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  • 第9回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第9回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成22年9月25日 非営利法人研究学会 審査委員長:石崎忠司  非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第9回学会賞(平成21年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成21年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成21年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞   江田 寛(公認会計士)「NPO会計基準を民間で作成することの意義」(平成21年度非営利法人研究学会全国大会統一論題報告、於・名古屋大学,『非営利法人研究学会誌』Vol.12所収) 【論文の概要と授賞理由】  1998年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて,10年余が経過した。その間,NPO法人は質量の両面にわたって飛躍的な発展を遂げ,今やわが国の経済社会にとって無くてはならない存在となった。ところがその会計制度については,NPO法に若干の関連規定があるのみで,計算書類作成のための包括的な基準は現在に至るまで存在しない。  こうした不正常な状態を改めるとともに,NPO法人の今後のさらなる発展の制度的基盤を整備するべく,NPO法人の支援団体等が中心となって2009年3月にNPO法人会計基準の策定作業を開始した。著者は,その策定主体であるNPO法人会計基準策定委員会の委員長を務めた。本稿は,そうした立場にあった著者の視点から,NPO法人会計基準策定作業の経緯と意義を取りまとめたものである。  本稿の主たる貢献は,以下の2点にある。第1は,「NPO会計基準を民間で作成することの意義」を,当事者の観点から明らかにしていることである。他の非営利法人会計基準の事例が示すように,行政主導の基準設定は,行政目的を優先した作業となりがちである。その弊害として,基準が法人の活動実態から乖離したものになる傾向があり,またそのことから,資源提供者や国民に対する説明責任(アカウンタビリティ)の視点が弱くなるという問題も,派生することになる。著者によれば,これらの弊害を回避しながらその会計制度を整備拡充することが,NPO法人の今後の発展にとっては避けて通れない課題の1つとなるのである。  第2は,NPO-GAAPの形成に向けた独自の洞察を行うとともに,その具体的な実践経験を報告していることである。民間主導で基準設定を行った場合,上掲のような弊害を回避することが可能となる一方で,基準の法制度的な強制力はまったく期待できないという難問が新たに生じることになる。そのような状況下で,新しく策定する基準がNPO-GAAP(一般に認められたNPO会計原則)となるためには,当該基準は,「少なくともNPO法人の過半数が自主的に採用してくれるものでなければならない」(江田論文12頁)。その可能性を担保するのは,「この会計基準が,市民参加型のオープンなプロセスで作られたという事実」(同20頁)であると,著者はいう。  策定委員会の「論点報告」に収録された9項目の論点の第1番目に「小規模法人に対する配慮」が掲げられていることは,一見すると奇異に映るかもしれないが,こうした論点整理が,上掲のような趣旨にもとづいて組織された「市民参加型のオープンなプロセス」における関係者の激論をふまえたものであることを理解すれば,そこには極めて重要な意味合いが込められていることが看取されるのである。すなわち,このような「配慮」が,民間の力でNPO-GAAPを形成するうえで,欠かせない課題だったのである。そしてまた,このような「配慮」のもとで初めて,複式簿記の採用を前提とした画期的なNPO法人会計基準を策定することが可能となったのである。  策定委員会が策定した会計基準(2010年7月公表)は,わが国のNPO法人制度史上初めて成立した包括的なNPO法人会計基準となる。策定委員会は,その作業を民間の力で完遂したのである。本論文の学術的意義は上述の通りであるが,それに加えて,策定委員会のそうした基準設定活動を指導した著者の実務者としての功績は,独自の社会的貢献を示すものであり,特段の評価に値する。それは,わが国のNPO法人制度史に残る偉業といってよいであろう。  以上の理由から,本論文は,非営利法人の制度又は実務に携わる実務者を対象にその業績を顕彰することを趣旨として本年度から創設された学術奨励賞特賞授賞に相応しい著作であると,審査委員会は全会一致で認めた。

  • 第4回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第4回大会記 2000.10.6-7. 神戸学院大学 統一論題 あらためて『公益』を問う 神戸学院大学  戸田博之  2000年10月6日(金)の理事会に続いて、10月7日(土)午前10時から公益法人研究学会第4回全国大会が神戸学院大学(神戸市西区伊川谷)において開催された。約70名(うち、非会員の公認会計士15名)の参加者を得て、活発な報告と討論が展開された。ちなみに本大会は、日本公認会計士協会によるCPE研修指定を受けた。  本大会は、今世紀最後の全国大会であるという基本認識のもとに、統一論題は「あらためて『公益』を問う」と定められた。その意図するところは、わが公益法人研究学会こそ、来るべき21世紀に社会から最も付託を受ける学会であろうという使命感と誇りを持って、改めて本学会設立時の初心に立ち返ることにあった。  自由論題報告は、11号館2階の3会場で行われた。まずA会場(司会:松倉達夫氏)では、吉田初恵氏(関西女子短期大学)、千葉正展氏((株)福祉会計サービスセンター)、B会場(司会:松葉邦敏氏)では、依田俊伸氏(国士舘大学)、鷹野宏行氏(白鴎大学)、C会場(司会:小島廣光氏)では、後 千代氏(東邦学園短期大学)、川野祐二氏((財)助成財団センター)の6氏による報告が行われ、それぞれ熱心な質疑応答がなされた。  会員総会に先だって、公益企業論研究の権威である佐々木 弘先生(前公益事業学会会長 現神戸大学大学院経営学研究科教授)による「規制緩和・競争導入と公益」と題する記念講演(司会:興津裕康氏)がなされた。ちなみに、統一論題の座長である杉山 学氏(青山学院大学)の言を借れば、「佐々木先生が話された、国民の合意に基づく『ユニバーサル・サービス・オブリゲーション』こそが公益法人の基幹となる概念である、という強い印象を受けた。」  統一論題「あらためて『公益』を問う」は、司会・座長=杉山 学氏のもとに、吉田忠彦氏(近畿大学)、渋谷幸夫氏(社会福祉法人常成福祉会)、岡村勝義氏(神奈川大学)および大矢知浩司氏(九州産業大学)による個別報告が行われ、引き続き討論が行われた。なお、上記4氏による報告内容は、自由論題6氏の研究報告とともに、いずれも本学会誌VOL..3に掲載されることになっている。  統一論題討論会では、上記4氏による個別報告、「公益活動の舞台としての公益法人」(吉田氏)、「今日的視点から見た『公益』の多様性」(渋谷氏)、「公益法人の公益性−情報公開の視点から−」(岡村氏)および「非営利組織の有効性と能率性の測定・評価」(大矢知氏)について質疑応答がなされ、予定時間をオーバーする熱心な討論が繰り広げられた。なお主な質問者は、次のとおりである。  島田 恒氏(龍谷大学)、千葉正展氏((株)福祉会計サービスセンター)、薄井正徳氏((財)目黒寄生虫館)、石崎忠司氏(中央大学)、松葉邦敏氏(国士舘大学)、川野祐二氏((財)財成財団センター)、亀岡保夫氏(公認会計士)、武田昌輔氏(成蹊大学)  統一論題質問用紙に記された主な論点は、⑴公益概念:明確化と多様化、⑵公益法人の存在範囲・位置付け:NPOおよび行政との関係、⑶あるべき情報開示:業績評価を含む情報開示の有効性および開示情報の透明化・明確化 に大別できた。その内容をつぶさに紹介することはできないが、終了時間間際の武田昌輔氏の熱のこもった次のような質問を紹介することは、討論の締めくくりとして有益であろう。  「この統一論題において、“あらためて『公益』を問う”とありますが、この問題を明確にする目的は、『真の公益法人』を厳格に規定しようということにあると思われます。そこで、公益法人に対しては、主として国・地方公共団体等が援助するということが前提となっていると考えます(補助金、税制上の措置)。いかがでしょうか?」  この質問に対して座長である杉山 学氏は、時間の関係でこの重要な論点について充分な討議がなされなかったことを遺憾であったとされ、のちに次のような感想を寄せられた。  「武田先生の上記のご質問は、公益法人の本質について『真の公益法人』という表現で問われたものと思います。私自身は、公益法人の諸活動は、本来、採算を考慮して行われるべきものではなく、佐々木先生と同様に、『ユニバーサル・サービス・オブリゲーション』として必要と認められる社会全体の合意に基づくものであると考えております。したがって公益法人の支出は、営利企業の費用のように収益獲得のための犠牲という性格のものではありません。もちろん、貴重な資源を目的達成のために有効的に消費することは当然のことであります。しかし問われていることは、社会的批判に耐え得る活動をしているかということだと思います。会計の領域に関するならば、一般目的の外部財務情報はそのための手段であり、その中心は予算にあるのではないでしょうか。」  統一論題報告・討論の終了後、大学会館内職員レストランにおいて懇親会が開催された。まず、準備委員長戸田博之氏(神戸学院大学)による挨拶に続いて、開催校を代表して神戸学院大学・谷口弘行学長の歓迎の辞および本学会会長・守永誠治氏(静岡産業大学)による謝辞のあと、武田昌輔氏の発声で乾杯、非会員(公認会計士)も交えてのなごやかな雰囲気のうち、20時30分散会した。

  • 第11回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第11回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成24年8月25日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏    非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第11回学会賞(平成23年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成23年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成23年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞  該当作なし  3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 第22回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第22回大会記 2018.9.8-9 武蔵野大学 統一論題 NPO法施行20年~その回顧と展望~  平成30年9 月7 日(金)より9 日(日)の日程で、非営利法人研究学会第22回全国大会が行われた。会場は、2020年東京オリンピックのメイン会場として様々な工事が急ピッチで進められる江東区有明に所在する武蔵野大学有明キャンパスにおいて、武蔵野大学に所属する5 名の準備委員のもと、本大会は盛大に開催された。本稿は、今大会の概要を報告するものである。  今回の大会の統一論題テーマは、「NPO法施行20年~その回顧と展望~」であり、1998年のNPO法施行より、20年間経過した現時点で回顧を試み、これからの20年間を展望することを目的として設定された。  まず、基調講演として、1998年当時、NPO法の制度設計に経済企画庁国民生活局長という立場で携わった井出亜夫氏(元経済企画庁国民生活局長、元慶應義塾大学教授)による「NPO法制定当時を回顧する」というテーマで行われた。その後、統一論題報告者として、濱口博史氏(弁護士)および江田寛氏(公認会計士)による報告が行われた。井出氏は制度設計から、濱口氏は法律専門家から、江田氏は会計専門家からこの20年間のNPOの諸制度を牽引してきた立役者であり、含蓄のある報告が行われた。以後、報告要旨を掲載する。  また、自由論題報告は、各地方部会での予備報告を経た10の報告が行われ、各会場ともに闊達な議論が展開された。なお、本稿に掲載の要旨は、各報告の司会者に依頼したため、原文に忠実に掲載するため、文字数等の体裁に少々の不統一さがあるが、ご了解いただきたい。 基調講演  「NPO法制定当時を回顧する」(井出亜夫・元経済企画庁国民生活局長、元慶應義塾大学教授)  井出報告の要旨は以下の通りである。まず、市場経済のグローバル化に伴いNPO活動が活発に展開されるようになってきた。しかし、日本においては、1995年の阪神・淡路大震災がその契機となったが、わが国民法は、その具体的受け皿を欠き、戦後の民法改正においても公益は国家(行 政)が司るという公益国家(行政)管理主義が貫かれていた。NPO法の制定は、この明治憲法思想を延長する考えを是正する一歩を切り開いたが、長年にわたる公益国家管理主義思想は一朝にして変わるものではない。冷戦の終結に伴い、市場経済システムは格差の拡大等の問題も発生させ、企業の社会的責任を求める声も大きくなっている。より高度な市民社会の形成に当ってNPOの役割は大きい、とする。 統一論題報告 第1 報告 「法律専門家から見たNPO法20年」(濱口博史・弁護士)  濱田報告の要旨は以下の通りである。NPO法の制定時においてはNPO法人と旧民法法人とのすみわけが論ぜられたが、民法改正と一般法人法及び公益認定法の制定によって状況が変わった。そこでは、所轄庁による認証に基づく設立の意味が問われている。また、準則主義をとり、税法上ではあるが非営利型の類型をもつ一般法人法との関係が問題となるに至った。そして、これらを踏まえたとき、NPO法の今後の方向性が問われる。  本報告では、認証にかかわる部分について、一般法人法との関係について、の二点に場合分けして、今後のあるべき姿について濱田氏の私見が述べられた。 第2 報告 「NPO法人会計基準の考え方と2017年12月改正の方向性」(江田寛・公認会計士)  江田報告の要旨は以下の通りである。まず、報告の前半は、NPO法人会計基準制定以前の状況について言及し、NPO法人会計基準の策定がいかに必要性であったかを強調される。引き続き本報告では、同基準が提示した重要なテーマについて言及した後、策定以後の状況について課題を含 めて検討している。  そして最後に江田氏のメッセージとして、以下の2 点が強調された。まず、市民とNPO法人を繋ぐ架け橋としてのNPO法人会計基準が「市民の手」でよりブラッシュアップされ、NPO法人の社会的評価の確立に貢献してほしいと思っていること。加えて、本非営利法人研究学会所属の研究 者及び実務家諸氏のサポートを強く期待すること。 自由論題報告 自由論題報告第一会場 第1 報告 「非営利組織とはどのような組織か」(松原由美・早稲田大学)   松原報告は、非営利組織の定義の再考を検討したものである。まず、定義を「ある概念 L. M.サラモン(1982)」による非営利組織の定義、公益法人制度改革(『有識者会議報告書』2004年)や経済産業研究所の『新しい非営利法人制度研究会報告書』における非営利組織(法人)の定義を検討し、問題点を指摘している。そして松原報告は、⑴まず、営利を定義(営利とは、利益を上げること)し、⑵営利の否定語として非営利の定義(非営利とは、利益を上げないこと)をし、⑶非営利組織を「利益を上げない組織」と定義する。さらに、この定義における「利益」とは「将来のコスト」であると主張された。 第2 報告 「東大阪市版地域分権制度確立にむけての軌跡と課題」(中塚華奈・大阪商業大学)  中塚報告は、2012年度から始まった東大阪市の地域分権制度の確立に向けての取り組みの経緯と軌跡を概観し、東大阪市の「協働のまちづくり部」と共同で著者が実施した関係諸団体へのアンケート調査や聞き取り調査をもとにして、制度確立を阻む要因の抽出と課題を明らかにしたものである。中塚報告では、結論として次の4 つの課題をあげている。⑴既存活動の後押しもできる制度への拡充の検討。⑵様々な立場の市民が存在することから、情報公開・伝達方法の検討および拡充。⑶条例策定のような原理原則、価値観、方針の決定にはトップダウン的アプローチ、具体的な行動や判断についてはボトムアップ的アプローチという、両者の特性を活かしたアプローチの検討。⑷地域分権には「地域=地域」、「地域=役所」、「役所=役所」の協働が必須であるが、今回は「役所=役所」の協働が機能せず、縦割り行政の弊害であると考えられるので、部局横断的に進める権限を有する部署の必要性。 第3 報告 「社会的投資によるコミュニティ再生―英国のコミュニティ・シェアーズを事例に―」(今井良広・兵庫県地域創生局長)  今井報告は、近年財政制約が深刻化する中で多様化・複雑化する社会課題の解決方策としての役割が拡大しつつある社会的投資について、その概念、理論的背景を探り、英国の事例を用いて社会的投資をめぐる政策形成・展開過程を考察した。特にコミュニティへの参加型投資スキームであるコミュニティ・シェアーズ(community shares)に焦点をあて、その普及・拡大状況を明らかにした。わが国でも社会的投資の拡大に向けた検討が進められており、休眠口座の活用、法人制度の創設などとともに、個人投資家層の充実について提言がなされている。そのなかでコミュニティ・シェアーズの市民参加型の取り組みを参考にすべきことも多いとの報告がされた。今後、コミュニティへの資金供給の流れを拡大し、持続的なものにしていくには、コミュニティ・シェアーズに適用される投資減税制度や自主的認証制度、情報開示方法なども参照していくべきとの提言がなされた。 第4 報告 「職業能力開発と非営利法人:技能継承の担い手として」(初谷勇・大阪商業大学)  初谷報告は、NPO政策の規範的検討として、NPOの存立や発展を支援する「基底的NPO政策」とNPOとの政策遂行主体との間での協業関係におけるNPOの位置を検討する「派生的NPO政策」とを峻別し、さらにこのフレームワークをNPO法人だけでなく、広く公益法人や特別法に基づく 法人にも広げて検討を試みる。本報告はそうした流れにおいて特別法に基づく法人として職業訓練法(職業能力開発促進法)に基づく職業訓練法人に焦点を当てた。同法人制度の立法経過、改正経緯、役割期待や活用の実態を考察し、存在意義、法人の現況とその問題の摘出、解決の道筋を検討する。また、働き方改革などの雇用・労働政策の改正が進められるなか、政策体系の一翼を担う職業訓練(職業能力開発)政策について『「鼎立するNPO政策」の構図と枠組み』を適用することにより見出された課題についても検討した。 第5 報告 「日本のNPO支援組織の展開」(吉田忠彦・近畿大学)  日本のNPO支援組織は、NPOの普及にしたがって事業内容や方向性を変化させてきた。「NPOサポートセンター」と呼ばれたりする時期もあったが、近年では「中間支援組織」という呼び方が定着してきた。報告では支援組織の類型が報告され、最近の動向を写真と共に紹介された。日本における「中間支援組織」は、その名称のルーツと思われる「intermediary (organization)」とは若干のズレがあることが報告された。特に多くのNPOが必要とする財源確保への支援が手薄であったが、最近になってそのズレを埋めるような動向として「市民ファンド」や「日本ファンドレイジング協会」に代表されるような動きが報告された。一方では行政による市民活動支援施設の設置はさらに普及している。この報告では、それらの日本のNPO支援組織の動向を紹介し、今後の展開の可能性が示された。 自由論題報告第二会場 第1 報告 「NPO経営者におけるアカウンタビリティの質的データ分析」(中嶋貴子・大阪商業大学)  本発表は、岡田彩氏(金沢県立大学)との共同研究であるが、今回は中嶋氏のみの発表となる。発表の要旨は次のとおりである。  日本の非営利セクターはNPO法施行20年を迎えたものの、特にNPO経営者が考えているアカウンタビリティ概念については十分に論じられていない。そこで、NPOの代表理事などの経営に携わる人を対象にインタビュー調査を実施し、質的データ分析法に従ってコンテンツ分析を行い、彼 らが有するアカウンタビリティ概念の共通性を明らかにすることが本発表の目的である。 インタビューは8 団体9 名を対象に実施された。コンテンツ分析で対象とした13項目の利害関係者に関する項目のうち、重視する利害関係者として、「一般市民・地域住民」「政府機関」「日本国 内の他のNPO」の3 つが共通概念として浮かび上がった。次に、説明責任の果たし方に関する対応方法に関する20項目のうち「活動の成果を高める」「協同的なパートナーシップ構築・維持する」「正確な情報を提供する(財務に関する情報以外)」「様々な意見に対応し、運営にフィードバックする」の4 つが共通概念として浮かび上がった。最後に、利害関係者と対応方法のコンテンツ分析の結果をクロス集計し、それぞれの共通概念の関係性を示す概念マトリックスを作成した。その結果、「成果向上に対する交渉的アカウンタビリティ」「ミッションに基づく先見的アカウンタビリティ」「参加促進に対する創造的アカウンタビリティ」の3 つが示された。  以上の発表に対して、フロアーからは対象となるNPO経営に携わる人の範囲がもっと広いのではないかという質問が寄せられた。 第2 報告 「『創業者統治』の機能からみるガバナンス―ミッションとアカウンタビリティの相克―」(川野祐二・下関市立大学)  発表の要旨は次のとおりである。非営利法人の創業者・設置者によるガバナンス(創業者統治)体制は、非営利法人経営者の暴走を防ぎ、ミッションを確実に履行するための統治手段の一つとなる。しかし、創業者統治が強力に行われると、経営者が創業者へのアカウンタビリティを重視するあまり、かえってミッションを軽視する可能性を秘めている。このアカウンタビリティとミッションの関係性の矛盾と克服を考察する必要があるが、その先には実は天下り問題があり、個々の非営利法人のガバナンスの在り方を考えるうえで、創業者と経営者の関係性の構築は主柱の一つとなる。  非営利法人のガバナンスを考えるうえで起点に据えるべきはミッションであり、誰のものでもない非営利法人は「誰のため、何のため」という視点からガバナンスを構築すべきである。しかし、それでもいくつかの問題を抱えることになる。例えば、経営者が暴走した場合、営利企業の株主総会では、所有者たる株主が「もの言う株主」となってそれを是正する機能を有している。しかし非営利法人の場合は、最高意思決定機関である社員総会や評議委員会を構成するメンバーは法人所有者ではない。したがって、所有意識のない構成メンバーがミッションの維持や経営の健全性に無関心になる傾向があることを心得る必要がある。むしろ非営利法人の方が、経営者の暴走を見過ごす傾向があるといっても過言ではない。こうした状況で非営利法人は、「ミッションを健全に目指す経営をいかにして確保すればよいのか」が問題となる。  発表そのものは15分ほどで終わり、そのあと質問となったが、フロアーから質問が出なかったので、司会者が最近のスポーツ系非営利法人のガバナンス問題を例に質問をし、多少の議論を行った。そのあと、岡本仁宏氏(関西学院大学)より、高所大所からアドバイスがあった。 第3 報告 「公益法人税制改革における政府税制調査会の役割」(出口正之・国立民族学博物館)  公益法人税制改革において、政府税制調査会の果たした役割は大きなものがあった。  政府税調は、公益法人に対しては、不公平税制の是正という観点から、一般法人の事業との競合性がある場合、収益事業課税の原則に則ることが適当であるとしてきた。しかしながら、平成17年の答申では、公益法人制度改革に合わせて、「理念としての税制」を検討している。すなわち、「わが国においては、寄附文化はこれまで比較的希薄と言われており、寄附文化を発展させるためには、寄附金税制の抜本的な改革のみならず、公益的な非営利法人において適正な事業活動や情報公開により寄附者の理解を得るための一層の努力が求められる」としている。このような経緯を経て、わが国における公益法人税制改革において、新たな寄附金制度が導入された。  公益法人に関する税制改革は、公益法人制度改革に合わせて、政府税制調査会におけるこのような議論を踏まえて、理念の税制として捉えなおした結果であるといえる。 第4 報告 「一般法人の非営利性についての再検討―非分配制約の意義を中心に―」(古市雄一朗・大原大学院大学)  営利法人と非営利法人を分類する基準として、組織の活動期間中に剰余金の分配を行わない事および残余財産を特定の者に分配しないという非分配制約は、制度においても重要な役割を果たしている。非営利組織は、非分配制約を課されることで、社会からの信頼を得て活動を推進することができ、例えば、寄付や補助金という資源の提供を受け入れやすいことがある。  一般法人の場合、剰余金及び残余財産の分配が行われないことが制度上求められていると理解されている。しかしながら、一般法人法第239条第2 項は、定款の規定により残余財産の帰属が定まらないときには、「その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める」と規定している。このため、特定の社員や設立者、その他利害関係者に残余財産を分配することが可能となっている。残余財産が実質的に分配可能な一般法人は、非営利組織として分類されることに検討の余地があるといえる。 第5 報告 「非営利法人における実質的配分可能性」(齋藤真哉・横浜国立大学)  非営利法人の特性として、剰余または残余財産についての非分配性を挙げることができるが、現実には実質的に非分配性を否定する状況が見受けられるとの問題意識にもとづき、⑴剰余等が実質的に分配されている可能性はどのような状況で生じうるのか、⑵公益性のある事業の拡大・充実を図ろうとする場合に、剰余等の実質的分配可能性にどのように対応する必要があるか、について検討がなされた。  まず、実質的分配可能性の状況として、齋藤氏は、①残余財産の帰属(例えば、出捐者(設立者)に対する残余財産の寄附や、当該法人の管理者が統制している他の非営利法人への非合理的な財産移転の場合)、②役員報酬等(例えば、当該法人の役員に就任している出捐者や社員、その家族等に対して、社会通念上妥当と考えられる金額を超えた額が報酬等として支払われる場合)、③利益相反取引(例えば、出捐者や社員が役員を務める株式会社(営利法人)との間で、当該株式会社に超過収益を与えるような価格で取引がなされる場合)の3 つを提示された。  そのうえで、公益性のある活動の「真の発展」に向けて、行政の外郭団体を民間非営利法人としての位置づけから除外すること、税制上の非営利型の再検討、公益性の判断を実質的に行うこと、情報公開の充実とアクセスの容易化、これが求められるとの提言がなされた。 介護・福祉系法人研究部会セッション  今回の全国大会では、新しい試みとして研究部会の研究成果を中心とした小規模なセッションを企画した。その目的は、地域包括ケアシステムの運用が始まり、また新しい非営利の法人格として、地域連携推進法人の設立が可能となったからである。制度改革の渦中にある医療・福祉系の非営利法人に関する情報を共有し、学会の有識のメンバーからの意見等をくみ上げ、今後の展開にむけて有意義な議論を喚起することが本セッションの役割である。  本セッションは、千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構)の司会により、「包括化」をキーワードに、吉田初恵氏(関西福祉科学大学)による「介護の包括化」、玉置隼人氏(厚生労働省地域福祉課)による「福祉の包括化」、上村知宏氏(独立行政法人福祉医療機構)による「医療の包括化」という論点で報告が行われ、その後、パネルディスカッションが行われた。当代、制度設計の最先端をひた走る気鋭の面々による最先端の議論は、極めて有益な内容となった。  本セッションの報告要旨は、千葉氏による別稿により、改めて開示する予定であり、本稿では割愛させていただいた。

  • 2023最終報告(NPO法人研究会) | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    非営利法人研究学会 NPO法人研究会 最終報告 (2021年9月-2023年9月) NPO法人制度の特長と新たな展開の可能性

  • 第12会大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第12回大会記 2008.9.5-6 日本大学 統一論題 非営利組織の業績測定・評価に関する多角的アプローチ 日本大学  堀江正之 はじめに  非営利法人研究学会第12回全国大会は、2008年9月5日・6日の両日、日本大学(準備委員長:堀江正之)において開催された。その前日(4日)には理事会が開かれ、事務局から会務報告のほか、総会提出のための前年度決算案・次年度予算案等の議案を承認した。  1日目は総会に続いて統一論題報告と討議があり、2日目は自由論題報告・特別講演と研究部会報告が行われた。なお、今次大会の参加者は、当日申込みを含め101名であった。 【統一論題報告・討議】  統一論題のテーマは「非営利組織の業績測定・評価に関する多角的アプローチ」であり、石崎忠司(中央大学)座長の下、報告と討議が進められた。  どこの学会でも見受けられることであるが、「統一論題という名の自由論題」と揶揄されるように、各報告者が自らの関心テーマをほんの少々統一論題テーマに引っ掛けるだけのものとなりがちである。そのため今次大会は、堀田和宏氏(近畿大学名誉教授)が最初に登壇されて、討論のための「土俵」の確定が試みられた。  堀田氏は、その前半で、まずもって「誰が、誰のために、何のために、どれの、どこを、どのように」測定・評価するかを確認して確定する必要があると指摘、「断片的な業績評価システムを首尾一貫した整合性あるシステムに統合する包括的業績評価システムのフレームワーク確立」の重要性を訴えられた。 その議論を受けて、堀田報告の後半では、BSCの4つの視点、CCAF(カナダ包括監査財団)の12の属性の視点、J.Cuttらの提言等を検討され、組織の持続性、組織の社会性、非営利組織における組織有効性のジレンマを小括とされ、再び「評価の本質とその限界の再考」、「非営利組織とは何か」に遡った検討の中で、多様なサービスの性質及び形態に適合する測定・評価フレームワークの構築を主張された。  これに引き続き、第1報告として、梅津亮子氏(九州産業大学)が「サービスの原価と見えない価値」と題して、組織外のボランティアが組織に対して無償のサービスを提供する流れ(ボランティア→組織)、組織の職員がエンドユーザーに対して無償のサービスを提供する流れ(組織→エンドユーザー)という2つのパターンから、インプットとアウトプット関係の中で、原価測定と評価の枠組みの中に位置づけ、無償によるサービス活動を原価によって可視化し、活動内容を評価していくための仕組みを提案された。  第2報告の今枝千樹氏(愛知産業大学)は、「非営利組織の業績報告」と題して、アメリカ政府会計基準審議会によって1994年に公表された概念書第2号の改訂公開草案と、公表された返答の要請について、かかる概念書の改訂部分と改訂の背景及びガイドラインの整理・検討に基づいて、政府組織を含む広義の非営利組織における業績報告のあり方について詳細な検討を加えられ、その内容及び設定過程についての検討が、我が国の政府機関における業績報告に係る議論の参考になると主張された。  第3報告の齋藤真哉氏(横浜国立大学)は、「非営利組織の公益性評価—公益認定の基準を踏まえて—」と題して、新たな公益法人制度上の公益認定基準を取り上げて、非営利組織にとっての公益性の社会的意義とその評価について検討された。公益性は社会システムの中で支援する必要があるか否かにより評価し、公益性と税制優遇はリンクしている等のポイントを示され、単なる公益性評価ではなく、非営利組織の公益性評価というところを強調され、そこに非営利組織の存在意義を求める必要があると主張された。  以上の報告に対し、座長の石崎氏より、積極的にフロアー、特に自由論題報告予定者のうち、今回の統一論題のテーマと関連深い方に意見が求められ、活発な討論が展開された。 【自由論題報告】  自由論題報告は合計で18報告あり、紙幅の関係もあって、そのすべてを紹介できないが、院生会員の報告も3分の1強を占め、学会の将来的な活性化を感じさせるものであった。  その内容も、非営利組織を巡るガバナンス・管理・会計・財務・税務・監査等の諸問題を広くカバーするものであった。大会では統一論題が重視される傾向にあるが、自らの地道な研究成果を披露する自由論題にこそ、本当に面白いものがあるように思わせる報告が多かった。 【特別講演・研究部会報告】  今次大会では、本学会副会長の興津裕康氏(近畿大学名誉教授)による「企業会計と非営利の会計—財務会計研究からみた非営利組織の会計を考える—」、そして開催校側から勝山進氏(日本大学商学部部長)による「組織の環境会計」と題する特別講演が行われた。  興津氏は、公益法人会計基準を中心に、非営利の会計を企業会計の視点から検討され、公益法人会計基準は企業会計基準に極めて類似してきたように思われるが、「これでよいのか、非営利の会計の色彩が失われてきているのではないか」と結ばれた。  また勝山氏は、昨今その研究が急速に進められつつある環境会計の現状と課題について、国際動向を踏まえて整理され、自治体の環境会計、大学の環境会計などの事例も紹介されながら非営利組織への適用可能性を探られた。  特別講演に続き、小林麻理氏(早稲田大学)を主査とする東日本研究部会報告が行われ、公益認定基準を巡る諸問題について、メンバーによる研究の成果報告が行われ、フロアーを交えた活発な意見交換が行われた。 おわりに  非営利組織の業績測定・評価は、一息に「多様性あり」と言ってしまえばそれまでである。「多角的であること、多角的にならざるを得ないこと」を深く考えてみることに意味があるように思う。統一論題だけでなく、自由論題もともに直接・間接の違いはあるかも知れないが、基底において、いずれもこの問題に迫るものであった。 〈付記〉 本稿の執筆に際しては、大原大学院大学の江頭幸代氏のお力添えをいただいた。記して感謝したい。

  • 文献四季報 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    書 名:非営利法人経営論 執筆者:岩﨑保道[編著] 所属機関:高知大学評価改革機構 発行所:大学教育出版 発行年月:2014年10月 総ページ数:190 書 名:非営利組織のソーシャル・アカウンティング― 社会価値会計・社会性評価のフレームワーク構築に向けて ― 執筆者:馬場英朗 所属機関:関西大学 発行所:日本評論社 発行年月:2013年10月 総ページ数:218 書 名:ボランティアの今を考える 執筆者:桜井政成[編著] 所属機関:立命館大学 発行所:ミネルヴァ書房 発行年月:2013年9月 総ページ数:222 書 名:戦略的協働の経営 執筆者:後藤祐一 所属機関:長崎大学 発行所:白桃書房 発行年月:2013年4月 総ページ数:140 書 名:非営利組織の理論と今日的課題 執筆者:堀田和宏 所属機関:近畿大学 発行所:公益情報サービス 発行年月:2012年3月 総ページ数:917 書 名:非営利組織の理論と今日的課題 執筆者:堀田和宏 所属機関:近畿大学 発行所:公益情報サービス 発行年月:2012年3月 総ページ数:917 書 名:市民社会政策論―3・11後の政府・NPO・ボランティアを考えるために― 執筆者:田中弥生 所属機関:(独法)大学評価・学位授与機構 発行所:明石書店 発行年月:2011年8月 総ページ数:384 書 名:現代企業簿記会計 執筆者:横山和夫 所属機関:東京理科大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月 総ページ数:504 書 名:非営利組織体の会計 執筆者:杉山 学 他 編著 所属機関:青山学院大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月 総ページ数:330 文献四季報  このページは本学会会員が発表した図書・学術論文を収録するものです。会員の研究学績を広く社会に紹介するために設けました。情報がありましたらメール等にてお寄せください。  なお、執筆者の所属機関は発表当時のものです。 ■図書の部

  • 第13回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第13回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成26年9月10日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏    非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第13回学会賞(平成25年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成25年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成25年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞  該当作なし 2. 学術奨励賞   後藤 祐一『戦略的協働の経営』(白桃書房、2013年4月刊) 【概要及び受賞理】  平成25年度「学術奨励賞」は、後藤祐一氏の著書『戦略的協働の経営』が選考されました。本書は、2013年4月に白桃書房から刊行されています。この著書の第3章の事例研究は、『非営利法人研究学会誌』第11巻に収録されている同氏の単著論文「戦略的協働を通じた車粉問題の解決プロセス」にもとづいて執筆されています。  本書は、NPO、政府、企業という異なるセクターに属する3つの主体の協働によって、困難な社会的課題の解決に成功した2つの先駆的事例を詳細に分析することによって、戦略的協働が形成・実現・展開されるプロセスの解明を試みたものです。  以下、本書の内容を簡単に紹介します。序章では、本研究の背景と目的が説明されています。  第1章では、はじめに、戦略的協働とは、「異なるセクターに属する主体が協調し、個々の主体だけでは解決が困難な社会的課題の解決に向けて活動するプロセス」であると定義されています。次に、先行研究の検討が行われ、戦略的協働を分析するための枠組である「協働の窓モデル」が説 明されています。「協働の窓モデル」は、著者が参加した非営利法人研究学会・東日本研究部会によって提示された分析モデルです。このモデルは、協働が形成・実現・展開されていくプロセスを経時的・動態的に記述・分析することを可能とする概念枠組です。  この「協働の窓モデル」にもとづき、第2章では、ツール・ド・北海道における戦略的協働の事例研究が、第3章では、車粉問題の解決における戦略的協働の事例研究がそれぞれ試みられています。具体的には、まず、2つの事例が4期に区分され、それぞれの事例が記述されています。次に、年代記分析が適用され、2つの戦略的協働が「なぜ」また「どのように」して形成・実現・展開されたかが分析されています。  第4章では、第2章で行われたツール・ド・北海道における戦略的協働の事例研究の分析結果と、第3章で行われた車粉問題の解決における戦略的協働の事例研究の分析結果にもとづいて、2つの戦略的協働の共通点が明らかにされ、10の仮説命題が導出されています。  終章では、本研究の要約、研究の意義および今後の課題が示されています。  本研究の第1に評価すべき点は、戦略的協働という複雑な社会的現象が「なぜ」また「どのように」して形成・実現・展開されるのかを実証的に解明しようとした点です。近年、「協働」を分析対象とする研究が少しずつ試みられるようになってきました。  しかし、既存の研究は、事例や制度を単に紹介したものがほとんどであり、戦略的協働という現象の実態は必ずしも十分に解明されてきませんでした。  第2に評価すべき点は、「協働の窓モデル」が、戦略的協働の一連のプロセスを分析する上で極めて有用な枠組であることを示した点です。本研究では、「協働の窓モデル」にもとづく2つの事例研究を試みることにより、戦略的協働に関する10の仮説命題が導出されています。  第3に評価すべき点は、第2の点とも関連しますが、社会的課題の解決を目的とした戦略的協働を行う際の具体的指針を提示している点です。すなわち、本研究によって導出された戦略的協働の実現可能性に関する8つの仮説命題は、それぞれ実践的意義を有しています。  しかし、本研究にも問題点がない訳ではありません。  第1に、本研究で分析された2つの事例の記述は、コンパクトに要領よくまとめられてはいますが、他方で2事例を併せても約50ページに過ぎません。事実に関するもう少し詳細かつ具体的な情報が提供されていれば、内容により深みがでたのではなかろうかという点です。  第2に、これは少数事例を対象とする定性的研究の宿命ではありますが、本研究から導出された仮説命題は、2つの事例研究から導出されたものに過ぎず、命題の一般化可能性については弱みが残る点です。したがって今後、本書で提示されている仮説的命題は、より多くの戦略的協働を対象 とした事例研究、あるいは定量的な研究を通じて検証される必要があるでしょう。  以上のように、本書は、著者自らが参加した共同研究の成果にもとづいて、著者自らが選択した2つの戦略的協働の形成・実現・展開の一連のプロセスを実証的に解明した先駆的で手堅い研究成果であるといえます。  したがって、審査委員会は、全員一致で、本書が「学術奨励賞」を受賞するに値するものと決定いたしました。 3. 学術奨励賞特賞  該当作なし

  • 関東部会報告 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    地域部会報告  非営利法人研究学会には、学会内で地域別に活動するスタディグループがあります。将来的には、複数のスタディグループとスタディグループが連携して活動していくことを目指しています。 ●下の地図上の部会名をクリックすると、部会別の報告ページに移動します。 関東部会報告 ■第32回関東部会記 日時:2022年3月21日(月・祝)13時〜 場所:Zoomミーティング(テレビ・Web会議ツール) 1. はじめに  非営利法人研究学会第32回関東部会が、2022年3月21日(祝)13時より、ビデオ会議システム zoom を用いて開催された。約30名の参加者を迎え、古庄修関東部会長(日本大学教授)から挨拶があった後、参加者の近況報告が行われた。その後、金子良太関東部会幹事の司会のもと、部会報告・討論会が行われた。 2. 部会報告 (1)「ドイツ公的医療機関の組織再編と会計制度・実務―日本の公立病院改革との比較を踏まえて」   森 美智代氏 (熊本県立大学名誉教授)  本報告は、ドイツの公的医療機関・民間医療機関の組織再編について詳細に検討した後に、日独の医療機関の医療経営改革の背景と現状、日本の公立病院改革の方向性まで幅広い内容にわたって行われた。  森氏からは、最近のコロナ禍における現状や、日独双方の具体的事例についても報告があった。  フロアからは、各種の用語の定義や日独の違い等、多くの質問が行われた。 (2)「非営利研究組織の社会価値についてー(一財)日本自動車研究所の経験からー」  半田 茂氏 ((一財)日本自動車研究所 前代表理事・専務理事)  本報告は、半田氏の所属していた日本自動車研究所 (JARI)の概要や歴史、非営利組織たる研究機関の研究活動の価値、そして他団体との連携や活動の広報等を通じた価値を発信し、社会から理解を得る必要性についてのものであった。  フロアからは非営利組織の社会的価値等について多くの質問があった。多くのコメントがあり、予定時間の15時30分頃に終了した。 3.次回の予定 次回の部会は、武蔵野大学の主催で2022年5月(開始時間未定)に久々の対面開催予定(詳細は、決定次第非営利法人研究学会のホームページ・メーリングリストに掲載されます。今後の状況により、開催方法や日時が変更される可能性があります)。                                                    文責:金子良太(國學院大學) ■第31回関東部会(北海道合同部会)記 日時:2021年7月31日(土)13時〜17時 場所:Zoomミーティング(テレビ・Web会議ツール) 1. はじめに  非営利法人研究学会北海道部会・関東部会の合同部会が、2021年7月31日(土)13時より、ビデオ会議システムZoomを用いて開催された。26名の参加者を迎え、古庄修関東部会長(日本大学教授)が司会をされた。大原昌明北海道部会長(北星学園大学教授)による開会の挨拶の後、特別講演、研究報告が行われ、活発な議論が行われた。 2. 特別講演会 「多元社会における非営利組織の役割に関する一試論 —『理念』の創造性をめぐって—」 三井泉氏(日本大学経済学部教授)  経営理念研究そしてフォレットの学説研究で著名な三井氏に、多元社会の下での非営利組織の意義についてご講演頂いた。  講演においてフォレットそしてドラッカーの視点から、多元社会について言及され、異なる世界観や価値観を持つ個々人から成り立つのが多元社会であり、多元社会においては、各人の異質性を排除するのではなく、この異質性を受け入れながら社会秩序を維持し、社会を発展させていくことが目指されるとの主張がなされた。  また、経営理念研究の視点から、経営理念は営利組織・非営利組織を問わず、あらゆる経営行動の根幹であり、人々をより創造的・主体的に行動させることを可能にするものであると主張された。そして、この経営理念は、その時々の状況に適応すべく変容することで、組織の創造力の源泉としての機能を長期的に発揮し続けていく可能性を秘めていると言及された。企業とは異質な非営利組織の存在、また無数に存在する非営利組織がそれぞれの経営理念をよりよく機能させることで、よりよい社会が実現される可能性に言及され、講演を締めくくられた。講演後の質疑応答では。営利組織および非営利組織で「理念」が果たすドライビングフォースとしての意義等が議論され、多様なバックグラウンドを持つ研究者による活発な意見交換が行われた。 3. 部会報告 第1報告 「オーケストラ団体における活動財源の集中度と予測可能性に関する実証研究」 武田紀仁氏(日本大学 経済学研究科博士後期課程)  本報告では、オーケストラ団体のサンプルを用いて、収入源の種類が団体の持続性に及ぼす影響について分析が行われた。その結果、収入源と持続性の関係を分析するうえでは、収入源の種類や集中度に加えて、収入源の予測可能性を考慮することが有用である点が説明された。また、収入源の予測可能性は、収入源の性質や団体の属性と関係性があることが指摘され、団体 の存続のための財務的な対策として、団体の特徴を考慮した戦略的な資金調達計画の重要性が示唆された。  参加者からは、統計分析の手法の精緻化に向けての意見交換や、分析対象として文化・芸術系の団体をその対象とした意義について活発な議論が行われた。 第2報告 「クライシスの中小企業支援において信用保証協会が果たした役割―兵庫県信用保証 協会を中心に―」 櫛部幸子氏(鹿児島国際大学)  コロナ禍の中小企業の資金繰り支援における会計情報の活用状況についてアフターコロナにおけるデフォルトリスクを指摘し、過去のクライシス(阪神・淡路大震災と東日本大震災)において実施された「信用保証協会の保証」のデフォルトの状況を調査し、過去の信用保証協会の「信用保証」において、どのような施策がデフォルトを軽減・回避することにつながったのかについて、コロナ渦における支援の状況との比較分析による報告が行われた。  参加者からは、デフォルトが最終的に社会に与える影響や平時と非常時で中小企業への与信にどのような影響があるかについての質問がされ、活発な議論が行われた。  部会の最後に齋藤真哉学会長(横浜国立大学教授)より、本学会の研究が多様性をもって活性化しており、今後の更なる研究の発展が期待できる点が述べられ、合同部会は盛会のうちに終了した。                                    文責:村田大学(大原大学院大学)・古市雄一朗(大原大学院大学) ■第30回関東部会記 日時 : 2021年3月20日(土) 場所 :Zoomミーティング(テレビ・Web会議ツール) 1. はじめに  非営利法人研究学会第30回関東部会が、2021年3月20日(土)10時30分より、ビデオ会議システム zoom を用いて開催された。31名の参加者を迎え、古庄修関東部会長(日本大学教授)から挨拶があった後、古庄部会長の司会のもと、研究報告・討論会が行われた。 2. 部会報告 第1報告 「課題としてのファンドレイジング・パラドックスと、その解決のための地域性と共感のメカニズムについての考察ー横浜市における事例研究を中心としてー」 瀬上 倫弘氏 (横浜市立大学大学院都市社会文化研究科共同研究員)  本報告は、非営利活動促進のための経済的考察として、横浜市における事例研究を中心に、NPO法人が行うファンドレイジングにおける課題と、それを解決する効果的なファンドレイジングの要素を探求するものであった。  瀬上氏からはNPOにおける寄付の必要性について説明があった後、ファンドレイジングの成功要因を探る入口として、ファンドレイジングの必要性につきNPOの存在論に遡って考察が示された。事例として、「共感と地域性におけるメカニズム」を基礎概念として横浜市における中小規模団体が示された。最後に、2019年8月10日 非営利法人研究学会 第25回関東部会研究発表 における瀬上氏の発表に対する各種の質問に対して回答する形で前回報告後の研究の進展が示された。  フロアからは、横浜市の事例を選択した理由、他地域における事例にも着目する必要性等、多くの質問が行われた。 第2報告 「非営利組織会計の国際的枠組み」 金子良太氏(國學院大學)  私 金子からは、英国の職業的専門家団体であるCIPFA(英国勅許公共財務会計協会)より、同じく英国の非営利組織の支援団体であるHumentumの協力を得て公表された非営利組織会計の国際的枠組みの形成を目指すConsultation Paper (CP)「International Financial Reporting for Non-Profit Organizations (非営利組織の国際的財務報告)」について報告した。 2021年1月に公表されたCPの目的、全体構成、今後の課題について示した。  フロアからは非営利組織における国際的枠組みが本当に必要なのか、また日本への適用可能性や今後の方向性等について多くの質問があった。多くのコメントがあり、予定時間を超過した12時40分頃に終了した。 文責:金子良太(國學院大學) ■第29回関東部会(北海道合同部会)記 日時 : 2020年7月26日(日) 場所 :Zoomミーティング(テレビ・Web会議ツール) 1. はじめに  2020年7月26日(日)午後1時より、今年度第二回目となる非営利法人研究学会北海道・関東合同部会が開催された。今回も前回に引き続き、ビデオ会議システムzoomを用いて行われた。形式的な主催校として武蔵野大学が引き受け、私、鷹野宏行が司会の任を仰せつかった。 今回も北海道・関東以外の全国からの会員の参加者があり、総勢32名に上り、活況な研究会が行われた。以後、研究報告・討論等の概要を記すこととする。 2. 部会報告 第1報告 「非営利組織のガバナンスが租税回避行動に与える影響に関する実証分析」 黒木淳氏(横浜市立大学准教授)・夏吉裕貴氏(横浜市立大学大学院後期博士課程1年)  黒木・夏吉両氏の発表の目的は、わが国非営利組織で収益事業を通じた租税回避行動が行われているか調査し、もし行われているならば、非営利組織のガバナンスが同行動にいかなる影響を及ぼしているかを明らかにすることに主眼が置かれるものである。  米国における先行研究をペースとして、わが国非営利組織に実証研究を試みる。  結論としては、わが国の非営利組織にも租税回避行動はみられるが、米国の先行研究より著しく小さく、その行動が小さい原因として、非常勤理事、寄付者、規制の3つがモニタリングし、その抑制に寄与しているとした。 第2報告 「コミュニティ病院を所有する米国非営利組織の財務諸表に関する一考察 −メイヨー・クリニックを題材として−」 谷光透氏(川崎医療福祉大学講師)  谷光氏の発表は、米国の新しい非営利組織会計基準の内容を吟味し、その基準がすでに適用の段階に入っている、米国において著名な病院であるメイヨー・クリニックで実際に作成された財務諸表(連結を含む)を考察する。  この考察の過程において、我が国の非営利組織会計の在り方、非営利組織共通の会計の枠組み、病院を所有する非営利組織固有の情報開示の在り方を探るべく、持論を展開する。  氏によれば、病院の規模に応じて、missionに応じた純資産の区分、費用の機能別表、連結情報等の開示が必要であるとする。 第3報告 「「一般法人会計基準案」の策定経緯とその論点について」 髙山昌茂氏 (協和監査法人代表社員・公認会計士)  高山氏は、非営利法人研究学会において組成された「一般法人への公益法人会計基準適用の研究会委員会」の活動についての中間報告として今回の発表を位置付け、以下のような発表を行った。まず、現在まで7回開催された研究会の議事録を公表した。途中、いわゆる「モデル会計基準」の公開を前後して、1年間の休会があったことも報告された。  続いて、草案として策定されている「一般法人会計基準」(案)について説明があった。なお、本発表の最終的な報告は、今年度の全国大会で行われる旨の説明があった。 文責:鷹野宏行(武蔵野大学) ■第28回関東部会(北海道合同部会)記 日時 : 2020年6月14日(日) 場所 :Zoomミーティング(テレビ・Web会議ツール) 1. はじめに  (公社)非営利法人研究学会北海道・関東合同部会が、2020年6月14日(日)14時より、Zoomミーティング(テレビ・Web会議ツール)を用いて開催された。25名の参加者を迎え、大原昌明北海道部会長(北星学園大学教授)・古庄修関東部会長(日本大学教授)から挨拶があった後、関東部会幹事の筆者、金子良太の司会のもと、研究報告・討論会が行われた。 2. 部会報告 第1報告 「日中戦争までの米中からの日本の民間非営利組織会計への影響−コンバージェンスについての示唆を得るための学説史−」 水谷文宣氏 (関東学院大学)  本報告はトップ・ダウンのアプローチが民間非営利組織会計のコンバージェンスに必要か否かの示唆を得ることを目的とする。  アドプションには、IASBのような特定の機関が主導して会計基準を普及させることがほぼ必須である。トップ・ダウンのアプローチと言える。企業会計について日本では複数の会計基準を競争させるべし、などの形でトップ・ダウンのコンバージェンスに反対する意見がある。  報告では、戦前・戦中の民間非営利組織会計に関する資料から、寄附に関する言及が非常に少ないこと、多くは課税当局のために執筆された資料であることを明らかにした。そして、寄附への関心の欠如は、彼らの関心が複式簿記による資本増殖の反映にあったためと思われるとの報告者の考察が示された。  フロアからはテーマに関する質問等が積極的に行われた。 第二部 討論会 新型コロナウイルスが非営利組織・会計・経営に与える影響について  非営利組織は、新型コロナウイルスの影響から無縁ではいられない。今回のセッションでは、25名の参加者が発言できる形で新型コロナウイルスの影響についての実体験・課題等が話し合われた。  最初に、今回の事態を受けての公益法人における社員総会対応等について質疑応答が行われた。次に、将来の見通しが立ちにくい中での収益事業の取扱い、会計上の減損や繰延税金の取扱いについても課題提起がなされた。  また、医療・福祉分野の経営に与える影響や資金繰りへの対応策等も話し合われた。多くのコメントがあり、16時20分頃に終了した。 文責:金子良太(國學院大學) ■第27回関東部会記 日時 : 2019年10月26日(土) 場所 : 國學院大学 渋谷キャンパス 1. はじめに  非営利法人研究学会第27回関東部会が、2019年10月26日(土)14時より、國學院大学渋谷キャンパス(3号館3404室)において開催された。8名の参加者を迎え、金子良太氏(國學院大学)の司会の下、2つの報告が行われた。 2. 部会報告 第1報告 「宗教法人法の体系的特質~同法による規制の範囲と限界~をめぐって」(2018年度非営利法人研究学会関東部会短期研究) 竹内拓氏(非営利法人経営管理研究会)  竹内氏は、⑴宗教法人の実態、⑵宗教法人法の目的、⑶宗教法人法の規制範囲、⑷法的規制の沿革と現行法への影響、⑸宗教法人法の特徴、⑹宗教法人法改正の経緯と主な改正点の構成により報告された。  まず、宗教法人法は、宗教施設の管理に重点を置き、また、同法は宗教団体の目的を達成するための業務及び事業を行うことに資することを目的としていることを確認された。ただ、規制の面に関しては、憲法で保障される「信教の自由」を尊重すべきものとされているため、その規制の対象は宗教行為以外の領域となると述べられた。なお、非宗教法人には、実際に宗教活動を行っている団体に対しても、宗教法人法の適用はなく、規制の対象外となっていることも指摘された。  続いて、宗教団体に対する法制の沿革について触れ、宗教法人令において、宗教法人の設立を届出制としたことによって生じた各種の問題点の反省から宗教法人法においては認証制(準則主義)が採用されたとの見解を示された。なお、認証制度に関して、一般に申請後3月以内に認証が下りるものとされているが、複数年分(3年以上)の会計書類と宗教施設の存在、礼拝の実施の有無などの実績が問われるため、申請までに相応の時日を要することが紹介された。  この認証制度のほか、責任役員制度と公告制度が宗教法人法における特徴点(これまでの法令に存在しなかったもの)であるとされ、責任役員制度は宗教法人における必置機関として法人の業務及び事業の運営に当たるが、伝統的宗教活動団体においては、責任役員とは別に、総代、長老などの役員が置かれ、その下で慣習による支配が行われることによる運営上の調整の問題が起こり得ることに言及された。  さらに、公告制度と並び財産目録及び収支計算書の作成、備置き、閲覧並びに所定の書類に関する所轄庁への提出が定められていることで、いわば公衆の監督が機能するため、この点が宗教法人において監事を必置機関としない理由のひとつとなっているとの見解を述べられた。なお、監事が必置機関とされていない理由については、宗教行為が監査対象に及ぶ恐れがあることも挙げられた。  最後に、宗教法人に関する認証の問題と関連して、宗教団体が宗教法人としての認証を受ける手数等を回避することを意図して、一般社団法人あるいは一般財団法人の類型を選択する可能性の有無についての問題提議があった。  この点は参加者との質疑応答における論題として引き継がれ、参加者からは、宗教団体が一般社団法人あるいは一般財団法人の類型を選択することは制度的には可能であり、現に、古くからある地域の祠を保存することを目的とした公益財団法人が存在することなどが紹介された。ただし、一般社団法人あるいは一般財団法人には、宗教法人と異なり税制上の利点がないことが指摘され、類型の採用は限られるとされた。 第2報告「「私立大学版ガバナンス・コード」の設定と課題」 古庄修氏(日本大学経済学部)  古庄氏は、ご自身が部会長を務める大学等学校法人研究部会における活動状況に触れられた後に、わが国の非営利法人に係る「ガバナンス・コード」の策定を巡る議論として、まず、アベノミクス成長戦略の一環として営利企業における導入経緯を紹介され、その広がりを受けて、次のとおり、非営利法人の領域、とりわけ私立大学においても策定に向けた動きが活発化している状況について紹介された。 ⑴ 2017年3月:大学監査協会による「大学ガバナンスコード(案)」の公表 ⑵ 2019年1月:文部科学省大学設置・学校法人審議会学校法人分科会学校法人制度改善検討小委員会公表の「学校法人制度の改善方策について」において「「私立大学版ガバナンス・コード」(自主的行動基準)の策定の推進」の明示 ⑶ 2019年3月:日本私立大学協会私立大学基本問題研究委員会・大学事務研究委員会による「日本私立大学協会憲章「私立大学版ガバナンス・コード(中間報告)」」の公表  「私立大学版ガバナンス・コード」の構成は、①私立大学の自主性・自律性(特色ある運営)の尊重、②安定性・継続性、③教学ガバナンス、④公共性・信頼性、⑤透明性の確保であり、このうち、透明性の確保(情報公開)において自主的な公開の範囲として、「理事の経歴および役員報酬基準」が含まれている点に注目された。ただし、私立学校のガバナンス体制に係る情報公開などは含まれておらず、営利企業、上場企業におけるガバナンス・コードとの相違があるとされ、また、「私立大学版ガバナンス・コード」に対しては、「情報公開の更なる促進」が求められるなどの批判が存在することが紹介された。  さらに、2019年6月28日に自由民主党行政改革推進部・公益法人等のガバナンス改革検討チームから公表された「公益法人等のガバナンス改革検討チームの提言とりまとめ」の中から、「学校法人制度に対する8の提言」について採り上げられ、ここでは、自主的なプリンシプルベースの行動規範の策定が期待されているものと解説された。  最後に、大学における統合報告の現状について触れられ、何と何が統合した報告書なのかが明確になるまで安易に「統合」というべきではないとの見解が示されたが、一方で、大学監査協会が2014年に公表した「大学法人のディスクロージャー-その目的と体系化-」は、大学の事業報告書の「統合報告」化に係るモデル試案を他に先駆けて提示したことは特筆すべきとされた。  以上の報告を受け、参加者からは、「私立学校法がルールベースを採用しているのに、なぜ、学校法人のガバナンス・コードはプリンシプルベースとなるのか」「ガバナンス・コードは内部自治の標準化を目指すものなのか」「現況は、日本私立大学協会のみが策定作業を行っているのか」「今後、別の団体においても策定が進むのか」「ガバナンス・コードとESGとの関係」「コンプライアンスとガバナンスの捉え方の違い」に関する質問が出された。 文責:上松公雄(大原大学院大学) ■第26回関東部会記 日時 : 2019年8月23日(金) 場所 : (一財)日本自動車研究所 2階会議室 1. はじめに  非営利法人研究学会第26回関東部会が、2019年8月23日(金)13時より、一般財団法人日本自動車研究所2階会議室において開催された。約10名の参加者を迎え、関東部会長の齋藤真哉氏(横浜国立大学)の司会のもと、3つの報告が行われた。  加えて、日本自動車研究所内の研究施設の見学会も行われ、各自動車メーカーの新車開発などの秘匿性の高い実験が行われる施設のため、一般には公開されていない場所の見学という稀有な機会に恵まれた。 2. 部会報告 第一部 非営利法人の現場との交流 第1報告 森田明芳氏(一般財団法人日本自動車研究所事務局) 一般財団法人日本自動車研究所(以下、「JARI」とする。)は、自動車に関する技術の試験・評価を行う総合的な研究機関である。1961年設立の財団法人自動車高速試験場をその前身として、1969年よりは同試験場を自動車に関する総合的な研究機関として改組して発足した、とのことである。  2003年には、財団法人日本電動車両協会及び財団法人自動車走行電子技術協会と統合し、自動車及び関連産業、エネルギー、電機、情報・通信など幅広い関連産業との連携を深めるとともに、事業領域の拡大、未来を的確にとらえた先導的な研究の推進、次世代自動車の普及の促進を図ることをミッションと据える。2012年には一般法人に移行して、新生、一般財団法人日本自動車研究所として新たにスタートしたとのことである。  近年、地球環境問題への対応、自動車のAI・IoT化の進展、自動車に対するニーズの多様化などを背景に、自動車産業は大きな転換期を迎えており、JARIは「環境・エネルギー」「安全」「自動運転・IT・エレクトロニクス」の3つの主要な研究分野として先進的な研究に取り組んでいるとのことである。JARIの収入源泉は多岐にわたり、受託研究からの収入、補助金収入、寄付収入、会費収入、事業収入、不動産収入などである。総収入は概ね90億円程度で、安定的に推移している。従業員は379名(2019年4月現在)であり、都内に2か所の事務所と、本つくば研究施設のほか、茨城県城里町に城里テストセンターという広大な実験施設を保有する。  つくばエクスプレス研究学園駅はかつての敷地であり、城里テストセンターへの施設移転前の実験施設の跡地であるとのことで、現在でも同駅周辺に広大な敷地を保有しているということである。また、つくば市役所に賃貸している敷地もJARIのものであり、広大な敷地に恵まれた研究施設であるとの印象をもった。  法人の概要の説明があったのち、同施設内の見学を企画していただけた。見学したのは、特異環境試験場という施設である。雨や霧、逆光といった実際の交通環境で想定される走行状況を再現し、車両の周辺環境(信号灯や標識、歩行者)などを認識するセンサー・カメラ等の性能評価を行うことが可能な施設である。この施設は世界に唯一無二の施設であり、外国の自動車メーカーからも実験の依頼が来るような最先端最新鋭の実験施設であるとのことである。実際に、降雨実験や噴霧実験をしていただくことができ、大変に貴重な体験をさせていただくことができた。 第二部 研究会 第2報告「会計から見る公益法人制度改革の課題と可能性」 尾上選哉氏(大原大学院大学)  尾上氏からは、本年度の非営利法人研究学会全国大会の統一論題にて披露される発表の事前発表として、会計の観点から、公益法人制度改革の趣旨に照らして、新公益法人制度が有効な社会システムとして機能しているか現状を把握し、改善すべき課題を明らかにするとともに、今後の公益法人制度の発展に会計がどのように寄与しうるかを論じたいとの問題意識のもと報告が行われた。  概ね次のような発表の構成であった。まず、「Ⅰ.公益法人制度の現状」、「Ⅱ.公益法人会計の課題と可能性」、「Ⅲ.「民による公益」の増進に向けて」である。尾上氏は、公益法人と一般法人に場合分けしながら、整理していく手法をとった。統一論題での発表の試論とのことであり、フロアからは本発表に向けた様々なアドバイスや意見が供出され闊達な議論が行われた。 第3報告「子ども食堂におけるドメインの定義」 菅原浩信氏(北海学園大学)   菅原氏からは、子どもの貧困に対する民間発の取組みとして注目されている「子ども食堂」について、その数の拡大とともに長期的継続的な運営に関する研究が必要であるという問題意識のもと報告があった。  氏の発表は概ね、先行研究調査、事例研究(新潟県内6施設)、分析(4つのグループへの分類化)、考察という手法により、展開された。今後の研究に関しては、本調査が新潟県内に限定され、調査施設の数も限定的であり、この調査手法を拡大して、分析事例を増やすことにより、経営戦略や組織特性等の抽出を試みていきたいとのことである。 文責:鷹野宏行(武蔵野大学) ■第25回関東部会記 日時 : 2019年8月10日(土) 場所 : 横浜国立大学 みなとみらいキャンパス 1. はじめに  非営利法人研究学会第25回関東部会が、2019年8 月10日(土)14時より、横浜国立大学みなとみらいキャンパスにおいて開催された。15名の参加者を迎え、齋藤真哉氏(横浜国立大学)の司会のもと、2 つの報告が行われた。 2. 部会報告 第1報告 「非営利法人におけるファンドレイジングの課題と地域性との関係性についての考察 」 瀬上倫弘氏(特定非営利活動法人国際連合世界食糧計画WFP協会事業部マネジャー・横浜市立大学大学院都市社会文化研究科博士後期課程)  瀬上氏は、現在、作成中の博士論文に基づいて報告をされた。  まず、ファンドレイジングはなぜ必要なのか?NPOの存在意義について、旧来からの「市場の失敗」「比較優位性からの存在意義」とは別に「対自発的感性主義」という新しい観点からNPOの存在意義について説かれ、続いて、ファンドレイジングについて「社会的課題の理解と共感」と定義された。さらに、活動資金が不足していること、そのためにファンドレイジングによる資金獲得が必要であるが、逆説的にそのファンドレイジングを実施するための資金も高額で用意することが難しい点をファンドレイジング・パラドックスとし、その課題と位置づけられた。そして、この課題の解決のために事例研究が必要となるとした上で、個人・企業のそれぞれからのファンドレイジングの成功事例の紹介と事例研究に対する分析結果について述べられた。  まず、個人からのファンドレイジングの成功事例としては、「かながわ寄付toカタログ」が紹介され、分析結果として「『地域性』がファンドレイジングの成功要因のひとつの鍵」であること、並びに、地域性が「『ファンドレイジング・パラドックス』の克服に資する」ことが報告された。  次に、企業からのファンドレイジングの成功事例のうち、WFPに関連する事例として「よこはまウォーキングポイント」が紹介され、また、企業を対象としたファンドレイジングと寄付に応じた企業の視点を明らかにするものとして「日本補助犬情報センター」と「SHAKE SHACK」による事例が紹介された。  この企業を対象としたファンドレイジングの事例研究に対する分析結果としては「個人の場合と同様に企業の場合にもファンドレイジングの成功要因として『地域性』という要素が影響していると推察することができた」とまとめられたが、「地域性」には強弱の差があること、個人と企業とにおいての捉え方が異なることが付言された。  最後に、地域を志向したファンドレイジングを「地域ファンドレイジング」と呼び、「地域ファンドレイジング」が海外支援においても有効であるかについての検討として「国連NPOの財務分析」「財務分析からの考察」が行われ、現時点における「仮説」がまとめられた。  以上の報告を受け、参加者からは、「ファンドレイジング・パラドックスについては、統計などに基づいて検証されているか?」「国連NPOの財務分析の結果としては、ファンドレイジング・コスト率が高く、寄付を効率的に使えていない団体がよいとされてしまうが、これは適当か?」「カントによる共感なき寄付との関連はどうか?」「共感の定義は、なにか?」「経済学的分析の観点から1,000のうちの6 つの事例だけで分析となるか?」「非営利法人を対象とするのであれば、他の法人形態についてもサンプルとして取り上げるべきでは?」「『地域性』や『共感』について、個人と企業がそれぞれに考える『地域性』『共感』があるのではないか?」など、多岐多様な質問が出され、活発な議論が展開された。質疑応答を含めて報告は2 時間を超えるものとなった。 第2報告「英国チャリティをめぐる近年の動向と制度対応 」 古庄 修氏(日本大学経済部)  古庄氏は、ご自身が2014年以後に公表された英国チャリティの財務報告に関連する6 篇の論考及び解説の内容を基に、その動向について報告された。  報告においてはまず、FRS第102号の公表に至る過程において、公益目的事業体(PBE)向け財務報告基準(FRSPBE)の設定が議論されたものの、FRSPBEは設定されず、英国においては、企業会計と非営利組織の会計の制度的枠組みを共通化したことの経緯について触れられた上で、企業会計との共通化、非営利組織間の会計基準の共通化の形態として、英国においては、2 つの概念フレームの上に1 つの財務会計基準(UKGAAP)があってそのなかにPBEに対する会計基準が含まれる形で位置付けられており、これと結びつきながらモジュール・アプローチとしてチャリティSORPが存在する3 層構造となっていることが確認された。  次いで、今回の報告の主題となる英国チャリティを巡り近年、発覚、発生した「Mrs Olive Cookeのケース」について紹介された。「Mrs Olive Cookeのケース」は寄付者を追い詰める寄付勧誘や断ることのできない(強制的な)寄付の存在を明らかにする事例であり、この一件が契機となって2016年にチャリティ法の改正が行われ、これにより新設された開示規定の概要について報告された。  さらに、2018年4 月に『公益・一般法人』に掲載された解説記事に基づいて、2017年7 月に改訂されたソフト・ローである英国チャリティのガバナンス・コード(チャリティ・コード)について、改訂の狙いと内容についての確認が行われた。また、チャリティ・コードにおいてApply or Explain(適用せよ、そうでなければ説明せよ)アプローチが採用されていることを前提として、その【推奨される実務】のなかから注目すべき点の抜粋確認が行われた。なお、チャリティ・コード改訂の背景には「Kids Companyの破綻」の存在などがあることが示された。  最後に、2020年度の本学会全国大会における統一論題の主題として、①東京五輪開催に合わせた競技団体のガバナンスとインテグリティ、②非営利法人におけるガバナンスをめぐる論点などを主催校として検討している旨が述べられた。  出席者からは、「チャリティ・コードの適用形式を区分する基準と外部監査の要否」「チャリティSORPにおける中小向けIFRSの適用可否」「チャリティ・コードにおける存続可能性について」「寄付勧誘から悲劇を生まないためのファンドレイジングを行う側の倫理規程のあり方」などの質問が出され、第1 報告に続いて第2 報告においても活発な質疑応答が展開された。質疑応答を含めて1時間半に及ぶ報告となった。  最後に今後の学会開催予定等について報告があり、18時10分頃、閉会した。 文責:上松公雄(大原大学院大学) ■第24回関東部会記 日時 : 2019年7月20日(土) 場所 : 日本大学 経済学部7号館(東京都千代田区) 1. はじめに   非営利法人研究学会第24回関東部会が、2019年7月20日(土)13時より、日本大学経済学部7号館2階講堂(東京都千代田区神田三崎町)において開催された。約40名の参加者を迎え、古庄修氏(日本大学経済学部)の司会のもと、3つの報告が行われた。  今回は、日本簿記学会簿記実務研究部会及び税務会計研究学会特別委員会との共催となった。これら3学会の各部会・委員会は、いずれも非営利組織の会計をテーマにしている点で一致し、今回の合同開催に至った。 2. 部会報告  最初に、非営利法人研究学会の齋藤関東部会長より、非営利組織の会計をテーマとして様々な観点から検討する3学会が合同で研究会を発表する意義が示された。 第一部 研究会 第1 報告「非営利法人の特質~会計・税務の観点から~」 齋藤 真哉氏(横浜国立大学)  齋藤氏は、会計を考察する前提として、まず近年の日本における非営利法人をめぐる環境制約の変化として、行政からの補助の削減や非営利法人において生じた不正について言及された。また、日本における非営利法人をめぐる会計や税務の動向を概観された。  次に、非営利法人の特徴としての特定のミッションの存在、残余財産に対する請求権者の不在、直接的反対給付を要しない財・サービスの受領の可能性等についてより詳細に報告された。  その他にも多くの点について詳細な報告がなされた後、まとめに入られた。特に非営利法人会計では、企業会計と同じ基礎概念で整理できるのか、何が同じで何が異なるのかについての明確化の必要性を強調された。合わせて、諸外国の基準をそのまま導入するのではなく、会計理論や日本の実情に照らして基準の内容の十分な検討が必要であるとされた。 第2報告「非営利組織体の簿記の現状把握と課題」 小野 正芳氏(千葉経済大学)  日本簿記学会簿記実務研究部会部会長である小野氏からは、非営利組織体における複式簿記の役立ちという観点から報告がなされた。部会では、パブリックセクターに含まれる地方自治体、地方三公社、独立行政法人、国立大学法人、公立大学法人とプライベートセクターの公益法人、NPO法人、医療法人、私立学校法人、社会福祉法人、宗教法人、農業協同組合まで広範囲にわたって研究がなされている。  非営利組織体への複式簿記導入の経緯として、⑴ 当初から非営利組織による複式簿記が求められている組織体、⑵ 収支計算及び財産目録の作成のための簿記処理から複式簿記による簿記処理へ移行した組織体、⑶ 未だ複式簿記による簿記処理が求められていない組織体とに区分して詳細な報告がなされた。また、簿記学会ということで、複式簿記の具体的な会計処理にも言及された。 第3報告「 非営利法人の課税をめぐる課題」 尾上 選哉氏(大原大学院大学)   税務会計研究学会特別委員会委員長の尾上氏からは、非営利法人の税務に係る各種の課題について報告がなされた。具体的には、以前の公益法人税制、新たな公益法人税制、非営利法人への所得課税の検討、法人税以外の特別措置等について言及された。  非営利法人には各種の税制優遇措置が採られているが、その理由が必ずしも明確でなかったり、様々な措置の間での整合性が不十分であったりする課題が示された。   第3報告終了後、齋藤真哉氏をコーディネーターとして、討論会・意見交換会が行われた。  フロアと発表者との間では、企業における複式簿記と非営利法人における複式簿記との違い、複式記入と複式簿記との違い、使途の指定された財産の受入れにかかる会計処理等をめぐり活発なやりとりがあった。  最後に今後の学会開催予定等について報告があり、17時30分頃、閉会した。 文責:金子良太(國學院大学) ■第23回関東部会記 日時 : 2019年5月11日(土) 場所 : 武蔵野大学 有明キャンパス(東京都江東区) 1. はじめに  非営利法人研究学会第23回関東部会が、2019年5 月11日(土)14時より、武蔵野大学有明キャンパス(東京都江東区)において開催された。18名の参加者を迎え、開催校の鷹野宏行氏(武蔵野大学)の司会のもと、1つの報告及びラウンドテーブルが行われた。 2. 部会報告   第一部 研究会 第1 報告「宗教法人法における機関の特徴―宗教法人法における機関の特徴から生ずる税務上の問題点に関する一考察―」(2018年度非営利法人研究学会関東部会短期研究)」 上松公雄氏(税理士・大原大学院大学)  上松氏より、宗教法人における機関の特徴の観点から、宗教法人法上の役員でない者が法人税法上の役員となる可能性があるため、宗教法人法において役員の範囲を明確にする必要性に関する報告がなされた。  宗教法人における機関を、一般社団法人、社会福祉法人、学校法人と比較検討を行い、以下の4つの特徴をあげた。①合議制機関及び監事が必置機関とはなっていない。②役員の範囲が明確ではない。③職務・権限について規定されているのは責任役員及び代表役員のみである。④登記すべき者は代表権を有する者となっている。このような特徴が宗教法人法の役員と法人税法上の役員との範囲が異なる要因となっている可能性を示唆した。また、法人税法上の役員の範囲は①役員の例示及び②実質的経営従事者という2つの観点を判断基準とするが、宗教法人の機関は法人税法上の役員の例示には該当しない。このため、実質的経営従事者であるかどうかによって法人税法上の役員該当性を判断すべきことになり、代表役員に関しては職務・権限の内容から法人税法上の役員に該当するものと判断されるが、責任役員については法人の規則において定める職務・権限の内容に基づいて判断する必要がある。さらには、宗教法人は設置すべき機関が不明確であり、理事及び監事が存在しないため、他の非営利法人とガバナンスの有効性と役員の課税について不公平が生じる可能性が否めない。  フロアからの主な質問とそれに対する回答は以下のとおりである。  旧宗教法人令の施行下において宗教団体か否かの線引きの根拠はどこにあったのかという質問に対しては、旧宗教團體法の定めるところが前提とされていたものと理解されるとの回答であった。  宗教法人はガバナンスが有効に機能しておらず、特定の者が優遇されている可能性があること及び、本来役員でない者が税法上の役員として認定されてしまい税務上不合理に扱われている可能性があるという問題があると理解してよろしいかという質問には、そのような理解で問題ないとの回答があった。 なぜ宗教法人法に監事に関する規定が明文化されていないのかという質問については、今後、竹内先生との共同研究で明らかにしていくとの回答であった。  宗教法人法の機関に関する課題が浮き彫りになり、フロアからの質問も宗教法人に関する本質的な議論となり活発な質疑応答となった。 第二部 ラウンドテーブル 第2報告「非営利組織の財務報告~JICPA非営利組織会計検討会の提案~」 齋藤真哉氏(横浜国立大学)  齋藤氏から2019年4月にJICPAから公表された「非営利組織における財務報告の検討~財務報告の基礎概念・モデル会計基準の提案~」(公開草案)に関する報告がなされた後にディスカッションが行われた。  非営利組織の社会的役割期待の大きさや自立した運営の必要性、さらには監督官庁ごとに異なる会計基準が作られている会計コストを考えると、非営利組織に関する会計基準の統一化を図ろうとすることには一定の意義があるとされた。  齋藤氏より次の問題点も指摘された。財務報告には、財務情報と非財務情報を含むとされているが、その質的特性や財務諸表の構成要素等に非財務情報がいかに反映されているのか不明である。多様な情報利用者と基礎概念との関係にもあいまいさが残る。財務諸表の構成要素に純資産が含まれているのに、活動計算書により計算される純資産増減額が含まれないのか。  報告の後、フロアも含めたディスカッションが、次の論点等について行われた。財務諸表の構成要素について、基本金のように非営利法人の資本や余剰について別の定義づけや異なる勘定科目を設定することは有用であり、基本財産額や余剰のような概念を用いてステークホルダーの理解に資することが必要ではなかろうか。また、純資産の拘束別区分に関しては、 3区分とされたことに関して、拘束の程度によって分けるべきであるが、時代の変遷や寄付者の死亡等により寄付の意図を確認できなくなること等のために、ガバナンス上は寄付者の意図は管理するべきであるものの、拘束性を3区分として表示することはほとんど不可能であり、別資料として開示する方法も有用ではなかろうか。この論点については、アメリカ基準が3区分から2区分へ変更した理由や歴史的背景を交えて議論が交わされた。  ディスカッションは活発に行われ17時15分頃、閉会した。 文責:榮田悟志(武蔵野大学) ■第22回関東部会、北海道(合同開催)記 日時 : 2019年3月8日(金) 場所 : (一財)産業経理協会(東京都千代田区) 1. はじめに  非営利法人研究学会北海道・関東合同部会が、2019年3 月8 日(金)13時より、一般財団法人産業経理協会2 階会議室(東京都千代田区神田淡路町)において開催された。約20名の参加者を迎え、関東部会長の齋藤真哉氏(横浜国立大学)の司会のもと、4 つの報告が行われた。 2. 部会報告   第一部 非営利法人の現場との交流 第1 報告「非営利法人の現場との交流」 田代恭之氏(一般財団法人産業経理協会 事業部マネージャー)  産業経理協会は、会社、その他諸団体における財務、経理等の研究、調査及び普及を行う目的で活動している団体である。1941年9月13日に日本原価計算協会の名称で発足してから現在まで80年近くに及ぶ活動を重ねている。1946年に財団法人産業経理協会と改称し、その後公益法人制度改革のもとで2013年4 月1 日より一般財団法人産業経理協会へ組織変更し、現在に至っている。2017年6 月より、会計学者の安藤英義氏が会長に就いている。会計学者を始めとする大学教員が、多く理事や評議員に就いていることも特徴的である。  田代氏からは、法人の各種事業について説明があった。主要事業としてセミナー(役員・幹部向け)、短期講習会(実務担当者向け)、講座(実務担当者向け)、研究会(専門領域に応じて現在9 の研究会)、機関紙(産業経理を年4 回発刊)がある。いずれも非常に歴史の長いもので、多くの企業が会員となっている。もっとも、リーマン・ショック以降は法人会員が減少しその後も会員数は伸び悩みの傾向がある。近年は法人へ向けての営業活動を強化していること、様々な類型の賛助会員制度を設けていることが説明された。  産業経理協会は、筆者も『産業経理』に寄稿したことがあり、会計学研究者には非常に身近な存在で、参加者による様々な質問が行われた。学会会場として会議室を提供いただいたことにも、感謝申し上げたい。 第二部 研究会 第2報告「 Fiscal SponsorshipとPro Bono」 早坂 毅氏(早坂毅税理士事務所)  早坂氏からは、非営利組織の不祥事防止研究会のプロジェクトとして、2018年12月2 日~12日の行程でアメリカ西海岸の非営利組織や法律事務所を調査した報告があった。早坂氏ら3 名は、非営利団体の活動が活発であるアメリカ西海岸、とりわけ先進地区として有名なサンフランシスコ市内でのインタビュー調査を企画、実施した。  Fiscal Sponsorshipは、非営利組織が他の小規模非営利組織の後方事務や組織運営支援、具体的には財務、コンプライアンス、助成金管理、人事管理や社会保険等のサービスを提供することで組織運営を支援するものである。早坂氏は、多くの非営利組織を支援するTidesへの訪問調査事例を報告された。Tidesは、環境、医療、労働問題、移民の権利、同性愛者の権利、女性の権利等の分野で先進的な政策を推進する団体であると同時、多くの小規模組織の支援も行っている。非常に安価な対価で、多くの組織の広範な後方支援を行っている。  このほか、早坂氏からはPro Bonoの先進的事例として法律事務所のMorrison and Foerster法律事務所が仕事の5 %をPro Bonoへ使うよう奨励されている事例も示された。  参加者からは、Fiscal Sponsorshipについての質問や、日本での実態等を巡って様々な質問が交わされた。 第3報告「18世紀の懐徳堂の帳簿」 水谷文宣氏(関東学院大学)  水谷氏からは、日本の実務における資本維持計算の必要性を現金主義の時代から探るという問題意識のもと、18世紀の帳簿について報告があった。  報告で使用された帳簿は教育を行う組織の『懐徳堂義金簿』であり、1781年(天明元年)にさかのぼるという。そして現在は、大阪大学の懐徳堂文庫に大量の資料が保存されている。水谷氏は、大阪大学を訪問して調査を行った。そして、それらを踏まえた上で資本維持計算は民間非営利組織でも必要であり、減価償却が必要である旨を報告された。  参加者からは、「資本維持」の意義や、減価償却の目的等をはじめ多くの質問がなされた。 第3報告「 地場産業産地における商工共同システムの変化 有田焼産地を事例として」 東郷 寛氏(近畿大学) 東郷氏からは、商工協業システムたる「事業システム」の変容の視点から有田焼産地の発展過程を明らかにすることを目的にした研究として、業界レベルでの産地発信型・事業システムについての報告があった。そして、有田を出自とする新興商業者や新興窯元集団による新たな事業システム(有田焼のブランド化を企図)の構築が明らかにされた。  参加者からは、本報告と非営利組織・活動との関係、有田焼産地の近年の動き等の質問があった。 文責:金子良太(國學院大學) ■第21回関東部会、医療・福祉系法人研究会(合同開催)記 日時 : 2018年7月7日(土) 場所 : 國學院大学渋谷キャンパス(東京都渋谷区) 1. はじめに  非営利法人研究学会第21回関東部会、医療・福祉系法人研究会(合同開催)が、2018年7月7日(土)14時より、國學院大学渋谷キャンパス(東京都渋谷区)において開催された。17名の参加者を迎え、開催校の金子良太氏(國學院大学)の司会のもと、2つの報告が行われた。 2. 部会報告 第一部 非営利法人の実務報告 第1 報告「日本体育施設協会が実施する指定管理者外部評価の実務」 本間 基照氏 (MS&ADインターリスク総研株式会社)  本間氏より、体育施設を外部者の立場から評価する指定管理者という実務家の視点から、指定管理者の必要性、実施している業務の概要及び外部評価の課題に関して説明があった。  指定管理者外部評価を受けるか否かは原則として自由であり受ける目的も様々であるが、安全な利用を目的として、地方自治体は評価を受けることを義務付けている場合がある。体育施設の管理を適切に行い、利用者数を多くすることを目的とすることや、床が剥がれて利用者が怪我をするような施設の老朽化による事故が起こることを未然に防ぐとういう観点からも外部評価の意味は大きいといえる。また、指定管理者制度による評価の目的の一つとして、民間企業が体育施設に関する入札に参加することができる参入障壁を下げることにもある。いわゆる外郭団体のみで体育施設を運営するのではなく、スケールメリットが得やすく、経営のノウハウを持っている民間企業も体育施設の運営に参加を促すことによって、利用者の効用を高めることにも資すると考えられる。  評価実施項目として、安定的経営姿勢・運営実施体制、コンプライアンス、施設の効用の最大限発揮、安全管理、地域交流などがある。  フロアからの質問とそれに対する回答は以下の通りである。評価は時代や利用者のターゲットの別で行っているのか、また、時代に応じて評価を変化する予定があるのかという質問に対しては、年度末に項目の見直しを行っており、今後も考慮していかなければならないとの回答であった。温水プールに関して、近くにごみの焼却場がある場合とない場合では、燃料費がかなり違うが、置かれている環境制約によって評価も変化させているのかという質問には、1人あたりの利用料などで評価しているので、環境制約は考慮していないので今後の課題としたいとの回答であった。評価指標においては、公益目的を念頭においた指標を設けるほうが良いのではないだろうかという意見があった。地方と都心では利用者や集客力が大きく異なるので、施設の可変性(観客席、女子トイレと男子トイレの数など)等は評価項目として重要視されるべきではないかという意見があがった。  実務の現場の実情と課題がわかる大変興味深い発表であり、フロアからの質問も評価項目に関する本質的な議論となり活発な質疑応答となった。 第二部 研究会 第2報告「社会福祉法人充実残額の算定傾向に関する分析」 千葉正展氏 (独立行政法人福祉医療機構)  千葉氏からは、社会福祉法人の社会福祉充実残額の算定に関して、厚生労働省の示した算定式では内部留保以外の要因の混在や特例計算などによって、過大もしくは過小評価されている可能性があることから、充実残額算定式の見直しの要否に資する傾向分析に関する報告がなされた。例えば、建物等の耐用年数は借入金の借入期間を超過していることにより、借入金完済後から耐用年数到来の期間の減価償却費による回収資金が内部留保に混在しているため充実残額が過大評価される可能背がある。また、特例計算によって充実残額が過小評価される可能性も指摘される。この計算方法については、施行後の実施状況を踏まえ検討することとされ、算定制度の傾向分析を行う必要がある。そのほか充実残額については検証機能がないため、算出された金額の正確性に関して保証されていないというという制度上の問題点の指摘がなされた。  フロアからは、そもそも、社会福祉法人の内部留保に関する批判はなぜ出てしまったのか、という質問があがった。これは数字的根拠なき批判であったため、内部留保である社会福祉充実額につき充実計画の策定及び実行がなされることになったという経緯の説明がなされた。内部留保そのものに関する社会的な見解の問題ともいえる本質的な議論である。また、社会福祉充実額の数値の正確性に関する質問では、充実計画は充実額がプラスの場合にのみ作成すればよく、マイナスの場合には作成されず、作成されない場合には会計監査対象外であり、充実残額の算定課程におけるマイナスされる金額の適正性は担保されないという監査の盲点も明らかとなった。  各報告とも多くの質疑応答や質疑に基づく議論が活発になされ、議論は予定時間終了後も続き、17時20分頃、閉会した。   文責:榮田悟志(武蔵野大学) ■第20回関東部会記 日時 : 2018年5月19日(土) 場所 : 武蔵野 大学有明キャンパス 1. はじめに  非営利法人研究学会第20回関東部会が、2018年5月19日(土)14:00より、武蔵野大学有明キャンパスにおいて開催された。18名の参加者を迎え、開催校の鷹野宏行氏(武蔵野大学)の司会のもと、三つの報告が行われた。 2. 部会報告 第1 報告「一般法人の非営利性についての再検討」 古市雄一朗氏(大原大学院大学)  古市氏より、まず、一般法人(一般社団・財団法人)は非分配制約を満たしていないのではないかという問題認識に関する説明があった。次に、非分配制約の意義、非営利組織に非分配制約が徹底されない事の問題点に関する検討の説明があった。前者の非分配制約の意義としては、非営利法人と営利法人を区別するメルクマールとして機能すること、契約の失敗を解消することなどがあげられた。後者の問題点としては、非営利性のある法人とそうでない法人が混在している法人が混在していること、非営利を謳いながら非営利法人として活動する恩典を用いて活動し利益を蓄積した上で特定の個人に対して利益を提供する余地が残されていることなどがあげられた。帰結として、残余財産の分配の可能性を残している一般法人は、厳密な意味での非営利性を有していない可能性があることが指摘された。  フロアーより、残余財産の分配の余地が残されている法人が非営利法人として一般法人の中に含められている制度的背景などに関して質問がなされ、活発な議論が展開された。 第2報告「非営利組織に関する一考察」 松原由美氏(早稲田大学)  松原氏より、まず、「非営利組織とはどういう組織か」というテーマに関する説明があった。次に、非営利組織の定義、非営利組織の利益概念を検討した内容が説明された。非営利組織の定義に関する検討は、非分配性を捉えた一般的な定義には問題があるとし、営利ではないことを捉えた定義とすべきとの提案がなされた。また、非営利組織の利益概念の検討では、非営利の利益概念と営利の利益概念を対峙させ、前者を将来のコスト、後者を儲けとして研究されている。考察として必要利益(許容範囲)の概念、将来の建替えコストなどの将来の非営利事業のためのコストに対する引当金設定の導入、さらに実質配当禁止の措置をもって、非営利組織の名にふさわしい経営を実現することが示唆された。  フロアーより、許容範囲設定のあとの処理はどうなるのか、提案された定義がいかなる問題を解決するか、などの質問がなされ、活発な議論が展開された。 第3 報告「収支相償の判断における調整項目の検討~特定費用準備資金の取り扱いを中心として~」 榮田悟志氏(武蔵野大学)  榮田氏より、まず、特定費用準備資金の利用の低さに関する問題点の説明があった。次に、収支相償の判断を伴う特定費用準備資金の利用に関する考察があり、どのような条件であれば特定費用準備資金の利用が高まるかについての検討がなされた。帰結として収支相償計算の調整項目としての特定費用準備資金の使用に関して、第一段階と第二段階で繰入れの意味合いが異なるため異なる取り扱いをすること、また公益目的事業で儲けた分は公益に還元するという考えにより、特定費用準備資金を利用しやすい環境整備が提起された。しかしながら、収支相償を求める場合には、会費、寄付金、補助金等を経常収益として収支相償の判断の計算に含めるか否かなども議論の余地があり、特定費用準備資金の繰入れと取崩しなどと総合的に議論されるべきであることも主張された。  フロアーより、特定費用準備金の利用が20%という内閣府公表の数値に対して、その利用により収支相償を達成する必要がある法人に限れば60%を大きく上回る数値となるという指摘もあった。また、制度の運用に関して、監督官庁及び公益法人との間に認識のずれが生じている可能性もあるなどの指摘もあり、活発な議論が展開された。 文責:山田和宏(横浜国立大学博士課程後期) ■第18回関東部会記 日時 : 2017年11月26日(月) 場所 : 武蔵野 大学有明キャンパス 1. はじめに  非営利法人研究学会第18回関東部会が、 2017年11月26日(日)13時30分より、武蔵野 大学有明キャンパス 1 号館(東京都江東区有明)において開催された。約20名の参加者を迎え、開催校の鷹野宏行氏(武蔵野大学)の司会のもと、3つの報告が行われた。 2. 部会報告 第一部 非営利法人の現場との交流 第1 報告 中村英正氏(公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 CFO)  2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの準備及び運営を担うことを目的に設立された公益財団法人である。日本オリンピック協会と東京都とが1 億5 千万円ずつを出捐して2014年に発足し、その後東京都は57億円の追加出捐を行っている。  中村氏からは、実務家の立場から、組織の活動内容や公益法人の課題について報告があった。まず、2020年のオリンピックを成功させることを目的とした団体で、大会終了後は清算が予定されている点が(他の公益法人と異なる)大きな特徴である。また、役員数はオリンピック・パラリンピックが国、自治体、スポンサー企業、スポーツ団体等多くの関係者を巻き込んでいくイベントだけあって、35名と非常に多い。通常3 か月に1 回で開催される理事会の開催日程の調整には大変な苦労を伴うが、多くの理事が多忙な日程をやりくりして参加されているとのことであった。また、財団に勤務する職員も、東京都、国、スポンサー企業、スポーツ団体等の出身である。当然出身母体ごとに仕事のやり方は大きく異なっており、その点での調整の苦労もうかがい知ることができた。もっとも、「オリンピック・パラリンピックを成功させる」という使命(ミッション)が極めて明確な組織であり、いわゆる「アイデンティティ・クライシス」に陥ることはないとのことであった。  フロアからは2020年のオリンピックを開催するまでの毎年度の収支相償をどう考えるか、オリンピック終了後の清算において不足や剰余が発生した時の取扱いをどうするのか等、多くの質問が提起され、質問は14時半頃まで続いた。1 時間半近くにわたる中村氏の説明と質疑応答は、公益法人の運営のみならず東京オリンピック・パラリンピックへの興味をかきたてるに十分なものであった。 第二部 研究会 第2報告「非営利組織とはどのような組織か」 松原由美氏(早稲田大学)   松原氏は、まず「非営利」そして「非営利 組織」の定義が抱える問題点について明らか にされた。また、営利組織と非営利組織の利 益は似て非なるものであり、これを同一視して議論することは適切ではないと主張された。 また、非営利組織の利益概念の特徴についても言及された。特に通説に対する異論や、非営利組織に対する一般的な誤解を問題意識として報告がなされた。 フロアからは、「非営利」や「利 益」の定義をめぐって質問があり、その後活発な議論 が交わされた。 第3 報告「韓国のフードバンクと現物寄付の評価」 上原優子氏(立命館アジア太平洋大学)  上原氏からは、近年わが国でも注目が高まっているフードバンクを主題とした発表が行われた。フードバンクとは、様々な理由で処分されてしまう食品を、食べ物に困っている人に届ける活動である。米国での活動が盛んであるが、近年わが国でも活動が活発化している。発表は韓国のフードバンクに焦点を当て、韓国では経済の停滞や貧富の格差によりそれを必要とする人が増加し、政府がフードバンクの活動に深くかかわっていることが報告された。また、韓国では(米国と異なり)基本的に単式簿記で収支計算を行い、財務諸表は一般に公開はしていない。ただし、寄付食品の利用状況については公表しているとのことであった。  今後わが国でもフードバンクの会計上の取扱い、寄付食品の評価等が課題となるという課題が提起され、発表が締めくくられた。  フロアからは、寄付食品の評価の方法や米国のフードバンクとの違い等について質問があった。  各報告とも活発な質疑応答があり、16時50分頃、閉会した。 文責:金子良太(國學院大学) ■第17回関東部会記 日時 : 2017年8月20日(日) 場所 : 横浜国立大学みなとみらいキャンパス 1. はじめに  非営利法人研究学会第17回関東部会が、2017年8 月20日(日)13時より、横浜国立大学みなとみらいキャンパス(神奈川県横浜市西区みなとみらい)において開催された。15名の参加者を迎え、開催校の齋藤真哉氏(横浜国立大学)の司会のもと、3つの報告が行われた。 2. 部会報告 第一部 非営利法人の現場との交流 第1 報告「社会福祉法改正後初めての決算を実務から振り返る」 船山 奨氏(税理士法人みらいコンサルティング)  船山氏より、税理士という実務家の立場から、社会福祉法改正の背景、趣旨及び課題に関して説明があった。まず、経営組織のガバナンス強化の観点から理事・理事長に対する牽制機能及び一定規模以上の社会福祉法人に対する公認会計士等による法定監査の義務付けの説明があった。これに関連して、厚生労働省及び日本公認会計士協会と連携して専門家の活用による法定監査対象外の社会福祉法人に対する事務処理体制を向上する目的の支援実施報告書を日本税理士会連合会会長から税理士会会長宛に周知のお願いが公表されたことが説明された。事業運営の透明性の確保に関しては、役員報酬基準及び役員区分ごとの報酬総額の記載に関する説明があった。また、社会福祉法人は公益性が強い事業を営んでいるため、本業については法人税を非課税とするべきではなかろうかとの意見も示された。  フロアからは、法定監査における公認会計士の独立性の問題、税理士の行う支援業務との住み分けに関する問題や、行政監査との比較などの議論が交わされた。また、理事の報酬に関しては、評議員会での承認が必要となり透明性が確保されているが、個人別の開示がなされていないなど問題が多く残っている点が指摘された。さらには充実計画に関する説明に対して実務ではどのような取扱いがなされているのか、残額がある法人の割合はどの程度なのかという実務の現場に関する質問も寄せられるなど、大変興味深い実務家の観点からの発表であった。 第二部 研究会 第2報告「非営利組織の内部留保」 石津寿惠氏(明治大学)  石津氏からは、公益法人、学校法人、社会福祉法人に関する内部留保に関して、会計情報として適切に開示することの必要性と、その仕組みとしての短期的な単年度の収支バランス(収支相償:公益法人、収支均衡:学校法人、社会福祉充実計画:社会福祉法人)と会計情報がリンクされることの必要性が示された。これにより社会から批判が多い非営利組織の内部留保の状況を明らかにし、会計情報として適切に開示することができると示唆された。  また、短期的なバランスとは、資金収支ではなく発生主義による収支であることが示された。  フロアからは、公益法人、学校法人、社会福祉法人の異なる法人に適用される会計基準を同じ土俵に上げて論じることに関する質問があがり、収支バランスと内部留保のリンクに関するさらなる説明がなされ、非営利組織の社会的意義に立ち返った議論も交わされた。 第3 報告「セクター中立会計の課題と可能性」 金子良太氏(國學院大学)  金子氏からは、ニュージーランドは20年の間にセクター中立会計を導入したがそれを廃棄したという事例が紹介され、セクター中立会計及び非営利組織会計の統一的枠組みを考えていく方向性や、多様な利害関係者の利害調整に関する研究の必要性が示唆された。営利組織、非営利組織、公的組織といった各セクターについてひとつの会計基準を共有するという極論を検討することにより、非営利組織の会計に関する位置づけや問題点を明らかにするといった意義があることや、営利・非営利・政府といった組織目的が異なることが会計の違いにはつながらないというアンソニーの主張が紹介された。  フロアからは、ニュージーランドがセクター中立会計を廃棄した経緯について、IFRS自体の問題なのか、IFRSの適用には限界があることは分かっていたが最終的に諦めたのかという質問がなされ、IFRSを適用することができる組織などに関する議論が行われた。また、セクター中立会計を現時点で導入している国はあるのかという質問に対して、完全ではないが、オーストラリアやイギリスなどがある旨が回答された。  各報告とも多くの質疑応答があり、議論は予定時間終了後も続き、17時40分頃、閉会した。 文責:榮田悟志(武蔵野大学) ■第16回関東部会記 日時 :2017年7月8日(土) 場所 :日本大学経済学部7号館  非営利法人研究学会第16回関東部会が、2017年7 月8 日(土)13時より、日本大学経済学部7 号館(東京都千代田区三崎町)において開催された。20名以上の参加者を迎え、開催校の古庄修氏(日本大学)の司会のもと、3 つの報告が行われた。 ■第1部 非営利法人の現場との交流 ■第1報告  浅川伸氏(公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構 通称JADAJapan Anti-Doping Agency)  JADAは、ドーピング検査やドーピングに関する啓発活動を行う機関である。日本オリンピック委員会(JOC)、日本体育協会(JASA)、日本プロスポーツ協会(JPSA)を中心にして、2001年(平成13年)に創立された。浅川氏から、実務家の立場から、組織の活動内容や公益認定をめぐる課題について話があった。まず、数年前に大きな話題となったロシアによる組織的なドーピング問題と、その後の経過について話があった。ドーピングによって、オリンピック等の競技大会の信頼性は失われ、ルールを守って参加するアスリートに不公平な結果となってしまう。2020年の東京オリンピックを成功させるためには、ドーピングを絶対に認めない毅然とした態度と違反を摘発する仕組みの強化が必要であることを認識させられた。  公益法人の運営に当たっては、理事会や評議員会といった法人運営の方向性を決める会議が頻繁に行われない中で、日々の業務運営を行う常勤職員には運営の決定権限があまりないことが、スピード感のある法人運営を難しくしていることが示された。特に、多くのステイクホルダーを抱える組織においては理事会等が肥大化する傾向にある。ドーピングなど日々刻々と動く事態に対応していくために、また基本財産(JADAの場合、基本財産は6,700万円)の運用収益が極めて限定的となっている現状では、社会のニーズに応えて法人が存続していくために素早い意思決定や現場への権限移譲が不可欠であるとの説明があった。  JADAの公益財団法人化に際しては、法人の意思決定や業務運営がスピード感・緊張感をもってなされるよう組織変革が行われたとのことである。  フロアからはJADAの収支や世界的組織(WADA)との関係、公益財団法人化がもたらした影響等、多くの質問が提起され、質問は15時頃まで続いた。2 時間近くにわたる浅川氏の説明と質疑応答は、公益法人の運営のみならず東京オリンピック等への興味をかきたてるに十分なものであった。 ■第2部 研究会 ■第2報告  猫崎隆之氏(ニッシントーア・岩尾株式会社)「公益法人会計基準における意義と課題」  猫崎氏からは、公益法人会計基準が改正された経緯、その後の公益法人制度改革と会計基準との関係等について、報告がなされた。そして、特に平成20年改正の会計基準には理解可能性に問題があること、内訳表の作成など現場にも多くの負担がかかっていることが説明された。また、公益法人会計には説明責任の履行が期待されていることが示された。  フロアからは、公益法人会計基準の「意義」と「課題」をより明確にすることが必要であるとの助言があった。 ■第3報告  伊藤 葵氏(富山国際大学)「非営利セクターにおける中間支援組織の重要性」  伊藤氏からは、公共サービス提供における中間支援組織の重要性について、組織間関係論の視点に基づき、報告がなされた。中間支援組織では多様なステイクホルダーをつなぐセクター間調整機能が弱い傾向にあると推測され、この機能の拡充が課題であることが示された。  フロアからは、中間支援組織の定義づけや公的サービス提供という視点から研究を行った理由等について質問がなされた。  各報告とも多くの質疑応答があり、議論は予定時間終了後も続き、17時40分頃、閉会し た。 文責:金子良太(國學院大学) ■第13回関東部会記 日時 :2016年5月14日(土) 場所 :武蔵野大学有明キャンパス 1. はじめに  第13回関東部会が武蔵野大学有明キャンパスを会場に開催された。齋藤真哉部会長の挨拶後、部会長(第1 報告)及び鷹野宏行氏(第2・3報告)の司会により研究報告が行われた。 2. 部会報告 ■第1報告  榮田悟司・鷹野宏行氏(武蔵野大学)「産後ケア施設をめぐる制度・運営・組織形態研究序説」  榮田・鷹野両氏の報告では、出産直後の産褥期における母子に対する産後ケア施設の制度設計を検討するために、今回は世田谷区が武蔵野大学に土地を提供し事業運営を委託している「武蔵野大学付属産後ケアセンター桜新町」を題材として採り上げ、産後ケア施設の実態を明らかにし、法的整備の必要性が検討された。  まず、少子化対策が社会問題となっている昨今にあって、産褥期における母親の精神的・肉体的ケアの重要性が指摘された。そして、現在では多くの自治体等において、産後ケア事業や産後ケア施設への補助が行われるようになっているが、産後ケア事業・施設の認知度、自治体の補助、施設等の利用率に地域差が存在すると同時に、産後ケア・サービスそのものにも大きなバラツキがあることが問題の所在として採り上げられた。  そして、今後の産後ケア施設の拡充のために課題となる法的な整備についての検討が加えられた。今回の報告はタイトルにもあるように「序説」であり、今後、自治体へのアンケート調査、産後ケアの先進国といわれる韓国の産後ケア施設への訪問や実態調査などを行い研究を取りまとめていきたいとのことであった。 ■第2報告  金子良太氏(國學院大學)「非営利組織における規模別の会計基準導入の可能性」  金子氏の報告では、非営利組織には中小組織が多く、会計規制においては規模別の配慮が必要であるとの問題意識から、ニュージーランド(以下、NZ)で導入された非営利組織の規模別会計を例として挙げ、規模別会計基準導入の可能性の検討が行われた。  まず、NZの非営利組織の会計について、歴史的経緯を含めた概要が紹介された。NZでは2000年代に入ると企業会計に基づくセクター中立会計が、そして2007年からはNZ版IFRSが非営利組織に適用されていたが、2011年にその廃止が決定され、2015年4月から「事業費用」を基準とする非営利組織の規模別会計基準が導入された。なぜこのような会計枠組みの大幅な変更を伴う改革が行われたかについて、従来の会計基準は非営利組織に順守されておらず、順守される規制構築の必要性があったと報告者の見解が明らかにされた。  次いで、事業費用の金額により4区分された規模別会計基準の概要が紹介され、各区分での財務報告の実態が明らかにされた。  最後に、公益法人会計基準における「中小組織版」会計基準の検討結果を踏まえ、法人類型別に非営利組織の会計基準が設定されているわが国の現状で、NZのような規模別会計基準の策定の是非などが議論された。 ■第3報告  千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構)「社会福祉法人制度改革の背景と諸問題」  千葉氏の報告では、近時の社会福祉法人制度改革の背景及び内容の概括をし、制度改革で未解決となっている課題の検討が行われた。  まず、制度改革の背景として、次の5 つが挙げられた。①会社法の創設や公益法人制度改革等が進む中で、社会福祉法人の他の法人と比較したガバナンスレベルの相対的低下、②世論などにおける社会福祉法人の内部留保に対する批判、③社会福祉事業から「社会福祉事業と福祉サービス」という新しい公共概念(福祉の範囲の変化)、④公益法人等に対する法人税課税の議論、⑤不適正事案の発生。 そして、「経営組織のガバナンスの強化」、「事業運営の透明性の向上」、「財務規律の強化」、「地域における公益的な取組みを実施する責務」、「行政の関与のあり方」という視点で制度改革が進んでいることが指摘された。  制度改革における課題として、①会計監査人監査の費用対効果、②社会福祉充実残額の算定、③社会福祉充実事業、地域における公益的取組の責務と財源、④法人の経営管理機能(ガバナンス)強化と財源を採り上げて検討が行われた。特に、世論の内部留保批判に対応するためには、社会福祉法人の余裕財産の明確化が必要であり、そのために「社会福祉充実残額」という概念を用いて分析が行われた。 文責:尾上選哉(大原大学院大学) 関東部会報告 アンカー 1

  • 文献四季報2002 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    論文標題:法人税の基本問題雑考 著者名:武田昌輔:所属機関:成蹊大学 雑誌名:會計 第162巻第3号:発行所:森山書店 発表年月:2002年9月:ページ:111〜123 論文標題:商法における資本制度の揺らぎと「資本の部」の表示 著者名:安藤英義:所属機関:一橋大学 雑誌名:會計 第162巻第2号:発行所:森山書店 発表年月:2002年8月:ページ:1〜14 論文標題:税制改革の基本問題 著者名:武田昌輔:所属機関:成蹊大学 雑誌名:税経通信 VOL.57 NO.12:発行所:税務経理協会 発表年月:2002年8月:ページ:50〜56 論文標題:地方自治体会計の課題—その情報公開の実態からの問題提起— 著者名:斎藤真哉:所属機関:青山学院大学 雑誌名:月刊公益法人 8月号:発行所:全国公益法人協会 発表年月:2002年8月:ページ:6〜13 論文標題:企業組織再編成と「資本の部」 著者名:成道秀雄:所属機関:成蹊大学 雑誌名:企業会計 VOL.54 NO.7:発行所:中央経済社 発表年月:2002年6月:ページ:44〜53 論文標題:新会計基準と企業行動—変化と継続— 著者名:藤井秀樹:所属機関:京都大学 雑誌名:會計 第161巻第5号:発行所:森山書店 発表年月:2002年5月:ページ:1〜14 論文標題:公益法人会計基準の見直し問題 著者名:村山徳五郎:所属機関:東北公益文化大学 雑誌名:企業会計 VOL.54 NO.6:発行所:中央経済社 発表年月:2002年5月:ページ:97〜104 論文標題:会計の二つの機能をめぐる諸問題−利害調整と情報提供 著者名:安藤英義:所属機関:一橋大学 雑誌名:一橋論叢 第127巻第4号:発行所:一橋叢書編集所 発表年月:2002年4月:ページ:1〜16 論文標題:キャッシュフロー経営と会計の概念フレームワーク 著者名:佐藤倫正:所属機関:名古屋大学 雑誌名:税経通信 VOL.57 NO.7:発行所:税務経理協会 発表年月:2002年4月:ページ:1〜2(巻頭言) 論文標題:金融資産・金融負債の構成比率の分析 著者名:浦崎直浩:所属機関:近畿大学 雑誌名:税経通信 VOL.57 NO.7:発行所:税務経理協会 発表年月:2002年4月:ページ:50〜58 論文標題:ドイツにおける発生主義予算と公会計制度 著者名:亀井孝文:所属機関:南山大学 雑誌名:南山経営研究 第16巻第3号:発行所:南山大学経営学会 発表年月:2002年3月:ページ:167〜184 論文標題:公正価値会計の視座 著者名:浦崎直浩:所属機関:近畿大学 雑誌名:税経通信 VOL.57 NO.4:発行所:税務経理協会 発表年月:2002年2月:ページ:31〜37 論文標題:法人税法上の有価証券の範囲 著者名:武田昌輔:所属機関:成蹊大学 雑誌名:有価証券の譲渡・評価損益 (日税研論集VOL.48):発行所:日本税務研究センター 発表年月:2002年2月:ページ:3〜55 論文標題:有価証券の譲渡損益 著者名:成道秀雄:所属機関:成蹊大学 雑誌名:有価証券の譲渡・評価損益 (日税研論集VOL.48):発行所:日本税務研究センター 発表年月:2002年2月:ページ:87〜141 論文標題:有価証券の評価損益 著者名:守永誠治:所属機関:静岡産業大学 雑誌名:有価証券の譲渡・評価損益 (日税研論集VOL.48):発行所:日本税務研究センター 発表年月:2002年2月:ページ:143〜170 論文標題:外貨建有価証券等の評価 著者名:野田秀三:所属機関:桜美林大学 雑誌名:有価証券の譲渡・評価損益 (日税研論集VOL.48):発行所:日本税務研究センター 発表年月:2002年2月:ページ:171〜210 論文標題:予測要素の増大がもたらす会計測定・理論への影響 著者名:黒川行治:所属機関:慶應義塾大学 雑誌名:會計 第161巻第2号:発行所:森山書店 発表年月:2002年2月:ページ:27〜38 論文標題:会計基準設定の現代的特徴と会計研究の役割 著者名:藤井秀樹:所属機関:京都大学 雑誌名:會計 第161巻第2号:発行所:森山書店 発表年月:2002年2月:ページ:50〜61 論文標題:公益法人会計基準の見直しに関する論点の整理(中間報告) —その意義と評価について— 著者名:江田 寛:所属機関:公認会計士 雑誌名:月刊公益法人 2月号:発行所:全国公益法人協会 発表年月:2002年2月:ページ:38〜45 論文標題:非営利組織体における財務諸表の構成要素−FASB財務会計概念基準書第6号を中心に− 著者名:橋本俊也 他:所属機関:税理士 雑誌名:愛知学院大学論叢「経営研究」 第11巻第2号:発行所:愛知学院大学経営学会 発表年月:2002年1月:ページ:77〜87 論文標題:商法と会計基準 著者名:安藤英義:所属機関:一橋大学 雑誌名:企業会計 VOL.54 NO.1:発行所:中央経済社 発表年月:2002年1月:ページ:30〜36 論文標題:税法と会計基準 著者名:武田昌輔:所属機関:成蹊大学 雑誌名:企業会計VOL.54 NO.1:発行所:中央経済社 発表年月:2002年1月:ページ:37〜42 論文標題:公益性とその認定基準(下) 著者名:渋谷幸夫:所属機関:常成福祉会 雑誌名:月刊公益法人 1月号:発行所:全国公益法人協会 発表年月:2002年1月:ページ:34〜43 ◆図書の部 書 名:現代企業簿記会計 執筆者:横山和夫:所属機関:東京理科大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月:総ページ数:504頁 書 名:非営利組織体の会計 執筆者:杉山 学 他 編著:所属機関:青山学院大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月:総ページ数:330頁 文献四季報 2002  このページは本学会会員が、2002年1月〜12月中に学内誌、学会誌、商業誌等に発表した又は今後発表する論文及び単行本を収録するものです。会員の研究学績を広く社会に紹介するために設けました。 情報がありましたらメール等にてお寄せください。  著者名が複数の場合は連記しています。また、所属機関は発表当時のものです。  当学会の学会誌に掲載されたものに関しては、出版のご案内をご参照下さい。 ◆論文の部

  • 第7回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会賞・学術奨励賞の審査結果 第7回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成20 年9月4日 非営利法人研究学会 審査委員長:大矢知浩司  非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第7回学会賞(平成19年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)及び学術奨励賞(平成19年度全国大会の報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に審議した結果、学会賞に該当する論文又は著作物はなく、学術奨励賞に下記の著作を選定しましたので、ここにご報告いたします。 1. 学会賞 該当者なし 2. 学術奨励賞 池田享誉(青森公立大学)『非営利組織会計概念形成論』(A5判、185頁、森山書店、2007年7月) 【受賞作の特徴と受賞理由】  本書は、わが国会計学界に多大なインパクトを与えたアメリカの「FASB概念フレームワーク」(以下「SFAC」という。)のうち、特に非営利会計の概念フレームワークに焦点を当て、・「FASBの非営利会計概念フレームワークの成立過程を方法論かつ歴史的に吟味し、FASBの非営利会計諸概念の成立過程を検討すること」及び・営利会計と非営利会計の「統合的概念フレームワーク」の適否を評価し、検討することの2点にその目的があるとしている。この研究テーマを解明するに当たって、論者はSFACの方法論的基礎である「意思決定有用性アプローチ」と「資産・負債視角」を前提として、内在的批判を試みているのが特徴である。  第1のテーマでは、ASOBATをはじめ、AAA第一次フリーマン委員会報告書(第2章)、第二次・第三次フリーマン委員会報告書(第3章)及びアンソニー報告書(第4章)の内容を詳細に分析し、各報告書間における矛盾を摘出するとともに継承された部分を明確化し、非営利会計概念フレームワーク(第5章)を導き出している。  第2のテーマに関しては、SFAC第4号はアンソニー報告書の提起した「財務資源源泉アプローチ」を継承し、Bタイプ非営利組織のみをノンビジネス組織とし、営利企業と独立採算型組織(Aタイプ)とを共通の適用対象とした結果、「統合的概念フレームワーク」が生まれる一因となったと指摘している。しかし、これはSFAC第4号と第6号との間に矛盾が生ずる一因ともなっている。  SFAC第4号・第6号を内在的に批判し、分析検討した結果、論者は次のような問題点があると結論づけている。すなわち、 ・ 営利・非営利統合的概念フレームワークを採用した結果、非営利会計に固有の諸要素を主要情報として要求していないので、非営利会計の概念フレームワークとして不十分である。 ・ SFAC第6号は、㈰非営利組織に固有の財務諸表構成要素を1つも追加しなかったため、非営利組織の業績情報を提供するものとなっていない、㈪資産を将来のキャッシュ・フローと結びつく「将来の経済的便益」と定義しているが、非営利組織の資産は必ずしも将来のキャッシュ・フローをもたらすものではない、㈫収益を営利・非営利に共通の財務諸表構成要素としたが、非営利組織の収益はサービスの提供の成果ではなく、純資産の源泉情報を表すものである、㈬非営利会計に固有の部分として新たに追加されたのは拘束情報のみに過ぎない。 ・ SFAC第4号では、「効率性と有効性」に対する情報ニーズを認識しながら、「サービス提供成果」情報の提供は軽視されている。  わが国ではこれまでSFACに関する論文が多数見受けられたが、本書ほど精緻にかつ批判的に分析された論文は少ない。 以上から、分析視点、問題意識の明確性、内在的批判による矛盾点の摘出、論理展開の精緻化等を総合的に評価し、学術奨励賞にふさわしい論考として選定することに審査委員の一致した見解を得た。

  • 最終報告(公益・一般法人研究会) | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    非営利法人研究学会 公益・一般法人研究会  公益・一般法人制度の研究【2017年度最終報告】 -日・英・米の制度の比較研究-

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