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  • 第18回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第18回大会記 2014.9.10-11 横浜国立大学 統一論題 公益性の判断基準 税理士  上松公雄  非営利法人研究学会第18回大会が、横浜国立大学(大会準備委員長:齋藤真哉〔横浜国立大学〕)において、平成26年9月10日から11日までの2日間に渡って開催された。  前日の常任理事会及び理事会、1日目の総会の開催に引き続いて、統一論題「非営利法人に係る公益性の判断基準」(司会:佐藤倫正氏〔愛知学院大学〕)の報告が行われた。 【統一論題報告】  第1報告の岡村勝義氏(神奈川大学)「一般社団・財団法人の公益性判断基準」においては、公益性判断基準について、公益認定基準のうち、1号基準(事業目的)、6号基準(収支相償)、8号基準(公益目的事業比率)、9号基準(遊休財産保有制限)と旧制度の「指導監督基準」との比較が行われ、「指導監督基準」を承継しつつ、独自なものとして、公益目的事業について不特定多数条項(不特定多数の者の利益の増進に寄与するもの)による質的規制(1号基準)と財務三基準(6・8・9号基準)による財務的側面からの量的規制の強化が付加されていることが明らかにされた。また、それぞれの問題点として、質的規制については、不特定多数条項の判断において裁量の余地があり判断にズレが生ずる恐れがあること、財務三基準については、税制上の優遇措置との連動性までも強化されたため、財務三基準=税制優遇措置の適用基準となっていることの指摘がなされた。  第2報告の初谷勇氏(大阪商業大学)「特定非営利活動法人の公益性判断基準」においては、法人制度の沿革について行政システムの集権・分権等との観点と関連せしめて整理された上で、公益法人(公益社団・財団法人)とNPO法人における公益性判断主体及び公益性判断基準、そして、公益増進性判断主体及び公益増進性判断基準の転換状況と相違点について報告された。すなわち、公益性判断基準については、公益法人制度は、公益性判断基準の「統一化への伏流」から基準の「消失」であり、NPO法人制度は「法定」からその「拡充」とされた。また、公益増進性判断基準については、公益法人制度では、「自由裁量」から「法定・統一化」であるのに対し、NPO法人制度では、「根拠法の転換と基準緩和の昂進」であるとされた。  NPO法人の場合のこれらの相違は、認証主義、あるいは、行政主導の下での地方分権・分散化と対象の拡充に向けた対応の深まりという「程度」の問題と捉えることができるものとされた。   第3及び第4報告は、諸外国における公益性判断基準に対する研究であり、第3報告の金子良太氏(國學院大學)「アメリカの非営利法人の公益性判断基準」においては、内国歳入法501(C)⑶団体を対象に、その特徴及び連邦税の非課税団体の認定の仕組みについて解説された。501(C)⑶団体については、パブリック・チャリティ(PC)とプライベート・ファウンデーション(PF)の区分があり、さらに、PCには、①宗教・学校医療・公立大学後援団体等の連邦・州で認可を得た法人、②PST等の審査に合格した団体、③事業型PSTに合致した団体、④パブリック・チャリティ支援型組織の4類型が存し、それぞれについて、公益性の認定基準が異なり、かつまた、租税の特典の内容も異なることが明らかにされた。日本と比較した特徴として、広く一般から寄附を集める団体の優遇は大きいものの、特定者からの寄附で成立するPFには租税回避を防止するための規制等が存することが紹介された。 第4報告の尾上選哉氏(大原大学院大学)「英国チャリティの公益性判断基準」では、所轄庁であるチャリティ委員会の公益性認定の判断基準をチャリティの登録時を中心として考察された。  2006年チャリティ法以後、チャリティとは、専らチャリティの目的のために設立された組織として定義され、チャリティ目的であるためには、①目的記述要件(組織の目的〔使命〕がチャリティ法に規定する13の目的記述に該当するかどうか)と②パブリック・ベネフィット・テスト(目的が有益であるかどうか及び公に便益をもたらすかどうか)を充足するかどうかについて、チャリティ委員会が決定することが確認された。   以上の4報告を基に、パネル・ディスカッションへと進み、まず、コメンテーターの江田寛氏(公認会計士)は公益性判断に係る視点として将来社会に貢献するか否かの点、また、課税の優遇措置に関しても将来の豊かさを獲得するという積極的視点の必要性が説かれ、報告者に対して、公益認定基準におけるパネル・ディスカッションは学際的な議論となった公益・一般法人 No.879 2014.10.154財務三要件、チャリティ委員会方式による公益性判断において将来性判断が可能かどうかの見解を問う質問がなされた。  続いて、同じくコメンテーターの馬場英朗氏(関西大学)から、公益認定に係る制度の狙いが、当初は、民間の主体性の発揮及び客観的判断基準(恣意性の排除)にあったものが、運用の過程において、税制上の優遇措置との関係から、新規事業を開始するに際して行政(課税当局)の判断を仰ぐこととなり、判断主体がシフトしてしまっているのではないかとの問題提起がなされ、報告者の見解が問われた。  さらに、フロアから日米英の人口比と各国における公益性を有する法人の比が大きく異なっていることの原因となる制度の違いについてなど複数の質問が寄せられ活発な質疑応答が行われた。  最終日は、午前に、特別セッション「非営利組織の会計枠組み構築に向けて」(司会:齋藤真哉氏)が行われた。 【特別セッション】  森洋一氏(日本公認会計士協会)による基調報告において「非営利組織の会計枠組み構築に向けて(日本公認会計士協会非営利法人委員会研究報告第25号)」(以下、研究報告25号という。)の概要について説明された。すなわち、非営利組織の範囲について、事業活動を通じて稼得した利益を分配することを目的としない組織であると定義し、会計枠組み構築に向けては、①会計の基本的枠組みの共有、②モデル会計基準の開発、③会計基準の統合化という段階的アプローチが提案された。そして、基本的枠組みを構築するためには、これを一元的に取り扱う体制が不可欠であるとし、この場合の会計基準設定主体に求められる要件について、利害関係者の参画と代表性、独立性、透明性とガバナンス、正当性、専門性、財政基盤が挙げられた。その上で、会計基準設定主体として、①行政内に設置、②民間新団体を設立、③民間の会計基準設定組織内に設置の3方式が考えられるところ、課題は当然あるものの、③の民間の会計基準設定組織内に設置の方式が望ましいものとされた。紙幅の都合上、詳細に触れることはできないが、研究報告25号の報告に係る研究に取り組まれた背景としての非営利セクターに対する期待と課題、わが国の情報開示と会計の状況についても丁寧な説明が行われた。  続くパネル・ディスカッションにおいては、まず、報告者に対して、パネリストの鷹野宏行氏(武蔵野大学)から①アメリカの非営利法人会計に係る概念フレームワーク及び会計基準とのあり方及び②会計基準設定主体の資金調達についての見解を問う質問及びコメントがなされた。次いで、同じくパネリストの古庄修氏(日本大学)は、研究報告25号の意義、機能についてコメントされた後、①比較可能性についての情報ニーズ、会計プロフェッションにおける統一化の実需、②非営利法人の範囲(非営利性の定義)、③非財務報特別セッションの司会は今大会実行委員長の齋藤真哉氏公益・一般法人 No.879 2014.10.15学会ニュース 5告の開示の進め方について質問された。  さらに、フロアの会員と一体となって、①非営利組織の範囲、②フレームワークと会計基準との関係、③非財務情報の役割、④会計基準設定主体について、活発な質疑応答、議論が行われた(時間切れとなり、③、④の問題点は割愛となった)。 【西日本部会報告】  大会プログラムの最後は、西日本部会(九州部会)報告として「地域における行政、医療及び福祉の現状と課題」(司会:早坂毅氏〔税理士・行政書士〕)の最終報告が行われた。  冒頭に森美智代氏(熊本県立大学)から最終報告書の提出に係る報告と関係者への謝辞が述べられた。引き続いて、渡辺亨氏(熊本市都市政策研究所)より「熊本地域の地下水保全事業におけるNPOの役割」についての報告が行われた。  報告においては、NPOが関係した官民協働に係る成功事例(熊本地域の地下水保全事業〔かんくまセミコンモデル〕)が紹介され、官民協働におけるNPOの役割について確認された。すなわち、官民協働においてNPOがモデルケースを構築し、その成功事例を示すことで、行政や企業の参入を促す起爆剤となり得ることの指摘がなされた。 【自由論題報告】  自由論題報告は、第一会場(司会:船越洋之氏(湘北短期大学))において、髙屋雅彦氏(近畿大学)「病院と公益性に関して-精神科診療を例として-」、河谷はるみ氏(九州看護福祉大学)「在宅医療を担う医療体制の在り方」、森美智代氏「非営利法人組織における会計の役割-日独における医療改革をとおして-」、第二会場(司会:竹内拓氏(自由が丘産能短期大学))において、黒木誉之氏(熊本県立大学)「内発的発展による地域再生-水俣市の「もやい直し」を主軸とした市民協働の地域づくり-」、井寺美穂氏(熊本県立大学)「行政倫理システムの機能および逆機能-政府における取組みを中心に-」、西村友幸氏(釧路公立大学)「非営利組織はアドホクラシーか?」、第三会場(司会:江頭幸代氏(関東学院大学))において、菊池遼氏(東北大学大学院生)「NPO 法人の新認定制度に関する一考察-認定NPO法人へのインタビュー調査から-」、藤井誠氏(日本大学)「非営利法人課税の本質」、出口正之氏(国立民族学博物館)「学校法人・社会福祉法人創設における制度改革との比較における公益法人制度改革」の全報告が行われた(各報告に対するコメンテーターについては省略した)。

  • 第23回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第23回大会記 〈2019年9 月15〜16日 久留米大学〉 統一論題 公益法人制度改革10周年―公益法人の可能性と課題を探る― 齋藤真哉  横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授  令和元年9 月15日(日)より16日(月)の日程で、非営利法人研究学会第23回全国大会が、久留米大学(御井キャンパス・本館)において行われた。   大会1 日目に、「公益法人制度改革10周年―公益法人の可能性と課題を探る―」を統一論題とする研究報告及びディスカッションが行われた。当該論題は、「民による公益の増進」を目的として、公益法人制度改革関連三法が平成20年12月に施行されてから10年が経過したことを機に、その制度改革の目的が達成されているのか、制度上の今後の課題は何かという問題意識に基づいて、さらには公益法人が果たす社会的役割に対する今後の展望についても検討すべきとの趣旨から設定されたものであり、制度と会計、税務の各観点から公益法人制度を見直すことを内容とした。  登壇した3 名の報告者とテーマは、①出口正之氏(国立民族学博物館)「税制優遇のルビンの壺:価値的多様性と手段的多様性の奨励」、②尾上選哉氏(大原大学院大学)「会計からみる公益法人制度改革の課題と可能性」、③苅米裕氏(苅米裕税理士事務所)「公益法人の拡充のために公益法人税制が果たすべき機能の考察」であった。なおコーディネーター(座長)は、齋藤真哉(横浜国立大学)が務めた。 統一論題報告 第1 報告 「税制優遇のルビンの壺:価値的多様性と手段的多様性の奨励」(出口正之・国立民族学博物館)  出口氏は、公益法人制度の改革における公益法人制度改革関連三法の立法趣旨が、「民間による公益の増進」にあったことを再確認し、そこでの重要な要素として「多様性」と「機動性」があったと整理された。そして民間における公益を増進するためには、行政の関与が最小限に止められる必要があるとの認識が示された。そして、その例として研究助成の場合を取り上げて、もし研究助成を民間に任せるとしても行政が統一された基準等により制約を掛けるならば、民間においても事務費等が掛かるため、たとえば日本学術振興会だけが研究助成を決定した方が効率的であることを説明された。そこで民間の公益法人の行為等を税制優遇等により規制することは、かえってパレート最適を妨げることが考えられるとの見解が示された。ルビンの壺とは、背景に黒地を用いて白地で壺を描いた図であり、白地に注目すれば壺に見え、黒地に注目すれば向かい合った2 人の顔に見えるというものである。官のロジックになじまない領域にそれを持ち込んでいることを、「ルビンの壺現象」と呼び、そもそも多様性のある民間に税制優遇を根拠としてそうした多様性を消し去るような官の介入があることが、本来の立法趣旨である「民間による公益の増進」を阻害する結果を導いているという問題点が指摘された。 第2 報告 「会計からみる公益法人制度改革の課題と可能性」(尾上選哉・大原大学院大学)  尾上氏は、会計の観点から、公益法人制度改革の趣旨に照らして、改革後の制度が有効な社会的システムとして機能しているのか、改善すべき課題は何か、今後の公益法人制度の発展に会計がどのように寄与しうるのかについて論じられた。改革後の制度の有効性については、制度改革により公益認定された法人の数よりも、一般法人の数の増加が著しい(後者が前者の約100倍)現状を踏まえて、制度改革が公益の増進に直結したのかについては疑問があるとの含意が示された。そして公益法人制度を支える柱としての会計について、公益法人に適した会計基準・会計制度になっているのかについて、課題が提示された。すなわち、1 つには、持分権者不在の公益法人(非営利法人)に対して、資本主理論に立脚する企業会計の理論と手法を導入していること、今1 つには、資源提供者に対する受託責任に関する会計情報の量・質の低下である。それらの課題に対して、公益法人の会計を法人主体理論に立脚して構築すること、またそうした理論に基づいた貸借対照表の表示方法の組換えや財産目録の活用、規模別の会計基準の適用が提唱された。さらに、一般法人の情報開示の検討や一般法人に適用される会計基準が必要であるとの見解が示された。そうすることで、情報開示と法人自治が推進され、一般法人をも含めた民による公益の増進が期待できると主張された。 第3 報告 「公益法人の拡充のために公益法人税制が果たすべき機能の考察」(苅米裕・苅米裕税理士事務所)  苅米氏は、制度改革により「公益的活動の健全な発展を促進し、一層活力ある社会の実現を図る」という課題の解決に寄与できたのかという問題意識に基づいて、税制の観点から制度改革後の税制について検討を加えられた。まず改革以降の法人税の課税を、公益認定された法人及び一般法人の両方について概括的に説明された。すなわち、税法上は、公益法人等と非営利型法人、普通法人との分類により、収益事業課税か全所得課税か、また公益目的事業に対する非課税措置、みなし寄附金制度等について整理された。その上で、財産相続に関わる節税スキームとして一般社団法人等が利用されているとの指摘をされた。具体的には、相続財産を一般法人に移転させることで、その所有権は喪失するものの、自ら又は子供が理事に就任することで、実質的な支配を継続することができるという内容である。特に非営利型の場合、寄附金収入は非課税となる点も確認された。こうしたスキームに対して一定の場合に相続税が課されることが紹介された。加えて、税制とも関わる公益認定の財務三基準や公益目的支出計画について言及された。それらを踏まえて、公益法人等に対しては全所得課税を前提として公益活動支出を即時償却扱いとする方法や、非営利型法人に対して公益活動等に使用しない純資産の一部に追加課税する方法等を取り上げて検討がなされた。  各研究報告に続いて行われたディスカッションにおいては、公益法人をめぐる諸課題、具体的には公益認定のあり方、監督やガバナンス(自律性)、情報開示、税制優遇に関して、活発な質疑応答が行われた。 特別企画  日本公認会計士協会「非営利組織における財務報告の検討〜財務報告の基礎概念・モデル会計基準の提案〜」に関する報告及びパネルディスカッションは、会田一雄(慶應義塾大学)をコーディネーターとして実施された。  まず、松前江里子氏(日本公認会計士協会)により、環境変化に応じて非営利セクター全体に共通の会計枠組の必要性を背景に、非営利組織における財務報告の基礎概念とモデル会計基準について、プロジェクトの活動経過を踏まえて、報告がなされた。続いてパネルディスカッションに入り、藤井秀樹氏(京都大学)より今回のプロジェクトの社会的意義及び組織特性から導出されたモデル会計基準の特質について、また、日野修造氏(中村学園大学)より純資産の区分とフロー財務表の表示形式に焦点を向け、米国FASと比較しながらモデル会計基準により作成される情報内容が論じられた。さらに、会場からの質問に対して、報告者及びパネリストからの回答及び討論が活発に展開され、今後の非営利セクター内での会計基準統合化の途を展望し、本報告を総括した(文責:会田一雄)。 自由論題報告 自由論題報告第1 会場 第1 報告 「副(福)業の可能性を拓く―福祉職の人材基盤強化にむけた中間支援組織の挑戦」(平尾剛之・きょうとNPOセンター、吉田忠彦・近畿大学)   65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている社会、いわゆる「超高齢社会」を先進国の中で最初に日本が迎えている。生産労働人口が減少し、これまでの「当たり前」では対応できない、また多様な働き方が求められている現状において、中間支援組織であるきょうとNPOセンターは公益財団法人トヨタ財団の助成を得て、福祉現場での副業によるキャリア形成を推進するための福業推進プロジェクトを形成し、福祉職への就労機会の創出や社会支援基盤の強化にむけた取組みに挑戦している(文責:吉田忠彦)。 第2 報告 「非営利組織におけるコア・スタッフの育成と確保のための人的資源管理施策―中間支援組織を事例として」 (東郷寛、團泰雄・近畿大学)   日本の支援型NPOの多くは経営基盤が不安定であるために、コア・スタッフのリテンションが困難であるという課題を抱えているが、ミッションを具現化するための経営課題にうまく対処するためにはコア・スタッフのリテンションやそれに伴う人的資源管理(HRM)施策の整備が不可欠である。従来のNPOにおけるHRMに関する研究ではこの点が十分に論じられていない。  そこで、本研究ではHRMの視点から、3 つの支援型NPOの事例分析をもとに、支援型NPOが社会的価値を生み出すための条件に関する以下の仮説を導出した。①共通の経営環境下にある組織間でも、社会的価値創造を支える戦略的行為能力に差が見られる、②コア・スタッフの確保と育成面での違いが、戦略的行為能力の違いを生み出している、③組織の成長とHRMの仕組み化の程度がコア・スタッフのリテンションの程度とスタッフの組織内キャリア形成の促進の程度を規定する、④組織内の知識と情報の循環が活性化するとスタッフのエンゲージメントが高まり、スタッフの成長ひいてはコア・スタッフのリテンションに影響を与える。  また、事例分析からはコア・スタッフの役割の重要性やエンゲージメントを高める施策の重要性が明らかとなり、今後はコア・スタッフの育成施策が能力向上や組織成果につながるメカニズムの特定などが課題となることを示した(文責:東郷寛)。 第3 報告 「NPO支援をめぐる施設、組織、政策―アクターネットワーク・セオリーの視点から」(吉田忠彦・近畿大学)  わが国のNPO支援をめぐる施設、組織、政策の相互作用について、ラトゥールらによって推進されるアクターネットワーク・セオリーの視点から分析することを目的として、神奈川県によって1996年に設立された「かながわ県民活動サポートセンター」の設立プロセスと「かながわボランタリー活動推進基金21」の設置プロセスをケースとして取り上げた。  センターも基金も、当時の知事の強いリーダーシップによって導かれたが、それだけでは実現しなかった。その背景となる要素があった。神奈川県では米軍基地があることで住民運動が盛んであったし、神奈川県や横浜市では長年にわたって革新自治体が強く、行政と市民活動とはある程度の相互依存関係もあった。さらに、その長年にわたる革新自治体によって行政の財政事情が悪化しており、それが元大蔵官僚であった知事を生むことになった。またもう1 つ大きな点は、横浜駅から徒歩数分という利便性の高い所に県の行財政改革の対象となる県民センターという箱モノがあったことである。日本の社会全体の流れにおいても、阪神・淡路大震災が発生し、ボランティア革命と呼ばれるような動きがあり、NPO法成立に向けてのさまざまな場所での活動が活発化していた。これらの諸要素が相互作用していたのである。決してワンマンな知事の意向や力だけでセンターや基金はできたわけではなく、基本の計画でさえその後にも市民団体との間で交渉が続けられ、変化していったのである(文責:吉田忠彦)。 自由論題報告第2 会場 第1 報告 「地方創生と公民協働のまちづくり」(澤田道夫・熊本県立大学)  「地方創生」の取り組みについては、2015年に地方版総合戦略が策定されて以降、全国でさまざまな取り組みが展開されている。しかし、そもそも「地方創生」が始まったきっかけについてはあまり知られていない。地方創生の取り組みが始まったのは日本創成会議が2014年に発表したレポート(いわゆる増田レポート)からである。同レポートにおいて、今後の人口減少社会の中で市区町村の半数に当たる896の自治体が「消滅可能性都市」という指摘を受け、全国にショックが広がった。これに対処するために国が始めたのが「地方創生」である。 ではなぜ「消滅可能性都市」なのか。同レポートでは若年女性が2010年から2040年までの30年間に50%以上減少する自治体を消滅可能性都市と呼んだ。若年女性が域外に流出してしまうことが次世代の人口を減少させ、地域の持続可能性を低下させる。すなわち、地方創生の鍵を握るのは若い世代の雇用・出産・子育て等に関する支援ということになる。しかし多くの市町村ではこの事実を理解しないまま、既存の地域振興策のマイナーチェンジに終始しているのが実態であろう。 この点において、本学会が研究対象とする非営利法人は、若年女性の活躍の場となるケースも多く、地方創生にとって重要な役割を果たしている。今後自治体が地方創生の取り組みを進めるに当たり、非営利法人との協働が必要であろう(文責:澤田道夫)。 第2 報告 「民間非営利活動と地域資源活用に関する経済学的考察―広島安芸高田神楽の事例研究―」 (今枝千樹・愛知産業大学、藤井秀樹・京都大学)  地方創生につながる地域資源を開発するには、資源の戦略的な重点配分が不可欠であり、そのためには地域資源の提供者と支援者の間の情報の非対称を緩和する必要がある。かかる問題意識から広島安芸高田神楽のケーススタディを行い、以下の知見を得た。第1 に、事情に精通したマルチプレイヤーが情報の非対称性の緩和に大きく貢献し、支援の傾斜配分を可能にしていることである。第2 に、地域資源として活用可能な神楽団の選抜にあたり、競演大会での優勝実績がシグナリングとして機能していることである。第3 に、神楽が地域資源として実質的に機能していることである。第4 に、持続可能な取組みとするには人材の育成が大きな鍵になることである(文責:今枝千樹)。 第3 報告 「中山間地域を支える非営利法人の地域おこし活動―その意義と活動構造を中心に―」 (井寺美穂・熊本県立大学)  本報告は、耕作放棄地の増加や地域づくりの衰退など多くの課題を抱える中山間地域のひとつである熊本県山鹿市の岳間地域において、地域おこし活動を積極的に展開する特定非営利活動法人(NPO法人)-岳間ほっとネット-の活動事例を分析対象としながら、地域における法人活動の意義やその活動構造について考察を試みるものである。地域担当職員制度の効果により、きめ細やかな行政メニューが提供され、積極的な活動展開が行われているという仮説のもと、研究を展開している。  結論としては、①活動の中心である少人数のブレーンが役割分担をしながら、地域内外の他団体とのパイプ役を果たし、団体間連携が図られていること、②「当事者志向」の地域担当職員が「地域係」という担当業務を担いながら地域支援を行うことにより、NPO法人の積極的な活動展開につながっていることを明らかにしている(文責:井寺美穂)。 自由論題報告第3 会場 第1 報告 「子ども食堂におけるドメインの定義」(菅原浩信・北海学園大学)  本報告は、子ども食堂において、どのようなドメインの定義がなされているのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、新潟県内の6 つの子ども食堂を分析対象として採り上げ、当該子ども食堂の運営団体の代表者等に対する聴取調査を実施し、その結果についての分析及び考察を試みている(文責:菅原浩信)。 第2 報告 「NPO法人の認定制度からみえてきた問題点について―支援団体からの聞き取りを通じて―」(川村基・四国大学)  本報告は、わが国において、NPO法人の数に比して認定NPO法人の数が少ない理由を、支援団体への聞き取り調査から明らかにすることを目的としている。認定NPO法人が少ない理由として、①認定制度の問題点と②NPO法人のマネジメントの2 つが指摘された(文責:川村基)。 第3 報告 「災害とソーシャル・キャピタルに関する一考察」(黒木誉之・長崎県立大学)  本報告は、熊本地震の熊本県益城町と東日本大震災の宮城県南三陸町の現地調査の結果から、被災者による取り組みをソーシャル・キャピタルの視点から分析したものである。分析の結果、次の3 点が明らかにされた。①平時期には祭りなどが重要である。②災害期にはサードプレイスが必要である。③復旧期以降には緩やかなネットワークを形成するサードプレイスが必要である(文責:黒木誉之)。 自由論題報告第4 会場 第1 報告 「18世紀の懐徳堂から考察する資本維持」(水谷文宣・関東学院大学)  現代日本における高橋(2003)は資本維持のためにも減価償却は根拠がないとする。アメリカにおいてはSFAC No.6が資本維持は必要と唱えている。日本の実務家からあるかもしれない反応は、日本ではどうか、実務ではどうかというものである。研究手法としては、アーカイバル・メソッドを採用した。懐徳堂は18世紀に大阪で設立された私立学校であり、武士ではなく町人が経営していた。大阪大学総合図書館の懐徳堂文庫に大量の史料が保管されている。本報告では現存する最古の『懐徳堂義金簿』を活用した。1781年に前書きが書かれている。  修繕が必要となり懐徳堂は存続の危機となった。学校において建物はサービス提供能力に直結する。収入が支出を超過していることが実体資本維持の達成を示す。イギリスの複会計システムと相性が良いのは取替法であり、『懐徳堂義金簿』には取替という言葉が登場していた。ただし当時の日本は鎖国中であった。古典的にはシュミットが物価変動を考慮した実体資本維持を提唱していた。齋藤(2016)はシュミットとは異なる実体資本維持を提唱している。懐徳堂は齋藤(2016)の言う実体資本維持はしていたと言える。学校法人会計基準には基本金概念があり資本維持の発想がある。残された課題は、シュミットの実体資本維持が懐徳堂でも現代会計でも採られていない理由は何かということである(文責:水谷文宣)。 第2 報告 「非営利法人会計における公正価値情報の有用性の考察」(宮本幸平・神戸学院大学)  報告では、非営利法人会計において、近年新たに導入された公正価値会計の情報が有用となるかにつき、経済学の分析ツールである「比較制度分析」を援用して分析を行った。  まず、非営利法人会計の「基本目的」(objectives)につき、非営利法人会計概念書に基づいて整理された。非営利法人会計の「基本目的」(objectives)に関して、FASB概念書第4 号によれば、資源提供者その他の情報利用者が、用役を提供し続ける組織体の能力を評価するのに役立つこととされる。このようなFASBの規定につき、非営利法人会計の概念として措定すべき重要なものが、財務的に保持していかなければならない能力である「財務的生存力」であることが説明された。  次に、非営利法人会計において公正価値評価を導入することの、会計理論的問題点が明らかにされた。保有する金融商品や有形固定資産が公正価値で評価されることになれば、未実現損益が認識されて、財務的生存力の査定に影響を及ぼす可能性がある。公益法人会計/貸借対照表に対し、不確実性及び非客観性が実現利益と比べて強い公正価値評価額が誘導されれば、社会福祉法人会計や学校法人会計よりも、財務生存力を査定する能力の点で劣ることになることが指摘された。  さらに、「比較制度分析」による、非営利法人における、公正価値会計導入の要因分析が行われた。公正価値会計情報を適正に表示して資金提供を受け続けている「非営利法人」の期待将来利得の割引価値をV a、現在資金提供を受けていない「非営利法人」の期待将来利得の割引価値をViuと(i =h、C )とすると、次の式が導出される。  そしてこれをもとに、非営利法人が、公正価値会計情報を表示しないインセンティブを持たない、以下の条件式が導出された。  式より、αと3 つの小カッコの中がいずれも正であるため、WはπC及びπhの値に依存している。ここでπCの値が低いときは、損失非表示を行ったことによる再契約率が低いことを示す。そして、πCの値が低い場合には、「非営利法人」が将来に得られたはずの利得を失う確率( 1 -πC)が高くなり、この場合に「非営利法人」の利得Wが小さくなる。したがって、非営利法人が公正価値会計情報を適正に表示すれば利得が増加することが、本ゲーム・モデルから導出される式によって明らかになると結論付けた(文責:宮本幸平)。 第3 報告 「英国の小規模チャリティと会計」(上原優子・立命館アジア太平洋大学)  わが国の非営利・公益法人の中で、小規模なものは多い。これらの法人では組織的体力が弱いために、十分な管理体制や適切な財務諸表の作成が困難な状況にあるものが存在する。NPO法人も公益法人も、そもそもの法人の趣旨から考えれば、社会に貢献する組織が数多く成長し、活性化することが望まれている。  英国のチャリティも同様に、小規模な組織は多いが、その組織規模の負担を考慮した制度が存在する。財務諸表の作成に関しては、一定規模以下のチャリティには、現金主義での財務諸表の作成が認められている。専門性を必要とする会計について、負担を感じている組織も多いことが予想されるわが国の小規模法人の状況を考えると、英国のように段階的な会計処理を検討することには意義があると考える(文責:上原優子)。 NPO法人研究部会ワークショップ「現場の声に耳を傾ける」  NPO法人研究部会報告というタイトルではあるが、せっかく地方で実施する大会なので大会実行委員会から「ご当地企画」として現場の声を実際に聞きたいという要望があり、異例の形のセッションとなった。  大会委員長の伊佐淳氏から上記の意図が述べられた後、公益財団法人佐賀未来創造基金専務理事吉村興太郎氏から、設立の経緯、公益法人への道、現在の広範なプログラムの説明がなされた。その後、事業拡大のために行政庁を佐賀県から内閣府へ変更しようとしたところ、佐賀県認定なのに熊本地震でボランティアを派遣したことを責められるなどして結局諦めた経緯が語られた。次に、認定NPO法人ピースウィンズジャパンをはじめ非営利組織での経験豊富である、宮原信孝氏が一般財団法人を立ち上げたばかりの筑後川コミュニティ財団の設立の経緯を報告した。久留米には市民団体が約400近くあり、寄付をしてもよいという人もいるが、鍵は税控除だと言われているので何としても公益を目指したいと決意が語られた。 次に、ファシリテーターの出口から、行政は細かな対応に流れるからこそ有識者による第三者機関が制度として入っているのであって、有識者といわれる人たちの能力が、制度が求める以下の場合の時についてはそれを指摘する責任がアカデミックコミュニティには存在すると締めくくった(文責:出口正之)。

  • 第7回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第7回大会記 2003.10.10–11 成蹊大学 統一論題 非営利組織の経営と課題  1 非営利組織とNPO法  2 非営利組織の社会貢献  3 非営利組織の業績評価をめぐる諸問題の会計学的考察  4 非営利組織の税務に関する諸問題 白鴎大学  鷹野宏行  公益法人研究学会第7回全国大会は、2003年10月10日(金)〜11日(土)の日程で、成蹊大学において開催された。両日ともに秋らしい好天に恵まれた。第1日目は理事会の開催に当てられた。以下では、第2日目の研究報告大会の模様を中心に、学会開催状況を紹介することにする。 自由論題  午前中は3会場に分かれて自由論題が行われた。自由論題報告の報告者と報告テーマは、以下のとおりである。連休初日、かつ午前中の開催にもかかわらず、多数の会員の参加を得て、各会場で熱心な質疑応答が交わされた。 第一会場 司会・永島公朗氏(公認会計士) 1. 江田 寛氏(公認会計士)「収益事業課税における資本取引及び損益取引概念の検討」 2. 早坂 毅氏(税理士)「現物給付と割引販売−わが国の非営利法人会計における取り扱いの現実とその望ましい姿−」 第二会場 司会・松倉達夫氏(ルーテル学院大学) 1. 渡辺孝雄氏(第一福祉大学)「福祉サービスにおける成果主義にもとづく目標管理の導入について」 2. 大森 信氏(城西国際大学)「福祉ビジネスに関する研究−訪問介護ビジネスを展開する企業間比較−」 3. 吉田忠彦氏(近畿大学)「非営利組織のパートナーシップ政策」 第三会場 司会・島田 恒氏(龍谷大学) 1. 東海林邦彦氏(北海道大学)「非営利組織法制改革・試案−総論的部分に限定して」 2. 西村友幸氏(釧路公立大学)「自律協働体系としてのボランタリー組織」 研究部会報告  引き続いて、興津裕康氏(近畿大学)の司会により、研究部会報告が行われた。研究テーマは以下のとおりである。 1. 東日本部会 主査・松葉邦敏氏(国士舘大学)       「わが国の公益法人会計に関する研究」 2. 西日本部会 主査・堀田和弘氏(近畿大学)       「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」 総 会  昼食・休憩の後、会員総会より午後の部のプログラムにはいった。本学会事務局・常任理事の川崎貴嗣氏(公益情報サービス)から、会務報告、会計報告等が行われ、理事会提案は総会においてすべて承認された。続いて、昨年より創設された学会賞及び学術奨励賞の発表が行われた。第2回学会賞は該当者なし、第2回学術奨励賞には江頭幸代氏(広島商船専門学校)「環境コストと撤去コスト」、及び今枝千樹氏(京都大学大学院)「非営利組織の業績評価と会計情報拡張の必要性」を選定したことが審査委員会から報告され、審査委員長の守永誠治氏より賞状と副賞が授与された。 統一論題報告・統一論題シンポジウム  総会終了後、統一論題報告・統一論題シンポジウムが石崎忠司氏(中央大学)の総合司会のもと行われた。報告者と報告要旨は以下のとおりである。 1.小島廣光氏(北海道大学)「非営利組織とNPO法」  小島氏の発表は、わが国において長い間、必要性が認識されながらも立法化されてこなかったNPO法が、阪神・淡路大震災の発生からわずか6年間で「なぜ」そして「どのように」して立法化されたのかについて焦点を当て検討がなされた。小島氏はまず、NPO法の立法過程を分析するための理論的枠組みとして「改訂・政策の窓モデル」を導出する。その後、NPO法の全立法過程を6つの期間に区分し、詳細な年代記分析を試みている。そして、立法過程の実態を17の命題として整理され、その命題は、①如何なる参加者が、NPO法に対する思いをまず自らの信念として認識したのか、②如何なる政策アクティビストが、その信念を具体的に固め、法律案骨子を社会的に創造したのか、③如何なる場で、そのような法律案骨子の創造が行われたのか、④その法律案骨子が、より大きな場で法律案として提示された結果、如何にしてNPO法の立法問題が「政府・国会のアジェンダ」における高い優先順位を獲得したのか、という4つの問に対する答えになっていると主張した。 2.作間逸雄氏(専修大学)「非営利組織の社会貢献」  作間氏の発表は、標準的経済理論を「合理的な愚か者」の理論として批判することにより、「公共性」の観点から非営利組織の社会貢献の可能性を検討することに主眼が置かれた。作間氏に主張では、「合理的な愚か者」の理論とは、ノーベル経済学賞受賞のセン教授により展開された理論で、正統派規範理論は個人が持つ選好を唯一の繊細な道具として、「個人の私的利害の追求」、「個人の厚生の評価」、「個人の選択行動の合理化」という3つの異なるタイプの問題に対処しようとしているとするもので、選好、利害、厚生、選択を必然的に連結する正統派規範理論は、人間行動の動機の多様性をすべて捨象して、人間をたった1つの選好に隷属する「合理的な愚か者」として処遇するものであるとセン教授の批判するところを引き合いに出される。そして作間氏は、セン教授の「機能」と「ケイパビリティー」という概念を援用して、分析を試みられた。 3.今枝千樹氏(京都大学大学院)「非営利組織の業績評価をめぐる諸問題の会計学的考察」  今枝氏の発表は、非営利組織における業績の考え方について整理したうえで、アメリカの非営利組織における業績評価の現状、とりわけ非営利組織に対する第三者評価機関の視点及び役割について、整理検討することに焦点が当てられた。まず、今枝氏は、非営利組織に対しての3E(economy,efficiency,effectiveness)評価の適用可能性について、肯定的な視点で議論を展開される。そして、アメリカにおけるインターミディアリ(intermediary)の存在について紹介し、その評価の視点と役割について、複数の団体の事例を引き合いに出して、その評価基準ついても敷衍する。インターミディアリによる外部評価は、非営利組織自らが行う内部評価に関する情報に信頼性を付与することによって、非営利組織と寄附者を結び付ける役割を果していると結論づけた。 4.畑山 紀氏(札幌学院大学)「非営利組織の税務に関する諸問題」  畑山氏は大会直前に体調を崩され欠席された。急遽、大会準備委員長の成道秀雄氏(成蹊大学)よりレジュメの代読が行われた。内容については上記事情に鑑み省略する。 以上の報告の後に、シンポジウムが開催され、統一論題報告に対する多数の質問が寄せられた。高橋選哉氏(福山大学)、保谷六郎氏(社会経済研究会)、江田 寛氏(公認会計士)、山田康裕氏(滋賀大学)、千葉正展氏(福祉医療機構)、菊池章夫氏(岩手県立大学)、橋本俊也氏(税理士)、藤井秀樹氏(京都大学)、東海林邦彦氏(北海道大学)などから質問が寄せられ、活発な討論が行われた。 懇親会  統一論題報告・統一論題シンポジウム終了後、成蹊大学10号館12階ホールにて懇親会が開催された。大会準備委員長の成道秀雄氏(成蹊大学)からの開会の辞に続き、成蹊大学経済学部長の高木新太郎氏から式辞が述べられた。続いて、新会長に選出された松葉邦敏氏(国士舘大学)による挨拶があり、戸田博之氏(神戸学院大学)の乾杯の発声により懇親会が始められた。懇親会は終始和やかな雰囲気のもと執り行われ、19時00分に散会した。

  • 発行物への投稿 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    学会誌への投稿  『非営利法人研究学会誌』は年に一度、8月上旬の発行となっております。投稿の締切は前年の12月中旬となっておりますので、投稿を希望される方はお早めにお申込み下さい。 学会賞及び学術奨励賞等に関する規程 投稿論文執筆に関する申合せ 原稿執筆要領 ワーキングペーパーへの投稿  本学会では、非営利分野の発展に寄与することを目的として『ワーキングペーパー』を発行しています。投稿は随時受付を行っています。 ワーキングペーパー投稿規程

  • 第25回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第25回大会記 2021年9月25~26日 関西大学 統一論題 非営利法人の理念と制度  2021年(令和3年)9月25日(土)・26日(日)の日程で、非営利法人研究学会第25回全国大会が関西大学を主催校として開催された。統一論題は「非営利法人の理念と制度」であった。 第25回目を迎える本大会では、前年同様に新型コロナの異常事態の中での開催となり、すべての プログラムをライブ配信によるオンライン開催とした。こうした非常事態だからこそ、あえて非営 利組織の本質を考えることを目的に、統一論題のテーマを「非営利法人の理念と制度」と設定し、 それぞれ報告と討論会を行うこととした。  また、大会中は3名の統一論題報告、8名の自由論題報告、3つの分野別研究会及び受託研究報告が行われた。また、本大会の研究報告は2日間のプログラムとして編成し、あわせて、大会前日の9月24日(金) に常任理事会と理事会を開催し、25日(土)に社員総会と新理事会を開催した。 統一論題報告 趣旨・司会 柴 健次氏(関西大学)  本学会の過去の記録を振り返ると、法人種別のテーマが論じられ、あるいは会計基準が論じられるなど、時々の話題が取り上げられてきた。しかし、非営利組織の本質とは何かにつき論じる機会があっていいのではないかと思い、テーマを「非営利法人の理念と制度」にした。法学分野を代表して岡本仁宏 氏に、経営学分野を代表して小島廣光 氏に、会計学分野を代表して日野修造 氏にご登壇いただいた。形式的に3分野から出ていただいたというより、学問分野の異なる3分野間でのより良いコミュニケーションを図るきっかけを作ることも目的であった。 第1 報告 「非営利団体は、今、どこにいるのか:市民社会論の視角から」( 岡本仁宏氏・関西学院大学)  本報告では、世紀転換期非営利法人制度改革の次に来るべき21世紀非営利法人制度改革の課題を明らかにするために、非営利組織の歴史社会的な状況の市民社会論の視角からの確認が行われた。さらに、市民社会の実 証的把握と規範的把握の概要が示され、今、市民社会論から改革課題を位置づけることの意義が論じられた。最後に、IT革命の下での市民社会の変容に伴う可能性について言及し創造的適応の必要性が示唆された。 第2 報告 「非営利法人制度改革の研究―新・政策の窓モデルによる実証分析―」( 小島廣光氏・星城大学)  本報告は、わが国において長い間必要性が認識されながらも行われてこなかった非営利法人制度改革が、21世紀の初頭に「なぜ」そして「どのように」実現したのかを事例研究によって解明することが目的とされた。まず、新・政策の窓モデルにもとづいて、2つの事例(公益法人制度改革ならびにNPO法と寄付税制の改正)の詳細な年代記分析が行われた。次に、それぞれの事例の共通 点と相違点に関する発見事実を析出するとともに、政策形成の本質に関する命題が導出された。 第3 報告 「非営利法人会計における資本と収益の区別―アンソニーの提言を受けて―」( 日野修造氏・中村学園大学)  本報告は、資本と収益の区別問題を非営利組織会計の分野に適用し検討が行われた。まず、純資 産を拘束によって区分する純資産概念が主流であることを明らかにした上で、非営利組織会計にお いても純利益の測定が重要であり、資本と収益を区別した純資産の構造を主張するR.Nアンソニー の提言について検討が行われた。そして、アンソニーの提言を加味した非営利組織の純資産区分が 提案された。なお、報告では非営利組織が獲得した純利益は、サービス提供可能資源正味残高純増 額であることが明らかにされた。 自由論題報告 司会(第1・第2・第5・第6各報告) 中嶋貴子氏(大阪商業大学) 司会(第3・第4・第7・第8各報告) 初谷 勇氏(大阪商業大学) 第1 報告 「オーケストラ団体における活動財源の集中度と予測可能性に関する実証分析」( 武田紀仁氏・税理士、日本大学経済学研究科博士後期課程)   本報告では、文化芸術活動の主体となる非営利組織体が獲得する収入源の種類・性質・収入源の 集中度が非営利組織体の持続性に及ぼす影響を調べるため、オーケストラ団体のサンプルを用いた分析が行われた。その結果、収入源と持続性の関係を分析するうえでは、収入源の種類や集中度に加えて、設立経緯などに起因する団体の属性と収入源の予測可能性の関連性を考慮して分析を行うことの重要性が説明された。また、文化芸術活動の主体となる非営利組織体のうちオーケストラ団体では、団体の属性により収入構造に差異が存在し、団体の属性と関連性のある予測可能性が高い収入源に対して依存度が高いことがデータから示された。 第2 報告 「NPO支援組織と制度ロジック変化 ―アリスセンターのケース―」( 吉田忠彦氏・近畿大学)  本報告は、日本においてNPO支援組織がどのように発生し、どのようにひとつの制度として普及していったのか、そして組織はその制度とどのように向い合うのかを、そのパイオニアとされる アリスセンターをケースとして分析された。長期にわたる事業の変遷などの分析から、同組織は「市民運動」、「NPO」、「中間支援組織」などの複数の制度ロジックを使い分けながら事業を模索して いたと論じられた。 第3 報告 「クライシス下における信用保証協会の役割 ―中小企業支援に着目して―」( 櫛部幸子氏・鹿児島国際大学〈報告時〉、現在は大阪学院大学)   本報告は、信用保証協会がどのような非営利法人であるかを説明し、そのうえで、公的資金を基 礎とする信用保証協会にデフォルトが生じることの是非や、クライシス下においてどのような視点 をもとに保証判断をすべきなのか等を検討するものである。信用保証協会はクライシス下においても、事業の継続性が望める中小企業に対し信用保証をすべきであり、保証判断の際に、中小企業に更なる会計情報等の提出を求めることが重要であると指摘されている。 第4 報告 「公益法人をめぐるサードセクター論とビジネスセントリズム・ガバメントセントリズム」( 出口正之氏・国立民族学博物館)  公益法人制度改革・税制改革は、いずれも思想的には「政府でもない企業でもない原理を持ちう る第三セクターとしての非営利セクター」に対する期待から打ち出されたものであった。言い換え れば、民間公益セクターの行動原理の独自性の認識が前提であった。 ところが、民間公益セクターに対するこのような理念的積極論があるにもかかわらず、大企業に 対する規制等を適用しようとする「ビジネスセントリズム」、政府に対する規制等を適用しようとする「ガバメントセントリズム」によって、公益法人を律する規制が「効率的ではない」(ビジネ スのルール)、「公平ではない」(ガバメントのルール)といった不文律のルール適用が、大量の明文化された法規制の上に被され、公益法人側に守るべきルールの共有化が揺らぐアノミー現象が起 こりかねない状況が生じていることが明らかにされた。 第5 報告 「非営利組織における自己組織性の実証的研究~公益法人を対象とした調査に基づいて~」( 吉永光利氏・公益財団法人倉敷市スポーツ振興協会・岡山大学大学院)  本報告は、非営利組織における自己組織性(組織が自己決定・自律的に組織変革を図る特性)に ついて、実証主義に基づいた定量的・定性的方法による諸調査の分析結果と考察を提示するものである。具体的な調査では、主に中国地方に所在する公益法人を対象(361法人)とし、アンケート 調査(119法人から回答)とインタビュー調査(17法人に実施)が行われた。そして、これらの調査から得られたデータを基に非営利組織における自己組織性の実態について論じられている。 第6 報告 「活動領域特化型中間支援組織における支援内容の変化と機能の移管―総合型地域スポーツクラブ の事例分析―」( 伊藤 葵氏・富山国際大学)  本報告は、多様な主体が連携したサービスを提供が求められる公共圏における中間支援組織の役割に着目し、総合型地域スポーツクラブを事例とし、組織の成長に応じた支援内容と支援の担い手の変化が分析された。組織の成長過程では、支援の担い手は公的な機関から民間へと移行すること、 支援内容は組織間のコーディネーションが重視されていくことが示された。また、支援対象組織へ の支援機能の移管や複数の組織での支援機能の分担についても指摘されている。 第7 報告 「地方自治体における内部統制と公務員倫理」( 井寺美穂氏・熊本県立大学)    本報告は、地方自治体において「公務員倫理」や「内部統制」、「リスク管理」などの名称で類似の取組みが行われていることに着目した上で、近年、制度化が行われた内部統制に係る取組みと公務員倫理を確保するための各種取組みの目的や実施内容等を比較考察しながら、それらの相違や共通性等を検討されたものである。その上で、地方自治体はその団体の規模に応じて、取組みに格差がみられ、今後、特に小規模団体の取組みが重要になるのではないかと指摘されている。 第8 報告 「非営利組織の国際会計基準プロジェクトと日本への示唆」( 金子良太氏・國學院大學)    報告の最初に、非営利組織の会計の国際的枠組みを形成することを目標とするIFR4NPOプロジェ クトの概要が述べられた。本報告では、プロジェクトにより策定される非営利組織会計の目的、非営利組織に特有の会計の課題に加えて、IFR4NPOに資金を拠出したり策定プロジェクトにかかわる個人や団体等に着目し、わが国への示唆が示された。 分野別委員会報告 司会:吉田忠彦氏(近畿大学) 「NPO法人研究会」報告 出口正之 氏(国立民族学博物館)    この1年の間(2020年10月から2021年9月)の間に、NPO法人にとって極めて重要な報告書が二点出ている。一点は新時代に合わせた報告であり、「NPO法人会計基準策定10周年記念行事 ~歴史秘話 基準誕生の頃の話を聴く夕べ~」と題され、ZOOMによるNPO法人会計基準10周年の会議記録と関係資料・動画が公表されている。  また、もう一つは、特定非営利活動法人NPO会計税務専門家ネットワーク福祉サービスに関する法人税課税問題検討委員会『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』(委員長岩永清滋 氏)である。収益事業課税は政策の中でたびたび論じされている一方、収益事業課税とは何かに ついて十分に検討されていた研究書はこれまでほとんどなかったものと言える。本報告書は歴史、 税法、関連法規、判例等に十分に目配りして現行の収益事業課税の問題点を詳細に検討されている。 NPO法人部会としてもこれらのNPO法人を巡る大きな出来事に対して、学会各方面の学術的関 心を喚起するために江田 寛 氏、岩永清滋 氏を招いて検討がなされ、いずれも学術的に非営利の会計や税制を議論するうえで欠くことのできないものとなっていることが確認された。 「医療・福祉系法人研究会」報告 ( 千葉正展氏・独立行政法人福祉医療機構)    医療・福祉系法人研究会は、現在の福祉・医療に係る制度・政策の流れのなかで、「地域包括ケア」、 「地域共生社会」など地域における様々な社会資源と医療法人、社会福祉法人等との関係性が重要なテーマになるとの認識の下、これまでの部会の活動においては「地域医療連携推進法人制度」や 「地域との連携を進めている名古屋の南医療生協の視察」など研究活動が進められてきた。そうした流れの中で国においては、令和2年に社会福祉法が改正され新たに「社会福祉連携推進法人制度」 (以下「福祉連携法人制度」)がスタートすることとなった。  以上を踏まえ、福祉連携法人制度検討の背景、社会福祉法人の事業展開等に関する検討会での主な議論と論点、改正社会福祉法における福祉連携法人制度の規定内容等が紹介されるとともに、本学会会員の何名かが別途参画した厚生労働省の「社会福祉法人会計基準等検討会」における社会福 祉連携推進法人会計基準の検討状況とそこでの検討の論点などについても報告され、医療・福祉系 法人における今後の展開や課題等について考察がなされた。 「大学等学校法人研究会」報告( 古庄 修氏・日本大学)    大学等学校法人研究部会は、広く「大学のガバナンスとアカウンタビリティ」を主題として、学 校法人の経営と会計をめぐる理論・実務・政策に係る諸提言の総合化を目指して、最終報告が行わ れた。最終報告書として、①「大学法人の会計―非営利法人会計の議論に資するための考察―」(柴 健次)、②「学校法人における固定資産と学校法人会計基準との関わりについて―特に社会科学系統 の学部を有する四年制大学に関心を寄せて―」(林 兵磨)、③「私立大学版ガバナンス・コードの 意義と課題」(古庄 修)、④「大規模私立大学ガバナンスの構築(試論)」(堀田和宏)の各論稿の 概要が報告された。 今後、本部会の活動は、柴 健次部会長の下で委員を再構成し、継続することになるとの報告があった。 受託研究報告 司会:齋藤真哉氏(横浜国立大学) 「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究( 座長 成川正晃氏・東京経済大学)    本研究報告は、受託研究として組織された「非営利法人の会計に関わる試験に関する研究会」の研究報告である。非営利組織の活動を捕捉し財務情報として開示、利用されることにより社会全体に非営利組織に対する理解が普及していくという観点から、非営利組織の会計処理を対象とした検定試験の社会への貢献度合いを把握し、今後の発展は可能かを調査・研究することを目的として設置された。 当日は、本研究会の各研究担当者から検定試験の概要の調査について報告するとともに、公益会計法人検定試験では、資格の有効性を分析し、組織における資格の効用および利活用の可能性を、 社会福祉会計簿記認定試験では人的資本論とシグナリング理論を用いた効果に関する検討を示し、 その後質疑が行われた。 御礼  非営利法人研究学会第25回大会は対面形式での開催が叶わず、第24回に引き続いてリモート(ライブ配信)開催となりました。長引くコロナ禍の社会的影響は大きく、諸学会もまた新しいスタイルを模索しているようです。本学会もそうでした。  今大会は関西大学主催ですが、大阪商業大学からも応援いただきました。両大学から成る準備委 員会は統一論題と同じくらい自由論題を重視する方針で合意に達しました。学会員への問題提起をしていただく統一論題、そして学会員の研究発表の場となる自由論題を等しく重視したのです。その方針に対応して、準備委員会の仕事を、①自由論題運営、②統一論題運営、③大会運営と大きく 分け、3分野が自律的に運営されました。こうしたことはコロナ禍であったからこそできたのかもしれません。複数の大学による合同開催の可能性を探れたのかもしれません。  当学会では元々全国大会の自由論題を重視しています。地域部会長の承認を得て、全国大会へエ ントリーするという仕組みそのものが自由論題重視の姿勢だと思っております。各地域部会長に努力していただき8本のエントリーが実現しました。  統一論題は掲げた統一テーマは重要であります。その上で、法律、経営、会計等の研究者が相互 理解可能な状況を作りたいと報告者に無理なお願いもしました。ご登壇いただいた3先生には無理も聞いていただき、話題の共有に努力いただきました。  常設の分野別委員会と受託研究についてはそれぞれご報告いただきました。これらは中間報告な り最終報告をすることが会員への義務であると位置づけられていることから、すべての委員会にご 報告いただきました。  以上で報告は15本になりました。その報告を準備委員会委員が、企画者、座長、司会者としてかかわっておりますので、本大会記も準備委員会で作成できたかもしれません。しかし、そうするこ とは大会記に主観的な評価を持ち込むことになりかねません。そこで、ご報告者15名全員に報告要 旨の提供をお願いしました。準備委員会が多少表現の統一性を求める修正をしたこと以外は、報告 者による要旨を大会記の素材として利用させていただきました。 以上を踏まえ、ここに大会記を示すことができました。大会における報告者、司会者、各報告へ の参加者・質問者ほかすべての関係者に御礼申し上げます。 2022年5月12日 非営利法人研究学会第24回全国大会準備委員会 準備委員長 柴 健次(関西大学) 委員 橋本 理(関西大学) 馬場英朗(関西大学) 初谷 勇(大阪商業大学) 中嶋貴子(大阪商業大学)  

  • 第4回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第4回大会記 2000.10.6-7. 神戸学院大学 統一論題 あらためて『公益』を問う 神戸学院大学  戸田博之  2000年10月6日(金)の理事会に続いて、10月7日(土)午前10時から公益法人研究学会第4回全国大会が神戸学院大学(神戸市西区伊川谷)において開催された。約70名(うち、非会員の公認会計士15名)の参加者を得て、活発な報告と討論が展開された。ちなみに本大会は、日本公認会計士協会によるCPE研修指定を受けた。  本大会は、今世紀最後の全国大会であるという基本認識のもとに、統一論題は「あらためて『公益』を問う」と定められた。その意図するところは、わが公益法人研究学会こそ、来るべき21世紀に社会から最も付託を受ける学会であろうという使命感と誇りを持って、改めて本学会設立時の初心に立ち返ることにあった。  自由論題報告は、11号館2階の3会場で行われた。まずA会場(司会:松倉達夫氏)では、吉田初恵氏(関西女子短期大学)、千葉正展氏((株)福祉会計サービスセンター)、B会場(司会:松葉邦敏氏)では、依田俊伸氏(国士舘大学)、鷹野宏行氏(白鴎大学)、C会場(司会:小島廣光氏)では、後 千代氏(東邦学園短期大学)、川野祐二氏((財)助成財団センター)の6氏による報告が行われ、それぞれ熱心な質疑応答がなされた。  会員総会に先だって、公益企業論研究の権威である佐々木 弘先生(前公益事業学会会長 現神戸大学大学院経営学研究科教授)による「規制緩和・競争導入と公益」と題する記念講演(司会:興津裕康氏)がなされた。ちなみに、統一論題の座長である杉山 学氏(青山学院大学)の言を借れば、「佐々木先生が話された、国民の合意に基づく『ユニバーサル・サービス・オブリゲーション』こそが公益法人の基幹となる概念である、という強い印象を受けた。」  統一論題「あらためて『公益』を問う」は、司会・座長=杉山 学氏のもとに、吉田忠彦氏(近畿大学)、渋谷幸夫氏(社会福祉法人常成福祉会)、岡村勝義氏(神奈川大学)および大矢知浩司氏(九州産業大学)による個別報告が行われ、引き続き討論が行われた。なお、上記4氏による報告内容は、自由論題6氏の研究報告とともに、いずれも本学会誌VOL..3に掲載されることになっている。  統一論題討論会では、上記4氏による個別報告、「公益活動の舞台としての公益法人」(吉田氏)、「今日的視点から見た『公益』の多様性」(渋谷氏)、「公益法人の公益性−情報公開の視点から−」(岡村氏)および「非営利組織の有効性と能率性の測定・評価」(大矢知氏)について質疑応答がなされ、予定時間をオーバーする熱心な討論が繰り広げられた。なお主な質問者は、次のとおりである。  島田 恒氏(龍谷大学)、千葉正展氏((株)福祉会計サービスセンター)、薄井正徳氏((財)目黒寄生虫館)、石崎忠司氏(中央大学)、松葉邦敏氏(国士舘大学)、川野祐二氏((財)財成財団センター)、亀岡保夫氏(公認会計士)、武田昌輔氏(成蹊大学)  統一論題質問用紙に記された主な論点は、⑴公益概念:明確化と多様化、⑵公益法人の存在範囲・位置付け:NPOおよび行政との関係、⑶あるべき情報開示:業績評価を含む情報開示の有効性および開示情報の透明化・明確化 に大別できた。その内容をつぶさに紹介することはできないが、終了時間間際の武田昌輔氏の熱のこもった次のような質問を紹介することは、討論の締めくくりとして有益であろう。  「この統一論題において、“あらためて『公益』を問う”とありますが、この問題を明確にする目的は、『真の公益法人』を厳格に規定しようということにあると思われます。そこで、公益法人に対しては、主として国・地方公共団体等が援助するということが前提となっていると考えます(補助金、税制上の措置)。いかがでしょうか?」  この質問に対して座長である杉山 学氏は、時間の関係でこの重要な論点について充分な討議がなされなかったことを遺憾であったとされ、のちに次のような感想を寄せられた。  「武田先生の上記のご質問は、公益法人の本質について『真の公益法人』という表現で問われたものと思います。私自身は、公益法人の諸活動は、本来、採算を考慮して行われるべきものではなく、佐々木先生と同様に、『ユニバーサル・サービス・オブリゲーション』として必要と認められる社会全体の合意に基づくものであると考えております。したがって公益法人の支出は、営利企業の費用のように収益獲得のための犠牲という性格のものではありません。もちろん、貴重な資源を目的達成のために有効的に消費することは当然のことであります。しかし問われていることは、社会的批判に耐え得る活動をしているかということだと思います。会計の領域に関するならば、一般目的の外部財務情報はそのための手段であり、その中心は予算にあるのではないでしょうか。」  統一論題報告・討論の終了後、大学会館内職員レストランにおいて懇親会が開催された。まず、準備委員長戸田博之氏(神戸学院大学)による挨拶に続いて、開催校を代表して神戸学院大学・谷口弘行学長の歓迎の辞および本学会会長・守永誠治氏(静岡産業大学)による謝辞のあと、武田昌輔氏の発声で乾杯、非会員(公認会計士)も交えてのなごやかな雰囲気のうち、20時30分散会した。

  • 第6回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第6回大会記 2002.7.26-27 京都大学 統一論題 非営利組織の業績評価とアカウンタビリティ 近畿大学  吉田忠彦  公益法人研究学会第6回全国大会は、2002年7月26日(金)の理事会に続いて、7月 27日(土)に「非営利組織の業績評価とアカウンタビリティ」を統一論題とし、京都大学で開催された。  午前中は9つの自由論題報告が、3つの会場に別れて行われた。第一会場では、柴 健次氏(関西大学)の司会で、江頭幸代氏(九州産業大学大学院)、川野祐二氏(財・助成財団センター)、伊藤 務氏(財・平安建都千二百年記念協会)、第二会場では、松本敏 史氏(同志社大学)の司会で、用丸るみ子氏(鹿児島国際大学大学院)、橋本敏也氏(税理士)、立岡 浩氏(花園大学)、第三会場では、吉田忠彦(近畿大学)の司会で、今枝 千樹氏(京都大学大学院)、兵頭和花子氏(神戸大学大学院)、若林茂信氏(公認会計士)の報告が行われた。午前9時30分スタートの第一報告から、立ち見が出る会場もあり、討論とも大変な盛り上がりを見せた。  その後会場を大会議室に移し、吉田 寛氏(神戸商科大学)の司会によって研究部会報 告が行われ、東日本部会が「わが国の公益法人会計に関する研究」(座長・松葉邦敏氏)を、西日本部会が「非営利組織におけるマネジメントの多角的検討」(座長・堀田和宏氏) を報告した。  午後からは会員総会が行われ、学術研究団体登録申請の経過報告もなされた。さらに、 第1回学会賞および学術奨励賞の発表もあった。学会賞は堀田和宏氏(近畿大学)、学術奨励賞は梅津亮子氏(九州産業大学大学院)がそれぞれ受賞された。 統一論題の概要  統一論題は会田一雄氏(慶應義塾大学)が司会をつとめられ、古庄 修氏(亜細亜大学 短期大学部)、江田 寛氏(公認会計士)、瓦田太賀四氏(神戸商科大学)の三氏の報告の後、討論という形で進められた。  古庄 修氏(亜細亜大学 短期大学部)の報告「非営利組織のアカウンタビリティとディスクロージャー−英国チャ リティの検討を中心として−」では、イギリスにおけるチャリティ制度とその会計について概略が説明された後、チャリティの実務勧告書(SORP)の設定経緯、米国会計基準と比較した財務報告の特徴が説明され、チャリティを対象にしたアニュアル・リポート表彰制度などの動向から、記述方法が利益尺度を持たないチャリティでは財務情報の補完以上の役割を有するといった示唆がなされた。  続いて江田 寛氏(公認会計士)の報告「民法法人の収支予算制度と業績評価」は日本の公益法人を中心にしたもの。昭和61年の『公益法人の運営に関する指導監督基準』(指導監督基準)では、事業計画と収支予算による事前審査と、事業結果及び収支計算の結果との比較によって事業執行の妥当性を検証するという業績評価が主務官庁によってなされ るというものであったのに対し、1996年の新指導監督基準においては、法人情報、事業情 報及び会計情報を一般の閲覧に供することとされ、主務官庁ばかりでなく、不特定多数の国民を意識した運営管理と業績評価のあり方が必要になったと指摘する。事業計画および 収支予算を中心とする管理や業績評価は、自発的な事業を趣旨とするタイプの非営利組織には適さないものである。また、業績評価にはサービスの内容、提供された資源の使い方、 運営方法、財務的生存力などの視点が必要であると主張された。  最後の瓦田太賀四氏(神戸商科大学)の報告「非営利組織のリスクとアカウンタビリテ ィ」では、アカウンタビリティが資金提供者のリスクという視点から検討され、サービスの代価を支払う事業型であれば、モニター可能であるために合理的行動がとれるため、リ スクはせいぜい一時的であること。サービス代価が支払われない福祉型では、支払手は事 業の社会的意義から資金を拠出し、配当や残余財産の分配などを求めないため、そもそも リスクという考え方が当てはまらないことが指摘された。そこから、そうしたリスクに対して「説明義務」を果たす、すなわちアカウンタビリティ解除を達成するという視点では なく、与えられた役割に対して積極的に説明の可能性を開く「説明可能性」という視点でアカウンタビリティを捉える必要があると主張された。  3氏の報告の後、フロアから寄せられた質問紙に応答しながら討論に入った。公益目的 の事業を担う組織の多様化に伴って、業績評価とアカウンタビリティの問題は、より複雑性を増しているが、他方で現実の社会や政策が、少子高齢化や行財政改革の流れを背景に、 民間非営利セクターへの依存の度合いを高めている。こうしたタイミングであるだけに、非常に活発な討論となった。質問およびコメントは、興津裕康氏(近畿大学)、大矢知浩司氏(九州産業大学)、岡村勝義氏(神奈川大学)、柴 健次氏(関西大学)、村井秀樹氏(日本大学)、陳 氏(神戸商科大学)、早坂 毅氏(税理士)、橋本俊也氏(税理士)、大峠理沙氏(神戸商科大学大学院)の諸氏から寄せられた。  その後、場所を同大学の生協中央食堂に移し、懇親会が催された。今回創設された学会 賞・学会奨励賞の受賞者のスピーチも交え、終始なごやかなうちに会員の親睦がはかられた。

  • 経過報告(大学等学校法人研究会) | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    非営利法人研究学会 大学等学校法人研究会  【2018年度 研究経過報告】

  • 第8回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第8回大会記 2004.9.3-4 九州産業大学 統一論題 非営利組織のガバナンスと活動のディスクロージャー  1 NPO法人のガバナンス  2 非営利組織の活動状況の開示  3 公益法人会計基準の改訂と今後の課題  4 非営利組織のガバナンスとアカウンタビリティ 青山学院大学  杉山 学  公益法人研究学会第8回全国大会は、2004年9月3日(金)・4日(日)の両日、九州産業大学において開催された。第1日目は理事会が開催され、第2日目は報告および討議が行われた。紙幅の関係上、統一論題報告の要約と自由論題報告者・報告テーマ、研究部会報告者・報告テーマを紹介することにする。 ⑴ 統一論題報告・統一論題討議   「非営利組織のガバナンスと活動のディスクロージャー」を統一論題のテーマとして下記の報告が行われた。 小島廣光氏(北海道大学)「NPO法人のガバナンス」   小島氏は㈰マネジメント、㈪内部ガバナンスおよび㈫外部ガバナンスについて財団法人とNPO法人を比較検討し、特に5つの視点からNPO法人の外部ガバナンスの特徴を明らかにされた。そして外部ガバナンスは、マネジメントの自発性・自律性をより尊重すると同時に、その透明性を求めており、NPO法人の存続・成長の不可欠の要件としてこのような外部ガバナンスの重要性を主張された。 梅津亮子氏(九州産業大学)「非営利組織の活動状況の開示—財団法人鉄道弘済会および医療法人静寿会の事例を中心として—」   梅津氏は、財団法人鉄道弘済会の事業報告について官報を、また医療法人静寿会の事業報告については、梅津氏がその作成に直接関わった活動報告書を検討し、公益法人における活動(事業)報告書の重要性を強調された。 加古宜士氏(早稲田大学)「公益法人会計基準の改訂と今後の課題」   加古氏は、平成15年3月28日に公表された「公益法人会計基準(案)」(公益法人会計基準検討会:座長加古宜士氏)の特徴を、特に財務諸表の体系について、広く一般の国民に対する分かり易い外部報告の充実という視点から、予算や決算といった法人のガバナンスに係る計算書類(収支計算書)は外部報告の財務諸表から除外し、損益計算書と同様な正味財産増減計算書(フロー式)を原則とすること、また寄付者の意図を明確にするため正味財産を二区分した点などを明らかにされた。 堀田和宏氏(近畿大学)「非営利組織のガバナンスとアカウンタビリティ」   堀田氏は、組織と経営者がプログラム—パフォーマンス測定・評価の視点や評価基準を自ら設定して「自己評価をする枠組み」を設定すること、さらにパフォーマンス評価を多次元の視点から「外部評価をする枠組み」を設定することの重要性を明らかにし、特に経営者の経営倫理の確保と社会的評価の枠組みの設定が求められることを主張された。   以上の報告に対し、興津裕康氏(近畿大学)の司会により、出席者からの多岐にわたる質問がなされ、活発な質疑応答を通して報告者の主旨が明確となり、出席者全員にとって有意義なひと時となった。 ⑵ 自由論題報告   報告者および報告テーマは次の通りである。 第1会場:司会・藤井秀樹氏(京都大学) 野口房子氏(県立長崎シーボルト大学)「高齢社会政策の二国間比較—日本とスウェーデン—」 依田俊伸氏(国士舘大学)「医療法人における出資と非営利性—最高裁平成15年6月27日決定を手がかりにして—」 成道秀雄氏(成蹊大学)「認定NPO法人の認定要件の検討」 第2会場:司会・小宮 徹氏(公認会計士) 用丸るみ子氏(税理士)「地域開発と公益活動のバランス」 吉田初恵氏(関西福祉科学大学)「介護保険制度改革に向けての論点」 北沢紀史夫氏(財団法人日本医薬情報センター)「日本医薬情報センターにおけるガバナンスの実際」 第3会場:司会・齋藤真哉氏(青山学院大学) 于 佳氏(九州産業大学大学院)「多国籍企業現地子会社の情報開示—現地国との調和—」 原田 隆氏(独立行政法人産業技術総合研究所)「公的アカウンタビリティと業績評価」 高橋選哉氏(吉備国際大学)「非営利組織体の活動報告」 西村友幸氏(釧路公立大学)「アソシエーションの中の官僚制—厚生労働省所管の社団法人における職員数の規定因—」 第4会場:司会・松倉達夫氏(ルーテル学院大学) 桜井政成氏(東京福祉大学)「非営利組織における理事会の義務と役割に関する理論的考察」 東郷 寛氏(バーミンガム大学大学院)「イギリス住宅協会の経営戦略」 橋本俊也氏(税理士)「非営利組織体の会計目的とディスクロージャー」 吉田忠彦氏(近畿大学)「中間支援組織の類型と課題」 ⑶ 研究部会報告 司会・原田満範氏(岡山商科大学) 東日本研究部会:主査・小島廣光氏(北海道大学)   「NPO,政府,企業間の戦略的パートナーシップ」 西日本研究部会:主査・吉田忠彦氏(近畿大学)   「地域と非営利組織のマネジメント」   なお、次年度は、松葉邦敏会長のもと(石崎忠司氏(中央大学)および成道秀雄氏(成蹊大学)が推進役)に設置された「公益法人の財源(贈与・遺贈等)に関する多角的研究」をテーマとした特別研究部会の報告が予定されており、その成果が期待される。 ⑷ 第3回学会賞・学術奨励賞   学会賞には小島廣光氏(北海道大学)の著作『政策形成とNPO法—問題,政策,そして政治』(有斐閣、2003年11月)が選定された。なお、今次は学術奨励賞は該当者なしであった。   4日には大会準備委員会のご尽力により、参加者は人間国宝十四代酒井田柿右衛門九州産業大学大学院芸術研究科教授の指導のもと「柿右衛門様式窯・窯開き」に立ち会う貴重な経験をさせて頂いたことを記して感謝申し上げたい。

  • 第1回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    1997.10.4 青山学院大学 統一論題 公益法人研究の現状と課題—公益法人研究の原点を巡って—  1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動  2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察  3 社会福祉法人会計の本質  公益法人研究学会(会長:守永誠治氏)の第1回大会は、1997年10月4日、青山学院大学青山キャンパスの11号館において開催された。  統一論題「公益法人研究の現状と課題─公益法人研究の原点を巡って─」のもと、興津裕康氏(近畿大学)の総合司会により二題の研究報告並びに討論が行われた。  また、自由論題の報告と記念講演も併せて行われた。 1 非営利セクターとしての公益法人の戦略行動    報告:吉田忠彦氏(近畿大学豊岡短期大学)  吉田氏は「非営利組織としての公益法人の戦略行動《と題し、公益法人を非営利セクターの中核として捉えた上で、その経営戦略を規定する要因と戦略の類型について報告された。すなわち、非営利組織は①自ら掲げる使命遂行を目的とするが、②一方では組織の存続・拡大の慣性も働き、マクロ的には③組織の生存領域及び規模は政府(主務官庁)の調整に大きく影響される、と分析。そうした環境に適応するために、非営利組織は事業構造の戦略、競争の戦略、協調戦略をとるべきだと強調した。ただ、それらの戦略は、サービスの受け手だけでなく、支払い手となる多様な関連他者からのフィードバック情報に基づいて策定されるため、吊声獲得や協調戦略が重視されなければならないと主張された。 2 公益法人会計の問題点と改質向上への一考察—アメリカ非営利法人会計基準との比較—    報告:若林茂信氏(東京経営短期大学)  若林氏は「公益法人会計の問題点と改質向上への一考察《と題して報告された。この中で氏は現在国際的に最高の水準にある、私的セクターに属する非営利法人を対象としたアメリカの会計基準の発展の軌跡から現状を展望、その顕著な特色として12項目を抽出。このうち、日本の公益法人(広義に想定)会計を改質向上させるために適切と思われる8項目を教訓として選定され、これを公益法人会計の問題点を考察する上での好個の研究資料として活用すべきであることを主張された。 3 社会福祉法人会計の本質—施設会計を中心として—    報告:松倉達夫氏(中部女子短期大学)  松倉氏は自由論題として「社会福祉法人会計の本質《をテーマに、特に施設会計を中心に報告された。現在社会福祉法人に適用されている経理規定準則は1976年に発表され、それ以前の会計指針に比して近代化し、改善されたが、なお実務上問題があることを、氏は次の事項を掲げて本質を追究し、問題点の理論的な指摘がなされた。①消費経済体、②受託者会計、③複式簿記の徹底、④発生主義会計、⑤経理責任の明確化、⑥管理組織の確立、⑦予算の重要性、⑧収支計算書と貸借対照表。  以上の報告のほか、統一論題を総括するパネルディスカッションが開かれ、松葉邦敏氏(成蹊大学)を座長として、報告者の吉田氏、若林氏に白井万佐夫氏(公認会計士)、永島公朗氏(産能短期大学)、朊部信男氏(産能短期大学)がパネラーとなり、大会参加者を交えて活発な討論が展開された。  また、今大会では武田昌輔氏(成蹊大学)が「公益法人課税の史的変遷と今日的課題」と題して記念講演をされ、大会に華をそえた。  この後、会場を青学会館に移して懇親会が催され、青山学院大学を代表して経営学部長の杉山学氏が挨拶、会田一雄氏(慶應義塾大学)による乾杯の発声があり、会員の親睦と学会の今後の発展を祈った。 第1回大会記

  • 第29回大会記 | 公益社団法人 非営利法人研究学会

    第29回大会記 2025年10月11~12日 熊本学園大学 統一論題 「地方創生と災害復興:非営利法人がつなぐ復興と発展の未来」 1 はじめに  (公社)非営利法人研究学会第29回全国大会が、2025年(令和 7 年)10月11日(土)・12日(日) の両日、熊本学園大学において開催された。本大会は「地方創生と災害復興:非営利法人がつなぐ 復興と発展の未来」を統一論題に掲げ、全国各地より多くの研究者及び実務家が参集し、活発な議 論が交わされた。 2 大会概要  大会前日の2025年10月10日(金)には、常任理事会および理事会が開催された。 2 日間の大会期間中は、自由論題報告、特別講演、統一論題報告・討論、社員総会、新理事会、特別委員会報告、スタディ・グループ報告、企画ワークショップ等からなるプログラムが組まれ、概ね予定通り進行した。    大会 1 日目は、自由論題報告により幕を開け、自治体外郭団体の運営課題や民間非営利活動に対する政府関与の変化など、制度と運営の両面から多様な視点が提示された。続く特別講演では、能登半島地震の事例をもとに、災害地支援における非営利組織の役割と課題について示唆に富む講演が行われ、参加者に深い印象を残した。    午後の統一論題報告では、災害復興における地方自治体と非営利法人の連携、中間支援組織の役割、被災地の記憶を次世代につなぐ取り組みなど、理論と実践を架橋する報告がなされた。これを受けた統一論題討論では、地域に根差した非営利法人の持続的な関与のあり方について、建設的な意見交換が展開された。その他、社員総会や新理事会、特別委員会報告(最終報告)が実施され、大会終了後には懇親会が開催された。  大会 2 日目の午前中は、 2 会場に分かれて自由論題報告が行われ、公会計、医療・福祉、地域産業、教育、地域防災といった各分野における非営利法人や公共組織をめぐる研究成果が報告された。    午後には、特別委員会報告(中間報告)およびスタディ・グループ報告(中間報告)が行われ、続いてスタディ・グループ報告(最終報告)が実施された。さらに、企画ワークショップとして、「地域における公益法人」をテーマに、新公益法人制度、ガバナンスおよび会計に関する報告とセッションが行われ、制度改革と現場実践を結ぶ議論が深化した。    熊本という被災経験を有する地域で開催された本大会は、非営利法人が担うべき役割を改めて問い直す機会となった。研究と実務、過去の災害と未来の地域社会をつなぐ本大会の成果は、今後の非営利法人研究および実践のさらなる発展に寄与するものとなった。 3 大会プログラムの実施状況 3 − 1  特別講演 講演者:藤井秀樹 氏(金沢学院大学副学長・京都大学名誉教授) 「災害地支援における非営利組織の役割―能登半島地震からの教訓―」    本講演では、能登半島地震において、非営利組織が能登特有の地理的孤立や長期化する避難生活に対して、組織の機動力を活かした個別支援や、コミュニティ維持の伴走者として重要な役割を果たした教訓から、非営利組織を「行政(公助)の隙間を埋める不可欠な存在」と位置づけ、平時から官民連携のプラットフォームと持続可能な組織基盤を構築することの重要性について論じられた。 3 − 2  統一論題報告及び討論 「地方創生と災害復興:非営利法人がつなぐ復興と発展の未来」 座長:日野修造 氏(熊本学園大学) 第 1 報告者 澤田道夫 氏(熊本県立大学) 「災害復興における地方自治体と非営利法人の連携」 第 2 報告者 吉田忠彦 氏(近畿大学) 「災害被災地の活性化と中間支援組織―ネットワーク化と事業支援―」 第 3 報告者 澤田成章 氏(東海大学) 「未来へつなぐ被災地の記憶―沖永良部台風の記憶と記録を次世代にどう繋ぐか―」  本セッションは、非営利組織が地域社会で果たすべき役割を多角的に議論することを目的に開催された。2016年の熊本地震をはじめ、各地で頻発する災害の経験を踏まえ、単なる復旧を超えた「復興」や「創生」において、行政・住民・現場を多層的に「つなぐ」非営利法人の重要性について議論が行われた。制度的視点(自治体との連携や政策的基盤:澤田道夫 氏)および実践的視点(中間支援組織のネットワークや現場の課題:吉田忠彦 氏)、継承的視点(記憶のアーカイブ化や未来への防災教育:澤田成章 氏)の 3 つの視点から報告および討論が行われ、非営利法人が単なる補完的なものではなく、社会に不可欠な主体として位置づけられるための可能性を問い直すものであった。 3 − 3  自由論題 [編集者注]    自由論題報告については、各報告者からご提供いただいた原稿をもとに編集・掲載しております。そのため、報告ごとに視点や記述スタイルが必ずしも統一されていない箇所がありますことを、あらかじめご承知おきください。 3 − 3 − 1  大会 1 日目 ―司会:亀岡保夫 氏(公認会計士) ① 吉永光利 氏(九州共立大学) 「自治体外郭団体の現状と諸制度に対する運営課題―自己組織化現象におけるゆらぎの視点から―」    本報告は、指定管理者制度や公益法人制度をめぐる改革過程において生じる「制度的ゆらぎ」に着目し、自治体外郭団体の運営実態を検討したものである。この「制度的ゆらぎ」には、運営の不安定化をもたらす側面と、新たな運営秩序を生み出す契機となる側面がある。こうした二面性を踏まえつつ、外郭団体が制度変動の下で試行錯誤を重ねている実態を整理した。なお、この二面性に関しては、吉永[2025]で指摘しているところである。報告後の討論では、自治体の立場が必ずしも一貫していない点を踏まえ、自治体を外郭団体の内部要因ではなく、外部環境として捉える視点の有効性が指摘された。 ② 初谷 勇 氏(大阪商業大学) 「民間非営利活動に対する政府関与の変化:法人(団体)設立等に関する準拠主義を手がかりとして」    本報告では、「民間非営利活動に対する政府関与はどのように変化してきているか」とのリサーチクエスチョンについて、「法人(団体)設立等に関する準拠主義」(以下「準拠主義」)を手がかりとして考察がなされた。サブクエスチョンとして①民間非営利活動(組織)に対する政府関与とは、何を対象にどのような動機に基づいて行われるか、②準拠主義の名称と行政行為の分類との関係は、③準拠主義はどのように分類されてきたか、④準拠主義の分類で観察される問題点は何か、⑤準拠主義と政府関与は、NPO法人と宗教法人においてどのように推移したか、またそれはなぜか等の諸点が検討され、準拠主義の階梯的理解やその内の「認証」の政策的含意等が提示された。 3 − 3 − 2  大会 2 日目 (第 1 会場)―司会:宮本幸平 氏(神戸学院大学) ① 滝沢 凜 氏(福岡大学) 「公会計におけるリスク開示に係る一考察」    本研究は、公的組織によるリスクを伴う政策に焦点を当てて、事後的な財務報告に依存したアカウンタビリティの限界を指摘するものである。現行の財務報告制度は、事前にリスク開示を果たすものではないことから、市民の「知る権利」に反する状況が生まれているといえる。本研究では、石川県能登町における「地方創生臨時交付金」や佐賀県玄海町における「原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業交付金」の事例を取り上げ、「ハイリスク・ハイリターンな政策の抑止」や「リスクの世代間公平性」といった視点から財務報告が不十分であるという示唆を得ている。報告をふまえて、政策の「リスク」および「リターン」が具体的に指す内容や、「ソーシャルインパクト」との関連性等について質問が出された。 ② 谷光 透 氏(川崎医療福祉大学) 「新型コロナウイルス補助金が地方独立行政法人運営の病院財務に与えた影響―岡山市立総合医療 センターの事例―」    本報告では、地方独立行政法人岡山市立総合医療センターを事例に、新型コロナウイルス補助金が財務に与えた影響を分析した。    法人化後の第 1 期から第 5 期は赤字が続いていたが、新型コロナウイルス感染症に対応した第 7 期から第 9 期は、病床確保事業の交付金を含む補助金等収益により、大幅な黒字を達成した。しかし、第10期は、補助金が大幅に減少し、物価高騰や人件費の増加により、約499百万円の大幅な当期総損失を計上した。    過大に支給された可能性のある新型コロナ関連補助金の大部分は、内部留保されず、法人設立後の赤字の埋め合わせに充当されており、地方独立行政法人化後の独立経営が不十分であるとした。 ③ 東郷 寛 氏(近畿大学)・團 泰雄 氏(近畿大学) 「公共的価値創造に向けた非営利組織の戦略的行為」    本研究は、非営利組織(NPO)の視点から、公民パートナーシップ(PPP)を通じた多様な公共的価値(PV)創出の有効条件を明らかにすることを目的とする。兵庫県内で活動するNPO 2 団体を対象に、PV創造に向けた戦略的行為を分析した結果、以下の知見を得た。第一に、対象組織はPPPに内在する制度ロジックを自組織のミッションに適合させることで、行政から資源と正統性を獲得していた。第二に、PPPを通じて構築した組織能力を環境変化に応じて再構成する「ダイナミック・ケイパビリティ(動的能力)」を発揮することが、多様なPVの創造に寄与していた。今後の課題として、フロアーからの指摘に基づき、公的資金の受領に伴うNPOの行政へのアカウンタビリティ履行状況を分析視点に組み込み、有効なPV創出の条件にかかる議論の精緻化を図る必要がある。 3 − 3 − 3  大会 2 日目(第 2 会場) ―司会:澤田道夫 氏(熊本県立大学) ① 山田雄久 氏(近畿大学) 「伝統産業を通じた地域経済システムの形成―佐賀県有田町の事例を中心に―」    本報告は、日本の代表的伝統産業である佐賀県有田焼産地を対象に、バブル崩壊後の需要減退から産業観光を軸とした新たな地域経済システムへと再編される過程を検証するものである。産地における観光地化が新たな地域経済の経営主体を生み出し、産業観光を軸とした地域経済の新しいシステムを形成しつつある現状について検討を加えながら、重層的な主体による取り組みが、伝統産業の再生と新たな地域経済システム形成に果たす役割を明らかにするものである。 ② 菅原浩信 氏(北海学園大学) 「北海道都市部のふれあいサロンにおける参加者の満足度の向上」    本報告では、ふれあいサロンの参加者における満足度に着目し、どうすれば参加者の満足度が向上するのか明らかにすることを目的とした。そのため、北海道内11市のふれあいサロンの参加者に対して実施したアンケート調査票データの分析を行った。その結果、①特定の場所でないと実施が容易ではないプログラムにも対応すること、②試しに参加費を無料とする機会を設けてみること、③スタッフの側から参加者に対し積極的なアプローチを行うこと、④ふれあいサロンでやってほしいプログラムの提案を出してもらい、それを採用することなどにより、参加者の満足度の向上を図っていくことが必要であると考えられる。 ③ 井寺美穂 氏(熊本県立大学) 「課題探究教育から生まれた地域防災活動の実践」    本報告は、若者が主体的・協働的に課題解決に取り組む「課題探究学習」を事例に、地域防災力を高める手法を考察するものである。具体的には、豪雨災害の被災地において、中高生が「防災運動会」を企画・実施し、それらの競技を通じて幅広い世代が楽しみながら防災意識を高める試みを事例に考察が進められている。防災活動と親和性の高い活動が住民参加を促すことや、地域のキーパーソンの協力、そして主体的に行動できる「公共的人材」の育成が、持続可能な地域防災には不可欠であることが主張された。 3 − 4  特別委員会報告 3 − 4 − 1  最終報告 座長:柴 健次 氏(関西大学) 高等教育機関(大学):「大学の経営とガバナンス」 堀田和宏 氏(近畿大学)・竹中 徹 氏(京都文教大学)・工藤栄一郎 氏(西南学院大学) 青木志帆 氏(東京大学)・亀岡保夫 氏(公認会計士)・小林麻理 氏(早稲田大学)    本報告は、日本の大学における経営とガバナンスの現状と課題を包括的に論じたものである 報告では、少子化等の環境変化の中で、大学の公共性と持続可能性を両立させるための経営体への転換と、ガバナンスと経営の高度な両立の重要性について言及がなされた。 3 − 4 − 2  中間報告 座長:尾上選哉 氏(日本大学) 「公益法人制度改革」 久保秀雄 氏(京都産業大学)・出口正之 氏(国立民族学博物館)・中村雅浩 氏(税理士) 日野修造 氏(熊本学園大学)・藤井 誠 氏(法政大学)・古市雄一朗 氏(大原大学院大学)    本報告は、2025年 4 月施行の改正公益法人制度(令和 6 年改正)を受け、民間公益活動の更なる進展を目指して、制度の現状や課題、解決策を検討しようとするものである。本報告では、これらの改正等が、過去の硬直的な運用を是正し、法人の自主性を尊重するものであると評価しつつ、実運用上の課題を考察している。 3 − 5  スタディ・グループ報告 3 − 5 − 1  中間報告 座長:上松公雄 氏(税理士・大原大学院大学) 「非営利法人課税に対する実務的視点及び海外制度からの検討」 白土英成 氏(公認会計士・税理士)・田口安克 氏(公認会計士・税理士) 東条美和 氏(千葉商科大学)・安田京子 氏(税理士) 和田奈穂実 氏(國立成功大學歴史研究所博士班三年級・文藻外語大學日本語系兼任講師)    本報告は、アジア諸国の非営利法人制度の整理と、実務的視点からの課税上の問題提起が行われた。具体的にはシンガポールと台湾を対象とし、シンガポールについては、法人格の種類(保証有限責任会社等)よりも「Charity(慈善団体)」や「IPC(公益施設)」の地位が免税や寄附金控除において重要である点や、国家と連携した特殊な体制について報告された。また、国内実務の検討では、一時預かり事業の収益事業該当性や、収益事業から公益事業への支出における「みなし寄附金」の妥当性、役員による資産移動の給与該当性など、複数の判例・裁決事例を基に、制度の解釈や適正な経理処理のあり方を検証している。 3 − 5 − 2  最終報告 座長:境 裕治 氏(第一勧業信用組合) 「中小企業等協同組合のガバナンスに係る研究―情報開示による社会的モニタリングを含んで―」 齋藤真哉 氏(横浜国立大学)・鷹野宏行 氏(武蔵野大学)    本報告は、中小企業等協同組合のガバナンス構造とその課題を多角的に分析し、その改善策について考察を進めてきた結果について、特に信用組合と共済事業に焦点を当て、ガバナンスの現状と今後の方向性について最終提言を行うものであった。 3 − 6  企画ワークショップ 司会:松前江里子 氏(日本公認会計士協会テクニカルディレクター(非営利担当)) 「地域における公益法人―社会的課題解決の促進に向けた新公益法人制度とガバナンス及び会計―」 髙角健志 氏(内閣府/公益認定等委員会事務局/事務局長) 菅田裕之 氏(日本公認会計士協会/常務理事(非営利担当)) 山田健一郎 氏(公益財団法人佐賀未来創造基金/理事長) 永原聖也 氏(熊本経済同友会/常任幹事/まちづくり委員会委員長・九州電力/執行役員/熊本支店長) 橋本誠也 氏(熊本県/理事/総務部市町村・税務局長)    本ワークショップでは、2025年 4 月施行の新公益法人制度下で、地域課題解決の担い手としての公益法人が果たすべき役割と展望について議論された。前半は内閣府より、収支相償原則の見直しや「公益充実資金」の創設といった財務規律の柔軟化、行政手続の簡素化、外部理事導入によるガバナンス強化など、制度改正の要点が報告された。また、後半は日本公認会計士協会より、新制度と一体的に開発された「新公益法人会計基準」および「モデル会計基準」の意義が示され、組織結合(合併)やガバナンス機能としての会計のあり方が提示された。さらに、地域再生推進法人等の具体例を通じ、行政や経済界との連携による地方創生と寄附促進の方策について、実務家を交えた多角的な検討が行われた。 4  謝辞    非営利法人研究学会第29回全国大会準備委員会より、謹んで御礼申し上げます。    本大会は、熊本地震から10年目を迎えつつある熊本の地で、災害復興と地域再生における非営利法人の役割を問い直すべく開催いたしました。全国から多くの研究者・実務家の皆様にご参集いただき、対面での熱意あふれる議論を展開できたことは、準備委員会として最大の喜びであります。    初日の自由論題や特別講演では、能登半島地震の教訓をもとに、災害地支援における非営利組織の役割が共有され、続く統一論題では地方創生と災害復興の連続性について、理論と実践の両面から深い洞察が得られました。 2 日目も多岐にわたる分野で実証的な報告が相次ぎ、制度的課題から地域防災まで、重層的な議論を深めることができました。    本大会が、平時からのネットワーク構築や地域に根差した組織の持続可能性を再考する一助となれば幸いです。開催にあたり多大なるご支援を賜りました事務局をはじめとした関係諸機関、そして何よりご参加いただいた皆様に、心より深く感謝申し上げます。熊本での交流が、今後の非営利法人研究と地域社会の発展に寄与することを願い、大会の総括と謝辞とさせていただきます。 2026年 4 月23日                     (公社)非営利法人研究学会第29回全国大会準備委員会    準備委員長 日野 修造(熊本学園大学 教授)   森 美智代(熊本県立大学 名誉教授) 伊佐  淳(久留米大学 教授)    川野 祐二(久留米大学 教授)    黒木 誉之(長崎県立大学 教授)   澤田 道夫(熊本県立大学 教授)   井寺 美穂(熊本県立大学 准教授) 

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