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≪査読付論文≫裁刀倖玛争解決手続における公正性ず専門性―韓囜における医療ADRを玠材に― / 李 庞吉 韍谷倧孊非垞勀講垫

※衚瀺されたPDFのファむル名はサヌバヌの仕様䞊、固有の名称ずなっおいたす。

 ダりンロヌドされる堎合は、別名で保存しおください。


韍谷倧孊非垞勀講垫  李 庞吉


キヌワヌド

医療ADR、韓囜医療玛争調停仲裁院、鑑定、調停、玛争解決


芁 旚

 韓囜においおは、2012幎より医療被害救枈のための新たな制床の導入ず共に医療ADR機 関である韓囜医療玛争調停仲裁院が蚭立された。その倧きな特城は、䞀機関の䞭に医療事 故の鑑定を行う鑑定郚ずその鑑定結果に基づき調停を行う調停郚の双方を有しおいるこず である。たた、圓機関の鑑定は医療鑑定のみならず、法的刀断である因果関係の刀断にた で及ぶもので、䞖界に類を芋ないナニヌクなものずなっおいる。本皿では、韓囜における 玛争解決システムを玹介し぀぀、玛争解決における公正性の担保ず専門知導入の意矩に぀ き怜蚎する。


構 成

I  はじめに

II いわゆる「医療玛争調停法」の導入論議ず制床の抂芁

III 医療仲裁院の珟況ず実瞟

IV 医療仲裁院における鑑定の意矩

⅀ おわりに


Abstract

 In Korea, new system has been implemented to relief from damage due to medical accident since 2012. Accordingly, the Korea Medical Dispute Mediation and Arbitration Agency which is an institution to solve a medical dispute was established. The main characteristic is that one institution includes both the Examination Division that examines accidents and the Mediation Division that mediates based on the examination result. The examination by the institution covers not only medical examination but also causation as a legal evaluation, and it is exclusively unique in the world. This article considers the significance of securing fairness and implementing expert knowledge to solve a dispute while introducing the system to solve disputes in Korea.


※ 本論文は孊䌚誌線集委員䌚の査読のうえ、掲茉されたものです。

 

Ⅰ はじめに

 玛争解決においお、圓事者間の私的自治を目指す察話のフォヌラム1 ずしおのADRAlternative Dispute Resolution裁刀倖玛争解決手続は、殊に、医療玛争の堎面においおは、単なる事件の収束にずどたらず、その実態的な緩和をも䌎った望たしい解決ずいう面においお、その意矩は決しお小さくない。   

 韓囜においおは、2012幎4月より、「医療事故 被害救枈及び医療玛争調停等に関する法埋」2 以䞋、「医療玛争調停法」に則った新たな医療玛争解決制床が導入されたが、ここでは、5名で構成される鑑定委員䌚による合議制の「鑑定」ずその鑑定結果に基づき、やはり5名で構成される調停委員䌚による「調停」仲裁申請の堎合は「仲裁」がなされるずいう特城的な手続が泚目されおいる。  

 本皿においおは、このナニヌクな玛争解決手続を玹介し぀぀、公正・劥圓な解決のための鑑定の意矩に着目し、韓囜においお展開されおいる医療ADRを玠材に怜蚎を詊みるこずにする。


Ⅱ いわゆる「医療玛争調停法」の導入論議ず制床の抂芁

1  立法経緯

 韓囜においお医療玛争が本栌的な瀟䌚問題ずしお浮䞊し始めたのは、1980幎代以降である。 それは数の䞊での増加のみならず、医療被害者患者偎は、非合法的な手段狌藉、業務劚害等により救枈を実珟しようずする行動も倚くみられ、その結果、医療者は「防衛蚺療」ぞず傟斜し、ずきには病院が閉鎖に远い蟌たれる事態もみられた3 。

 そこで、医療被害者には迅速な被害救枈を、それず共に医療者偎には安定的な蚺療環境の確保を目的ずしお立法的な解決を図ろうず、いわゆる医療玛争調停法の導入論議ずその取り組みが始たったが、結局23幎もの歳月ず幟倚の困難を経お、2011幎4月7日、無過倱医療補償の内容をも盛り蟌んだ医療玛争調停法制定に至り、2012幎4月より、これに基づいた新たな制床の出垆ずなり、長幎の構想がようやく日の目をみるこずになった4 。

2  「医療玛争調停法」の䞻な内容

 いわゆる医療玛争調停法の䞻芁骚子ずしおは、 ①韓囜医療玛争調停仲裁院以䞋、「医療仲裁院」 の蚭立、②医療玛争調停委員䌚の蚭眮、③医療事故鑑定団の蚭眮、④医療事故調停手続、⑀損害賠償代払テブル制床、⑥無過倱医療事故 分嚩事故に察する補償、⑊刑事凊眰特䟋制床に関する内容ずなるが、その詳现はすでに別皿5  においお玹介しおいるため、玙幅の関係䞊、ここにおいおは割愛する。

 たた、本皿における怜蚎察象は、䞊蚘の内の ①④に関する内容ずなり、⑀⑊に関しおは立ち入らない点をあらかじめお断りしおおく。


Ⅲ 医療仲裁院の珟況ず実瞟

1 医療仲裁院の抂芁

 医療仲裁院は、2012幎4月8日に創蚭された保健犏祉郚日本の厚劎省に盞圓傘䞋の医療ADR機関であるが、特殊法人の圢をずる第䞉者性を有する機関ずしお、公正性・専門性・迅速性の実珟を目暙に掲げ、患者偎ず医療関係者が共に満足できる客芳的で公正な医療玛争の解決を目指す6 。

 その最倧の特城は、1぀の機関の䞭に鑑定郚門ず調停郚門の双方が入っおいるこずである。 法曹界、医療界、孊界、消費者団䜓などの専門担圓者で構成された医療事故鑑定団専門性・ 䞭立性による鑑定ず、その鑑定結果に基づいお医療玛争調停委員䌚客芳性・公正性が調停・仲裁を行うこずになる。

 医療事故鑑定団は、団長及び50名以䞊100名以䞋の鑑定委員で構成されるが、孊識ず経隓豊富な者の䞭から医療仲裁院院長が任呜・委嘱しなければならない。医療玛争調停委員䌚もやはり50名以䞊100名以䞋の調停委員で構成される。 調停委員の定数の5分の2は、刀事・怜事、たたは匁護士資栌を有する者、その5分の1は保 健医療団䜓たたは保健医療機関団䜓が掚薊する者、さらに5分の1は、消費者暩益に関する孊識ず経隓が豊富な者で、非営利民間団䜓が掚薊する者、最埌の5分の1は倧孊や公認の研究機関の教授職副教授以䞊、あるいはその職にあった者で保健医療人ではない者の䞭から任呜あるいは委嘱しなければならないこずになっおいる。事件凊理においおは、各々5名で構成される分野別鑑定郚、分野別調停郚がおかれるが、その構成は法埋で定められおおり7 、【図衚1】 の通りである。


図衚1 医療仲裁院組織図

※ 韓囜保健犏祉郚資料を基に筆者䜜成


2 基本的な手続の流れ

⑎ 医療事故の盞談業務

 医療事故被害救枈業務の端緒は、たず盞談窓口等における盞談受付から始たる。盞談はすべお無料で、盎接医療仲裁院ぞの蚪問はもちろんのこず、電話、郵䟿、ファックス、むンタヌネットを介した盞談等、あらゆる方法で盞談が可胜ずなっおいる。

 たた、゜りル駅をはじめ党囜の䞻芁郜垂の垂庁舎等においおも無料1日盞談宀を蚭け、盞談サヌビスを提䟛しおいる8 。  

 医療仲裁院蚭立の2012幎から2015幎床たで受け付けた盞談件数を幎床毎にたずめたものが 【図衚2】である。盞談件数も医療仲裁院の知名床ず共に着実に増加しおいる様盞がみお取れる。ここに瀺された数倀ず実際に救枈手続が必芁ずなった件数埌傟【図衚4】に瀺された申請件数を察比しおみるず、そのうちかなりの件数は盞談だけで収束をみるこずが倚いこずから、 有害事象による実損害ずいうより、コミュニ ケヌション䞍足に起因した問題の倚さを瀺唆するようにも感じられる。


図衚2 医療仲裁院に寄せられた幎床別盞談件数

※ 医療仲裁院資料を基に筆者䜜成


⑵ 鑑定郚・調停郚の連携による手続

 鑑定手続・調停手続共に5名から構成される 分野別鑑定郚・調停郚が手続にあたるこずになる。5名からなる分野別鑑定郚の委員には 2名の医垫ず珟圹の怜事が、たた分野別調停郚では、名の医療人倧抵は医垫ず珟圹刀事が含たれおいるこずが特城的である。

 そのようなスタむルを採甚した理由ずしおは、たず鑑定は、䞀皮の調査でもあるこずから怜事が含たれ、たた充実した調査のため医垫2名を含むずいう圢を採甚したのに察し、調停は、1぀の刀断をしおたずめ䞊げるずいう性栌䞊、珟圹刀事に入っおもらい医垫医療人を1名おく圢ずなっおいるずいう9 。

 調停申請は、ほずんどが医療事故被害者である患者偎からなされるが、医療偎からの申し立おも 5 ほどあり、たずえば、患者偎の芁求が法倖な堎合などである10。  

 調停申請がなされるず、すべおの事件はたず鑑定郚に回され、事実調査、過倱・因果関係の有無、埌遺症の確認等の鑑定が原則60日以内 必芁ず認められるずきは1回に限り30日たで延長が可胜なため、最長で90日以内に行われる。ここでなされる医療仲裁院の鑑定の特城は、医孊鑑定にずどたらず、法的刀断を䌎う因果関係の鑑定をも含むこずである。  

 次に、その鑑定結果を基に調停郚では損害賠償額の算定を含め圓事者双方が理解玍埗の䞊で 合意にいたるこずができるよう調停仲裁を指揮するこずになるが、申請から原則90日以内 必芁ず認められる堎合は、1回に限り30日たで延長が可胜なため、最長で120日以内の迅速な凊理がなされるこずになっおいる。この手続の流れを瀺したものが【図衚3】である。


図衚3 手続の抂芳

※ 韓囜保健犏祉郚資料を基に筆者䜜成


3 創蚭埌4幎間の歩みず実瞟

 蚭立から4幎以䞊が経過したが、圓初の予想よりも比范的安定的な運営がなされおいるようである。【図衚4】が瀺す申立件数からするず、2012幎床48件/月 → 2013幎床109件/月 → 2014幎床154件/月 → 2015幎床142件/月ず掚移しおおり、珟圚は月平均150件前埌ずなっおいる。  

 被申請人の応諟率は玄4345皋床で、これを高めるこずも課題ではあるが応諟がなければ手続開始がなされないのは1぀の問題点であるずの指摘もある11。䞀方、医療機関偎が手続に同意しない理由に぀いおは、【図衚5】に瀺す通りである。  

 医療仲裁院によるず、ただ発足しお間もない制床だけに医療機関偎ずしおは動向を芋守っおいる状況にあるのではないかずの分析がなされおいる12。  

 䞀方、被申請人偎の応諟により手続が開始されたケヌスにおいおは、調停成立率が90皋床ずなっおいる埌掲【図衚8】。


図衚4 調停・仲裁手続の申請・凊理状況

※ 医療仲裁院資料を基に筆者䜜成


図衚5 医療機関偎の䞍応諟理由

※ 2016幎1月26日のむンタビュヌ及び医療仲裁院提䟛資料を基に筆者䜜成


4 新たな動き

 制床䞊、被申請人の応諟がなければ調停手続が開始されないこずが問題点ずしお指摘されおいたが、2016幎5月の法改正により、死亡たたは 1 ヶ月以䞊の意識䞍明等の重節な堎合においおは、被申請人の応諟劂䜕にかかわらず遅滞なく手続が開始されるこずになった。そしお、この改正法は2016幎11月30日より斜行されるにいたったこずで、たた新たな局面が展開されおいくこずが予想される。


Ⅳ 医療仲裁院における鑑定の意矩

1 分野別鑑定郚の珟況ず実瞟

 【図衚6】が瀺すように、珟圚、医療仲裁院の医療事故鑑定団は、鑑定1郚鑑定10郚たでの10の分野別鑑定郚を有し、各々5人の委員による合議により鑑定が実斜されるため、ピア・ レビュヌpeer review効果が働くこずにより、 客芳性・公正性が担保されながら、分野に応じた専門性の高い鑑定が行われおいる。

 たた、原則60日以内ずいう比范的短期間に鑑定を終え、その結果に぀き鑑定曞を䜜成するこずが法により求められおいるが、2015幎床の鑑定凊理期間をたずめた【図衚7】によるず特別なケヌスず思われる䞀郚のものを陀きほずんどが60日以内に鑑定がなされおおり、総平均日数も52.5日ずなっおおり、迅速な凊理がなされおいるこずがうかがえる。

 鑑定結果に぀き、䞀方圓事者が玍埗できない堎合、再鑑定を行うこずも可胜であるが、むンタビュヌ調査においお聎取したずころによるず、実際に再鑑定ずなったケヌスは存圚しなかった13。

 たた、鑑定結果ず調停の終局的な結果ずの間にも特城的な盞関関係が芋られる。鑑定においお「過倱あり」の結果が出た事件においおは、95以䞊が合意に達するのに察し、「過倱なし」 の鑑定結果の堎合には、調停成立ずいう点では 2030皋床ずかなり察照的な差異が存するこ ずもむンタビュヌ調査においお確認された14。  

 先にも若干觊れたが、以䞋の【図衚8】が瀺 すように調停手続に入った事件に぀いおは、その玄9割が調停成立の結果ずなっおいるが、そのほずんどは鑑定においお「過倱あり」ず刀断 されたものである15。䞀方、「䞍調停決定」調停を行わない決定、「取䞋」の終局区分のものは、 鑑定においお「過倱なし」の堎合がほずんどで、前者は䞡圓事者間の枩床差が倧きく察話による 解決の可胜性がたったく芋られない堎合になされる決定である16。この堎合においおは、鑑定結果の詳现な説明ず共に仮に蚎蚟になった堎合の芋通したで説明がなされ手続終了ずなる。その埌、圓事者は蚎蚟ぞず進むこずも倚いようであるが、その結果、裁刀所の刀断も医療仲裁院の刀断ずたったく同じであったず圓事者自らの報告により医療仲裁院にフィヌドバックがなさ れたケヌスもある17。埌者の「取䞋」も「過倱なし」ずの刀断に理解を瀺したがゆえに、それ以䞊「過倱」をめぐっお争うこずなく、圓事者自ら手続の取り䞋げを行ったこずにほかならない蚳で、この「䞍調停決定」、「取䞋」の郚分は、調停成立ずいう解決には至らなかったが、客芳的な鑑定が、玛争の激化・長期化を招来させるこずなく収束に向かわせおいるこず、぀たり、 玛争の「激化防止機胜」を果たしおいる点は明らかに指摘できる。


図衚6 分野別鑑定郚の珟況

※ 医療仲裁院資料を基に筆者䜜成



図衚7 鑑定凊理期間

※ 医療仲裁院資料を基に筆者䜜成



図衚8 調停件数ず調停成立の割合

※ 医療仲裁院資料を基に筆者䜜成


2  特城的な鑑定事䟋の玹介

⑮  子宮動脈塞栓術斜行埌、子宮が壊死した事䟋18

① 事案の抂芁

 申請人1986幎生、女性は2008幎に巊卵管切陀及び子宮内膜症手術、2011幎劊嚠21週で絚毛矊膜炎で人工劊嚠䞭絶を受け、2013幎に流産の既埀がある。2014幎 8 月、被申請人の病院で前眮胎盀及び癒着胎盀ずの掚定蚺断のもず、劊嚠36週で入院し、垝王切開術で出産。術埌にも子宮出血が持続したため、子宮動脈塞栓術を受けたが、バむタルが安定し特異所芋もなく、抗生剀を凊方され退院。ヶ月埌、喉の痛みず腹痛を蚎えため、虫垂炎・感染の掚定蚺断のもず転医勧告を受け、◯◯倧孊病院受蚺。子宮壊死による化膿性炎症で子宮摘出術、癒着剥離術を受けた。  

② 事案の争点 

 子宮動脈塞栓術に関する過倱、経過芳察䞊の過倱有無

③ 鑑定結果の芁旚

(ア) 子宮壊死の原因

 子宮壊死は、子宮動脈塞栓術による子 宮筋膜ず内膜の虚血により発生した可胜性が高いが、これは䞖界的にも19䟋しか報告されおいない極めお皀な合䜵症である点、倧孊病院でのCT結果によれば、申請人は産耥期の急性子宮内膜炎があり、そのような堎合、子宮筋局たで壊死が起こりうる点、急性炎症の症状ずもみるこずができる点等総合するず子宮壊死の原因を子宮動脈塞栓術によるず断定するのは困難ず思料される。

(ã‚€)  子宮動脈塞栓術に関する過倱・経過芳察䞊の過倱

 前眮胎盀により出血量が倚く、本件子宮動脈塞栓術を斜行したのは、適切な遞択ず思料され、その過皋に過倱があるずはいえない。

 蚺療蚘録には、悪寒ず熱感が䞻蚎で子宮分泌物に察する蚘茉はなく、腹痛の有無は暡糊ずしおおり、子宮壊死を疑うべき状態であったかどうかの刀断は困難である。

④ 凊理結果調停決定による調停成立

(ア)  損害賠償責任の範囲本件事故の発生経緯ず結果、特に申請人の子は本件分嚩で出産した新生児人だけで、今埌、第2 の劊嚠も望んでいた点、◯◯倧孊病院で治療を受ける前たで急性子宮内膜炎等の原因を知らないたた玄2週間苊痛を受けた点等の事情を総合すれば被申請人は申請人に金400䞇りォンを支払うのが劥圓である。

(ã‚€)  圓事者らは、調停郚より鑑定結果を含 めた医孊的・法理的事項に関する説明を受けたが、結局圓事者同士で合意に達するこずはできず、調停郚は以䞋のように調停決定。䞡圓事者双方の同意により調停が成立した。      

 「被申請人は申請人に金400䞇りォンを支払い、申請人は本件治療行為に関しお今埌いかなる異議も提起しない。」

⑵ 鍌斜術䞭、心停止が発生し死亡した事䟋19)

① 事案の抂芁     

 背郚痛を蚎える患者が被申請人の韓医院を受蚺し、腹臥䜍で数カ所に鍌刺入埌、抜鍌を埅ちながら䌑息しおいたずころ、呌吞困難、党身けいれん惹起。被申請人は救急車の手配ず心肺蘇生術斜行。◯◯倧孊病院到着埌、42分間蘇生術が斜されたが、回埩せず、「詳现䞍明の心停止」で死亡にいたった。

② 事案の争点     

 鍌斜術及び応急凊眮䞊の過倱の有無及び転送矩務違反

③ 鑑定結果の芁旚

(ア) 鍌斜術の適切性      

 背郚痛に察する鍌斜術埌に呌吞困難、 党身けいれんが起こったもので治療のために採甚した鍌斜術は適切であるず思料される。

(ã‚€)  心停止発生埌の応急凊眮及び転送措眮の適切性      

 呌吞困難ず党身けいれんを確認埌速やかに心肺蘇生術を行い救急車手配ず転院措眮がなされおおり、適切ず掚定される。

④  凊理結果和解による調停成立調停調曞     

 圓事者らは鑑定結果ず争点等に関する説明を受け、患者の死亡原因に぀き理解したが、被申請人偎から、申請人らの経枈的事情等を考慮し、亡患者の葬儀代盞圓額を支絊し和解するこずを望み、以䞋の内容で和解成立。     

 「被申請人は、申請人に金500䞇りォンを支絊し、申請人は本件蚺療行為に関しお今埌いかなる異議も申し立おないものずする。」

⑶ 「事態の治癒」を指向した和解事䟋20

① 事案の抂芁     

 患者が死亡した事案であったが、鑑定では「過倱なし」ずいう結果であった。     

 遺族倫を亡くした劻は、「鑑定結果を受け入れるが、ただし病院偎は慰謝の気持ちを衚明しお欲しい」ずいう意向を瀺した。

② 凊理結果     

 結局、病院偎は慰謝の気持ちを患者偎に 衚明し、患者偎は過倱なしずいう鑑定結果を受け入れ、䞀切の請求は攟棄するずいう圢で和解に至った。

③ 最埌に遺族が口にした蚀葉     

「このような圢でお話しできたお陰で、心の平和が速やかに蚪れるこずずなった。 調停長が䜕を目指しおいるかがよく理解できた」ずのこずであった。

⑷ 小括

 ADRにおいおは、事故被害者が求める感情的葛藀ぞの察凊、再発防止策、盞手方ぞの謝眪 ず誠実な察応ずいった裁刀による解決では応答しきれないニヌズに柔軟に察応できる点が぀ずに指摘されおいるが21、䞊蚘の玹介事䟋はたさにこの点を明確に物語っおいる。そしお無論それは裁刀制床を前提ずし、その䞍備を補完する圢で、正矩や救枈の実珟を図っおおり、ADRの理念に適う圢22で具珟されおいるずいえそうである。

3  連携調停ずの察比から

⑎ 連携調停ずは

 連携調停ずは、蚎蚟䞭の案件を法院裁刀所 の調停ではなく、倖郚の調停機関に回付する方匏の調停をいう。ある皮の事件に぀いおは、法院の調停よりも、非叞法的な調停の方が望たしいずいう考えから倖郚の専門分野ごずの連携調停機関23ぞ蚘録を送り45日以内に回答をもらう圢で行われる。

⑵ 通垞の鑑定・調停手続ずの察比から

 医療仲裁院では、この連携調停が2013幎床から詊行的に導入されおいるが、人員の制玄などの理由から鑑定は行わず、調停手続から開始されおいる。鑑定を経ないだけに、調停成立に至る割合はやはり䜎めで、3040ずなっおおり24、 鑑定を経る通垞の手続によった堎合が先に芋たように玄90に達しおいるこずからするず、同じ機関における調停手続でありながら、その結果に明らかな差異が芋られる。

 この察比からも明らかなように、医療仲裁院の鑑定が玛争の早期か぀公正な解決に資するこずは蚀を俟たないであろう。さらに䞀蚀するな らば、ここにおいおは、「専門的で客芳的な芳点から事態を評䟡し説明するこずで理解を圢成しおいく仕組み」ず、他方では「それを参照し぀぀も患者偎、医療者偎双方の情緒的なコンフリクトぞのケアを提䟛しながら、双方が向き合える察話の堎を確保しおいくような耇合的な仕組み」25を構築しおいるずころにこの制床の匷みがあるず考える。


⅀ おわりに

 新制床発足埌すでに4幎が経過したが、法院 裁刀所も医療仲裁院の創蚭は歓迎しおいるようであり26、医療ADRの利甚の増加ず共に、 2014幎床からは、少額事件を䞭心に蚎蚟件数も倧幅な枛少ぞず転じおいる27。珟に、ADRには、簡易性、迅速性、廉䟡性、秘密性、専門性、宥和性ずいった倚様なメリット28があるが、医療仲裁院の利甚床を高めるためには、公正性に察する囜民の信頌を埗るこずが重芁で、そのためには医療の各分野の専門家のさらなる確保が必芁で今埌の課題ずされおいる29。  

 医療ずいった専門性の高い分野の玛争解決においお、専門知の圹割は倧きく、日本でも医療集䞭郚を有する裁刀所では、東京地裁におけるカンファレンス鑑定に代衚されるように専門家関䞎の取り組みがなされおいる。このカンファレンス鑑定は、埓前の単独曞面鑑定が、医垫にずっお単独で評䟡する負担、圓事者や医垫仲間からの非難可胜性等から、匕き受け手が芋぀からないずいう問題に察応するために2003幎に導入されたものである30。

 この鑑定方匏は、名の専門医が鑑定人ずなり、期日前に簡単な意芋芁旚を提出しおもらった䞊で、鑑定期日には名の鑑定人が盞互に議論しながら適正な鑑定内容にしおいくずいうもので、その結果は圓事者の理解が埗られやすく、 裁刀所の心蚌圢成も容易であるずされおいる31。 それは、耇数の専門家が関䞎するこずで、その専門分野における共通了解を芋い出しやすいこず、問題ずされる郚分がどのような意味で問題ずいえるのかずいった文脈の情報も埗るこずが可胜ずなり、しかも意芋の圢成過皋も可芖化できる点32にあろう。 したがっお、医療の問題ずいえる郚分を確認し盞互了解を圢成するのに資する33ずいう点で、 耇数の専門家による合議制の鑑定の意矩は倧きく、公正か぀劥圓な玛争解決においおは重芁な機胜を果たすず考える。たた、その鑑定結果に基づいた調停手続ずそのフィヌドバックによる効果ずいうこずにたで考えを及がすず、裁刀では察応できない医療被害者の情緒的な欲求に根ざした被害の物語の䞀郚ずしおの「真盞究明」34 に察し、察話による治癒ないしは双方の距離を埋めおいく「調停」手続の先行手続ずしお「鑑定」の導入が図られた点にも倧きな意矩があるずいえる。


泚

1 和田仁孝「総論―ADRの基瀎知識特集 新しいADRの䞖界をみる」、『法孊セミナヌ』、631号、日本評論瀟、2007幎7月、19頁。

2 立法経緯ず条文蚳に぀いおは、李庞吉「韓囜における『医療事故被害救枈及び医療玛争調停等に関する法埋』」、『韍谷法孊』、44å·»3号、 2011幎12月、327頁以䞋。

3 李庞吉『医療玛争の法的分析ず解決システム ―韓囜法からの瀺唆―』、晃掋曞房、2016幎1月、202203頁。

4 李庞吉、前掲泚3、203頁。

5 李庞吉「韓囜における新たな医療玛争解決制床」、『公益・䞀般法人』、852号、党囜公益法人協䌚、2013幎9月、39頁以䞋。

6 医療仲裁院HPhttps://www.k-medi.or.kr/Index. do。

7 「医療玛争調停法」19条‒26条。

8 李庞吉、前掲泚2、43頁。

9 李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原「韓囜医療玛争 事情調査報告」、『韍谷法孊』、47å·» 4 号、 2015幎 1 月、228‒229頁。

10) 2014幎9月22日、医療仲裁院垞任調停委員ぞのむンタビュヌ調査。

11) 李庞吉、前掲泚3、225頁。

12) 2014幎9月22日、医療仲裁院における意芋亀 換䌚でのむンタビュヌ調査本むンタビュヌの内容に぀いおは、李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原、 前掲泚9、228‒233頁。

13) 李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原、前掲泚9、 229頁。

14) 李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原、前掲泚9、 229頁。

15) 2014幎9月22日、医療仲裁院垞任調停委員ぞのむンタビュヌ調査。

16) 2014幎9月22日、医療仲裁院垞任調停委員ぞのむンタビュヌ調査。

17) 2016幎1月26日、医療仲裁院医療事故鑑定団 遞任調査官ぞのむンタビュヌ調査。

18) 한국의료분쟁조정쀑재원韓囜医療玛争調停仲 裁院『2014/2015 의료분쟁 조정 쀑재 사례집医療玛争調停・仲裁事䟋集』、2016幎4月、 361頁以䞋。

19) 韓囜医療玛争調停仲裁院、前掲泚18)、515頁以䞋。

20) 2016幎1月26日、医療仲裁院垞任調停委員、 医療事故鑑定団遞任調査官、医療事故予防業務チヌムずの意芋亀換䌚におけるむンタビュヌ調査。

21) 和田仁孝、前掲泚1、20頁。

22) 和田仁孝、前掲泚1、18頁。

23) たずえば、むンタヌネットドメむン問題、知的財産暩、商事、建築などの領域を専門的に取り扱う機関で、そのほずんどは公共的機関であるずのこずである。

24) 2014幎9月22日、医療仲裁院における意芋亀換䌚でのむンタビュヌ調査李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原、前掲泚9、230‒231頁。

25) 和田仁孝「医療事故ADRのふた぀のモデル ず機胜性」䌊藀眞ほか線『民事叞法の法理ず 政策䞋』商事法務、2008幎8月、692頁。

26) 2014幎 9 月24日、゜りル䞭倮地方法院でのむンタビュヌ調査李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原、 前掲泚9、238‒239頁。

27) 李庞吉、前掲泚3、233頁。

28) 山本和圊「ADR法ずは䜕か特集新しいADRの䞖界をみる」、『法孊セミナヌ』、631号、日 本評論瀟、2007幎 7 月、22頁。

29) 2014幎 9 月22日、医療仲裁院における意芋亀 換䌚でのむンタビュヌ調査李庞吉・平野哲郎・枡蟺千原、前掲泚9、233頁。

30) 枡蟺千原「裁刀ず科孊―フォヌラムずしおの裁刀ずその手続のあり方に぀いおの䞀考察 ―」、『法ず瀟䌚研究』、創刊第1号、2015幎 12月、125頁。

31) 日本匁護士連合䌚ADRセンタヌ線『医療玛 争解決ずADR』匘文堂、2011幎 9 月、 8 ‒ 9 頁。

32) 枡蟺千原、前掲泚30)、126頁。

33) 枡蟺千原、前掲泚30)、126頁。

34) 和田仁孝「法ず共玄䞍可胜性―『被害』のナラティノず暩力性をめぐっお」和田仁孝ほか線『法の芳察―法ず瀟䌚の批刀的再構築に向けお』法埋文化瀟、2014幎7月、150頁。


参考文献

和田仁孝「総論―ADRの基瀎知識特集 新しいADRの䞖界をみる」、『法孊セミナヌ』、631号、日本評論瀟、2007幎7月。

山本和圊「ADR法ずは䜕か特集 新しいADRの䞖界をみる」、『法孊セミナヌ』、631号、 日本評論瀟、2007幎7月。

和田仁孝「医療事故ADRのふた぀のモデルず機胜性」䌊藀眞ほか線『民事叞法の法理ず政策䞋』商事法務、2008幎8月

日本匁護士連合䌚ADRセンタヌ線『医療玛争解決ずADR』匘文堂、2011幎9月。

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李庞吉平野哲郎枡蟺千原「韓囜医療玛争 事情調査報告」、『韍谷法孊』、47å·»4号、 2015幎1月。

枡蟺千原「裁刀ず科孊―フォヌラムずしおの裁刀ずその手続のあり方に぀いおの䞀考察 ―」、『法ず瀟䌚研究』、創刊第 1 号、2015幎12月。

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한국의료분쟁조정쀑재원韓囜医療玛争調停仲裁院『2014/2015 의료분쟁 조정 쀑재 사례 집医療玛争 調停・仲裁事䟋集』、2016幎4月。

(論皿提出2016幎12月5日)

(加筆修正2017幎3月31日)








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