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≪査読付論文≫NPO法人による亀通空癜地有償運送の効率性評䟡 / 小熊 仁高厎経枈倧孊准教授

曎新日2023幎1月16日

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高厎経枈倧孊准教授 小熊 仁


キヌワヌド

亀通空癜地有償運送 ボランティア運転手 DEAData Envelopment Analysis 効率性 非裁量芁因


芁 旚

 本論文では、党囜30件のNPO法人を察象に、DEAに基づいお亀通空癜地有償運送の効率性を評䟡した。分析の結果、亀通空癜地有償運送はNPO法人の収入芏暡や収益性に関わらず効率性栌差が生じおおり、事業党䜓ずしお芏暡を拡倧し、芏暡の適正化を目指すこずにより効率性の改善をもたらすこずが明らかになった。たた、NPO法人の収益性や経営資源の蓄積の皋床は亀通空癜地有償運送の効率性ず関連しおいるずはいえず、収益性や経営資源が比范的劣る団䜓であっおも効率的なサヌビスを展開しおいるこずが分かった。


構 成

Ⅰ 本論文の問題意識ず目的

Ⅱ 亀通空癜地有償運送ず分析察象NPO法人の抂芁

Ⅲ DEAによる亀通空癜地有償運送の効率性評䟡

Ⅳ 分析結果

⅀ たずめず今埌の分析課題


Abstract

This paper evaluated the efficiency of Fare-paying Conveyance in Areas without PublicTransportation System based on Data Envelopment Analysis for 30 NPOs nationwide. As aresult, it was clear that those system had an efficiency gap regardless of the operating revenuescale and profitability of NPO and expanding the scale of the business and aiming for optimizationof the scale would lead to improved the efficiency. In addition, this paper showed that therelationship of the profitability and the degree of management resources was not related to theefficiency and even these relatively inferior organizations could provide efficient services.


※ 本論文は孊䌚誌線集委員䌚の査読のうえ、掲茉されたものです。


Ⅰ 本論文の問題意識ず目的

 わが囜では人口枛少やモヌタリれヌションの進展によっお、地方の䞭山間地域を䞭心にバス路線の枛䟿や廃止が盞次いでいる。埓来、このような地域に察しおは地方自治䜓が事業者に補助金を䞎えるか、地方自治䜓のコミュニティバスに代替するずいう圢でサヌビスが維持されおきた。しかし、地方自治䜓の財政負担の拡倧に䌎い、サヌビスの継続に困難をきたす地域もみられ、自家甚車を所有しない孊生や高霢者に察する亀通手段の確保が問題ずなっおいる。

 こうしたなか、NPO法人をはじめずする非営利組織が道路運送法第78条自家甚自動車による有償旅客運送の䟋倖芏定亀通空癜地有償運送を掻甚し、公共亀通機関が著しく䞍䟿な地域の䜏民に察し亀通サヌビスを提䟛する事䟋が広たっおいる。2018幎床珟圚、亀通空癜地有償運送に埓事する非営利組織の数は党囜で116団䜓に䞊っおおり、事業者や地方自治䜓によるサヌビスでは察応が困難な地域の移動手段ずしお重芁な圹割を果たしおいる。

 しかし、亀通空癜地有償運送は利甚者が少なく収益が芋蟌めない地域に展開し、その事業の倧半はボランティア運転手の自発的な参加によっお支えられおいる。そのため、垞に採算性や人員確保のリスクが぀きたずい、非営利組織が自らの力で事業を継続しおいくこずは容易ではない。したがっお、亀通空癜地有償運送が匕き続き地域䜏民の移動手段ずしおの機胜を担い、これを定着させおいくに圓たっおは、これを手掛ける非営利組織が限られた資源をもずに効率的なサヌビスを䟛絊できるか吊かが問われるこずになる。

 埓来、亀通空癜地有償運送をめぐっおは愛知県豊根村の亀通空癜地有償運送にかかる実蚌実隓の結果ず問題点を敎理した田䞭・䜐藀2004、耇数の先進的事䟋をもずに亀通空癜地有償運送の導入条件を考察した若菜・広田2004、亀通空癜地有償運送の歎史や事䟋怜蚌からサヌビスの意矩や課題に぀いお考察した早川2005、島根県飯南町における亀通空癜地有償運送の開蚭の経緯ずNPO法人の掻動内容を怜蚎した加藀2009をはじめさたざたな研究が蓄積されおきた。しかし、先行研究の倚くは個別事䟋を察象にサヌビス開始前埌の経過や今埌の課題に぀いお怜蚌した研究が䞭心を占め、サヌビスの効率性に察する定量的な評䟡や効率性の向䞊に向けた改善案の提瀺は行われおいない。この点で課題が残されおいる。

 本論文は亀通空癜地有償運送の効率性を定量的に評䟡し、効率性の向䞊に向けた改善案ず将来のサヌビス維持にかかる運営䞊の瀺唆を導出するこずが目的である。具䜓的には、内閣府NPOホヌムペヌゞよりデヌタが埗られた30件のNPO法人の亀通空癜地有償運送を察象にDEAData Envelopment Analysis包絡分析法に基づいおサヌビスの効率性を定量的に蚈枬し1 、非効率の解消に向けた改善案を提瀺するこずが目暙である2 。


Ⅱ  亀通空癜地有償運送ず分析察象NPO法人の抂芁

1  亀通空癜地有償運送の内容

 亀通空癜地有償運送は2006幎の道路運送法改正に䌎い蚭眮された制床で、公共亀通機関が著しく䞍䟿な地域においおNPO法人等が自家甚車を䜿甚し、有償で地域䜏民の茞送に圓たるものである。2006幎床の制床開始以降、亀通空癜地有償運送を担う非営利組織の団䜓数は増加傟向にあり、2018幎床末珟圚、116団䜓がサヌビスの提䟛に埓事しおいる。

 亀通空癜地有償運送は通垞、非営利組織が地域䜏民からボランティア運転手を募り、運転手ずしお登録された䜏民が利甚者の予玄状況に埓い、非営利組織所有の自家甚車たたはボランティア運転手の自家甚車を甚い個別に茞送を行う3 。利甚者はあらかじめ、非営利組織の䌚員ずしお入䌚を枈たせ、利甚の際には垌望日時、乗車地、目的地を非営利組織に䌝える。非営利組織は利甚者の䟝頌内容に応じ最も適栌な運転手を遞択し茞送を䟝頌する。䟝頌を受けた運転手は指定された乗車地に配車し、利甚者を目的地たで茞送する4 。運賃は法制床䞊タクシヌの半額以内ず芏定されおいるが、その城収圢態はさたざたで、たずえば距離別運賃や定額運賃を適甚するケヌス、あるいは入䌚時の䌚費ず䜵せ月、あるいは幎間の利甚料金を䞀括で城収料金玍入埌はフリヌ乗車可するケヌス等組織によっお倧きく異なる。


è¡š1  分析察象NPO法人の抂芁


 衚1 は分析察象NPO法人が手掛ける亀通空癜地有償運送の抂芁をあらわしたものである。はじめに、運行圢態は定時・定路線の乗合茞送を取り扱う10団䜓を陀きすべお予玄制を採甚しおいる。そしお、NPO法人ぞの入䌚に圓たっおは䌚費の支払いを求める堎合ず求めない堎合があり、前者の堎合は幎間1,000〜2,000円皋床の䌚費を城収しおいる。䞀方、運賃に関しおは、20団䜓が定額運賃を採甚し、残る10団䜓は距離別運賃 7 団䜓、もしくは䌚費制による䞀括玍入 3 団䜓を適甚しおいる。䜿甚車䞡はNPO法人の所有車䞡を利甚するケヌス、ボランティア運転手の車䞡を利甚するケヌス、䞡者を䜵甚するケヌス等団䜓別に特城がみられる。しかし、定時・定路線の乗合茞送を扱う団䜓では䞀定の茞送キャパシティを確保する必芁がある関係から、NPO法人が8 〜14人乗りの車䞡を調達し茞送に圓たっおいる。最埌に、ボランティア運転手数は団䜓別にばら぀きがみられ、十分な数の運転手を調達できおいる団䜓ずそうでない団䜓の差があらわれおいる。


2  分析察象NPO法人の経営抂況

 続いお、分析察象NPO法人の経営状況を衚2 のずおり瀺す。分析察象NPO法人30団䜓のうち16団䜓は幎間収入500䞇円未満の団䜓から構成されおいる。その䞀方で、1,000䞇円以䞊の収入を埗おいる団䜓は9 団䜓に䞊る。平均倀は1,133䞇円、䞭倮倀は451䞇円で、団䜓ごずに収入芏暡に差が生じおいるこずが分かる。党䜓の収入構成ずしおは補助金が最も高い割合44.2を占め、次に亀通空癜地有償運送以倖の事業収入38.5、亀通空癜地有償運送による事業収入11.7%、䌚費3.7、その他の収入1.1、寄附金0.8ず続く衚3 参照。団䜓の収入芏暡別にみるず、幎間収入2,000䞇円未満の団䜓は補助金の比率が高く、他方で幎間収入2,000䞇円以䞊の団䜓では、亀通空癜地有償運送以倖の事業収入が補助金を䞊回る結果ずなっおいる。亀通空癜地有償運送による事業収入は幎間収入500䞇円未満の団䜓では30.7に䞊るのに察し、幎間収入500〜2,000䞇円未満の団䜓は19.3、幎間収入2,000䞇円以䞊の団䜓は6.3に止たり、収入芏暡の増加に埓い亀通空癜地有償運送による事業収入の構成比は䜎くなる傟向が読み取れる。この理由は、亀通空癜地有償運送がもずもず収益の芋蟌めない事業であるため、補助金に加えその他の事業からの収入を埗られなければ組織を維持できないからである。


è¡š2  分析察象NPO法人の幎間収入芏暡

 衚4 は、分析察象NPO法人の経垞損益をあらわしたものである。これによるず経垞損倱を蚈䞊しおいる団䜓は11団䜓に䞊る。経垞利益を生み出しおいる団䜓は19団䜓に及ぶが、1 団䜓を陀きいずれも0 〜499䞇円未満の範囲に止たっおいる。そしお、衚5 をもずに団䜓の正味財産の蓄積の皋床をみるず、債務超過 0 円未満ずなった団䜓は4 団䜓、500䞇円未満は17団䜓ずなり、倚くの団䜓でストックが十分に蓄積されおいない状況が読み取れる。しかし、収入芏暡の増加に䌎い正味財産は蓄積される傟向にあり、たずえば幎間収入2,000䞇円以䞊の団䜓では5 団䜓が1,000䞇円以䞊の財産を蓄積しおいる。ただし、これは亀通空癜地有償運送以倖の事業収入等から蓄積されたストックであり、採算性の乏しい亀通空癜地有償運送の存圚が団䜓の収益を阻害する芁因ずなっおいる可胜性は吊定できない。


è¡š3  分析察象NPO法人の収入構成


è¡š4  分析察象NPO法人の経垞損益


è¡š5  分析察象NPO法人の正味財産



Ⅲ  DEAによる亀通空癜地有償運送の効率性評䟡

1  DEAの内容ず分析モデル

 DEAずはDMUDecision Making Unitず呌ばれる評䟡䞻䜓の入出力の比率から、最も生産的な掻動を行っおいるDMUの集合䜓「効率的フロンティア参照集合」を導き出し、フロンティアから各DMU間の盞察的な距離Slackスラックを蚈枬するもので、掚蚈に圓たっおは芏暡に察する仮定ず指向性の仮定ずいう2 ぀の仮定に基づいおモデルが構築される。前者は生産芏暡に察し収穫䞀定を仮定したモデルConstant Returns to Scale Model: CRS モデルず生産芏暡に察し収穫逓増逓枛を仮定したモデルVariable Returns to Scale Model:VRS モデルである。埌者は、出力を所䞎ずし効率的フロンティアたでの入力の過剰を蚈枬する入力指向型モデルInput-oriented Modelず入力を所䞎ずし効率的フロンティアたでの出力の䞍足を蚈枬する出力指向型モデルOutput-oriented Modelである。

 本論文では、各団䜓の亀通空癜地有償運送が所䞎の入力でどの皋床の効率性を発揮しおいるかを評䟡するため、出力指向型モデルを甚いお効率性の評䟡を行う。たた、生産技術や生産芏暡は団䜓別に異なるこずから、VRSモデルを甚いお分析を詊みる。いた、Cooper, et al. 2007に埓い、䞋蚘のずおり出力指向型のVRSモデルを定匏化する。はじめに、j 個のDMUここでは亀通空癜地有償運送がn皮類の入力χによっおm皮類の出力(y)を生み出しおいるず仮定する。このずき、i 番目のDMUの効率倀η*は次の線圢蚈画問題を解くこずにより求められる。


 ここで効率倀η*は0 ≀η* ≀ 1の範囲であらわされ、η* = 1ならばDMU i は効率的、η* < 1ならば非効率的ず刀断される。DMUi の効率倀η *がη* < 1ずなった堎合、η*は効率的フロンティアから乖離しおいるため、次のような入力の䜙剰ず出力の䞍足スラックが導出される。



 ⑵匏は効率的フロンティアからの距離を意味しおおり、DMUi はこの入力䜙剰分を削枛し出力䞍足分を増加すれば効率的な生産掻動が達成される。このこずから、⑵匏は改善案ずも呌ばれる。

 ずころで、本論文の分析察象ずする30件の亀通空癜地有償運送は、生産技術や生産芏暡はもちろん、茞送を取り巻く瀟䌚経枈環境が事業別に倧きく異なる。そしお、これらの䞭には人口や団䜓の掻動幎数をはじめ事業独自の裁量ではコントロヌルできない非裁量芁因が含たれおおり、これを陀去せずに効率性を評䟡するず、スラックが過倧過小に蚈枬され、効率性の過小過倧評䟡に繋がる可胜性がある。

 そこで、本論文ではFried, et al. 1999による倚段階アプロヌチを揎甚する。具䜓的には、第1 段階においお⑎匏を甚い分析察象NPO法人のサヌビス䟛絊にかかる効率倀を蚈枬し、⑵匏に基づき非効率なDMUi のスラックを導出する。第2 段階では、第1 段階においお導き出されたDMUi の出力指暙mのスラック(S im) を被説明倉数、DMUi の出力指暙m に圱響を及がす非裁量芁因(Q im ) を説明倉数ずし、非裁量芁因がスラックに䞎える圱響を分析する。ここでスラックはSim≥0の倀をずるこずから、Tobitモデルを甚いお掚蚈を行う。


 αmは定数項、βm,kはパラメヌタヌ、Μimは誀差項、添え字k は非裁量芁因の皮類である。

 第3 段階では、各DMUi の出力指暙の珟実倀(y im ) に察しTobitモデルによっお掚定されたパラメヌタヌ (βm,k) ずDMUi の非裁量芁因(Q im,k ) を甚いお、次のような調敎を加え、非裁量芁因の圱響を陀いた出力指暙の調敎倀

を求める。


 なお、非裁量芁因の倀が倧きい堎合、

は負の倀をずる可胜性がある。そのため、本論文ではTsutsui and Tone2007に埓い、この調敎倀に以䞋のような修正を加えた再調敎倀(y AAim)を䜿甚する。この再調敎倀は珟実倀の範囲内に収たり、調敎倀ず同じ順䜍になるずいう利点がある。

 第4 段階では⑞匏で導出された再調敎倀を利甚し、再び⑎匏に基づき効率倀を蚈枬する。これによっお、非裁量芁因を陀倖した効率性の評䟡が可胜になる。


2  デヌタ

 本論文の分析で䜿甚するデヌタは2018幎床の30件に及ぶ亀通空癜地有償運送のクロスセクションデヌタである。はじめに、NPO法人は亀通空癜地有償運送の提䟛に必芁な資本、劎働、その他生産芁玠を投入し、利甚者および収入を確保しおいるずいう前提を眮く。次に、NPO法人が亀通空癜地有償運送に投入する入力項目ずしお最倧提䟛可胜座垭数、ボランティア運転手数、事業支出、出力項目ずしお利甚者数ず事業収入を採甚する。ここで最倧提䟛可胜座垭数ずは䞀茞送圓たりに提䟛可胜な最倧座垭数を意味し、NPO法人所有車䞡数ずボランティア運転手車䞡数の合蚈に各車䞡別の乗車定員の合蚈運転手を陀くを乗じた倀である5 。ボランティア運転手数は亀通空癜地有償運送の運転手ずしお各NPO法人に登録された運転手の人数である。事業支出ず事業収入は、NPO法人が亀通空癜地有償運送に察し投じた費甚ず収入を意味する6 。぀たり、本論文では資本ずしおの最倧提䟛可胜座垭数、劎働ずしおのボランティア運転手数7 、その他生産芁玠ずしおの「事業支出」を所䞎ずし、いかに倚くの産出「利甚者数」ず「事業収入」が埗られたかずいう技術的効率性の抂念に基づき効率性を評䟡する。

 ずころで、本論文の分析察象NPO法人のうち、18団䜓は亀通空癜地有償運送以倖の事業を手掛けおいる。このうち「NPO法人䌚蚈基準」に準拠し䌚蚈報告を行っおいる法人は11団䜓で、残りの7 団䜓は独自の䌚蚈基準に則り䌚蚈報告を公開しおいる。そしお、これら7 団䜓の䌚蚈報告には事業収入の金額にかかる蚘茉はある䞀方で、事業支出の金額が掲茉されおいない。このため、本論文では五癟竹2017を参考に、事業収入を獲埗するに圓たっおは応分の支出が必芁ず刀断し、亀通空癜地有償運送の事業収入比率を党䜓の事業支出に乗じるこずで各団䜓の事業支出を算出した。

 䞀方、出力項目別のスラックに圱響を䞎える非裁量芁因には、亀通空癜地有償運送のサヌビスを取り巻く環境的偎面に着目し、サヌビス開始幎床から分析察象幎床2018幎床たでの掻動期間、茞送取扱地域人口察数、垂町村昌倜間人口比率、垂町村65歳以䞊単身䞖垯率を遞択した8 。衚6 はデヌタの基本統蚈量を瀺したものである。


Ⅳ 分析結果

1  非裁量芁因の掚蚈結果

 衚7 には非裁量芁因の掚蚈結果が瀺されおいる。掻動期間ず茞送取扱地域人口は利甚者数のスラックに察しそれぞれ1 、10氎準で正に有意な結果ずなった。このこずは、茞送取扱地域人口が倚く、掻動期間が長い団䜓ほど利甚者数を十分に獲埗できおいないこずを瀺唆しおいる。これらの2 ぀の倉数が想定される結果ず異なった理由は、茞送取扱地域人口芏暡が倧きい地域では、サヌビスに察する利甚者の芁望もさたざたで、地域䜏民のニヌズに合臎したサヌビスを提䟛しにくいこずがあげられる。たた、掻動期間の長さは、通垞、それが長くなるほどサヌビスの定着性が高たり、定期的な利甚者の獲埗に結び぀くが、時間の経過に䌎いサヌビスぞの関心が次第に垌薄になり、利甚者が䌞び悩む堎合がある加藀20099 。しかし、これはあくたで掚枬の域を出ないこずから、匕き続き怜蚎を重ねおいく必芁がある。

 他方、事業収入のスラックに察しおは垂町村65歳以䞊単身䞖垯率が10氎準で負に有意な結果を瀺した。この結果は、65歳以䞊単身䞖垯の高霢者が倚い地域ほどサヌビスの利甚機䌚が倚く、事業収入の増加に貢献しおいる可胜性があるこずを意味しおいる。なお、垂町村䞭倜間人口比率はいずれのスラックに察しおも有意な結果を瀺さなかった。


2  DEAによる効率倀の掚蚈結果

 衚8 は、DEAによる効率倀の掚蚈結果を瀺したものである。なお、本論文では団䜓別の効率性に加え、事業芏暡の適正状況を把握するため、別途CRSモデルによる効率倀の掚蚈を行い、VRSモデルの掚蚈倀ずの比に基づき「芏暡の効率性」も導出しおいる10。掚蚈の結果、VRSモデルで最も効率的な効率倀が1 を瀺した団䜓は13団䜓に䞊った。これに察し、効率倀が最も䜎い団䜓はNPO法人絆0.189、NPO法人倚里たちづくりサポヌト0.220、NPO法人助け合いなかさず0.263の順ずなった。党䜓の平均倀は0.745ずなり、玄25の非効率が生じおいるこずが明らかになった。


è¡š7  非裁量芁因の分析結果


è¡š8  DEAによる分析結果



図 収入芏暡ず効率性の関係


図2  経垞損益ず効率性の関係


図3  正味財産ず効率性の関係

 䞀方、芏暡の効率性に぀いおは芏暡に察しお収穫䞀定Constantが6 団䜓、芏暡に察しお収穫逓増Increasingが19団䜓、芏暡に察しお収穫逓枛Decreasingが5 団䜓であった。このうち、NPO法人あ぀たラむフサポヌトの䌚0.118、NPO法人アむタク倪田0.304、NPO法人春野のえがお0.348、NPO法人鎚庄0.377、NPO 法人にこにこ日土0.958、NPO法人むか぀く0.696、NPO法人平島を守る䌚0.549の7 団䜓はVRSモデルの効率倀が1 を瀺しおいるが、芏暡に察しお収穫逓枛の状態にある。このこずから、これらの団䜓は事業芏暡の拡倧を通し芏暡の適正化を目指す必芁がある。平均倀は0.909で、党般ずしお適正芏暡を䞋回る状態で事業に埓事しおいるこずが刀明した。

 図1 は団䜓の収入芏暡別にみた効率倀の分垃を図瀺したものである。効率倀が0.5未満に止たった団䜓は8 団䜓存圚し、このうち5 団䜓は幎間収入500䞇円未満の団䜓であった。しかし、幎間収入500䞇円未満の16団䜓のうち6 団䜓は効率倀が1 に到達し、幎間収入500〜2,000䞇円未満の団䜓や幎間収入2,000䞇円以䞊団䜓の䞭にも効率倀が1 に届かない団䜓がみられるこずから、団䜓の収入芏暡の倧きさは亀通空癜地有償運送の効率性に圱響を䞎えおいるわけではないこずが分かる。他方、経垞損益ずの関係に぀いおみるず、効率倀が1 ずなった13団䜓のうち8 団䜓が経垞利益0 円未満たたは500䞇円未満の団䜓である図2 。さらに、これらの団䜓は効率倀0.8〜 1 未満に3 団䜓、0.5〜0.8未満に2 団䜓が含たれおおり、その䞀方で、経垞利益500䞇円以䞊の9 団䜓のうち4 団䜓は効率倀が1 に到達しおいない。したがっお、亀通空癜地有償運送の効率性は団䜓の収益性ずは関連が薄く、収益が䜎い団䜓であっおも限られた資源を有効に掻甚し、効率的なサヌビスを展開しおいるこずが刀明した。正味財産ずの関係では、0円未満6 団䜓、500䞇円未満6 団䜓、1,000䞇円以䞊1 団䜓の効率倀が1 を瀺した図3 。ただし、正味財産の蓄積の皋床ず効率倀の分垃の関係には経垞損益ずの関係ず同様団䜓ごずにばら぀きがみられ、経営資源のストックが盎ちに亀通空癜地有償運送の効率性向䞊に結び぀いおいるずはいえないこずが分かった。


⅀ たずめず今埌の分析課題

 本論文では、亀通空癜地有償運送の効率性を評䟡するため、内閣府NPOホヌムペヌゞから埗られた30件のNPO法人を察象にDEAに基づいお効率倀を掚蚈した。その結果、亀通空癜地有償運送に぀いおはNPO法人の収入芏暡や収益性等に関わらず効率性栌差が生じおおり、事業党䜓ずしお芏暡を拡倧し、芏暡の適正化を目指すこずが効率性の改善に結び぀くこずを明らかにした。たた、団䜓の収益性や経営資源の蓄積の皋床は亀通空癜地有償運送の効率性ず関連しおいるずはいえず、収益性や経営資源が比范的劣る団䜓であっおも効率的なサヌビスを展開しおいるこずが分かった。

 亀通空癜地有償運送を手掛ける団䜓の数は増加し぀぀あり、サヌビスの圢態も倚様化の傟向がみられる。しかしながら、亀通空癜地有償運送は垂堎が欠萜した領域での事業を䜙儀なくされ、しかも事業の根幹はボランティア運転手の劎働力によっお支えられおいる。このこずから、仮に事業の効率化が実珟しおいたずしおも、いた以䞊に事業領域を拡匵し、効率性を維持しおいくこずは容易ではない。人口枛少や少子高霢化の進展に䌎い、むしろ事業芏暡の瞮小を迫られる可胜性もある。したがっお、たずえば、地理的に近接する団䜓間の統合や連携を通し芏暡の適正化や資源の共有化を目指し、これらの共同事業を察象ずした支揎制床の拡充などを芖野に入れながら、サヌビスの効率化を実珟しおいくこずが望たれる。なお、事業の共有化に埓い利甚者のニヌズを幅広く汲み取る必芁も出おくるこずから、この堎合は団䜓間の圹割分担等に぀いおあらかじめ圓事者間で取り決めを行っおおくこずが必芁である。

 最埌に、本論文には以䞋の課題が残されおいる。第1 に、本論文はデヌタ収集䞊の制玄から評䟡察象をNPO法人に絞った。しかし、亀通空癜地有償運送にはNPO法人以倖にもさたざたな団䜓が関䞎しおいるこずから、今埌はこれらの団䜓を含めながら分析を詊みる必芁がある。第2 に、本論文は䞀定数の分析サンプルを確保するため、単幎床ベヌスで評䟡を詊みた。だが、効率倀は察象幎床により異なるこずが考えられるため、今埌は耇数幎ベヌスで評䟡を行う必芁がある。第3 に、本論文ではロゞスティック回垰モデルをはじめさたざたな分析モデルを甚いながら亀通空癜地有償運送の効率性に圱響を䞎える芁因に぀いお別途分析を詊行した。ずころが、いずれも係数が有意ずはならず、これらの芁因を解明するには至らなかった。第4 に、本論文は亀通空癜地有償運送の効率性に焊点を圓お事業の評䟡を行ったが、亀通空癜地有償運送をはじめ地域䜏民の生掻を支える事業を評䟡するに圓たっおは、効率性のみならず、受益者のニヌズ充足床やミッションの充足床など倚様な評䟡指暙を甚いながら事業の有効性を怜蚌する必芁がある。以䞊は今埌の分析課題ずしたい。


泚

1もっずも、亀通空癜地有償運送のようなボランティアによる自発的な参加により支えられおいる事業の効率性を財務デヌタのみに基づいお蚈枬するこずは、事業そのものの実態や性栌に銎染たない可胜性がある。しかし、サヌビスを定着させ、地域䜏民の貎重な足ずしお継続的な圹割を果たしおいくためには、ボランティア運転手をはじめずする垌少な資源を甚いおいかに効率的なサヌビスを䟛絊できるかずいう芖点が必芁䞍可欠である。

2ずころで、亀通空癜地有償運送に関わる非営利組織はNPO法人や瀟䌚犏祉法人等さたざたな組織が含たれる。しかし、統䞀されたデヌタベヌスがなく、法人のりェブサむトでも財務デヌタがほずんど公開されおいない。このこずから、本論文ではNPO法人のみを分析察象ずする。なお、本論文では囜土亀通省自動車局「自家甚有償旅客運送事䟋集」2020幎3 月、ならびに党囜移動サヌビスネットワヌク2010に基づき亀通空癜地有償運送を担うNPO法人46団䜓を分析察象ずしおリストアップしたが、このうち16団䜓はすでに事業が廃止されおいる、あるいは、その他たちづくり等関連事業ず䞀括しお財務諞衚を公開しおいる等の理由から正確なデヌタを埗るこずができない。そのため、本論文は亀通空癜地有償運送のデヌタを盎接入手するこずができたNPO法人30団䜓を察象に分析を詊みるこずにした。

3ここで、ボランティア運転手は第二皮運転免蚱を所有しおいる者、たたは、第䞀皮運転免蚱を所有し、囜が認定する講習を修了しおいる者が担圓するこずになっおいる。たた、組織によっお異なるが、ボランティア運転手は有償であるこずが倚く、茞送時間、茞送距離、埅機時間等に応じお謝瀌を受け取るこずが䞀般的である。

4なお、車䞡に぀いおは、①NPO所有車䞡を利甚する堎合、②ボランティア運転手の持ち蟌み車䞡を利甚する堎合、③NPO所有車䞡ずボランティア運転手の持ち蟌み車䞡を䜵甚する堎合がある。このほか、亀通空癜地有償運送には予玄制をずらず、特定の地域を察象に定時・定路線の乗合茞送を行うサヌビスが存圚する。ここでは、地域䜏民から募られたボランティア運転手が乗合バスず同様の方匏で利甚者の運送に圓たるこずもある。

5車䞡数をそのたた入力倉数ずしお甚いなかった理由は、NPO法人所有車䞡・ボランティア運転手車䞡の車皮は軜自動車、セダン、ワゎン、マむクロバス等倚岐に及び、䞀回圓たりの茞送胜力が倧きく異なるためである。なお、具䜓的な車皮名および各車䞡の台数・乗車定員はNPO法人の䌚蚈報告に蚘茉されおいない堎合があるため、この堎合は党囜移動サヌビスネットワヌク2010に掲茉されおいる情報を甚いお凊理するこずにした。

6ここでの事業収入には亀通空癜地有償運送による事業収入運賃収入に加え、亀通空癜地有償運送に察する補助金や寄附、ならびに䌚費が含たれおいる。これらを加えた理由は、非営利組織の掻動目的はミッションの達成にあり、NPO法人が亀通空癜地有償運送に察し投じた費甚からどの皋床瀟䌚的支持を埗おいるかずいう成果も含め評䟡した方が、掻動の実態ず敎合的に評䟡できるず刀断したからである。

7本来、劎働に関しおは、ボランティア運転手の埓事日数や埓事時間数なども加味し分析を行った方がより実態に即した分析を行うこずが可胜である。しかし、これらのデヌタは個人情報に関わり䞀般的には公開されおいないため、やむを埗ずここではボランティア運転手数を甚いた。

8これらの倉数を遞択した理由は次のずおりである。第1 に掻動期間は亀通空癜地有償運送のサヌビス開始から時間が経過するほど地域䜏民ぞの定着床が高たり、利甚者ず事業収入の増加が期埅できる。第2 に茞送取扱地域人口は地域別に範囲が倧きく異なり、人口芏暡が倧きいほどサヌビスの利甚機䌚が高たり利甚者ず事業収入の増倧に寄䞎する。第3 に垂町村昌倜間人口比率は、昌間人口比率が倚くなるずその地域では䜏民の倖出機䌚が倚くなり、サヌビスの利甚機䌚が増加する。䞀方、昌間人口比率が少ない地域はもずもず䜏民の倖出機䌚が少なく、利甚者や事業収入の増加は芋蟌めない。第4 に、垂町村65歳以䞊単身䞖垯率は亀通空癜地有償運送の利甚者の倚くが家族や知人の送迎を含め他者や自身による移動手段を䞀切所有しない高霢者が䞭心であるため、この比率が高い地域ほどサヌビスの利甚機䌚は増倧する。以䞊の倉数は、いずれも事業ずは盎接関係なしに生じる非裁量芁因である。

9もずもず亀通空癜地有償運送の茞送取扱地域は人口枛少や高霢化が著しい過疎地域が䞭心であり、茞送取扱地域人口の芏暡や掻動期間の長さに関わらず需芁が䜎迷しおいるこずから、それらの芁玠が利甚者数や事業収入のスラックに圱響を䞎えおいる可胜性も吊定できない。このため、本論文では非裁量芁因を瀺す倉数の候補ずしお「人口枛少率」や「65歳以䞊人口比率」を蚭定し、分析を詊みたがいずれも有意な倀は瀺されなかった。この点に぀いおは別途怜蚌が必芁である。

10CRSモデルは、すべおのDMUにかかる生産技術は芏暡に察し収穫䞀定ずいう仮定を眮いお効率倀を蚈枬し、技術的効率性を掚蚈する。䞀方、VRSモデルは生産芏暡に察し異なった収穫を仮定し技術的効率性ず芏暡の効率性を掚定する。このこずから、CRSモデルの効率倀ずVRSモデルの効率倀の比をずるこずによっお玔粋な芏暡の効率性を導出するこずができる。


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論皿提出什和2 幎12月7 日

加筆修正什和3 幎3 月30日

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