと言われているので何としても公益を目指したいと決意が語られた。 次に、ファシリテーターの出口から、行政は細かな対応に流れるからこそ有識者による第三者機関が制度として入っているのであって、有識者といわれる人たちの能力が、制度が求める以下の場合の時についてはそれを指摘する責任がアカデミックコミュニティには存在すると締めくくった(文責:出口正之)。

  • 221227規程変更Q&A | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    【改正された規程】 全国大会運営規定 (令和4年12月27日改正) 部会運営規程 (令和4年12月27日改正) 分野別研究会運営規程 (令和4年12月27日改正) 【新設された規程】 特別委員会運営規程 (令和4年12月27日新設) <改正に関するQ&A> [全国大会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:大きな変更箇所は第7条です。    これまで自由論題の申し込みは地域部会の報告を経ることが要件となっていました。    改正後は地域部会の報告を経ず直接大会準備委員会に申し込む方法も追加され、2つのルートとなりました。    なお、部会報告を経ない場合は、6,000字程度の報告要旨を申込みの際にご提出いただきます。    また、自由論題の報告者数に制限があるときは、地域部会で報告された方が優先となります。   Q:23年度の全国大会(大阪商大)の自由論題報告に申し込みたいと考えています。申込みはいつから始まり、申込期限はいつになりますか?   A:全国大会準備委員会から、3月末ないし4月初め頃に自由論題報告については募集要領など詳細をご案内する予定です。     申込締め切りは、大会準備の都合上6月末の予定と伺っています。 [地域部会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:大きな変更箇所は第3条です。    これまで地域部会は、北海道部会・関東部会・中部部会・関西部会・九州部会の5つの部会に    分かれて活動していましたが、改正後はエリアを大きく2つに分け、東日本部会と西日本部会とすることになりました。   Q:5つの部会はどのように分かれますか?   A:東日本部会(北海道・関東地方)、西日本部会(中部・関西・九州地方)となりますが、     会員は地域に関係なく部会に参加することができます。   Q:改正の趣旨はどのようなものですか?   A:これまで各地域部会で年3回以上の開催が定められていました。     ただ、地域によって会員数にバラつきがあり、会員の少ない地域では思うような部会の開催が難しく、     合同部会という形で開催していました。その状況に加え、コロナウイルスの影響で対面からリモート環境下へと切り替わり、     遠隔地からでも容易に参加することが可能になったことから、地域を大きく2つに分けた部会編成となりました。   Q:新しい部会長・役員は決まっていますか?   A:東日本部会長は鷹野宏行氏(武蔵野大学)、西日本部会長は吉田初恵氏(関西福祉科学大学)の就任が理事会で承認されています。    その他役員の人選は改めてお知らせします。   Q:地方での部会開催はなくなりますか?   A:部会は2つとなりますが、地域性を考慮して運営委員を用意します。    部会は部会長と運営委員が地域性を考えながら対面・リモートで開催します。なお、規程では会員はいずれの    地域部会にも参加できると定められているため、地域を超えての参加が可能となります。    東日本部会では全国大会前に3回、大会終了後に2回の開催予定と伺っています。   Q:新部会はいつから始まりますか?   A:役員の新体制が決まり次第、新しい部会が始動します。 [分野別研究会運営規程]   Q:どの部分が変更になっていますか?   A:来年度(23年度)で最終報告を迎える「大学等学校法人研究会」「NPO法人研究会」「医療福祉系法人研究会」、    再来年度(24年度)で最終報告となる「公益・一般法人研究会」の活動が終了した後に、分野別研究会運営規程は廃止となります。   Q:分野別の研究活動はどのようになりますか?   A:規程廃止後、分野別研究会としての活動はなくなりますが、新しく始まる「特別委員会」として、     新たな研究活動を続けていくことになります。 [特別委員会運営規程]   Q:特別委員会制定の目的は何ですか?   A:特定の分野に限らず、複数の分野に跨る課題や新たな課題について研究を行うことを目的としています。   Q:どのようなことを研究しますか?   A:研究テーマは様々な分野に跨るように設定することを想定しています。 ※Q&Aは学会Webサイトで随時更新していきます。 規程改正のQ&A

  • 第18回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第18回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 令和元年9月15日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏  非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第18回学会賞(平成30年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成30年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成30年度全国大会における報告に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  黒木 淳『非営利組織会計の実証分析』(中央経済社、2018年3月刊) 【概要及び受賞理由】  本書は、日本の非営利組織、とりわけ公益社団・財団法人、社会福祉法人および学校法人(私立大学)の自発的な会計ディスクロージャーに着目し、「好業績である非営利組織ほど受益者などの情報利用者に対して自発的に会計ディスクロージャーを行う」というシグナリング仮説を実証分析することを目的とするものである。  これまで日本では非営利組織を対象とした実証的な会計研究は非常に少なく、本書はその萌芽的研究としてそれだけでも理論研究の発展に貢献しているが、これまで規範的研究が経験的あるいは直観的に認識してきた事実を、アーカイバル・データを手入力などにより地道に集計し、また海外の実証研究の丹念なサーベイに基づいて、その方法や仮説を日本の非営利組織に応用し、検証している点は、これまで類例がほとんどなかっただけに、その独創性を高く評価しうるところである。  特に本書においては、情報の経済学に依拠したシグナリングの観点に基づいて、非営利組織の会計ディスクロージャーを分析する際の視座や問題意識が極めて明確であり、一つひとつの議論を丁寧に積み上げていく本書の構成とともに、他の理論的アプローチも把握したうえで、これを決して否定していない点も高評価を得た。  著者は、「好業績」(または低業績)に係る財務指標を「効率性」と「財務健全性」の二つの概念に求めている。すなわち、公益法人においては、理事者が少なく、寄附者に依存しているほど公益目的事業比率が高められること、また社会福祉法人においては、人的支出と内部留保の関連性に着目し、内部留保が過大となる要因について、私立大学では、帰属収支差額が将来の教育研究経費の削減に最も予測能力を有すること、などを分析している。本書の発見事項は、「好業績」を示す財務指標が非営利組織の経営者や受益者などの利害関係者にとって有用であり、加えて当該財務指標の活用の仕方にも一定の示唆を与える結論を得ている。  他方で、本書の課題を指摘するならば、本書においてはシグナリング仮説が支持されており、当該仮説検証の結果はロバスト・チェックにより頑健であることが主張されているが、萌芽的研究であるがゆえに、例えば、サンプル選択に係る各法人の範囲、「効率性」や「財務健全性」が非営利組織の「好業績」の指標となりうるのか、などについては審査委員会においても議論になった。また、「自発的開示」と「好業績」のリンケージに他の変数を介在させた場合などの検証や、非営利組織の会計基準の統一をめぐる議論などの具体的課題に対する政策的なインプリケーションについては若干の物足りなさもある。しかし、著者自身、今後の課題を明確に自覚しており、本書は一つの通過点であることが示唆されている。実証研究に見落とされがちな日本の非営利法人制度や会計基準についても要領よく説明されており、著者の旺盛な研究意欲に支えられて今後の研究の発展も大いに期待されるところである。  したがって、本書は、総合的に極めてすぐれた非営利組織会計の研究書であり、審査委員会は、本書が「学会賞」を受賞するに値するものと決定した。 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 第14回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第14回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成27年9月16日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏    非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第14回学会賞(平成26年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成26年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成26年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 第19回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第19回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 令和2年9月26日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏  非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第19回学会賞(令和元年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(令和元年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(令和元年度全国大会における報告に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞 該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 第15回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第15回大会記 2011.9.14-15 熊本県立大学 統一論題 地域の公共サービスと非営利活動―医療・福祉・介護の理論と実際― 公認会計士  清水貴之  非営利法人研究学会の第15回大会は、2011年9月14日(水)・15日(木)の両日にかけて、熊本県立大学を会場に開催し(大会委員長:森美智代氏)、会員を含め100名を超える参加者が集った。また、前日9月13日には常任理事会及び理事会が開催された。  大会1日目には、冒頭に総会が開催された。大会委員長、会長からの挨拶の後、新入会員の報告や学会誌の刊行など、昨年度の事業報告が行われ、学術奨励賞等の審査結果の発表と表彰が行われた。総会終了後、引き続いて本大会の統一論題「地域の公共サービスと非営利活動―医療・福祉・介護の理論と実際―」に基づき基調講演が行われ、その後統一論題に関する報告及びパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッション終了後、会場を熊本テルサに移して懇親会が開催された。 【統一論題報告・討論】  大会1日目午後の統一論題は、藤井秀樹氏(京都大学)を座長として行われた。同論題に係る基調講演は、林田直志氏(熊本県健康福祉部長)が「熊本県における保健・医療・福祉政策と非営利活動」について行った。全国有数の長寿県である熊本県では、従前から福祉及び医療に力を入れてきていること、そして当該分野における非営利法人の重要性がますます増大していることなどについて、報告が行われた。  統一論題報告では、以下の3名の報告者から報告が行われた。  吉田初恵氏(関西福祉科学大学)は、「2012年の介護保険制度改正をめぐる諸課題」について報告した。来年4月に迫る介護保険制度 の改正の内容と当該改正の抱える課題として、地域包括ケアシステムにおける地域住民や行政、NPO等によるネットワーク構築の重要性、新たなサービスの開始に伴う恒久的な財源の確保の必要性等について問題提起を行った。  寺崎修司氏(熊本赤十字病院神経内科部長・医療連携室長)は、「熊本の脳卒中の地域医療連携ネットワークと地域連携パス」について報告した。長期に及ぶ脳卒中の診療の全てを単独の施設で行うことが不可能であるため複数機関の医療連携の必要性が増大していることや、そのような状況に対応するために1995年に設立された熊本県におけるネットワーク(K-STREAM)の活動等が報告された。  小林麻理氏(早稲田大学)は、「地域連携を促進する行政の役割転換と最適公共サービスの創出」について報告した。従来の行政主導型の公共サービスを見直し、地域に存在する多様なアクターの協働により、地域の中でいかに最適な公共サービスを提供していくか、そのガバナンスのあり方と行政の役割転換の 必要性について、医療・介護制度改革を題材として論じられた。  報告の終了後、休憩を挟んで討論が行われた。討論においては、医療・福祉・介護の分野を中心に、今後の公共サービスの提供のあり方と、その中に占める非営利法人の役割の重要性について活発な議論が行われた。 【自由論題報告】  大会2日目には、午前中に自由論題に関する報告が実施された。また、午後からは特別講演が行われるとともに、東日本・西日本両研究部会から各部会の研究内容が紹介された。午前中は、3会場に分かれて9つのテーマで 自由論題報告が行われた。各会場の報告者及び論題は以下のとおりである。 第1会場[司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学)]  ⑴今枝千樹氏(愛知産業大学)「非営利法人組織の財務報告」、⑵馬場英朗氏(愛知学泉大学)・中嶋貴子氏(大阪大学大学院)「非営利組織の成長と収入の安定性―NPO法人 のパネル・データ分析から―」、⑶五百竹宏明氏(県立広島大学)・毛利愛美氏(県立広島大学)「NPO法人の会計情報と資金調達に関 する実証分析」 第2会場[司会:川野祐二氏(下関市立大学)]  ⑴河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)「社会福祉サービスの質の保障と第三者評価事業 ―外部評価の意義と眼界―」、⑵日向浩幸氏(中央大学大学院)「自治体病院の経営革新」、⑶佐久間義浩氏(富士大学)「自治体病院におけるリスクマネジメント―アンケート調査を中心として―」 第3会場[司会:明石照久氏(熊本県立大学)]  ⑴土把勲嗣氏(九州大学大学院法学部研究院専門研究員)「公共事業と政治参加―熊本県の川辺川ダム開発の事例報告―」、⑵澤田道夫氏(熊本県立大学)「新しい公共と地域のガバナンス」、⑶初谷勇氏(大阪商業大学)「地方議会改革とNPO」 【特別講演】  午後からは、江田寛氏(公認会計士・NPO法人会計基準策定委員会委員長)による、「新しいNPO法人会計基準への期待」と題した特 別講演が行われた。NPO法人に対する社会からの信頼について、東日本大震災において様々なNPO法人が被災地で活動しているにもかかわらず、支援者からの義捐金の大半は日本赤十字社等に集中しているという現状を通して、NPO法人がいまだ十分に信頼が得られていないことについて説明がなされた。そして、新たなNPO法人会計基準の策定・公表について、この会計基準が普及することでNPO法人に対する社会の信頼の醸成への貢献が期待されること、真の信頼を獲得するためには会計基準のみならず会計報告の適正性が確保されなければならないことを強調した。 【研究部会報告】  特別講演終了後、小島廣光氏(札幌学院大学)が司会となり、研究部会報告が行われた。東日本研究部会[部会長:岡村勝義氏(神奈川大学)]からは、「日本及び諸外国における非営利法人制度に関する研究―制度史・制度設計・広告制度・税制度等を中心にして―」というテーマについて、西日本研究部会[部会長:藤井秀樹氏(京都大学)]からは「非営利法人におけるアカウンタビリティ指向の業績評価とガバナンスの包括的フレームワーク」というテーマについて、それぞれ研究の進捗状況が報告がされた。  最後に、会長及び大会委員長からの閉会挨拶が行われ、盛況のうちに閉幕した。

  • 法人概要 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    公益社団法人 非営利法人研究学会について  非営利法人研究学会は、公益法人研究学会として平成9年6月に設立。その後、民間非営利活動の拡大に合わせ、対象範囲を拡げて、平成17年9月に非営利法人研究学会と改称し、平成28年1月に一般社団法人となりました。その後、平成29年11月には内閣総理大臣より公益認定を受け、公益社団法人として活動を続けています。  現在は、会長・齋藤真哉(横浜国立大学)を筆頭に顧問3名、副会長2名、常任理事10名、理事15名、監事2名で構成。今後、さらなる活動の充実を図っていくべく、志を共有する方の参加を広く求めています。 沿  革  平成 9年 6月26日 公益法人研究学会(任意団体)として設立       平成14年 9月13日 学術研究団体(経営学部門)に登録       平成17年 9月10日 非営利法人研究学会と改称       平成28年 1月 7日 一般社団法人に移行       平成29年11月 1日 内閣総理大臣より公益認定を受けて、公益社団法人に移行 回顧筆録  特別座談会◆創立10周年を迎えての「温故知新」 (全国公益法人協会[2007]『月刊公益法人』Vol.38)       回顧筆録:学会の10年を振り返って (非営利法人研究学会誌10号:2008年)       回顧筆録:学会の20年を振り返って (非営利法人研究学会誌19号:2017年) 会  長  古庄 修(青山学院大学大学院教授) 事  業  一 研究発表会、学術講演会、報告会等の開催       二 学会誌その他の資料の刊行       三 研究の奨励及び研究業績の表彰       四 調査、研究、見学及び視察実施       五 研究成果及び研究に基づく意見の公表       六 内外の関連学会等との連携及び交流       七 非営利法人に関する啓発及び広報活動       八 その他前条の目的を達成するために必要な事業 事 務 局   〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-6-1 栄信ビル9階       TEL:03-6273-7783 FAX:03-6631-4285 名誉会長 堀田和宏 近畿大学 顧  問 齋藤真哉 横浜国立大学       吉田忠彦 近畿大学 会  長 古庄 修 青山学院大学 副 会 長  大原昌明 北星学園大学      尾上選哉 日本大学      伊佐 淳 久留米大学 常任理事 上松公雄 大原大学院大学      金子良太 早稲田大学      亀岡保夫 公認会計士      川島和浩 東北工業大学      桑波田直人 全国公益法人協会      鷹野宏行 武蔵野大学      高山昌茂 公認会計士      藤井 誠 法政大学      吉田初恵 天理大学 理  事 石田晴美 文教大学      國見真理子 田園調布学園大学      久保秀雄 京都産業大学      東郷 寛 近畿大学      永島公孝 税理士      橋本俊也 税理士      馬場英朗 関西大学      日野修造 熊本学園大学      兵頭和花子 大阪経済大学      松前江里子 公認会計士      宮内 章 全国公益法人協会      宮本幸平 神戸学院大学 監  事 苅米 裕 税理士      濱本 明 日本大学 <委員会> 学会賞審査委員長 齋藤真哉 学会誌編集委員長 尾上選哉 審査・編集委員  伊佐 淳          上松公雄          大原昌明          金子良太          國見真理子          久保秀雄          古庄 修      組織委員長    大原昌明  同 委 員   亀岡保夫          川島和浩          石田晴美 <地域部会> 東日本部会長   鷹野宏行  同運営委員   川島和浩          藤井 誠  西日本部会長   日野修造  同運営委員   宮本幸平          橋本俊也          東郷 寛  役員名簿 定款 国と特に密接な関係性がある公益法人への該当性

  • 各種規程 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    定款 会費等に関する規則 部会運営規程 (令和4年12月27日改正) 分野別研究会運営規程 ( 令和4年12月27日改正) 特別委員会運営規程 (令和4年12月27日新設) 学会誌に関する規程 ( 令和5年9月15日改正) 学会誌以外の著作物に関する申し合わせ 学会賞及び学術奨励賞等に関する規程 ワーキングペーパー投稿規程 スタディグループ運営規程 研究倫理規程 全国大会運営規定 (令和4年12月27日改正) 自由論題報告申込書(Word)  (PDF) 各種規程

  • 第17回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第17回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成30年9月8日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏    非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第17回学会賞(平成29年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成29年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成29年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 第25回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第25回大会記 2021年9月25~26日 関西大学 統一論題 非営利法人の理念と制度  2021年(令和3年)9月25日(土)・26日(日)の日程で、非営利法人研究学会第25回全国大会が関西大学を主催校として開催された。統一論題は「非営利法人の理念と制度」であった。 第25回目を迎える本大会では、前年同様に新型コロナの異常事態の中での開催となり、すべての プログラムをライブ配信によるオンライン開催とした。こうした非常事態だからこそ、あえて非営 利組織の本質を考えることを目的に、統一論題のテーマを「非営利法人の理念と制度」と設定し、 それぞれ報告と討論会を行うこととした。  また、大会中は3名の統一論題報告、8名の自由論題報告、3つの分野別研究会及び受託研究報告が行われた。また、本大会の研究報告は2日間のプログラムとして編成し、あわせて、大会前日の9月24日(金) に常任理事会と理事会を開催し、25日(土)に社員総会と新理事会を開催した。 統一論題報告 趣旨・司会 柴 健次氏(関西大学)  本学会の過去の記録を振り返ると、法人種別のテーマが論じられ、あるいは会計基準が論じられるなど、時々の話題が取り上げられてきた。しかし、非営利組織の本質とは何かにつき論じる機会があっていいのではないかと思い、テーマを「非営利法人の理念と制度」にした。法学分野を代表して岡本仁宏 氏に、経営学分野を代表して小島廣光 氏に、会計学分野を代表して日野修造 氏にご登壇いただいた。形式的に3分野から出ていただいたというより、学問分野の異なる3分野間でのより良いコミュニケーションを図るきっかけを作ることも目的であった。 第1 報告 「非営利団体は、今、どこにいるのか:市民社会論の視角から」( 岡本仁宏氏・関西学院大学)  本報告では、世紀転換期非営利法人制度改革の次に来るべき21世紀非営利法人制度改革の課題を明らかにするために、非営利組織の歴史社会的な状況の市民社会論の視角からの確認が行われた。さらに、市民社会の実 証的把握と規範的把握の概要が示され、今、市民社会論から改革課題を位置づけることの意義が論じられた。最後に、IT革命の下での市民社会の変容に伴う可能性について言及し創造的適応の必要性が示唆された。 第2 報告 「非営利法人制度改革の研究―新・政策の窓モデルによる実証分析―」( 小島廣光氏・星城大学)  本報告は、わが国において長い間必要性が認識されながらも行われてこなかった非営利法人制度改革が、21世紀の初頭に「なぜ」そして「どのように」実現したのかを事例研究によって解明することが目的とされた。まず、新・政策の窓モデルにもとづいて、2つの事例(公益法人制度改革ならびにNPO法と寄付税制の改正)の詳細な年代記分析が行われた。次に、それぞれの事例の共通 点と相違点に関する発見事実を析出するとともに、政策形成の本質に関する命題が導出された。 第3 報告 「非営利法人会計における資本と収益の区別―アンソニーの提言を受けて―」( 日野修造氏・中村学園大学)  本報告は、資本と収益の区別問題を非営利組織会計の分野に適用し検討が行われた。まず、純資 産を拘束によって区分する純資産概念が主流であることを明らかにした上で、非営利組織会計にお いても純利益の測定が重要であり、資本と収益を区別した純資産の構造を主張するR.Nアンソニー の提言について検討が行われた。そして、アンソニーの提言を加味した非営利組織の純資産区分が 提案された。なお、報告では非営利組織が獲得した純利益は、サービス提供可能資源正味残高純増 額であることが明らかにされた。 自由論題報告 司会(第1・第2・第5・第6各報告) 中嶋貴子氏(大阪商業大学) 司会(第3・第4・第7・第8各報告) 初谷 勇氏(大阪商業大学) 第1 報告 「オーケストラ団体における活動財源の集中度と予測可能性に関する実証分析」( 武田紀仁氏・税理士、日本大学経済学研究科博士後期課程)   本報告では、文化芸術活動の主体となる非営利組織体が獲得する収入源の種類・性質・収入源の 集中度が非営利組織体の持続性に及ぼす影響を調べるため、オーケストラ団体のサンプルを用いた分析が行われた。その結果、収入源と持続性の関係を分析するうえでは、収入源の種類や集中度に加えて、設立経緯などに起因する団体の属性と収入源の予測可能性の関連性を考慮して分析を行うことの重要性が説明された。また、文化芸術活動の主体となる非営利組織体のうちオーケストラ団体では、団体の属性により収入構造に差異が存在し、団体の属性と関連性のある予測可能性が高い収入源に対して依存度が高いことがデータから示された。 第2 報告 「NPO支援組織と制度ロジック変化 ―アリスセンターのケース―」( 吉田忠彦氏・近畿大学)  本報告は、日本においてNPO支援組織がどのように発生し、どのようにひとつの制度として普及していったのか、そして組織はその制度とどのように向い合うのかを、そのパイオニアとされる アリスセンターをケースとして分析された。長期にわたる事業の変遷などの分析から、同組織は「市民運動」、「NPO」、「中間支援組織」などの複数の制度ロジックを使い分けながら事業を模索して いたと論じられた。 第3 報告 「クライシス下における信用保証協会の役割 ―中小企業支援に着目して―」( 櫛部幸子氏・鹿児島国際大学〈報告時〉、現在は大阪学院大学)   本報告は、信用保証協会がどのような非営利法人であるかを説明し、そのうえで、公的資金を基 礎とする信用保証協会にデフォルトが生じることの是非や、クライシス下においてどのような視点 をもとに保証判断をすべきなのか等を検討するものである。信用保証協会はクライシス下においても、事業の継続性が望める中小企業に対し信用保証をすべきであり、保証判断の際に、中小企業に更なる会計情報等の提出を求めることが重要であると指摘されている。 第4 報告 「公益法人をめぐるサードセクター論とビジネスセントリズム・ガバメントセントリズム」( 出口正之氏・国立民族学博物館)  公益法人制度改革・税制改革は、いずれも思想的には「政府でもない企業でもない原理を持ちう る第三セクターとしての非営利セクター」に対する期待から打ち出されたものであった。言い換え れば、民間公益セクターの行動原理の独自性の認識が前提であった。 ところが、民間公益セクターに対するこのような理念的積極論があるにもかかわらず、大企業に 対する規制等を適用しようとする「ビジネスセントリズム」、政府に対する規制等を適用しようとする「ガバメントセントリズム」によって、公益法人を律する規制が「効率的ではない」(ビジネ スのルール)、「公平ではない」(ガバメントのルール)といった不文律のルール適用が、大量の明文化された法規制の上に被され、公益法人側に守るべきルールの共有化が揺らぐアノミー現象が起 こりかねない状況が生じていることが明らかにされた。 第5 報告 「非営利組織における自己組織性の実証的研究~公益法人を対象とした調査に基づいて~」( 吉永光利氏・公益財団法人倉敷市スポーツ振興協会・岡山大学大学院)  本報告は、非営利組織における自己組織性(組織が自己決定・自律的に組織変革を図る特性)に ついて、実証主義に基づいた定量的・定性的方法による諸調査の分析結果と考察を提示するものである。具体的な調査では、主に中国地方に所在する公益法人を対象(361法人)とし、アンケート 調査(119法人から回答)とインタビュー調査(17法人に実施)が行われた。そして、これらの調査から得られたデータを基に非営利組織における自己組織性の実態について論じられている。 第6 報告 「活動領域特化型中間支援組織における支援内容の変化と機能の移管―総合型地域スポーツクラブ の事例分析―」( 伊藤 葵氏・富山国際大学)  本報告は、多様な主体が連携したサービスを提供が求められる公共圏における中間支援組織の役割に着目し、総合型地域スポーツクラブを事例とし、組織の成長に応じた支援内容と支援の担い手の変化が分析された。組織の成長過程では、支援の担い手は公的な機関から民間へと移行すること、 支援内容は組織間のコーディネーションが重視されていくことが示された。また、支援対象組織へ の支援機能の移管や複数の組織での支援機能の分担についても指摘されている。 第7 報告 「地方自治体における内部統制と公務員倫理」( 井寺美穂氏・熊本県立大学)    本報告は、地方自治体において「公務員倫理」や「内部統制」、「リスク管理」などの名称で類似の取組みが行われていることに着目した上で、近年、制度化が行われた内部統制に係る取組みと公務員倫理を確保するための各種取組みの目的や実施内容等を比較考察しながら、それらの相違や共通性等を検討されたものである。その上で、地方自治体はその団体の規模に応じて、取組みに格差がみられ、今後、特に小規模団体の取組みが重要になるのではないかと指摘されている。 第8 報告 「非営利組織の国際会計基準プロジェクトと日本への示唆」( 金子良太氏・國學院大學)    報告の最初に、非営利組織の会計の国際的枠組みを形成することを目標とするIFR4NPOプロジェ クトの概要が述べられた。本報告では、プロジェクトにより策定される非営利組織会計の目的、非営利組織に特有の会計の課題に加えて、IFR4NPOに資金を拠出したり策定プロジェクトにかかわる個人や団体等に着目し、わが国への示唆が示された。 分野別委員会報告 司会:吉田忠彦氏(近畿大学) 「NPO法人研究会」報告 出口正之 氏(国立民族学博物館)    この1年の間(2020年10月から2021年9月)の間に、NPO法人にとって極めて重要な報告書が二点出ている。一点は新時代に合わせた報告であり、「NPO法人会計基準策定10周年記念行事 ~歴史秘話 基準誕生の頃の話を聴く夕べ~」と題され、ZOOMによるNPO法人会計基準10周年の会議記録と関係資料・動画が公表されている。  また、もう一つは、特定非営利活動法人NPO会計税務専門家ネットワーク福祉サービスに関する法人税課税問題検討委員会『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』(委員長岩永清滋 氏)である。収益事業課税は政策の中でたびたび論じされている一方、収益事業課税とは何かに ついて十分に検討されていた研究書はこれまでほとんどなかったものと言える。本報告書は歴史、 税法、関連法規、判例等に十分に目配りして現行の収益事業課税の問題点を詳細に検討されている。 NPO法人部会としてもこれらのNPO法人を巡る大きな出来事に対して、学会各方面の学術的関 心を喚起するために江田 寛 氏、岩永清滋 氏を招いて検討がなされ、いずれも学術的に非営利の会計や税制を議論するうえで欠くことのできないものとなっていることが確認された。 「医療・福祉系法人研究会」報告 ( 千葉正展氏・独立行政法人福祉医療機構)    医療・福祉系法人研究会は、現在の福祉・医療に係る制度・政策の流れのなかで、「地域包括ケア」、 「地域共生社会」など地域における様々な社会資源と医療法人、社会福祉法人等との関係性が重要なテーマになるとの認識の下、これまでの部会の活動においては「地域医療連携推進法人制度」や 「地域との連携を進めている名古屋の南医療生協の視察」など研究活動が進められてきた。そうした流れの中で国においては、令和2年に社会福祉法が改正され新たに「社会福祉連携推進法人制度」 (以下「福祉連携法人制度」)がスタートすることとなった。  以上を踏まえ、福祉連携法人制度検討の背景、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会での主な議論と論点、改正社会福祉法における福祉連携法人制度の規定内容等が紹介されるとともに、本学会会員の何名かが別途参画した厚生労働省の「社会福祉法人会計基準等検討会」における社会福 祉連携推進法人会計基準の検討状況とそこでの検討の論点などについても報告され、医療・福祉系 法人における今後の展開や課題等について考察がなされた。 「大学等学校法人研究会」報告( 古庄 修氏・日本大学)    大学等学校法人研究部会は、広く「大学のガバナンスとアカウンタビリティ」を主題として、学 校法人の経営と会計をめぐる理論・実務・政策に係る諸提言の総合化を目指して、最終報告が行わ れた。最終報告書として、①「大学法人の会計―非営利法人会計の議論に資するための考察―」(柴 健次)、②「学校法人における固定資産と学校法人会計基準との関わりについて―特に社会科学系統 の学部を有する四年制大学に関心を寄せて―」(林 兵磨)、③「私立大学版ガバナンス・コードの 意義と課題」(古庄 修)、④「大規模私立大学ガバナンスの構築(試論)」(堀田和宏)の各論稿の 概要が報告された。 今後、本部会の活動は、柴 健次部会長の下で委員を再構成し、継続することになるとの報告があった。 受託研究報告 司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学) 「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究( 座長 成川正晃氏・東京経済大学)    本研究報告は、受託研究として組織された「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究会」の研究報告である。非営利組織の活動を捕捉し財務情報として開示、利用されることにより社会全体に非営利組織に対する理解が普及していくという観点から、非営利組織の会計処理を対象とした検定試験の社会への貢献度合いを把握し、今後の発展は可能かを調査・研究することを目的として設置された。 当日は、本研究会の各研究担当者から検定試験の概要の調査について報告するとともに、公益会計法人検定試験では、資格の有効性を分析し、組織における資格の効用および利活用の可能性を、 社会福祉会計簿記認定試験では人的資本論とシグナリング理論を用いた効果に関する検討を示し、 その後質疑が行われた。 御礼  非営利法人研究学会第25回大会は対面形式での開催が叶わず、第24回に引き続いてリモート(ライブ配信)開催となりました。長引くコロナ禍の社会的影響は大きく、諸学会もまた新しいスタイルを模索しているようです。本学会もそうでした。  今大会は関西大学主催ですが、大阪商業大学からも応援いただきました。両大学から成る準備委 員会は統一論題と同じくらい自由論題を重視する方針で合意に達しました。学会員への問題提起をしていただく統一論題、そして学会員の研究発表の場となる自由論題を等しく重視したのです。その方針に対応して、準備委員会の仕事を、①自由論題運営、②統一論題運営、③大会運営と大きく 分け、3分野が自律的に運営されました。こうしたことはコロナ禍であったからこそできたのかもしれません。複数の大学による合同開催の可能性を探れたのかもしれません。  当学会では元々全国大会の自由論題を重視しています。地域部会長の承認を得て、全国大会へエ ントリーするという仕組みそのものが自由論題重視の姿勢だと思っております。各地域部会長に努力していただき8本のエントリーが実現しました。  統一論題は掲げた統一テーマは重要であります。その上で、法律、経営、会計等の研究者が相互 理解可能な状況を作りたいと報告者に無理なお願いもしました。ご登壇いただいた3先生には無理も聞いていただき、話題の共有に努力いただきました。  常設の分野別委員会と受託研究についてはそれぞれご報告いただきました。これらは中間報告な り最終報告をすることが会員への義務であると位置づけられていることから、すべての委員会にご 報告いただきました。  以上で報告は15本になりました。その報告を準備委員会委員が、企画者、座長、司会者としてかかわっておりますので、本大会記も準備委員会で作成できたかもしれません。しかし、そうするこ とは大会記に主観的な評価を持ち込むことになりかねません。そこで、ご報告者15名全員に報告要 旨の提供をお願いしました。準備委員会が多少表現の統一性を求める修正をしたこと以外は、報告 者による要旨を大会記の素材として利用させていただきました。 以上を踏まえ、ここに大会記を示すことができました。大会における報告者、司会者、各報告へ の参加者・質問者ほかすべての関係者に御礼申し上げます。 2022年5月12日 非営利法人研究学会第24回全国大会準備委員会 準備委員長 柴 健次(関西大学) 委員 橋本 理(関西大学) 馬場英朗(関西大学) 初谷 勇(大阪商業大学) 中嶋貴子(大阪商業大学)  

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