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- 第17回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第17回大会記 2013.9.21-22 近畿 大学 統一論題 非営利法人における制度・会計・税制の改革を総括する 日本大学大学 古庄 修 非営利法人研究学会第17回大会は、本年9月21日(土)から9月22日(日)の日程で、大阪府東大阪市の近畿大学(大会実行委員長 吉田忠彦近畿大学教授)において開催された。 本大会の統一論題は、「非営利法人における制度・会計・税制の改革を総括する」であり、大会初日の理事会等に引き続き、2日間にわたり会員各位の多彩な研究成果が披瀝された。 以下、ここでは本学会プログラムのなかで統一論題報告、部会報告および特別公開セッションにおける報告と討論の概要をお伝えする。16篇に及ぶ個人または共同研究に基づく自由論題報告については、いずれも研究意欲旺盛かつ学会の発展に資する内容であったが、紙幅の都合上、割愛させて頂く。 なお、会員総会の開会に先立ち、本研究学会の常任理事として草創期の学会運営ならびに学会誌の編集に一方ならぬご尽力を賜った故川崎貴嗣氏のご冥福を祈り、氏に対する感謝とともに黙祷が捧げられたことを付記したい。 【統一論題報告】 大会2日目に、本大会を記念し、出口正之氏(国立民族学博物館教授)による基調講演「公益法人制度改革を総括する—移行期間終了を目前に控えて—」が行われた。出口氏は、内閣府公益認定等委員会の第1期(非常勤)および第2期(常勤)の6年間にわたり当該委員を務められた。氏の見識と深い洞察に基づく公益法人制度改革の経緯の詳細な説明と総括を受けて、広く非営利法人をめぐる税制、会計および制度の各観点から、上記統一論題報告が行われた。 登壇した3名の報告者とテーマは、①成道秀雄氏(成蹊大学教授)「非営利法人税制の今後の課題」、②古庄 修(日本大学教授)「非営利法人会計基準の統一問題—わが国における財務報告制度改革を指向して—」、③齋藤真哉氏(横浜国立大学教授)「非営利法人制度の現状と課題」であった。 成道氏は、平成20年度における非営利法人課税の大改正をふまえて、問題点の整理と今後の課税の在り方について議論を展開された。氏は、非営利型法人の要件充足を確認する制度を設けるべきこと、一般社団・財団法人法第131条に基づく基金の課税上の性格が検討されるべきことを提言するとともに、公益認定法人と非営利型法人に対するみなし寄附金の取扱い、法人形態の変更時における累積所得金額の課税制度、収益事業課税、金融収益課税および宗教法人・学校法人等に対する本来の事業に対する課税等、課税の在り方をめぐる論点を明示し、非営利法人が事業を安定的に継続していくために、非課税とすべき範囲の拡張に繋がる見直しを主張された。 古庄(筆者)は、英国における財務報告制度の再編成とそのなかに組み込まれた非営利法人(英国では公益目的事業体(PBE)と定義する)の会計基準をめぐる議論の経緯と到達点をふまえて、わが国における非営利法人会計(基準)の現在を相対化して捉えることにより、これまで主張されてきた非営利法人に横断的な会計基準の必要性と可能性を改めて検討した。企業会計と非営利法人会計の相克の歴史を乗り越えて、現在まで「セクター中立」に基づいて両者が接近し、共通化が進められてきたとしても、両者の間にある距離感を適切に保持する必要もある。かかる観点から、最近日本公認会計士協会から公表された研究報告書を素材として、横断的かつ首尾一貫した「会計枠組み構築」の必要性、統一的な非営利法人会計基準と法人別会計指針の相互の連係および会計基準設定主体の在り方に係る論点を考察するとともに、当該統一会計基準の設定をめぐる学会の役割と課題を示した。 齋藤氏は、非営利法人の本質を捉えて、非営利法人の存在意義とその変化の理由を市場の失敗と政府の失敗を論拠として説明されたうえで、新たな制度への移行が進められている一般社団・財団法人、公益社団・財団法人をはじめとする非営利法人制度全体を総括し、その現状をふまえた課題を検討された。氏は、準則主義(登記主義)と認可主義の理解をふまえて、許可主義を採用した旧公益法人制度の問題を指摘するとともに、準則主義における非営利法人の自立と自律の必要性を強調された。また、公益の意味を税制優遇との関係において再確認したうえで、公益性の認定における収支相償をめぐる課題、および特例民法法人から一般社団・財団法人への移行、合併等の組織変更に伴う課題として非営利法人のミッションの見直しが必要となる問題を具体的な事例を示して明快に説明された。 各報告直後に行われた討論においては、吉田忠彦氏を座長として、非営利法人制度の現状認識を共有し、当該制度改革の到達点と課題について活発な質疑が交わされた。 【部会報告】 大会3日目に開催された研究部会報告においては、東日本部会として岡村勝義氏(神奈川大学)を委員長とする「日本及び諸外国における非営利法人制度に関する研究—制度史・制度設計・報告制度・税制度等を中心として—」と、西日本部会として森 美智代氏(熊本県立大学)を委員長とする「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」の各報告が行われた。 東日本部会報告については、わが国において新たに施行された非営利法人制度を諸外国の非営利法人制度の歴史的経緯、制度設計の方法および制度自体の特徴を主としてガバナンスや財務報告制度と関連させて検討することにより、非営利法人制度の在り方に論究した最終報告書が示された。本報告書には、「公益法人の制度転換と会計枠組みの変化」、「NPO法人会計基準の検討」、「わが国学校法人会計基準のこれまでの展開と最近の動向」、「協同組合持分会計に関する研究」、「英国チャリティの会計—チャリティ会計とチャリティ委員会の役割—」、「英国の非営利組織—非営利法人制度と財務報告の制度的枠組み—」、「米国における非営利組織の類型と会計基準設定の現状」および「米国における寄付に係る会計基準—1992年改訂公開草案—」の各論考が、収録されている。当日は、尾上選哉氏(大原大学院大学准教授)が米国における寄付に関する会計基準について、特に収集品の会計処理の特徴と論点を検討された。 もう一つの西日本部会報告については、地域における行政をめぐる環境の変化と地域の連係とガバナンスの在り方、そして地域における医療と福祉の在り方に焦点をあて、熊本県等における具体的な事例研究に基づいて報告書が一貫した主題の下にまとめられた。本報告書には、地域における行政の現状を考察した「環境の変化と自治体職員像の変容」、「地域の公共を担う地縁組織—その重要性と活性化のあり方—」、「コミュニティと自治—中山間地域における地域ガバナンス—」が、また地域における医療と福祉問題に論究し、「大学のミッションと財務報告の役割」、「公立病院の医療改革の現状」、「地域包括ケアシステムの現状と課題—定期巡回・随時対応サービスを中心に—」の各論考が収録されている。 なお、本学会総会において地域部会が再編成され、今後、北海道、関東、中部、関西および九州に各部会が配置されることが決定した。研究者と実務家の双方向の議論の場として、学会の底上げに繋がる各部会のより一層の発展を祈念したい。 【特別公開セッション】 本年度の学会では、特別セッションとして、江田寛氏(公認会計士)を座長とするパネルディスカッション「善意は被災者に届いているか—東日本大震災の寄付の大半が行政的配分に委ねられた理由を探る—」が企画された。本セッションは、会員の研究成果を外部に公開し、議論の場を積極的に提供することにより社会に貢献することを目的としており、当日の登壇者は、岩永清滋氏(公認会計士)、大久保朝江氏(NPO法人杜の伝言板ゆるる代表理事)、藤井秀樹氏(京都大学教授)、牧口一二氏(NPO法人ゆめ風基金代表理事)の4名であった。 被災者に分配される義援金は公共的配分手続きに基づき、公平・平等を旨とするが、他方で、被災後4か月が経過した時点で義援金は3,000億円に達していたにもかかわらず、被災者に配分されたのはその25%である775億円にすぎなかった。また、被災者支援の資金となる支援金も一部に集中し、その他の団体が資金不足となる等、いびつな偏りが見られたという。本セッションにおいては、義援金と支援金の定義およびその相違点について理解を深めるところから始まり、寄附が義援金に集中した理由や、NPOの現場における支援金の調達方法等、明確な問題意識をもって「善意」の効率的な配分システムの在り方とその構築に向けた熱情に溢れた活発な議論が展開された。
- 発行物への投稿 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
学会誌への投稿 『非営利法人研究学会誌』は年に一度、8月上旬の発行となっております。投稿の締切は前年の12月中旬となっておりますので、投稿を希望される方はお早めにお申込み下さい。 学会賞及び学術奨励賞等に関する規程 投稿論文執筆に関する申合せ 原稿執筆要領 ワーキングペーパーへの投稿 本学会では、非営利分野の発展に寄与することを目的として『ワーキングペーパー』を発行しています。投稿は随時受付を行っています。 ワーキングペーパー投稿規程
- 第6回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
学会賞・学術奨励賞の審査結果 第6回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成19年9月8日 非営利法人研究学会 審査委員長:大矢知浩司 非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第6回学会賞(平成18年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)及び学術奨励賞(平成18年度全国大会の報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞 該当作なし 2. 学術奨励賞 該当作なし
- 入会のご案内 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
入会のご案内 ■会員区分と年会費 正会員(個人会員) 10,000 円 学生会員※1 5,000 円 賛助会員(個人・法人・団体) 30,000 円 名誉会員 8,000円 シニア会員※2 5,000円 ※令和元年9月15日の理事会で会費金額が変更となりました。詳しくは「会費等に関する規則」 をご覧ください。 ※1 学生会員は会費を納付する毎に在学証明書を提出いただきます。 ※2 正会員は、本学会に正会員として10 年以上在籍し、本人の年齢が70 歳に達した場合、事務局に届け出ることによりシニア会員になることができます。 ■会員特典 ・学会誌その他の資料送付 ・各研究会・全国大会への参加・発表 ・学会ML(メーリングリスト)への登録 ・学会誌への投稿(査読付) ・ワーキングペーパーへの投稿 ■お申込み方法 入会のお申込みはWEBフォーム(クリック) からご入力いただくか、申込書(Word文書・クリック) をダウンロードし、必要事項をご記入のうえ、弊会事務局までFAX(宛先:03-6631-4285)もしくはEメール(宛先:office@npobp.or.jp )にてご送付下さい。 入会申込みフォーム(クリック)
- 会長挨拶 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
ページ TOP ページ TOP 会長挨拶 2025年10月に開催された第29回全国大会における役員改選にあたり、当学会の規定に基づき、新会長に選出されました。1997年に公益法人とその諸活動を中心に据えた新たな研究の場として創設された本学会は、その後、民間非営利活動の広がりに伴う研究対象の多様化に対応して、2005年に現在の「非営利法人研究学会」に名称変更されました。2017年には公益認定を受けて、公益社団法人への移行を実現しました。志をひとつにして学会創設にご尽力いただいた先生方に思いを馳せ、また今日に至る着実な歩みを振り返り、学会の円滑な運営にあらためて重い責任を強く自覚するとともに、本学会のミッションの達成に向けて決意を新たにしております。 本学会の目的は、ますますその存在意義が高まっている非営利法人をめぐる諸問題を、さまざまな視点と方法に基づいて研究し、その学術的成果を広く社会に還元することにあります。 新しい資本主義の在り方が問われる中で、環境・社会・ガバナンス(ESG)要素を含む長期にわたるサステナビリティ課題は、いまや非営利法人の経営にとっても無視できなくなりました。加えて、性別、人種、国籍、年齢等、多様性のある個々人の幸福を含意するウェルビーイングへの関心の高まりは、「誰ひとり取り残さない」持続可能な開発目標(SDGs)を包含する未来の方向性を示しているとも言われています。心身ともに健康であり、加えて人と人とのつながりが社会全体に新たな価値を創造することが求められるとき、非営利法人の働きは社会課題を解決し、豊かさを実感しうる社会を志向するうえで不可欠です。ウェルビーイングな社会の実現に向けて、社会のあらゆる局面での非営利法人の力強い働きに対する期待は大きく、当該領域に係る研究もより一層厚みを増す必要があります。 前会長である齋藤真哉先生のリーダーシップの下で、全国大会におけるグループ研究が拡充される等、東日本、西日本の各部会とともに、大変有意義な研究報告と議論の場が備えられました。また、本学会の特徴でもある非営利法人制度に係る政策責任者や実務界との交流や対話もより一層充実して参りました。このような学会のプレゼンスを高める方向性を継承し、加えて査読制度に基づく学術的水準の高い学会誌の充実に努め、公益法人としての本学会の社会に対する情報発信に取り組んで参ります。 本学会の発展は、これまで会員各位の弛みない日々の研究努力に裏づけられており、同時に、学会の諸活動に対する会員各位のご理解とご支援により支えられてきました。今後も引き続き開かれた学会を目指す本学会のミッションに賛同される方々の入会をお待ちしております。 会長 古庄 修
- 第12回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
学会賞・学術奨励賞の審査結果 第12回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成25年9月21日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏 非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第12回学会賞(平成24年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成24年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成24年度全国大会における報告に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果、今次は学会賞、学術奨励賞特賞に該当する論文はなく、下記の論文を学術奨励賞に値するものと認め選定しましたので、ここに報告いたします。 1. 学会賞 該当作なし 2. 学術奨励賞 深山誠也「社会福祉法人の競争戦略と組織―高齢者介護組織を対象とする実証研究―」(平成24年度非営利法人研究学会全国大会自由論題報告、於:北星学園大学、『非営利法人研究学会誌』Vol.15所収) 【受賞理由】 【論文の概要及び授賞理由】 平成25年度「学術奨励賞」は、深山誠也氏の論文「社会福祉法人の競争戦略と組織―高齢者介護組織を対象とする実証研究―」が選考されました。なお、本論文は、本年8月に刊行されました『非営利法人研究学会誌』第15巻に収録されています。 本論文は、北海道において高齢者介護事業を展開している全部で394の社会福祉法人のうちの298法人から得られた質問票調査データにもとづいて、社会福祉法人の競争戦略と組織特性の相互関係を実証的に解明した研究です。 本論文の内容を簡単に紹介します。 Ⅰ 節において、本論文の目的が、社会福祉法人の環境-競争戦略-組織特性-組織成果間の相互関係の解明であることを述べています。具体的には、⑴社会福祉法人はいかなる競争戦略を採用しているのか、⑵競争戦略は固有の組織特性を備えているのか、⑶競争戦略と組織特性が適合的である場合、組織成果は高いのか、の3点を明らかにすることである。 Ⅱ節において、この分野の先行研究を検討し、それらの問題点を明らかにしています。 Ⅲ節において、競争戦略と組織特性の相互関係を実証的に解明するための準備として、まず検証されるべき3つの仮説を提示するとともに、これら3つの仮説間の関係を示す理論的枠組を明らかにしています。さらに、仮説を構成する概念の測定方法を定義しています。 Ⅳ節において、①調査対象と②調査方法が示されています。 Ⅴ節において、調査結果の詳細な定量的分析が試みられています。 最後のⅥ節において、本研究の意義と今後の課題が明らかにされています。 本研究の第1に評価すべき点は、従来、経営学ではほとんど注目されてこなかった社会福祉法人を分析対象として取りあげていることです。高齢者介護の進展や介護保険制度の導入等によって、高齢者介護事業を展開している社会福祉法人の効果的・効率的経営は、益々求められています。したがって、社会福祉法人の経営の実態の解明は、極めて重要な課題であるといえます。 第2に評価すべき点は、第1の点とも関連しますが、高齢者介護事業を展開している社会福祉法人の経営全体の包括的な分析を試みていることです。この分野の数少ない先行研究は、もっぱら介護老人福祉施設の運営を分析するものがほとんどであり、その分析項目は、施設長のリーダーシップ等に限定されていました。 第3に評価すべき点は、この社会福祉法人の経営全体の包括的な実証分析の結果、次の4点を明らかにしていることです。⑴社会福祉法人においては、有効な3つの競争戦略(コスト志向戦略、差別化志向戦略、差別化・コスト併用戦略)が存在する。⑵環境不確実性の認知が異なる場合、採用される競争戦略が異なる。⑶競争戦略が異なる場合、採用される組織特性は異なる。⑷競争戦略 が異なる場合、有効な組織特性の組み合わせは異なる。 しかし、本論文にも問題点がない訳ではありません。これら環境-競争戦略-組織特性-組織成果間の相互関係が、「なぜ」「どのよう」にして形成されたのか、すなわち、競争戦略と組織特性の形成プロセスについては、本論文では必ずしも解明されていません。この点で、本研究は静態的な分析に止まっています。研究が静態的分析に止まっている点に関しては、筆者も認識しており、今後の研究課題として、競争戦略と組織特性の動態的分析の必要性があげられています。 以上のように、本論文は、高齢者介護事業を展開している社会福祉法人の経営の実態を組織論の研究方法にもとづいて解明した非常に手堅い研究成果であるといえます。 したがって、審査委員会は、全員一致で、本論文が「学術奨励賞」を受賞するに値するものと決定いたしました。 3. 学術奨励賞特賞 該当作なし
- 九州部会報告 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
九州部会報告 ■第9回九州部会記 日時 :2016年7月9日(土) 場所 :久留米大学 第1報告「公園維持管理における組織と人の役割」 山内元六氏(山鹿市役所) 本報告では、公園施設の事例分析を通じ、「協働概念に基づくアソシエーション組織」の検討を行った。熊本県山鹿市の“湯の瀬川公園”では、国や市、地域住民や公園利用者といったメンバーから構成される“菊池川育てねっと”が公園の維持管理を行っている。この官民連携の組織は様々なステークホルダーから構成されており、R.M.マッキーバーが提唱した「社会集団類型のアソシエーション」であると考えられる。また、官民が協力して清掃等の維持管理活動に取り組んでいることから協働概念に基づく活動であるとも考えられる。この事例から、共通の目的が存在する際には、アソシエーションと協働概念が紐づけられることを明らかにした(文責:山内)。 第2報告「防災と地域ガバナンス ― 被災者支援のあり方を中心に ― 」 黒木誉之氏(長崎県立大学) 熊本地震の特徴は、車中泊避難等による指定避難所以外での避難者の多さである。この問題は熊本県だけの問題ではなく、熊本県以外の地域も今後対応を検討しておく必要がある。そこで今回の調査は、震源地となった熊本県益ましきまち城町を対象に、①指定避難所以外で被災者が避難された場所を確認(条件の抽出)し、②その場所に避難された被災者への救援活動の実態を調査し課題等を明らかにすることを目的として行った。 現段階の調査結果として、①について、公園やショッピングモール、コンビニエンスストア等の駐車場に加え、幹線道路の路肩等について報告を行った。②については、企業やNGO・NPOの活動のみならず、SNSの活用による個人の活動が行政や団体による活動の隙間を埋めているとの報告を行った。 今後は現地での継続調査に加え、東日本大震災の被災地である宮城県南三陸町での調査も実施予定である(文責:黒木)。 第3報告「非営利組織体会計における純資産分類の意義と財務評価」 日野修造氏(中村学園大学) 非営利組織体の財務評価と純資産の分類には密接な関係があると考え、純資産分類の意義と財務評価に焦点を当てて、報告を行った。また検討の基点は、アメリカの非営利組織体会計に関する文献である。 検討の手順はまず、純資産の各分類手法を確認した。次に非営利組織体の財務評価は財務的弾力性、ハードマネー創出能力及び純資産の維持により評価することを明らかにした上で、一時拘束純資産に着目した財務分析について私見を述べた。 結果として、非営利組織体の純資産は資源提供者の提供資源に対する拘束の影響を考慮することが極めて重要であるとした。そして、さらに一時拘束純資産の分類区分を設けることで、より充実した財務評価・分析が可能になることを明らかにした(文責:日野)。 ■第8回九州部会記 日時 :2015年12月19日(土) 場所 :熊本県立大学 1. 基調講演 「非営利組織会計基準の統一化に向けた 課題と展望 ― 日本公認会計協会『論点整理』に寄せて ―」 藤井秀樹氏(京都大学) 本年(2015年)5月に公表された日本公認会計士協会『非営利組織の財務報告の在り方に関する論点整理』に拠りながら、基準統一化に向けた課題を整理し、当該問題の今後の展開方向を展望した。海外(とりわけ英米)の先例との異動及び企業会計との関係に焦点を当てた検討を行った結果、⑴非営利組織の範囲や財務報告の目的については海外の先例と相違はないが、⑵企業会計の枠組みから独立した非営利組織会計の枠組みを構築しようとしている点、⑶基礎概念については個別文書を作らず、会計基準に組み込む形で示そうとしている点で、『論点整理』は独自のアプローチを採用していることが明らかとなった。企業会計基準委員会(ASBJ)との協力関係の形成が、今後の主要な課題のひとつとなろう(文責:藤井)。 2. 部会報告 第1報告「非営利・公益法人としての私立大学」 伊佐 淳氏(久留米大学) 日本の私立大学は、法制度上、非営利法人の一種である学校法人であり、広義の公益法人の範疇に位置付けられている。したがって、私立大学は、非営利の公益法人であるということができる。翻って、2014(平成26)年、学校教育法が改正されたが、そこに至る議論の過程では、大企業におけるガバナンスやマネジメントを、大学の運営者がお手本とするべきものとされた観がある。すなわち、素早い意思決定のためのガバナンスの構築や、学長の強力なリーダーシップによる教学部門の改革が強調されているのである。しかしながら、営利法人ではなく、非営利・公益法人としての私立大学においては、経営部門のトップに対するチェック・アンド・バランスを果たすためのガバナンスこそが重視されねばならないのではないか(文責:伊佐)。 第2報告「 農業における非営利法人の役割」 源田佳史(公認会計士) 以下の3つの点について報告した。まず、①「農協法改正に伴う農協の非営利規定の削除に対する対応」では、農協運営における経済性や効率性を重視していった結果、反作用としての公益的な業務(生活購買や厚生事業)は、非営利法人へ移管する傾向を解説した。次に、②「TPP対応としての輸出農産物の各農業団体の調整機能としての中立性公平性の確保」では、農協や農業団体、農業関連企業が利益調整を行いつつ、「オール九州」としての農産物輸出やインバウンド需要喚起のための調整機能があることを紹介した。最後に、③「農業地域の担い手の高齢化に伴う耕作放棄地の拡大や鳥獣害対策のための非営利法人の活用」では、耕作放棄対策として農事組合法人の設立や農地中間管理機構(非営利法人)の活動支援がなされていることや、鳥獣害対策のための非営利活動の必要性を指摘した(文責:源田)。 第3報告「公立病院の経営改革の現状 ― 新公立病院改革ガイドライン(2015年)を踏まえて ―」(熊本県を事例として) 森 美智代氏(熊本県立大学) 本報告では、2007年に公表された公立病院改革ガイドラインと2015年に公表された新公立病院改革ガイドラインの比較検討をした。 公立病院の運営は、自治体の管轄のもとで、公共サービスとして画一性が求められてきた。 また人事及び予算の権限は自治体にあり、予算至上主義によって医療機関の経営改善に遅れがあった。 しかし2000年代に入ると自治体には財政健全化計画の策定が義務付けられ(地方公共団体の財政の健全化に関する法律:2009年健全化法)、この法律とともに公立病院改革が進められてきた。 2007年ガイドラインでは①「経営効率化」②「再編・ネットワーク化」③「経営形態の見直し」が3つの柱となっている。これを継続して、2015年新ガイドラインでは、④「地域医療構想」を踏まえた役割が明確化された。 したがって公立病院の果たすべき役割の精査・病床の機能区分ごとの将来の病床数の必要量等が示され、地域医療構想が確認された。新しいガイドラインでは、特に経営の安定化のための目標指標が追加された。熊本の公立病院を事例として、経営改革の現状を紹介した(文責:森)。 九州部会
- 第14回学会賞・学術奨励賞 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
学会賞・学術奨励賞の審査結果 第14回学会賞・学術奨励賞の審査結果に関する報告 平成27年9月16日 非営利法人研究学会 審査委員長:堀田和宏 非営利法人研究学会学会賞・学術奨励賞審査委員会は、第14回学会賞(平成26年度全国大会の報告に基づく論文及び刊行著書)、学術奨励賞(平成26年度全国大会における報告に基づく大学院生並びに若手研究者等の論文及び刊行著書)及び学術奨励賞特賞(平成26年度全国大会における報告 に基づく実務者の論文及び刊行著書)の候補作を慎重に選考審議した結果についてここに報告いたします。 1. 学会賞 該当作なし 2. 学術奨励賞 該当作なし 3. 学術奨励賞特賞 該当作なし
- 文献四季報 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
書 名:非営利法人経営論 執筆者:岩﨑保道[編著] 所属機関:高知大学評価改革機構 発行所:大学教育出版 発行年月:2014年10月 総ページ数:190 書 名:非営利組織のソーシャル・アカウンティング― 社会価値会計・社会性評価のフレームワーク構築に向けて ― 執筆者:馬場英朗 所属機関:関西大学 発行所:日本評論社 発行年月:2013年10月 総ページ数:218 書 名:ボランティアの今を考える 執筆者:桜井政成[編著] 所属機関:立命館大学 発行所:ミネルヴァ書房 発行年月:2013年9月 総ページ数:222 書 名:戦略的協働の経営 執筆者:後藤祐一 所属機関:長崎大学 発行所:白桃書房 発行年月:2013年4月 総ページ数:140 書 名:非営利組織の理論と今日的課題 執筆者:堀田和宏 所属機関:近畿大学 発行所:公益情報サービス 発行年月:2012年3月 総ページ数:917 書 名:非営利組織の理論と今日的課題 執筆者:堀田和宏 所属機関:近畿大学 発行所:公益情報サービス 発行年月:2012年3月 総ページ数:917 書 名:市民社会政策論―3・11後の政府・NPO・ボランティアを考えるために― 執筆者:田中弥生 所属機関:(独法)大学評価・学位授与機構 発行所:明石書店 発行年月:2011年8月 総ページ数:384 書 名:現代企業簿記会計 執筆者:横山和夫 所属機関:東京理科大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月 総ページ数:504 書 名:非営利組織体の会計 執筆者:杉山 学 他 編著 所属機関:青山学院大学 発行所:中央経済社 発行年月:2002年9月 総ページ数:330 文献四季報 このページは本学会会員が発表した図書・学術論文を収録するものです。会員の研究学績を広く社会に紹介するために設けました。情報がありましたらメール等にてお寄せください。 なお、執筆者の所属機関は発表当時のものです。 ■図書の部
- 第22回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第22回大会記 2018.9.8-9 武蔵野大学 統一論題 NPO法施行20年~その回顧と展望~ 平成30年9 月7 日(金)より9 日(日)の日程で、非営利法人研究学会第22回全国大会が行われた。会場は、2020年東京オリンピックのメイン会場として様々な工事が急ピッチで進められる江東区有明に所在する武蔵野大学有明キャンパスにおいて、武蔵野大学に所属する5 名の準備委員のもと、本大会は盛大に開催された。本稿は、今大会の概要を報告するものである。 今回の大会の統一論題テーマは、「NPO法施行20年~その回顧と展望~」であり、1998年のNPO法施行より、20年間経過した現時点で回顧を試み、これからの20年間を展望することを目的として設定された。 まず、基調講演として、1998年当時、NPO法の制度設計に経済企画庁国民生活局長という立場で携わった井出亜夫氏(元経済企画庁国民生活局長、元慶應義塾大学教授)による「NPO法制定当時を回顧する」というテーマで行われた。その後、統一論題報告者として、濱口博史氏(弁護士)および江田寛氏(公認会計士)による報告が行われた。井出氏は制度設計から、濱口氏は法律専門家から、江田氏は会計専門家からこの20年間のNPOの諸制度を牽引してきた立役者であり、含蓄のある報告が行われた。以後、報告要旨を掲載する。 また、自由論題報告は、各地方部会での予備報告を経た10の報告が行われ、各会場ともに闊達な議論が展開された。なお、本稿に掲載の要旨は、各報告の司会者に依頼したため、原文に忠実に掲載するため、文字数等の体裁に少々の不統一さがあるが、ご了解いただきたい。 基調講演 「NPO法制定当時を回顧する」(井出亜夫・元経済企画庁国民生活局長、元慶應義塾大学教授) 井出報告の要旨は以下の通りである。まず、市場経済のグローバル化に伴いNPO活動が活発に展開されるようになってきた。しかし、日本においては、1995年の阪神・淡路大震災がその契機となったが、わが国民法は、その具体的受け皿を欠き、戦後の民法改正においても公益は国家(行 政)が司るという公益国家(行政)管理主義が貫かれていた。NPO法の制定は、この明治憲法思想を延長する考えを是正する一歩を切り開いたが、長年にわたる公益国家管理主義思想は一朝にして変わるものではない。冷戦の終結に伴い、市場経済システムは格差の拡大等の問題も発生させ、企業の社会的責任を求める声も大きくなっている。より高度な市民社会の形成に当ってNPOの役割は大きい、とする。 統一論題報告 第1 報告 「法律専門家から見たNPO法20年」(濱口博史・弁護士) 濱田報告の要旨は以下の通りである。NPO法の制定時においてはNPO法人と旧民法法人とのすみわけが論ぜられたが、民法改正と一般法人法及び公益認定法の制定によって状況が変わった。そこでは、所轄庁による認証に基づく設立の意味が問われている。また、準則主義をとり、税法上ではあるが非営利型の類型をもつ一般法人法との関係が問題となるに至った。そして、これらを踏まえたとき、NPO法の今後の方向性が問われる。 本報告では、認証にかかわる部分について、一般法人法との関係について、の二点に場合分けして、今後のあるべき姿について濱田氏の私見が述べられた。 第2 報告 「NPO法人会計基準の考え方と2017年12月改正の方向性」(江田寛・公認会計士) 江田報告の要旨は以下の通りである。まず、報告の前半は、NPO法人会計基準制定以前の状況について言及し、NPO法人会計基準の策定がいかに必要性であったかを強調される。引き続き本報告では、同基準が提示した重要なテーマについて言及した後、策定以後の状況について課題を含 めて検討している。 そして最後に江田氏のメッセージとして、以下の2 点が強調された。まず、市民とNPO法人を繋ぐ架け橋としてのNPO法人会計基準が「市民の手」でよりブラッシュアップされ、NPO法人の社会的評価の確立に貢献してほしいと思っていること。加えて、本非営利法人研究学会所属の研究 者及び実務家諸氏のサポートを強く期待すること。 自由論題報告 自由論題報告第一会場 第1 報告 「非営利組織とはどのような組織か」(松原由美・早稲田大学) 松原報告は、非営利組織の定義の再考を検討したものである。まず、定義を「ある概念 L. M.サラモン(1982)」による非営利組織の定義、公益法人制度改革(『有識者会議報告書』2004年)や経済産業研究所の『新しい非営利法人制度研究会報告書』における非営利組織(法人)の定義を検討し、問題点を指摘している。そして松原報告は、⑴まず、営利を定義(営利とは、利益を上げること)し、⑵営利の否定語として非営利の定義(非営利とは、利益を上げないこと)をし、⑶非営利組織を「利益を上げない組織」と定義する。さらに、この定義における「利益」とは「将来のコスト」であると主張された。 第2 報告 「東大阪市版地域分権制度確立にむけての軌跡と課題」(中塚華奈・大阪商業大学) 中塚報告は、2012年度から始まった東大阪市の地域分権制度の確立に向けての取り組みの経緯と軌跡を概観し、東大阪市の「協働のまちづくり部」と共同で著者が実施した関係諸団体へのアンケート調査や聞き取り調査をもとにして、制度確立を阻む要因の抽出と課題を明らかにしたものである。中塚報告では、結論として次の4 つの課題をあげている。⑴既存活動の後押しもできる制度への拡充の検討。⑵様々な立場の市民が存在することから、情報公開・伝達方法の検討および拡充。⑶条例策定のような原理原則、価値観、方針の決定にはトップダウン的アプローチ、具体的な行動や判断についてはボトムアップ的アプローチという、両者の特性を活かしたアプローチの検討。⑷地域分権には「地域=地域」、「地域=役所」、「役所=役所」の協働が必須であるが、今回は「役所=役所」の協働が機能せず、縦割り行政の弊害であると考えられるので、部局横断的に進める権限を有する部署の必要性。 第3 報告 「社会的投資によるコミュニティ再生―英国のコミュニティ・シェアーズを事例に―」(今井良広・兵庫県地域創生局長) 今井報告は、近年財政制約が深刻化する中で多様化・複雑化する社会課題の解決方策としての役割が拡大しつつある社会的投資について、その概念、理論的背景を探り、英国の事例を用いて社会的投資をめぐる政策形成・展開過程を考察した。特にコミュニティへの参加型投資スキームであるコミュニティ・シェアーズ(community shares)に焦点をあて、その普及・拡大状況を明らかにした。わが国でも社会的投資の拡大に向けた検討が進められており、休眠口座の活用、法人制度の創設などとともに、個人投資家層の充実について提言がなされている。そのなかでコミュニティ・シェアーズの市民参加型の取り組みを参考にすべきことも多いとの報告がされた。今後、コミュニティへの資金供給の流れを拡大し、持続的なものにしていくには、コミュニティ・シェアーズに適用される投資減税制度や自主的認証制度、情報開示方法なども参照していくべきとの提言がなされた。 第4 報告 「職業能力開発と非営利法人:技能継承の担い手として」(初谷勇・大阪商業大学) 初谷報告は、NPO政策の規範的検討として、NPOの存立や発展を支援する「基底的NPO政策」とNPOとの政策遂行主体との間での協業関係におけるNPOの位置を検討する「派生的NPO政策」とを峻別し、さらにこのフレームワークをNPO法人だけでなく、広く公益法人や特別法に基づく 法人にも広げて検討を試みる。本報告はそうした流れにおいて特別法に基づく法人として職業訓練法(職業能力開発促進法)に基づく職業訓練法人に焦点を当てた。同法人制度の立法経過、改正経緯、役割期待や活用の実態を考察し、存在意義、法人の現況とその問題の摘出、解決の道筋を検討する。また、働き方改革などの雇用・労働政策の改正が進められるなか、政策体系の一翼を担う職業訓練(職業能力開発)政策について『「鼎立するNPO政策」の構図と枠組み』を適用することにより見出された課題についても検討した。 第5 報告 「日本のNPO支援組織の展開」(吉田忠彦・近畿大学) 日本のNPO支援組織は、NPOの普及にしたがって事業内容や方向性を変化させてきた。「NPOサポートセンター」と呼ばれたりする時期もあったが、近年では「中間支援組織」という呼び方が定着してきた。報告では支援組織の類型が報告され、最近の動向を写真と共に紹介された。日本における「中間支援組織」は、その名称のルーツと思われる「intermediary (organization)」とは若干のズレがあることが報告された。特に多くのNPOが必要とする財源確保への支援が手薄であったが、最近になってそのズレを埋めるような動向として「市民ファンド」や「日本ファンドレイジング協会」に代表されるような動きが報告された。一方では行政による市民活動支援施設の設置はさらに普及している。この報告では、それらの日本のNPO支援組織の動向を紹介し、今後の展開の可能性が示された。 自由論題報告第二会場 第1 報告 「NPO経営者におけるアカウンタビリティの質的データ分析」(中嶋貴子・大阪商業大学) 本発表は、岡田彩氏(金沢県立大学)との共同研究であるが、今回は中嶋氏のみの発表となる。発表の要旨は次のとおりである。 日本の非営利セクターはNPO法施行20年を迎えたものの、特にNPO経営者が考えているアカウンタビリティ概念については十分に論じられていない。そこで、NPOの代表理事などの経営に携わる人を対象にインタビュー調査を実施し、質的データ分析法に従ってコンテンツ分析を行い、彼 らが有するアカウンタビリティ概念の共通性を明らかにすることが本発表の目的である。 インタビューは8 団体9 名を対象に実施された。コンテンツ分析で対象とした13項目の利害関係者に関する項目のうち、重視する利害関係者として、「一般市民・地域住民」「政府機関」「日本国 内の他のNPO」の3 つが共通概念として浮かび上がった。次に、説明責任の果たし方に関する対応方法に関する20項目のうち「活動の成果を高める」「協同的なパートナーシップ構築・維持する」「正確な情報を提供する(財務に関する情報以外)」「様々な意見に対応し、運営にフィードバックする」の4 つが共通概念として浮かび上がった。最後に、利害関係者と対応方法のコンテンツ分析の結果をクロス集計し、それぞれの共通概念の関係性を示す概念マトリックスを作成した。その結果、「成果向上に対する交渉的アカウンタビリティ」「ミッションに基づく先見的アカウンタビリティ」「参加促進に対する創造的アカウンタビリティ」の3 つが示された。 以上の発表に対して、フロアーからは対象となるNPO経営に携わる人の範囲がもっと広いのではないかという質問が寄せられた。 第2 報告 「『創業者統治』の機能からみるガバナンス―ミッションとアカウンタビリティの相克―」(川野祐二・下関市立大学) 発表の要旨は次のとおりである。非営利法人の創業者・設置者によるガバナンス(創業者統治)体制は、非営利法人経営者の暴走を防ぎ、ミッションを確実に履行するための統治手段の一つとなる。しかし、創業者統治が強力に行われると、経営者が創業者へのアカウンタビリティを重視するあまり、かえってミッションを軽視する可能性を秘めている。このアカウンタビリティとミッションの関係性の矛盾と克服を考察する必要があるが、その先には実は天下り問題があり、個々の非営利法人のガバナンスの在り方を考えるうえで、創業者と経営者の関係性の構築は主柱の一つとなる。 非営利法人のガバナンスを考えるうえで起点に据えるべきはミッションであり、誰のものでもない非営利法人は「誰のため、何のため」という視点からガバナンスを構築すべきである。しかし、それでもいくつかの問題を抱えることになる。例えば、経営者が暴走した場合、営利企業の株主総会では、所有者たる株主が「もの言う株主」となってそれを是正する機能を有している。しかし非営利法人の場合は、最高意思決定機関である社員総会や評議委員会を構成するメンバーは法人所有者ではない。したがって、所有意識のない構成メンバーがミッションの維持や経営の健全性に無関心になる傾向があることを心得る必要がある。むしろ非営利法人の方が、経営者の暴走を見過ごす傾向があるといっても過言ではない。こうした状況で非営利法人は、「ミッションを健全に目指す経営をいかにして確保すればよいのか」が問題となる。 発表そのものは15分ほどで終わり、そのあと質問となったが、フロアーから質問が出なかったので、司会者が最近のスポーツ系非営利法人のガバナンス問題を例に質問をし、多少の議論を行った。そのあと、岡本仁宏氏(関西学院大学)より、高所大所からアドバイスがあった。 第3 報告 「公益法人税制改革における政府税制調査会の役割」(出口正之・国立民族学博物館) 公益法人税制改革において、政府税制調査会の果たした役割は大きなものがあった。 政府税調は、公益法人に対しては、不公平税制の是正という観点から、一般法人の事業との競合性がある場合、収益事業課税の原則に則ることが適当であるとしてきた。しかしながら、平成17年の答申では、公益法人制度改革に合わせて、「理念としての税制」を検討している。すなわち、「わが国においては、寄附文化はこれまで比較的希薄と言われており、寄附文化を発展させるためには、寄附金税制の抜本的な改革のみならず、公益的な非営利法人において適正な事業活動や情報公開により寄附者の理解を得るための一層の努力が求められる」としている。このような経緯を経て、わが国における公益法人税制改革において、新たな寄附金制度が導入された。 公益法人に関する税制改革は、公益法人制度改革に合わせて、政府税制調査会におけるこのような議論を踏まえて、理念の税制として捉えなおした結果であるといえる。 第4 報告 「一般法人の非営利性についての再検討―非分配制約の意義を中心に―」(古市雄一朗・大原大学院大学) 営利法人と非営利法人を分類する基準として、組織の活動期間中に剰余金の分配を行わない事および残余財産を特定の者に分配しないという非分配制約は、制度においても重要な役割を果たしている。非営利組織は、非分配制約を課されることで、社会からの信頼を得て活動を推進することができ、例えば、寄付や補助金という資源の提供を受け入れやすいことがある。 一般法人の場合、剰余金及び残余財産の分配が行われないことが制度上求められていると理解されている。しかしながら、一般法人法第239条第2 項は、定款の規定により残余財産の帰属が定まらないときには、「その帰属は、清算法人の社員総会又は評議員会の決議によって定める」と規定している。このため、特定の社員や設立者、その他利害関係者に残余財産を分配することが可能となっている。残余財産が実質的に分配可能な一般法人は、非営利組織として分類されることに検討の余地があるといえる。 第5 報告 「非営利法人における実質的配分可能性」(齋藤真哉・横浜国立大学) 非営利法人の特性として、剰余または残余財産についての非分配性を挙げることができるが、現実には実質的に非分配性を否定する状況が見受けられるとの問題意識にもとづき、⑴剰余等が実質的に分配されている可能性はどのような状況で生じうるのか、⑵公益性のある事業の拡大・充実を図ろうとする場合に、剰余等の実質的分配可能性にどのように対応する必要があるか、について検討がなされた。 まず、実質的分配可能性の状況として、齋藤氏は、①残余財産の帰属(例えば、出捐者(設立者)に対する残余財産の寄附や、当該法人の管理者が統制している他の非営利法人への非合理的な財産移転の場合)、②役員報酬等(例えば、当該法人の役員に就任している出捐者や社員、その家族等に対して、社会通念上妥当と考えられる金額を超えた額が報酬等として支払われる場合)、③利益相反取引(例えば、出捐者や社員が役員を務める株式会社(営利法人)との間で、当該株式会社に超過収益を与えるような価格で取引がなされる場合)の3 つを提示された。 そのうえで、公益性のある活動の「真の発展」に向けて、行政の外郭団体を民間非営利法人としての位置づけから除外すること、税制上の非営利型の再検討、公益性の判断を実質的に行うこと、情報公開の充実とアクセスの容易化、これが求められるとの提言がなされた。 介護・福祉系法人研究部会セッション 今回の全国大会では、新しい試みとして研究部会の研究成果を中心とした小規模なセッションを企画した。その目的は、地域包括ケアシステムの運用が始まり、また新しい非営利の法人格として、地域連携推進法人の設立が可能となったからである。制度改革の渦中にある医療・福祉系の非営利法人に関する情報を共有し、学会の有識のメンバーからの意見等をくみ上げ、今後の展開にむけて有意義な議論を喚起することが本セッションの役割である。 本セッションは、千葉正展氏(独立行政法人福祉医療機構)の司会により、「包括化」をキーワードに、吉田初恵氏(関西福祉科学大学)による「介護の包括化」、玉置隼人氏(厚生労働省地域福祉課)による「福祉の包括化」、上村知宏氏(独立行政法人福祉医療機構)による「医療の包括化」という論点で報告が行われ、その後、パネルディスカッションが行われた。当代、制度設計の最先端をひた走る気鋭の面々による最先端の議論は、極めて有益な内容となった。 本セッションの報告要旨は、千葉氏による別稿により、改めて開示する予定であり、本稿では割愛させていただいた。
- 第10回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
第10回大会記 2006.9.1-2 北海道大学 統一論題 非営利法人制度改革の動向と問題点─現実と理念の架橋を求めて─ 関東学院大学 古庄 修 2006年9月1日と2日の両日、非営利法人研究学会第10回全国大会が、北海道大学(準備委員長:小島廣光氏)において開催された。1日目は、会員総会に引き続き、大矢知浩司氏(九州産業大学)の司会により、本大会の統一論題「非営利法人制度改革の動向と問題点—現実と理念の架橋を求めて—」の報告と討論が行われた。 統一論題の報告者ならびに報告テーマは、⑴中藤 泉氏(内閣審議官 行政改革推進本部事務局次長)「公益法人制度の抜本改革について」、⑵出口正之氏(国立民俗学博物館、国際NPO・NGO学会会長、政府税制調査会特別委員)「租税法定主義とネット・サイズ理論—非営利法人制度改革における現実と理念の架橋の重要性—」、⑶道明義弘氏(奈良大学)・伊藤研一氏(摂南大学)「組織論はF.D.ローズベルトを助けたか?」、⑷東海林邦彦氏(日本大学)「民事法的視点から見た(2006年)非営利法人法制改革」であった。 本大会における報告の概要 各氏の統一論題の報告要旨および質疑の内容は以下のとおりである。 ⑴ 中藤 泉氏の報告要旨 公益法人制度改革に直接携われた中藤氏は、今般の制度改革が「官が決める公益活動」から「民が決める公益活動」への転換を図るものであり、法人設立等に係る従前の主務官庁制・許可主義を廃止した新制度の特徴および新制度への移行措置等について分かりやすく説明された。氏は、新制度の周知徹底、政省令や内閣府令の制定、公益性の認定に係る第三者機関の設置、税制上の措置等を今後の制度上の課題として示された。また、法人自治の確立、寄附文化を醸成する説明責任の履行と積極的な情報公開等が各法人に求められることを強調された。 ⑵ 出口正之氏の報告要旨 出口氏は、公益法人改革関連3法において積極的位置づけが謳われている「民間が担う公共(公益)」の本質を㈰非営利性の議論、㈪民間性の議論および㈫公益性の議論に求めて詳述し、主として税制上の問題を検討された。氏は、「新しい公共」の担い手として非営利・非政府セクターの重要性を強調するとともに、公共財の供給に係る「租税歳入論」と「寄附による投票」および租税回避をめぐる「メッシュ・サイズ理論(ネット・サイズ理論)」等について独自の議論を展開して、非営利セクターの常識にあった制度設計の必要を主張された。 ⑶ 道明義弘氏・伊藤研一氏の報告要旨 道明氏ならびに伊藤氏は、米国のニューディール政策が実行される中で、行政機能が拡大した結果、行政コストが増加しコントロール問題が生じてきたことを契機として、節約と効率が大きな課題となったことを膨大かつ詳細な資料によって実証された。両氏は、1930年代当時の米国が抱えた問題は、今日のわが国の非営利組織が直面している問題と軌を一にするとの認識を共有するものであり、本報告では、特にブラウンロー委員会の構成と提言について論及し、行政組織改革に伝統的な管理原則論が理論的支柱として援用されたこと、また予算機能と効率の関係等について研究の方向を示唆された。 (4) 東海林邦彦氏の報告要旨 東海林氏は、今般の非営利法人法制改革は、民間非営利組織に対する行政的規制・官益的乱用等の旧来の悪弊の是正および民間非営利組織の内部的ないし外部的ガバナンス体制の整備の点で評価されるとする一方で、幾つかの問題点ないし課題が残されているとして、特に民事法的視点から9つの論点を示された。氏は、いわゆる「一階部分」と「二階部分」からなる新法の基本構造、「一階部分」が公益的団体と共益的団体とを区別しないこと、「一階部分」における一般社団法人と一般財団法人の二元的類型等について、批判的な議論を展開された。 報告後の討論では、公益法人制度改革後、特例民法法人となる現行公益法人の公益社団・財団法人または一般社団・財団法人の移行あるいは解散・営利転換等の予想される動向について、公益性の認定に係る問題について、公益法人をめぐるガバナンス問題について、公益法人制度と税制をめぐる問題について、わが国が直面している問題に対する米国の政府組織改革のインプリケーションについて、効率性と有効性の概念規定および当該概念の非営利組織に対する適用をめぐる問題等々について、活発な質疑が行われた。 大会2日目には、午前中に9名の会員による自由論題報告が3会場に分かれて行われほか、午後にはYOSAKOIソーラン祭り組織委員会専務理事の長谷川 岳氏による特別講演「YOSAKOIソーラン祭り—街づくりNPOの経営学—」が行われた。また、これに続いて、原田満範氏(松山大学)の司会により、東日本研究部会(主査:小島廣光氏)「NPO、政府、企業間の戦略的協働」および特別研究部会(主査:石崎忠司氏(中央大学))「公益法人の財源(贈与・遺贈等)に関する多角的検討」の各報告と討議が行われた。 新制度の施行に向けた節目の年に2日間にわたり、緑多き広大なキャンパスの中で晴れやかな初秋の風を感じながら、本大会は多数の参加者(106名)を得て盛会のうちに幕を閉じた。 新制度の施行に向けた節目の年に 翻って、本大会は学会創立から10回目を数え、しかも新しい公益法人制度が成立した大きな節目の年に開催された大会でもあった。まさに時宜を得た統一論題報告をはじめ、充実した大会プログラムをご準備頂いた小島大会準備委員長ほか大会関係者の方々に心から御礼を申し上げたい。 なお、大会初日の会員総会において、創立以来今日までの学会の運営に係る功労を称えて、(株)全国非営利法人協会(理事長 深町辰次郎氏)に対して、学会から感謝状と記念品の贈呈が行われた。また、現会長の松葉邦敏氏(成蹊大学名誉教授)が本大会をもって辞意を表明されたことを受けて、理事会の議を経て、大矢知浩司氏が次期会長に選出された。 付記:本大会会員総会において、藤井秀樹氏(京都大学)が学会賞を受賞された。受賞論文は「非営利組織の制度進化と新しい役割」(『非営利法人研究学会誌』第8号、2006年)である。
- 法人概要 | 公益社団法人 非営利法人研究学会
公益社団法人 非営利法人研究学会について 非営利法人研究学会は、公益法人研究学会として平成9年6月に設立。その後、民間非営利活動の拡大に合わせ、対象範囲を拡げて、平成17年9月に非営利法人研究学会と改称し、平成28年1月に一般社団法人となりました。その後、平成29年11月には内閣総理大臣より公益認定を受け、公益社団法人として活動を続けています。 現在は、会長・齋藤真哉(横浜国立大学)を筆頭に顧問3名、副会長2名、常任理事10名、理事15名、監事2名で構成。今後、さらなる活動の充実を図っていくべく、志を共有する方の参加を広く求めています。 沿 革 平成 9年 6月26日 公益法人研究学会(任意団体)として設立 平成14年 9月13日 学術研究団体(経営学部門)に登録 平成17年 9月10日 非営利法人研究学会と改称 平成28年 1月 7日 一般社団法人に移行 平成29年11月 1日 内閣総理大臣より公益認定を受けて、公益社団法人に移行 回顧筆録 特別座談会◆創立10周年を迎えての「温故知新」 (全国公益法人協会[2007]『月刊公益法人』Vol.38) 回顧筆録:学会の10年を振り返って (非営利法人研究学会誌10号:2008年) 回顧筆録:学会の20年を振り返って (非営利法人研究学会誌19号:2017年) 会 長 古庄 修(青山学院大学大学院教授) 事 業 一 研究発表会、学術講演会、報告会等の開催 二 学会誌その他の資料の刊行 三 研究の奨励及び研究業績の表彰 四 調査、研究、見学及び視察実施 五 研究成果及び研究に基づく意見の公表 六 内外の関連学会等との連携及び交流 七 非営利法人に関する啓発及び広報活動 八 その他前条の目的を達成するために必要な事業 事 務 局 〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-6-1 栄信ビル9階 TEL:03-6273-7783 FAX:03-6631-4285 名誉会長 堀田和宏 近畿大学 顧 問 齋藤真哉 横浜国立大学 吉田忠彦 近畿大学 会 長 古庄 修 青山学院大学 副 会 長 大原昌明 北星学園大学 尾上選哉 日本大学 伊佐 淳 久留米大学 常任理事 上松公雄 大原大学院大学 金子良太 早稲田大学 亀岡保夫 公認会計士 川島和浩 東北工業大学 桑波田直人 全国公益法人協会 鷹野宏行 武蔵野大学 高山昌茂 公認会計士 藤井 誠 法政大学 吉田初恵 天理大学 理 事 石田晴美 文教大学 國見真理子 田園調布学園大学 久保秀雄 京都産業大学 東郷 寛 近畿大学 永島公孝 税理士 橋本俊也 税理士 馬場英朗 関西大学 日野修造 熊本学園大学 兵頭和花子 大阪経済大学 松前江里子 公認会計士 宮内 章 全国公益法人協会 宮本幸平 神戸学院大学 監 事 苅米 裕 税理士 濱本 明 日本大学 <委員会> 学会賞審査委員長 齋藤真哉 学会誌編集委員長 尾上選哉 審査・編集委員 伊佐 淳 上松公雄 大原昌明 金子良太 國見真理子 久保秀雄 古庄 修 組織委員長 大原昌明 同 委 員 亀岡保夫 川島和浩 石田晴美 <地域部会> 東日本部会長 鷹野宏行 同運営委員 川島和浩 藤井 誠 西日本部会長 日野修造 同運営委員 宮本幸平 橋本俊也 東郷 寛 役員名簿 定款 国と特に密接な関係性がある公益法人への該当性
